きっかけ

きっかけ

校則破りだからって、不良じゃない。

本を読むのは好きなのに、どうしてだろう国語の授業は非常に退屈だ。教室の引戸が開いて
「やぁ諸君、文学の時間へようこそ」我らが1ーAの担任カンちゃんこと、吉田寛一郎が声を張り上げた。Tシャツの上に「I love文学」の印刷が入った黒い羽織を着て、ちょび髭を生やしている。「夏目漱石が好きな自称大正マニア!」と入学式の挨拶で語ってたっけな。惜しいのは、編み上げブーツまで履いといて、袴じゃないってこと。その昔、一度だけ袴姿で出勤したらしい。車から降りたところで守衛さんに捕獲されたんだってさ。そりゃそーだ、学校はコスプレの場じゃないんだから。
中原中也 作「サーカス」バシンッと黒板を叩き
「諸君、今日は詩の表現を共に学んでいこうではないか」カンちゃんは嬉々として朗読に入った。
「ゆあぁ~ん ゆよぉ~ん ゆやゆよぉん」ついに頭までおかしくなったか!危うく噴き出しそうになった俺は、ゲッラゲラ笑いたいのを堪え、身体をブルブルと震わせる。一通り朗読を終えたカンちゃんは、詩を黒板に書き写し、ピンクや黄色のチョークで線を引きながら、意味を解説し始めた。さっきのあれは、どうやらブランコの揺れる擬音語だったらしい。頭のネジが吹っ飛んでなくてなによりだ。
「せっかくだから、諸君にも詩を書いてもらおうと思ってな」酷い!鬼!悪魔!手裏剣のようにとんでくる悪態をかわしながら、カンちゃんは紙を配る。
「提出してもらった中から、出来の良い作品を来週の授業で読み上げようと思う」冗談じゃねぇ!俺は創作ってもんが一番苦手なんだよ。バカヤロー!
「別に詩に限らなくてもいい。要は表現だ。ハッハッハッ!思う存分悩んでくれたまえ。期待しているぞ、諸君」心の叫びが通じるはずもなく、授業終了の合図とともに
「さらば!」奴は羽織を翻して逃げていった。

何十回目の呼び出しだろう。職員室のパイプ椅子はアタシの自由を拘束する。
「何度言ったらわかるんだ!」生活指導の田中は口角泡をペッぺと吐き散らす。説教する前に、アンタこそエチケットってもんを学んだらどーよ?脂ぎった顔からは獣臭がするし、もうたまんないね。消臭剤でもかけてやれば、少しはマシになるかなー。なんて考えていたら、毛むくじゃらの太い指に髪を引っ掴まれた。やめてよ痛いんだから。お望みならPTAに訴えてやるわ。
「制服を着ろと言っとるだろう!」ほっといてよ。あんなヒラヒラで頼りないもの、絶対にはくもんか。視線をナイフに変えられるなら、田中の顔をズタズタに切り刻んでやりたい。
「この髪の色はなんだ?」
「地毛です」すまして答えると、田中は額に青筋を浮かべた。
「青い地毛があるかッ このクソガキ!」わかってるなら訊かないでよ、しつこいわね。職員室のドアが開いて、女子生徒数人が、こっちを見るなり顔を寄せあった。
「ヤクザの娘だって」
「この間、ヤンキーとたむろしてるの見ちゃった。超こわ~い」
「キャバ嬢やってるって噂もあるよ。ヤバくないあの女」ひそひそ話に見せかけて、聞こえよがしなあの態度。よくもまぁ、ペラペラとでたらめばっかり出てくるもんだ。アタシがヤクザの娘だって言うなら、あんた達のその口、二度と開かないように鉄線でギッチギチに縫ってあげようじゃないの。長い長い拘束の末にやっと解放されたアタシは、購買で缶コーヒーをぐいぐい飲む。床に叩きつけた空き缶を、足でぺっちゃんこに踏み潰したぐらいじゃたらなくて、ゴミ箱にクリーンヒットするアタシの怒り。衝撃でグラグラしているそれを無視して図書館に向かった。
放課後の図書館。それは、学校生活で言葉の暴力を浴びせられているアタシが、唯一気持ちを解くことができるお気に入りの場所。クサクサした気分で廊下を走り抜け、さびついたドアノブをひねった。埃っぽい匂いと、独特の黴臭さがアタシの傷だらけになった心の鎮痛剤。「よぉ」と声がして、学習机の方を見ると、同じクラスの杉原が座っていた。
「アタシね、帰国子女なの」気軽に声をかけられたから、考えるよりも先に口走っていた。
「知ってるよ。入学式の時、自己紹介で聞いた」
「アメリカの学校ではね、服も髪も、メイクも自由だったの!」
