偽りのヒーロー

 今朝、学校に行ったら隣の席が空いていた。のみならずその卓上には、ひとひねりされたような花瓶が、湿っぽい花と一緒に置いてあった。
「えーみなさんおはようございます。実は昨晩クラスメートの亜木下サエさんが亡くなったということです。通夜は今日の5時からで告別式は明日の5時でー」
 この担任の挨拶で俺は隣の席の、いじめられっこが死んだと分かった。
 
亜木下サエはいつもいじめられていた。
「わきの下~おいわきの下見せてみろよ」
 と、その苗字でからかわれたり、ひどい時には机がぽつんと廊下に置かれてあったこともあった。亜木下の1人プリクラつきで。おそらく女子グループに撮らされたものであろうその表情は固まっており、大きな瞳や、健康的な唇がいやいやげに映っていた。
 俺は別に、そんなに亜木下が嫌いな訳ではなかった。ただ俺が木下というから、
「亜木下」
と呼ばれるとビクンと反応するだけだ。代わりにいつも亜木下がはあいと蚊のなく声で返事をしていた。
 そうしてされることはと言えば手紙のパシリ。要するにいじめっこ達が書いた手紙を、相手に届けに行かされるというものだ。届けられた奴はたいてい3年の男の先輩で、いつもにやにやしてその手紙を受け取っていた。たまに後輩の時もあった。それでも亜木下は気丈に笑って、その配達役を演じきっていた。
その亜木下はもういない。
(そういえばあいつにノート借りっぱなしだったな)
 亜木下のことで、病死か自殺かと教室がやんややんや騒がしい中で、俺は1人思い反した。数学のノートを、いつも授業で寝てばかりの俺がテスト前だからと頭を垂れて貸してもらっていたのだった。もちろんいじめられっこから借りた以上、返すつもりはなかった。1度あいつが
「木下君ノート…」
と小声で尋ねてきても、寝たふりをしてごまかしてしまっていた。今そのこぎれいなノートを見ながら、悪いことをしたな、と思っている。
 
その罪悪感がそうさせたのか、俺は亜木下の葬儀に参列していた。白い棺桶に入った、亜木下の顔をじっと見る。閉じきった瞼に小さな鼻、つんと上を向いた唇、美しい黒髪。亜木下の寝顔は安らかで、心臓発作という病名が信じられないくらいだった。わっと泣き伏しているのは亜木下の父母ばかりで、後ろの親族関係者はだるそうに席に座ってしゃべっていた。俺は席に座ってじっと「亜木下は結構美人だったんだな」と今さらながら思った。

 家に帰って部屋へこもり、スーツを脱ぐと俺は髪が気になった。俺は下に降り鏡台を眺めた。やっぱり。ワックスをつけて寝かせておいた髪が固まってくっついている。なんてこった。
 そうして俺が鏡を見ながらブラシで悪戦苦闘していると、
「こんばんはー」
という声が聞こえた。
「こんばんは!?」
 俺は鏡台の前から周囲を見渡す。誰もいない。でも確かに聞こえたのだ。
「こんばんはー」
「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああ」
 俺は悲鳴を上げた。鏡台の下からぬっと手が出て俺の膝を掴んでいる。ま白い女の手だ。
「ぎゃあああああああああああああああああ悪霊退散悪霊退散」
「どうしたの雅。気でもおかしくなったの」
 この奇声に下から母さんが飛んできた。母さんはその皺だらけの顔に、不審そうな眉をしてこちらを見てくる。俺はしばし呆然とした後、激しく首を振る他なかった。
「違うんだ母さん、ただちょっと疲れてたから幻覚を見て…そうそう幻覚…幻覚だよ幻覚…」
「そうお?それならいいんだけど…でもあんた今日クラスメートのお葬式に行ってきたんでしょう。もしかしたら何か憑いてきちゃったのかもよ」
 母さんのこの一言に、俺は真っ青になって答える。
「やめてくれよ母さん!俺そういう系は強くないんだ!」
 けけけと母さんは笑って部屋を出ていった。
1人残された俺は、鏡台の下を何度も確認して、訝しげに首をひねった。

