たばこを辞めさす男たち


「なぁ?俺やばこ辞めるわ」
またか・・・

私がここ最近付き合ってきた男はみんな言う。


彼らの目的は私にたばこを辞めさせること。
だから最初は遠慮して自分からたばこを辞めるという


でも私は言う。
「じゃあ一緒に辞めるね」



そうやって二人で辞めた試はない。


私は現在社会人三年目の24才女子だ。


田舎から大阪に大学の時に出てきて、6年になる。



大阪は楽しい。田舎のことなど忘れてしまう。
夜遊びをしていたり、男をとっかえひっかえして都会を楽しんでいるのではない。
休みの日には中崎町や堀江にサイクリングにいって、こじんまりとしたカフェでお茶をしたり
時々友人や先輩と会って恋ばなをする時間を楽しんでいるただの24才だ。


おしゃれな場所で、手帳とにらめっこしたり、本を読みながらたばこを吸う時間がとっても好きだった。



私には大学時代に付き合った彼がいた。4年付き合った。大好きだった。この人と残りの人生を60年しか一緒に過ごせないのだと
泣きそうな夜もあった。こんなに好きな人は二度とできないと思う人だった。
親に紹介するために一緒に田舎に連れて行った。

そしたらその2週間後に
「お前は好きな人ができたりしないの?」と聞かれた。
嫌な予感がした。

「好きな人ができた。でも別れたくない」


そう言われた。




しばらく連絡を絶ったが、結局またよりを戻した。でもなんだか彼といる時間に何も感じなくなってしまった。


だから別れた。


みじめだった。



周りは言う。「結果的にあなた振ったんだからあなたの勝ちだ」


4年。返してと思った時もあったが今ではこれだけ好きにならせてくれてありがとうと言える。
でも、彼のおかげで彼氏を信じるという感覚をなくしてしまった。

大学の彼

彼は初めは私に信頼を与えてくれていた。

大学に入って間もなく学園祭実行委員で知り合った。
たまたま同じマンションだった。そのマンションは大きくて面倒見のいい大家さんがいた。
そのマンションの一回に飲食店舗があって、そこでよく鍋パーティーや親睦会があった。


学園祭実行委員は過酷だった。授業以外の時間ずっと夜中まで企画を練って、リハーサルをして
有志たちに怒られたり、すごく大変だったけど、すごく楽しくて一丸となってみんな取り組んでいた。


その中で恋愛関係ができるのも珍しくなく、何組のカップルができたことか。
彼も最初は私じゃなくって、一緒に学園祭に取り組んでいたかわいくて清楚な感じのe子ちゃんを好きだった。
私は今でもこの女が大嫌いだ。死ねばいいと今でも思う。



みんなからも人気があって、頭もよくて、私もとっても初めは仲がよかった。


彼がe子ちゃんとを好きだと周りから見ていてもすぐにわかった。
うまくいくといいねーと周りも見ていたが、その二人はすぐに付き合うことになった。



でも1週間で別れてしまった。
理由はeちゃんが、彼の親友を好きになったからだった。


私たちはすごくすごく仲が良くて、学園祭の準備が朝までかかってもそのあとみんなでうどんやら牛丼を食べて
常に10人くらいで行動していた。


そのうちの2人が別れて、そのうちの1人のことを好きになったからなんだかグループ自体がぎくしゃくし始めた。
私は彼となんでも言い合える親友だった。
その話もよく聞かされたが、その時私には別に社会人の彼氏がいて、どこか客観的に見れていた。


学園祭も終わり、少し落ち着いてきた12月。私は彼に対しての気持がお付き合いしている彼よりも
勝ってきたことに焦りを感じていた。学園祭で密な時間を一緒に過ごして、そのあとも同じマンションだったから暇さえあれば一緒にいるようになっていた。