「うん。それで?」アタシの言葉を静かに受けとめて、真っ直ぐ見つめ返してくれる黒フレームの奥。
「髪の色も青が好きだから。ジャージだって制服のスカートが嫌いだから。ただ正直なだけよ?それだけの理由なのに、どうして……」不良だなんて言われなきゃいけないの?と続けようとしてのみこんだ。結局は見てくれで判断されることを、入学式以来散々思い知らされてきたから。それに、アタシだってレッテルを盾に、他人と向き合うことから逃げてきたんだもの。しょうがないじゃない。でもやっぱり悔しいのッ……。葛藤しているアタシに杉原が言った。
「俺は、藤沢の青い髪好きだよ。それに、一人だけジャージって変わってるなぁって思ったけど、それだって個性だろ。いいんじゃねぇの、それで」それはアタシの中にストンと落ちてきて、胸のあたりにすっぽりとおさまった。何、今の。認めてもらえたってこと?入学以来、アタシがずっとずっと求め続けてきて、手に入れることが叶わなかったもの。なのにこの人は、たった一瞬のうちにアタシの望みを汲みとって、投げ返してくれた。それなのに、心の中の天の邪鬼が顔を出す。
「個性だなんて誰も……。皆アタシのこと不良だって言うわ。杉原はアタシのこと、そう思ったことないの?一度くらいあるでしょ」わざと優しさをひっくり返すようなことをして、酷いなって思う。醜いことしてるなって、わかってる。でも、ずっと否定され続けてきたんだよ。傷つけられてきたの。だから逆に、欲しかった言葉がこんなにあっさりと手に入ったことが、少し怖くもあって。だから、どんなに愚かでも、杉原の気持ちを試してみたくなったんだ。でも、そういうズルさって自分に跳ね返ってくるものなんだね。何も言わない杉原の沈黙に
「ほらね、答えられないじゃない。そう思ったことあるんでしょ?」動揺して責めてしまう。なんてみっともないんだろう。
「俺は変わってるって、思ってただけ。でも人と違うからって不良には結びつかないだろ」気持ちがぐちゃぐちゃに絡まってるアタシと違って、杉原は羨ましいくらい真っ直ぐだ。
「そもそもな、藤沢とこんなふうにしゃべったの、俺初めてだし。藤沢のこと、ほとんど知らねぇんだよ。なのにどうしたら不良って決めつけられるわけ?そんなの知ったかぶりだろ。俺、そんなに器用じゃねぇし」黒フレームの奥で少しもブレない瞳。そこから目を逸らしたアタシ。これじゃ、完璧な八つ当たりだ。
「それに俺は、大切な個性を偏見で塗りつぶすほど、バカじゃねぇからな」そうしてカラリと笑う杉原。白い歯が眩しくて、つられてしまう。『ごめんね。それと、ありがとう』素直に口にできないから、胸の中で静かに呟いた。薄暗い図書室の中でも、受付は一番日当たりがいい。今は司書の先生もいないし。アタシは受付の椅子に座ると、鞄から四隅に四葉が描かれた、小さなメモ帳とボールペンをとりだす。今日はなんて書こうかな。国語の宿題をやりにきたという杉原は、飽きたのか何やら本を読んでいる。そうだ!『今日のアタシの心 曇りのち晴れ』友達のいないアタシのささやかな暇つぷし。それを、そっと本の間に挟みこんで、また棚に戻すの。
「藤沢はさー、放課後いつもここにくるの?」唐突な杉原の問いに、心臓が大きくジャンプした。
「う、うん。まぁね」
「じゃあさ、これ知ってる?」手招きしながら、杉原はブレザーの内ポケットに手を突っ込む。一体なんだろう?見慣れた生徒手帳の中から出てきた五枚の紙切れ。覗きこんでアタシは息をのんだ。
「時々本の中に挟まっててさ。俺集めてるんだよね。今日も一枚見つけたから、やるよ」ねぇ、アタシその悪戯知ってるよ。とても寂しがりやで、なのに素直になれない不器用な誰かの気持ち。ねぇ、教えてあげようか……。
「藤沢?」アタシを呼んで、フッと笑う杉原。そうね、やっぱり秘密。知りたければ、気づいて。

さぁ、ついにこの日が来たぞ。国語の教科書に挟んでおいた宿題を引っ張り出して、俺は紙の右下に「匿名希望」と書き足した。さぁ来い大正マニア!いつでもきやがれ。こっちは準備万端だぜ!俺の叫びに呼応して、五時限目のチャイムが鳴り、きっかりその十秒後に奴は姿を現した。