 その夜―。
 暗い部屋の温いベッドでうとうとしていると、どこからか声が聞こえてきた。
「こんばんはー」
「こんばんはー」
(さっきのと同じ声だ!)
 俺は思わず身を縮こまらせて戦慄した。そしてその声の人物まで分かってしまった。亜木下だ。亜木下が俺を呼んでいるんだ。絶対目を開けちゃいけない。口も開いてもいけない。目を開けば長い髪を腰まで垂らした亜木下が、にっと笑ってこっちを見てるに決まってる。
そう考えて俺は、執拗に続く
「こんばんはー」
を無視し続けた。

それは朝まで続いた。
 朝になり、俺はさわやかな気分で起床することが出来た。朝になればもうあの声も怖くない。土曜だからと気が緩み、気が付けばもう昼の12時になっていた。
 俺は再び鏡台に腰掛け、髪を軽くとかそうとした。その時であった。
 ぐいっ!
 と鏡台の下から引っ張られる感覚がした。
「ひいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい」
 俺はまた凄まじい悲鳴を上げる。掴んでいるのはまた真っ白な女の手だ。
「こんにちはー」
 そうしてまた声をかけてくるのは間違いない、亜木下の声である。
「うわああああああああああ亜木下頼む成仏してくれ悪霊退散悪霊退散」
「うふふふふふふ。そんなもん効かないですよ」
 ぬぬぬと鏡台の下から這い出てきたのは、白いワンピースを纏ったまぎれもない亜木下だった。
「うわああああああ…やっぱり亜木下か…!!お前どうして俺にまとわりつくんだちくしょう!悪霊退散悪霊退散!」
「こんにちは木下君。昨晩は怖がらせちゃったみたいでごめんなさい。実は木下君にお願いがあってここに来ました」
 亜木下はそう言って愛らしく笑う。
 と、そこでガチャリとドアの開く音がした。
「雅君どうしたの?また何かあったの?」
 覗いてきた母は昼だというのに顔パックをかけていた。母さんは部屋を見回してあははと笑う。
「あら雅君すごい寝癖よー鏡見て直しなさいね。あははすっごいカールあははは」
 哄笑だけを残して母さんは行ってしまった。ここにいるもう1人に気付かないのだろうか。
もう1人はにこにこしながら言った。
「あーどうも私人に見えないみたいなんですよねーあ、その、木下君以外には」
その口調はいつも申し訳なさそうな、亜木下そのものだった。すると俺の緊張も解けてずばずばと物を言う気になった。
「な、なんだお前!死んだくせにお願いだなんて!迷惑だから早く成仏してくれよ!!!!」
「それがそうもいかないんです…」
「はあ?」
 うつむく亜木下の顔は悲しげだった。
「前世でやり残したことがあると、成仏したくてもなかなかできないんです。どうか木下君。木下つながりで私を救ってくれませんか?」
「木下つながりでなんかいやじゃー!俺は山下に名前を変えたいよちくしょー!」
 俺はひとしきり頭を抱えてから、
「で、お願いって何だ?」
と不安げに彼女を見た。亜木下は笑っている。
「何てことはないんです。ただ私と、人工の星空を見に行って欲しいんです」
「人工の星空?それってプラネタリウムのことか?」
「はい。それが見えたら成仏しますから」
 俺はしばらく考えてから、上目使いで頼む亜木下に負けて目を伏せた。

