Truth of war 第三話 ~失われた鍵~
西暦2018年五月九日、悲劇のバレンタインから三か月がたとうとしている。
あの日以来、ウクライナの奪還に激怒したモスクワ上層部は電撃的にロシアに侵攻を開始しようとした。
しかし、予想に反し、ロシア侵攻は難航した。
では、なぜ軍備どころか、一時的に政治危機にさえ陥ったロシアに苦戦したか?
そのバックには日本との取引があった。
軍備を強化し、先進国各国と同等、それ以上ともいえる軍事力をもった日本はロシアに北方領土の返還を条件にロシアへの軍事、経済的援助を提案した。
窮地に陥っていたロシアはそれを承諾。日本軍が派遣された。
日本軍の活動により、ロシアの政治、軍事機能は再開。モスクワとの交戦ができるレベルまで復帰したのだ。
そして、モスクワの侵攻以来、モスクワの占領下におかれていたギリシャに向け、日本、イタリア、ドイツの三国連合軍の兵が出兵した。
名目として掲げられた言葉は「敗戦国の名誉挽回」だった。
アメリカも支援として、特別編成部隊を投入した。-------------------------------------------
「やあ、またあったね。」
そう久しくもない、見慣れたと言ってはなんだが・・・フライが話しかけてきた。
「そうですね。ウクライナの次はギリシャですか。」
モスクワはプレべザへ軍を派遣した後、現地のレジスタンスに援助を行い、ギリシャの実質的な支配を行ってきた。
最新式の武装で奮起したレジスタンスは周辺国へ危害をもたらすこともしばしばあり、小国にとって少なからず脅威であった。
「それにしても日本が武装奮起するとは・・・驚きです。」
「そうだな・・・それにかなりの軍事力をつけてきてる。」
そんな会話をしていると、基地のモニターに日本人の軍人が映し出された。
『私はギリシャ奪還連合軍の総司令官を務める日本軍元帥、東条だ。今回の作戦の概要を説明する。イタリア軍は海軍を中心とし、南部に侵攻する。ドイツ軍は陸路でギリシャ北部から侵攻。日本軍はトルコ側からアテネに向かい侵攻する。』
「みなよ、最近まで軍すら廃止してたのに、今やギリシャ侵攻軍の主要部隊だ。」
フライが皮肉交じりに語る。
「そういえば、僕らはどう動くんです?」
「君達には日本軍、イタリア軍とともに首都侵攻に参加してもらう。」
そういって現れたのはアンタレス准将だった。
「どう攻め込むんです?」
「事前に戦闘機部隊がアテネ上空まで侵攻し、制空権の確保を行う。その後、ガンシップによる制圧を行い、サロニカ湾から空母を主体とした海軍部隊で攻め込む。陸に近づいたらヘリと揚陸艇、戦車部隊で一気に攻め込む。この作戦でアテネを奪還するんだ。」
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2018年五月二十一日、アテネ上空。
『HQ、こちらモスクワ軍第三飛行部隊だ。レーダーにちらつく影があるんだが、そちらで確認できるか?』
『こちらHQだ。こちらでは確認できない。念のため指定空域を確認してから帰還せよ。』
『了解、あたりを・・・!?ミサイルアラートが・・・!?』ピーピー!ドン!
『どうした!?第三飛行部隊応答せよ!』
『ザーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー』
『こちらサロニカ湾岸警備部隊!敵艦船及び敵兵と交戦中!戦闘ヘリも多数確認!至急増援を!』
『こちら北部国境警備隊!敵機甲部隊の展開を確認!現在国境を越えて進行中!』
『こちらは東部湾岸警備隊だ!敵の艦船に砲撃されてる!』
「・・・なんてことだ・・・」手に冷や汗をかき、明らかに動揺した態度で各地の報告を聞いているのはアルギュロス・ステファノス。
彼はロシア軍の占領下におかれたギリシャの現地部隊の総司令としてギリシャの統治を行ってきた。・・・そして、この戦争の全てのシナリオを知る数少ない一人である。
「各地の部隊に足止めを命じろ!モスクワの増援を待つんだ!」
「だめです!後退することも精一杯の状態です!」
オペレーターが叫ぶ。
「ここまでか・・・・・」
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アテネの中心、ここには元正規軍の本部があり、レジスタンスもそこを利用していた。
上陸部隊は本部周辺まで侵攻し、激しい銃撃戦を繰り広げていた。
「ガンシップがいるとはいえ、相手もすごい人数だな」
「当たり前ですよ。ここを落とされたら相手も終わりなんですから」
グリムが最もなことをいう。
「おい、敵が後退したぞ!侵攻だ!」
誰かが叫ぶ。
「よし、突入だ!」
「まってください、なにか怪しくないですか?急に後退するなんて・・・」
「たしかに・・・どこかに緊急用の脱出口かなにかないか?」
「パナシナイスタジアムに続く地下道があります!」
「ここから近いな・・・そっちに回ってみよう」
移動を始め、少したった時だった。
ズドォーーーーーーーン!!!