でもうちらは親友。しかも彼の好きだった人も仲よしで、彼が傷ついていることも目の前で見てきていた。

言えない。好きだなんて。


でもほかの人のものになるのもなんだかさびしい。


おさえられない気持ちを持ったまま彼氏と付き合っているのは申し訳なくて、当時付き合っていた彼氏に別れを
告げた。



でもすぐだった。


お互いの家に泊まりあったりすることは度々あったがそれまでも二人きりで同じ部屋で夜を過ごすことはなかった。


クリスマス1週間前くらいに彼がうちでご飯を食べにきていた。その日はなんだかんだと色々話して、
彼が泊まっていくことになった。

「なぁなぁ?なんで彼氏と別れたん?」
暗い部屋で二人で天井を見ながら話した。

「好きな人ができた。でも付き合いたいとか全然そんなんじゃないねん。そんな気持ちで付き合ってるのが悪くて」

「そうなんだぁ。誰?」

「んーいいやん別に」



本当にすぐ付き合えるなんて思ってなくて徐々に気持ちを伝えていこうと思っていた。チャンスとも
思っていないこの時間。


「なぁ?付き合おっか?」


急に告白された。でもうれしくて天にも昇る思いを抑えて
「うん」
と答えた。



そこからはずっと一緒だった。


でも問題はeちゃんだ。eちゃんは学園祭の仲良しグループの中の違う人と付き合いだしていた。
彼との関係も修復していた。


やっかいなもので、彼の家は仲よしグループのたまり場でeちゃんもよくきていた。
別によかったんだけど、ありえないことを聞いてしまった。


eちゃんは彼と付き合いだしてすぐに彼の親友と関係を持っていて、それでも平気に彼の家にいりびたっていた。

すっごく許せなかった。彼もそれを知らなかった。



彼に
「eちゃん一応元かのなんだから、家で二人きりになったりしないでね?」
と伝えた。彼はそれはそうだね、といい返事をしてくれた。


eちゃんはいつも彼の部屋にいた。彼の親友もそこにはいた。


彼は私の部屋にいることが多かったけど、なんだか気がきじゃなくなってきた。


eちゃんに私は言った。
「あんまり彼の家にきて課題とかするの辞めてもらってもいいかな?」

eちゃんは察してくれて、
「ごめん、無神経だったね。ごめん」
と言ってくれた。


それからも彼女の姿は相変わらずで、ある日彼の親友とeちゃんが一緒に彼の家からでてくる姿を見た。
すっごく腹がたった。彼もばかにされてる気がして。


言ってしまった。彼に。eちゃんと親友のこと。

彼はぶち切れ。


eちゃんの彼氏にまで
「eちゃんもう家にこさすな」
とまで言ってくれた。

そこからeちゃんと口をきくことはなくなった。


でも彼は学園祭の有志としてeちゃんとの関係を修復していった。

その関係と私の関係は反比例で、私はどんどん信頼しなくなっていった。





4年付き合って、別れるころに彼から一番ほしかったものは愛じゃなくて信頼だったと最後の最後に思った。

彼氏

今の彼。彼は私に言った。

「たばこ辞める


もう少ししたら」



ぅん、と言って私は彼のたばこに手を伸ばし、箱から一本取り出し火をつけた。



彼は今まで付き合った中で一番難しい・・・・というか理解に苦しむ。



見た目から伝えよう。


チャラ男。
軽い。
彼女は外国人そう。
金持ちそう。

想像しやすい感じだと、
黒髪、ロック、おしゃれ、背は低くて目はぱっちり。


わかりやすくはないか・・・・。



外見と同じくらい性格も説明しづらい。


美大のぶっとんだやつ。だけど仕事はお堅くて、とっても腰の低い人。
私はそこに惹かれた。感受性が豊かなのにしっかり仕事をしているところに。


感受性の豊かな人の話は聞いていておもしろい。自分にない発想をする人に魅力を感じる。


「ねぇ、爪割れた・・・」ブレスレットをはずす時に左の人差し指の爪が割れた。
彼は
「へぇー」


「ねぇ、爪割れた」
「・・・・」

もはや無視。


「ねぇ、爪割れた」もう一回言ってみる。


すると彼は爪切りと爪やすりを持ってきて



私の左手をとった。



パチン


パチン


「・・・!?」優しい!


私の割れた爪を切ってくれた。

そしてやすりまでかけてくれた。

少し焦った。こんなこと初めてだ。


「いいよ、そこまでしなくて」彼がやすりでごしごしとしてくれてる時になんだか申し訳なくなって
手を引こうとするけど、彼は私の手をしっかり握ってやすりをかけ続けた。


「3回言われたから・・・もう大丈夫」





だから彼は好きだ。きっとこれからはもっと好きになると思う。


時々ひびの入った人差し指を見て彼を思う。



彼とはナンパで知り合った。でもそんなに下心なさそうだし、その時何よりすっぴンだったから
連絡なんてこないと思ってた。


連絡がきた時は驚いた。



何回かご飯に行った。
私たちの話は起業についてや、社会の悪とか、これからの夢。



中2みたいな会話をずっとしていた。


それが楽しくて。友達にだって自分の夢を話したくないのに
彼はまじめに聞いてくれた


「私ね、30代でベンツがほしいの。それぐらいの財力と、それを維持しているだけの力を持っていたい。
みんなはね、結婚して家庭を持ってって、それが普通で一番尊くて、幸せなのかもしれない。
でもね、私は旦那にほしいものを買っていいのか聞いて、旦那がリストラにあったら自分も働いて・・・
そんな誰かに自分の人生の主導権をにぎらせたくないの」


彼は言った。
「みんなそれが本当に幸せだと思ってる訳じゃない。社会がそういう生活を幸せだと思わせてるんだよ」


誰もが憧れるCMみたいな家族の絵を真正面から否定する人と出会ったのは初めてだった。


「ねぇ、彼女何人いるの?」彼に聞く。

「うーん。二人かな?」

同じ布団で寝ていても彼は平気でそういうことを言う。




ねぇ、みんな幸せなの?