 人工の星空―。俺は亜木下にパソコンの検索結果を見せ、どこの施設がいいのか尋ねた。亜木下は
「あ!ここがいいです!」
とすぐさま反応を示した。そこは神奈川県にある、小さな展望台だった。小山の上に立っていて、晴れた日にははるか遠くの星雲が見えるという。
「ここにしましょう!ね、ここにしましょう!」
「はいはいわかったよ。ここなら電車で近いし、明日あたり連れてってやるよ」
 と、俺が頭を掻いていると、亜木下はまた悲しげに訥々と呟いた。
「…私、時間がないんです。告別式で身体が焼かれると、こうして出ることもできなくなるんです」
「ってそれ今日じゃねえかよ!しかも確か5時とかだったぜえ!?何でお前早く言わねえんだよ!!」
「それに…」
 ガチャーン
 その時、俺の部屋の窓がけたたましく割れた。俺はおそるおそるその方角を見る。
「…私、追われているんです。きちんと成仏出来ていないから。死神レンジャーに」
 出てきたのは黒衣に身を纏った美しい女3人組だった。だが手元にはよく尖った鎌がつるりと光っていて、とてもおしゃべりなんか出来ない雰囲気だった。レンジャーの中心にいた、長髪の女が指をさして言う。
「木下雅也君。その子を私達死神レンジャーに渡しなさい。その子はもう死んだ身。仏になるべき身なのですよ」
 右はじにいた女も左はじにいた女もそうだそうだと続ける。
「もし彼女を渡さないのなら、あなたの身の安全の保障はしませんよ!
 鋭く言う女達の強硬な姿勢に、
俺は言葉を切りながら
「絶!対!いやだ!」
と言ってやった。
「行くぞ亜木下!」
「待ちなさい!」
 俺は素早く亜木下の手を引いて部屋を脱し、階段を下った。そうして部屋に財布を忘れたことを思い出し
「ちくしょう!」
と叫んだ。
「木下君!ママチャリがあります!乗れますか!?」
「そりゃ乗れるけどよ…でも恥ずかしいっていうか何ていうか…」
「どうせ後ろの私は見えませんよ!」
「待てー!!!」
「うえっ!?」
 見れば後ろの玄関ドアから、ふわふわ浮いて鎌を持った女達が迫ってくる。
「うわああああああああああああああ行くぞ亜木下!!」
「はい!」
 俺は亜木下を後ろに乗せ勢いよくチャリンコを漕ぎ出した。後ろからの体温はない。けれど腰に何かが回っている感覚が、確かにある。
(ああ、亜木下がいるんだ)
とふと泣きそうになってしまった。
 大体俺は何でこんなことをしているんだろう。亜木下に何かした覚えもないのに。
「…あっ」
 俺は小さく声を上げた。ノートだ。俺が数学のノートを、こいつからぶんどったから多分こんなことになったのだ。
「なあ亜木下」
 チャリンコを全力で漕ぎながら俺は問うた。
「お前が俺のところに来たのって、ひょっとしてノートを返してないからか?」
「ノート?」
 亜木下はしばらく考えてから、
「ああいいんですよ別に!」
と淡い笑みを浮かべた。
「いいんですよあんなもの。むしろあんなへたくそな文字で綴られたノートで、木下君のお役に立ったかどうか…」
「立ったぜ」
 俺は堂々と言う。
「お前のノートのおかげで俺は赤点を待逃れることが出来たよ」
「ちなみに何点だったんです?」
「…35点だ」
「ぎりぎりじゃないですか」
亜木下はくすくす笑う。と、町の中の坂道を行く途中突然、道の脇から死神レンジャーが現れた。相手は鎌をかざしている。
「木下君!伏せて!」
ばっ
 身を低めたおかげでレンジャーの鎌はぎりぎり届かなかった。
「あの鎌で一薙ぎされるともうダメです。どんな人間も無理やり成仏させられるんです」
 この亜木下の言葉に、俺はふと違和感を覚えた。
「おい。どんな人間も成仏、って言ったな。ってことはもしかして俺も成仏させられるのか?」
 亜木下は言いよどんでいる。
「まことに残念…ですが…」
「てめー!!そう言うことは早く言えー!!!」
 俺の怒号は、チャリに乗った1人の男が勝手にわめき散らした風に見えたらしく、周囲の人目を集めてしまった。
「ちくしょー亜木下。お前やっぱりノートのこと恨んでんじゃねえかよ」
「そんなことないですったら!さ、次の角を曲がれば展望台まで一本道ですよ!」
 亜木下の声は弾み、俺はしおしおと落ち込んでいた。