「諸君!課題はやってきたかね?」教壇に立つなり、カンちゃんはクルッとターンを決めて、ビシッと宙を指差す。いらねぇよ、そんなポーズ。
「へい!かもぉ~ん。ほぉ~むうわぁ~く。えびばでぃ!」(さぁ諸君。課題を提出してくれたまえ)その格好で言うなッ 気持ちわりぃ!丸めた紙を投げつけてやりたい。数秒の沈黙が落ちて後、教室中に失笑の波紋が広がった。
ところで、「匿名」と書いたのには訳がある。俺は至極真っ当に、宿題をやり遂げようとしたんだ。だから、その日のうちに終わらせるべく、放課後図書館に直行した。偉いだろ?司書の先生も不在で、利用者もゼロだった。静かな室内に俺一人。超恵まれた環境にガッツポーズして、早速シャープを構えた。だのに、五分経っても十五分経っても、書けねぇ。一行も、いや一文字も浮かんで来なくて焦った。そんでその後……俺は斜め前に座る藤沢の横顔を見る。いやいや、なんでもない。で、その状況に若干苛々しながらも、しばらく学習机にかじりついて、書きたいけど書けないというジレンマと闘い続けたんだ。どうだこの忍耐強さ!それで詩はできたのかって?そんなわけねぇだろ。結局真っ白いまま。俺はついに宿題を放棄して、適当に選んだ本を読み始めた。そしたら見つけちゃったんだよ、小さなメモに書かれたメッセージを。テーブルにへばりついておいて、宿題の紙が白紙のままっていうのも情けねぇだろ。だから、悪いと思いつつメモの内容を、そっくりそのまま写しちまった。つまり、盗作。やましい気持ちから、堂々と名前が書けるはずもなく、よって「匿名」ってなわけだ。
「えー、それでは発表しよう。諸君、心の準備はいいかね?」ちょび髭を撫でつけながら、カンちゃんはなめるように俺達の顔を見る。ちょっと待て待て、ちょっと待て!まずい緊張してきた。後ろめたい気持ちが俺の心で暴れてる。どうしよう、どうしよう。読まれたらどうしよう?なんか嫌な予感。
「匿名希望、作」ガーン最悪。
「しましまロード メロンはOKいちごはNO 肩車の上子どもが言う いちごがメロンになったよOK 肩車の君が笑った」斜め前に座る藤沢の青い髪が揺れて、微かに俺の方を見たような気がした。
「誰の作品かわからないから、皆に問う。この詩の解釈がわかる者、いたら挙手したまえ」まさかそこまで訊かれるとは想定外で、俺は内心ドキドキしていた。「匿名」なんだから、名指しされてるわけじゃないのに、やましさと緊張で身体が縮こまる。と、その時
「信号機だと思います」カタンと椅子をひいて、凛とした声が室内に響いた。藤沢?視界で艶やかな青が踊る。トクンと一際甲高い音をたてる鼓動。
「しましまロードっていうのは、横断歩道のことじゃないですか?」好奇の視線にさらされる中、藤沢は「多分」と付け足した。もしかして……?
「いちごは信号の赤で、メロンは青。多分」言い切ってから、尾ひれのようにくっつく二文字。もしもそうなら、なんて偶然だろう。
「だから、いちごがメロンに変身してOKというのは、信号が青になったから渡ってもいいよという意味じゃないでしょうか」やっぱり一拍おいてくっつく「多分」なぁ、あの図書館の悪戯は?俺が書き写したメッセージの作者は……居心地悪そうに表情を固くして、席についた君。
「ふむ。見事な解釈だった。して、この『匿名希望』というのは?」
「私じゃありません。今のは私なりの推測で、この作品は私のものではありません」迷わずきっぱりと言った君。でも本当は藤沢、君なんだろう。多分。

チャイムが鳴って、教室が小波のようにざわつきだした。『時々、本の中に挟まっててさ。俺集めてるんだよね。今日も一枚見つけたから、やるよ』アタシは四隅に四葉がある、小さなメモの裏に「ありがとう」と書いて、斜め後ろの杉原の机に置いた。だけど、意味なんてわかるわけないわよね。ほら、眉をよせて首を傾げてる。そうして何か問いたげに、アタシの表情を窺ってるの。教えてあげてもいいけど、どこか二人きりになれるとこ行かない?アタシはニッと口端を吊り上げて、教室をとびだした。続けてガタンッと椅子の悲鳴。ほらきた!さぁ、どこに行こうか。超高速で廊下を駆け抜けながら考える。掲示板のプリントが風ではためいた。