私、と新潟

私には好きな人がいた。

私には、好きな人がいた。
4つ離れたその人は私の憧れでもあり、同時に兄のように慕っていた。

あの時は夏だった。
たくさんの友人達と一緒に新潟へ出掛けた。
その中にはその人もいた。
新潟に着いてすぐ、私と数人の友人は翡翠取りに海岸へ向かう。
私達以外の友人達は山に登るべく麓へ向かった。
私は海岸に出て、目を凝らして翡翠を探していたが皆同じ石にしか見えなかったのでそうそうに諦め目についた真っ赤な岩石を拾って持ち帰りながら、山登りにすれば良かったと少し後悔をしていた。
翡翠取りの時間も終わり、ヨットに乗った。
ただ、帆が右に行ったり左に行ったりするのを見て自分にぶつかってきたら恐いなと思っただけであった。
翌日、日の出を見るために皆で山の展望台まで登ろうということになった。
山道の途中でその人と偶然一緒になった。
どちらともなく私とその人は手を繋いでいてその手は展望台に登ってもなお、繋がれていた。
そこで見た日の出は太陽の光線が山々を照らしていた。

宿舎に着いた私はひとりベットの中にいて、朝の出来事を思い出し浸っていた。
胸があたたかくなるのと同時に兄のように慕っていたその人が私の中で変わるのが酷く気持ち悪いものに感じられた。
昼過ぎ、皆はウインクキラーを楽しんでいて、楽しそうだったので私も入れてもらった。
負けず嫌いの私はウインクというよりはまばたきをして勝ち続けていたが、それほど楽しくなかった。
夕方であった。
少数の友人同士がギクシャクし始めた。
友人同士でグループなるものが出来、対立していったのだ。
そのいざこざの中に私ととても仲の良い友人がいたので親切のつもりで彼女に「せっかく新潟に来たのだから止めようよ」と助言したが、彼女は顔を曇らせながら「自分は好きでグループに入ったのだから後には引けない」と言ったので私は何も言えなかった。
夜が更けても彼女達は対立したままであった。
事も大きくなり、このままでは良くないと考えた周りの友人達は彼女達の説得にかかった。
周りの変化に彼女達は戸惑いながらも適応していった。
それはお互いに理解しあえたと私は思いたい。
スケジュール通り、私達は新潟の美しい夜空をみるために外に出た。
空を見上げるとそこは満天の星空、宇宙だった。
私の隣にはその人がいて一緒の星空を眺めていた。
私が「流れ星!」と言うとその人は私を見ずに「君に振られたから見えなかったよ」と言った。

私、と新潟

私、と新潟

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-04-19

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