 展望台へ行くには山を越えねばならない。
俺はチャリンコを降り、それを引きながら山道をいく。亜木下は楽しそうに、
「あ、蝶々!」
だの
「ああ!秋バラがあんなに咲いて!ねえ見ていきましょうよ!」
と騒ぐ。
 俺はいらいらしてきつい口調で言う。
「お前今の状況分かってんのかあ!今俺達は追われてておまけにお前は後2時間で焼かれちまうんだぞ!おまけに俺の命も危ないって言うし!こうなったらとっととプラネタリウムを見てお前に成仏してもらう他ねえんだよ!」
 この剣幕に、さすがに亜木下もしょんぼりして、
「でも…秋バラが最後に見たかったんですもん…」
としょげかえった。垂れた長い黒髪で表情はうかがえないが、俺はそれが不憫に思えてきて、
「わかったよ。ただ、ちょっとだけだぞ?」
と思わず声をかけてしまった。

 生島バラ園と生島展望台は同じ山にある。
生島バラ園を抜け、さらに山頂まで登って行けば展望台に出る。
 バラ園に着いた亜木下のはしゃぎようはなかった。
「うわーピンクフレンチレース!!!!!!        !うわあブランディにイブピアッチェも!美しーい!!」
「…お前バラ詳しいんだな」
 目の前に咲く赤白茶色の花々を見ながら、俺は目を見張る。亜木下は自慢げににっと歯を見せた。
「私、学校ではいじめられていたけどこれでもバラ博士、バラ界の神童って小学校では言われてたんですからね」
 俺は思わず笑った。
「俺も神童と呼ばれてたよ」
「何でですか?」
 亜木下は目を丸くする。
「砂遊びの天才、砂遊びの神の子だって」
 あははははとバラ園で声を立てた。途端に周囲から「何あの人1人で笑ってるわ」との寒い視線を投げつけられて辟易する。

「にしても、何でお前死んじまったんだろうな」
 バラ園を見終え、山を再び登る際に俺はぼやいた。後ろには申し訳程度にチャリに手をあてがう、亜木下の姿があった。
 亜木下はこの問いににっこりして言い放った。
「仕方ないんです。寿命って、神様がくれたものだから、人間にはどうしようもないものなんです。きっと」
「そうなのか?」
 俺はわずかに眉をひそませ暗い顔をした。
俺にとってはただの、隣の席で名前が似ている、いつも嬲られているいじめっこだった亜木下。それがもしこんなに本当は明るくて、面白い奴でバラが好きで、星が好きだと知っていたらどうだったろう。
 俺はもっと、亜木下と違う関係になれたんじゃなかったのか。
 俺はふと思い立った答えにぶんぶんと首を振り、展望台への山道を急いだ。

生島展望台。そこには巨大な展望鏡があり、周囲は鬱蒼とした森に囲まれている。
もう日も暮れなずんで、道もぼんやりしてきたが、階段にはライトが点りほのかに道筋を教えてくれる。
「高校生1枚で」
 よほど俺は怖い顔をしていたのだろうか。受付のお姉さんはかたかたと震えていた。展望室に向かいながらそれを亜木下はくすくすとからかう。
「木下君って、整った顔立ちしているけど、ちょっと眼光鋭い!って感じですもんね。だからきっとびっくりされたんだわ」
「うるせーなー。もしかしたら後ろにいるお前が見えちゃっておびえてたのかもしれないだろ!」
「ふふ。絶対木下君のせいだよ。私も初めて会った時ドキドキしたもん」
「ドキドキ?何でだ?」
 その言葉に、プラネタリウムの入り口に入った俺は疑問を呈す。亜木下は笑んだまま何も言わなかった。
 プラネタリウムに1歩入ると、真っ暗なドーム状の空の中に星が燦然と輝いている。まるでダイヤを溢れんばかりにこぼしたようだ。
「わあ…」
「綺麗だな…」
 俺は幽霊を連れてきたことも忘れて、ぼうとその夜空に見入った。亜木下もその綺麗な瞳で空を見上げている。
「…ありがとう木下君。ここに連れてきてくれて…」
 亜木下がそう言うのに俺は照れて
「何言ってんだよ勝手に頼み込んだくせに。さ、ほら始まるぞ」
と、わざと冷たい声音で言った。

