綺麗な薔薇には棘がある
皆様いらっしゃいませ。そして、はじめまして。
今回発表させていただくお話は他サイトで連載中なのですが、此方に出すのは、その連載の改訂前、以前強制非公開になってしまった原本とも言えるお話です。
他サイトで出した改訂版と話の流れは類似していますが、改訂前の方がきわどい描写が多い内容となりそうなので、そういう意味では既に別なお話のかも知れません。
何処かで原本の発表の場があればとずっと思っていたので、今回少しずつですが加筆修正をしつつ公開していきたいと思います。
更新などは不定期となりますので、お越しいただく方をお待たせしてしまうと思いますが、完結させることが目標でもありますので、お時間や気が向いた時など覗いていただけましたら幸いでございます。
読者様に楽しんでいただけるよう書いていきたいと思いますので宜しくお願いします。
手折られた花
初めての恋は高飛車なイメージを押しつけられ、演じ過ぎて失敗した。
二度目の恋は、我が儘になりすぎて失敗した。
三度目の正直、それなりに長続きした恋だったけれど、甘えすぎて自分が駄目になって失敗した。
四度目は、躯の関係でとても恋愛とは呼べないものだった。
五度目、私の言動が相手を駄目にしてしまった。
六度目ともなると、経験が邪魔をして珍しく片想い。
七度目、ただ一緒にいるだけで満たされる恋だったけれど、気持ちの方向が違うことに気づいてプラトニックのまま終了。
そして、今回、八度目は、予測不可能。
走馬灯の如くこれまでの恋愛を思い浮かべて、徳永千景は、それから、それから……と今考えなくてもいいことを必死に思い出そうとしていた。
現在、ナチュラルに焦り中。
恋愛の数は多い部類に入る。
つき合った数もそれなりにいるし、つき合っていない数を含めると正直数えきれない。
端から見れば恋愛偏差値高め、女子力高め、狙った獲物はわりと逃さない徳永千景、現在、思いもよらぬ刺客の登場に若干テンパり気味。
事の始まりは、久我真之──係長のちょっとした一言から。
定時を大幅に過ぎたオフィスには人がなく、千景と真之の二人だけとなっていた。
仕事はあと少しで片づく。
パソコンのキーを打つ音だけが延々響いていた。
普段、二十一時を過ぎた時間まで残業することはないのだが、取引先からの要望が変わったとなれば話は変わる。
変更自体は既に終わったのだが、もしものことを考えて急な要望にも応えられるよう資料を纏めているうちにこんな時間になってしまったというのがこれまでの流れなのだが……。
「コーヒーだけど、飲んだら?」
「ありがとうございます」
入力作業に邪魔にならない場所にカップを置いて、真之は千景の作業を背後から眺めながらコーヒーで喉を潤していた。
綺麗な薔薇には棘がある