既読スルー
「また既読スルーだよぉ~」
世の中の多くの人がこの小さくて薄っぺらい機械と睨みあってこう思っているのだろう。
だが、私にとってのこの機能は安否確認の為のツールなのだ。
別に彼に重篤な持病があるわけではない。
命を狙われるような過去がある人なわけでもない。
私と不倫をしているという事を除いては、彼は生死を心配されるような事は何一つとして無い鑑のような人間なのだ。
不倫がバレてしまって、奥さんに彼が刺されかねない心配?
仕返しにそっち系の人達を雇われて消されてしまうかもしれないという心配?
事故に見せ掛けて車で轢かれてしまうかもという心配?
このなんとも言えない感情は、全てに当てはまるし全てに当てはまらない。
バレているわけじゃない。だからそんな心配は一つもいらないはずなのに…
「既読が付くだけ良いじゃないか。読んでくれたって事は生きてるって事なんだから良いじゃないか。」
御多分に漏れず私もこの小さくて薄っぺらい機械と睨みあっている。
待っているのは返事ではなく既読が付く事。
今夜も彼は無事に生きていると安心して眠るために…。
既読スルー