「この時期、おうし座が夜空に燦々と輝き―」
 始まったプラネタリウムを見ながら、亜木下の手は俺の手を優しくかすめていた。もう握れない。握ってもそこにか細い感覚があるだけだ。
 俺はふと、尋ねてみたくなった。
「なあ亜木下。お前、何で俺んとこ来たんだ?」
 亜木下はうつむいている。やがて小さく口を開いた。
「うん…それはね…」
 その時ふいに、亜木下の手が俺の手を握ったように思った。
「内緒だよ木下君。内緒…」
 それから俺は亜木下の方を見なかった。多分、泣いているのだと思ったからだ。その彼女が唐突に口を開いた。
「ねえ木下君。覚えてる?私がいじめられてる時、1度助けてくれたの」
「ああ?そんなのあったっけ?」
 俺は本気で分からなかったが、亜木下はふるふると首を振る。
「ううん、本当にあったのよ。あの日から木下君は、私のヒーローになったの」
 俺は黙って過去を振り返り、亜木下を救った記憶を探した。そして一つだけ、見つけた。あの日、いつものように教室でわらわら囲まれ、亜木下を罵倒していた一群に、俺は「うるせえよ」と言ったのだ。それは別にかばうつもりでも何でもなく、ただ女どもが群れて騒いでいるのがうるさかった、ただそれだけのことだった。それなのにこいつは、そんな記憶までしっかり覚えていて、今も少し涙ぐんでいる。
「思い出してくれた?私、あの時本当に嬉しかったの。私、いつもいじめられてて、先生にまで見ぬふりされて、本当につらかった。誰にでも無視をされて、本当は私なんかいないんじゃないか、幽霊なんじゃないかって、そう思ってたくらいなの。それを木下君はちゃんと私を見つけてくれた。本当に本当に、嬉しかったのよ。もう一生涯忘れない、ってくらい」
「ああ?お前馬鹿か一生…」
 そう言おうとして、俺は黙った。こいつの一生は、もう終わってしまったんだ。すぐ隣にいて、忘れた教科書をさりげなく見せてくれたり、ノートを拝借しても笑んでいるだけだったこいつはもう、いないんだ。

「お別れの時間ですかねうひひ」
 プラネタリウムを出ると、すぐに3匹の死神が俺達に吸いよってきた。
「木下君」
 そこで、亜木下は言う。
「来世で逢えたら、私と友達になってくれる?」
 そのセリフに、なぜか俺は泣きそうになってうなづいた。
「ああ、なってやるよ」
 腕を取られ、宙に上がっていく亜木下は嬉しそうだった。
「ありがとう」
 亜木下は消える直前にそう言い残した。

 俺はそれから家に戻り、亜木下に返し忘れたノートを丹念に見直した。よく見ればいたるところに落書きがしてある。ノートのすみっこで、寝ている俺眠そうな俺、起きている俺のだるそうな横顔―。
 俺はこいつからノートを奪ったんだと思うと、声を上げて泣きそうになった。亜木下はもういない。でもまた、どこかで必ず会えるんだ。そうしたら俺達は笑い合って友達になろう。今度は堅い握手をして。

偽りのヒーロー

偽りのヒーロー

  • 小説
  • 短編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-03-07

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted