私達の日常
“ごごごごごごごごご”
特急電車で冷たい風が肌に刺さる。
ふと、後ろを振り返ると柳田君がいて、難しい顔をしてベンチに座っていた。手には分厚い本を持っている。いつもなら一緒に学校まで行く真由美が居ないので私は電車を待っている間、柳田君と話していようと思った。でも柳田君は私がベンチに近づいても気づかない。
「何読んでいるの?」
彼は一瞬びくっとして、あぁと本の表紙を見せる。でも私には何の本か分からなかったので「へ~」と言って会話が終わってしまった。そこに運良く電車が来たので私はさっさと乗った。
今日は日が照っているのに朝の風は昨日よりも冷たかった。
単語テストの予習をしようと鞄をあさってもあさっても単語帳が見当たらない。今まで満点だっただけにこの点数を落としたくなかった。真由美ちゃんもホームに見当たらないから借りるにも借りれない。その時私の右奥のホームに柳田君が立っているのが見えた。彼なら貸してくれるだろうと思って駆け寄った。柳田君は背が高いから私は彼の肘下をたたいた。彼が振り向いた。彼の背で見えてなかったけど彼の友達がもう2人一緒にいて同時に振り向いた。中嶋君と峯君だ。あちゃぁと思ったけど私は咳き込むように“単語帳を貸してくれ“と言った。少し、恥ずかしかったけれど彼は教室まで見ていていいと言ってくれた。柳田君もテストあるよねと思って、私に貸して大丈夫なの?と聞いた。彼は苦笑いしながら、まあ何とかなるでしょと言った。私は彼の苦笑いは見なかった事にして、ありがたくテスト前まで見させてもらった。
私達の日常