ハラスメント

「課長、ダメですよ」
「ん、何がだ」
「さっき経理の小池くんと話をしていたでしょう。あれはセクハラですよ」
「えっ、わしは何もしとらんぞ。ボディにタッチもしてないし、下ネタも言ってない」
「でも、小池くんのことを理恵ちゃんと呼んでいたじゃないですか」
「それがどうしたと言うんだ」
「相手が女性だからといって、ファーストネームで呼ぶのは立派なセクハラです」
「そんなバカな。ちょっと世間話をするのに、堅苦しくならないよう気を使っただけだ」
「でも、ぼくと世間話をするとき、健二ちゃんとは呼ばないでしょう」
「当たり前だ。気色の悪いことを言うな」
「それですよ。もしかしたら小池くんもそう思ったかもしれません。それにもうひとつ」
「何だ。まだあるのか」
「課長、昨日ニンニクを食べたでしょう」
「ああ。もつ鍋にたっぷりブチ込んだ。まだ匂うか」
「プンプン匂ってます」
「そりゃ、すまなかった。だが、これはセクハラじゃないだろう。ニンニクが臭いのは男女平等だ」
「もちろんセクハラじゃありません。スメハラです」
「何だそれは」
「スメルハラスメント、つまり、匂いのハラスメントですね」
「これぐらい、いいじゃないか。ああ、もう、イライラする」
「あ、ちょっと待ってください。室内でタバコを吸うときは、周囲の人にちゃんと了解を得ないと」
「ふん、嫌煙権というやつか」
「いえ、今はスモークハラスメント、略してスモハラと言います」
「まったく、なんて世の中になったんだ。ええい、ヤケ酒だ。おい、帰りに一杯付き合わんか」
「ダメです、ダメです。それこそアルコールハラスメント、アルハラです」
「もう、いい加減にしろ!おまえこそハラスメントだ」
「えっ、どうしてですか」
「何でも一方的にハラスメントと決めつける、つまり、ハラスメントハラスメント、略してハラハラだ!」
(おわり)

ハラスメント

ハラスメント

「課長、ダメですよ」「ん、何がだ」「さっき経理の小池くんと話をしていたでしょう。あれはセクハラですよ」「えっ、わしは何もしとらんぞ。ボディにタッチもしてないし、下ネタも言ってない」「でも、小池くんのことを…

  • 小説
  • 掌編
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-04-23

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