爆音とともに基地が黒煙を吹いた。
「やはりブービートラップが・・・!?」
『ゴホッゴホッ!!おい、ファル!聞こえるか!?』
「ライフか!?よかった、生きてたのか!」
『ああ、やつら情報を守るために基地のメインコンピューターを吹き飛ばしやがった!!いま施設内で敵と交戦中!』
「おい!そいつら非常用脱出口のほうに集中してないか!?」
『そういわれれば・・・』
「くそっ!急ごう!」
上空をモスクワ軍のヘリが飛び去った。
「おいおい、ガンシップはなにやってんだ!?」
「モスクワの増援戦闘機部隊にやられました!現在イタリア軍の戦闘機と交戦中です!」
「まずいぞ、あいつらアルギュロスの回収に向かう気だ!」
「ん、まてよ、ここは脱出口の上だよな?ということは・・・」
「おい、上空の戦闘機部隊と連絡がつくか!?」
「はい、本部を通してつなぎます!」
『こちらはイタリアの飛行隊だ!!何の用だ!?』
「おい、今から指定する場所にミサイルやら特殊兵装やらをありったけぶち込め!!」
『おい、なに考えてやがる!?爆撃機の仕事だろ!?』
「爆撃機がいねえからいってんだよ!!」
『・・・わかった、何か考えがあるんだな?』
「ああ、この戦争の流れを変えるほどのな」
『わかった、やってみよう』
「正確にぶち込んでくれ!!」
手元にあるインテルに航空写真が映し出される。狙うは・・・・
「道路にぶち込め!!!」
次の瞬間、遮蔽物に隠れていながらも、体に響き渡るような衝撃破が飛んできた。
爆撃したポイントには・・・予想した通り、脱出口があった。
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「はあ、はあ、ここまでくれば・・・」
アルギュロスは脱出口をひたすら走っていた。
「ここを抜ければ回収ヘリが・・・!?」
アルギュロスが見たのは天井に開いた大穴。そしてそれ以上に驚いたことがあった。
「よお、遅かったじゃないか」
そこには一人の兵士...ファレイト少佐が立っていた。
「貴様、だれだ!?なぜここにいる!?」
「俺が誰か、そんなことはどうでもいい、戦争犯罪者のアルギュロス・ステファノスだな?」
「ひっ、やめろ!!殺すな!殺さないでくれ!!そうだ!情報だ!情報をリークしてやる!!この戦争の黒幕は・・・!」
ターーーーーーン!!と乾いた銃声が響く。
その銃弾はアルギュロスの脳天を貫いた。
「だれだ!?」
銃弾が飛んできたのは、自分の背中の方向から。
振り向いたときには、もうだれもいなかった。
「少佐!!大丈夫ですか!?」
上で監視していたグリムが問いかける。
「ああ、俺は大丈夫だが・・・・こいつがやられちまったよ・・・」
今の銃弾は流れ弾などではなく、アルギュロスを狙ったものだろう。
なぜ奇襲の形をとりながら、敵兵ではなく、アルギュロスを撃ったのか?
彼は不要になったのだろうか?
この戦争の謎を紐解く鍵が一つ潰えてしまった。
黒幕はなんなのか?それは予想以上に複雑に交差したこの世界のなかでは、その陰をつかむことすらできないのかもしれない・・・・
Truth of war file3…西暦2018年五月二十一日「三国同盟軍、ギリシャに侵攻。アルギュロス・ステファノス、暗殺。」
Truth of war 第三話 ~失われた鍵~