私と彼は社会に問いかける。











「なぁ。俺さ、お前と出会って幸せだよ。お前みたいなやつがいるって知れて、よかったよ」


彼は人差し指と中指で持ったたたばこを下にむけながら私に言ってくれた。



この人なら・・・私を見えない糸で引っ張りながら自由に空を飛ばせてくれると思った。



「俺は自分で告白とかしない。でもさ、これからもよろしくね。仕事が落ち着いたらさ、
ずっと一緒にいよう」



そういって私は彼と離れ離れになってしまう今日から付き合うことになった。

その日に私は大阪から離れて田舎に帰った。

私。名前も言っていなかったが言わない。なんとなくで、誰がこれを言ってとか、

登場人物を分析しながら読んでもらえるとありがたい。


私はごく普通の女子だ。

今24歳。次の誕生日にはアラサーと呼ばれる。それが嫌だ。

毎年言う。
「23歳と24歳の差ってでかいよね」
来年も言う。きっと。


この年になると、やることが社会的に増えてくる。

仕事も慣れてバタバタとしてくる。そして婚活しなきゃね、と足並みをそろえるように
少しずつマジな合コンを始める。


「医者の合コン!?なんで誘ってくれなかったの!?」と、まじで友達にきれだしたりもする。

医者や公務員は今も人気職種で、合コンに来ると知ったらやる気がはんぱない。


私もその一人だけど、みんなよりは焦ってないし~とちょっとかっこつけてみたりもする。


でも最近は医者や公務員をしてる人ではこんな不真面目な自分を好きになってくれる人はいないんじゃないかと思う。

いや・・・むしろ誰もいないのでは??なんて、時々自信をなくしたりして。


自分で言うのもなんだが、まぁまぁ言い寄られる。
誰でもいい訳じゃない。

その中から興味のそそる人を選んで、デートしたりする。そしてパンコでもない。
すぐにエッチは時と場合と人による。
うん。まじリアルだ。



大学を普通に卒業して、福祉の仕事についた。
福祉はまだまだ、地位に低い仕事だと感じている。

でもみんなが言うように絶対必要な仕事で、確かに誰でもできる仕事だけど、
福祉という分野が、人を選んで、合わない人はすぐに消える。そして福祉を辞めると
仕事の幅は狭い。


だから結局また福祉に戻ったりして。


私も福祉職での就職を決めた。
でもジャージの仕事は嫌だったから、病院で相談員の仕事に就いた。


この仕事は社会での現実をまざまざとみせつけられた

テレビでよく見る孤独死。病院で亡くなる患者は孤独死にカウントされない。



でも


結局



死ぬ時は一人だ。





同じ日に同じ場所で、同じ時間に誰かが横で死ぬなんて病院では皆無。

当たり前のことだけど、亡くなった時に家族がいない人なんてざらだった。



私は医師のハンコをついた死亡届をよく区役所まで持っていった。


「寂しい」言えるうちはまだ元気だ。死ぬ間際なんてそんなこと言えない。


自分が一人で死んでるなんて考えているのだろうか。




基本的に患者はマイナスである何かを抱えて入院、通院している。
それをいかにプラスに持っていくかを考えるのも相談員の仕事であった。


わかりやすく言えば、介護保険や生活保護の申請だ。
これから少しでも生きていきやすいように、介護保険を申請して、家の改造や
福祉サービスの利用につなげ、在宅でも生活していきやすいようにお手伝いをする。
もしくは、施設を探して今後の生活づくりをしていくのだ。



マイナスからのスタートでそれを少しでもプラスにするという役割は役に立っているようではあるが
患者の顔に満面の笑みを見せられることはない。



そんなテレビのドキュメンタリーになりそうな仕事をしている。




そんな仕事をしている中、私は恋愛もそこそこだった。
とりあえず男の人からの誘いは途切れることはなかった。



ただ今の彼氏と出会うまで私が社会人で付き合った人は二人。
被害総額25万ってとこだ。



被害総額・・・。



まぁまぁ悲しい恋愛が多いのが私だ。

たばこを辞めさす男たち

たばこを辞めさす男たち

  • 小説
  • 短編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-03-09

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  1. 1
  2. 大学の彼
  3. 彼氏