お気に入りの図書館にしようか。でも、今の気持ちもっと開放的な場所を求めてる。そうだ!アタシは急カーブをきって、突き当たりの階段を上り始めた。ダラダラとおしゃべりしている女子が両脇によけて、どんどん上を目指すの。三階にさしかかったあたりで、息が切れはじめた。手摺を掴みながらちょっと後ろを振り返れば、ワックスでツンツンに逆立てた頭。少しずれた黒フレームの奥から、アタシを捕らえようとする強い瞳。でもまだ捕まってやらないわ!肩で大きく息をしながら、前かがみになって、重たくなった足を引っ張り上げた。あともうちょっと。熱を帯びた指先に、鉄製のドアノブがひんやり。力いっぱい扉を開けると、上空に広がるパステルブルー。しみるような世界に目を瞬いていたら
「おい、藤沢ッ」と肩に触れた杉原の手。その手から逃れるように、体をひねったアタシの足下よろめいて。いっそこのまま……重力に身を任せて、屋上のコンクリートをゴロゴロと転がった。あまりの爽快感に、アタシはコーラの泡が弾けるように笑う。
フェンスから校庭を眺めると、ポプラの葉っぱがカラフルな衣替えを始めていて。隣でメモのしわを伸ばしていた杉原が
「この、『ありがとう』ってどういう意味?」と訊いた。何から話せばいいのかな?毛先を指に巻きつけながら、言葉を探す。
「アタシね、いつも一人だから。友達と騒いでる皆が羨ましくてしょうがないの。それで、そういうの見てると無性に腹立たしくなって、悲しくなって。たった一人、地球に取り残されたような感覚に陥るの。そんな時、ワンワン泣きたくなる。人目を憚らずに、赤ちゃんみたいに泣けたらなぁって、本気で悔しくなるの」宙を睨んで、唇をかんだ。
「でもね、泣いたら悪口を言う奴らに負けるみたいで、それも嫌なんだよね。ワーッと爆発したいのに、したくない」矛盾だらけの言い訳を、嘲るように笑った。
「我慢しすぎなんだよ。程々にしねぇと、心が折れちまうぞ」軽く流してくれればいいのに、どうしてこの人は、こんなにちゃんと向き合ってくれるんだろう。
「大丈夫。だってアタシには、図書館っていう逃げ場所があるから。だから……」おどけて「平気」と言おうとしたのに、喉の奥で言葉がキュウッと締めつけられた。
「本当に?」杉原はアタシの心の裏を透かし見るような、真剣な目をしていて。代わりに涙が少しだけ滲む。
「大丈夫じゃないよ。本当は辛くて苦しいの。どこまでも、どこまでも暗くて、浮かんでこれないくらい気持ちが沈んじゃうと、もうどうしようもなくて……本当はこんなの嫌!こんな自分が嫌!」
杉原は黙ったまま、アタシの背中を叩いてくれた。そのリズムが大丈夫って言ってるみたいで、きっとどんな慰めの言葉よりも優しい。重苦しいため息が細かくふるえて、校庭に積もっていく。吐き出した分だけ、空気を吸い込んだら、糸みたいに細い金木犀の香りがした。見上げたブルーのキャンパスでは白い小魚の群れが泳いでいる。胸のざわめきがちょっとずつ和らいでいくのを感じた。アタシは杉原の手からメモをとりあげて、慈しむように撫でる。
「これはね、アタシの暗い孤独から生まれた分身」瞼の裏に浮かぶ、生徒手帳の中。
「杉原はアタシが落とした分身達を拾い集めて、大切に持っててくれたでしょ」
「いや、俺は別に。興味があっただけで、そんな大袈裟にとられても」照れたように首筋を掻いている杉原が、なんだか急にいとおしくなってきて、くすぐったい。
「理由なんてどうでもいい。杉原の手帳に、アタシの欠片が挟まってた。それを見た時、胸がほんわか温かくなって、すごく嬉しかったの」だからね、メモの裏に書いた『ありがとう』の気持ち受けとってよ。アタシは杉原の手のひらに、押しつけるように握らせた。
「これからも、ずっと大切に持ってて。そうしてくれたら、アタシそれだけできっと幸せだから」風がポプラの葉を揺らして、アタシの髪を梳いてゆく。六時限目の鐘が鳴り、音の尻尾を掴んだ風が、遠くに走っていった。このまま教室に戻ったら、この距離は少し遠くなるね。ただのクラスメート。それ以上でもないし、以下でもない。「普通」今この距離は嘘でもいい。「友達」みたいだったって信じてもいいかな?開けっ放しになったままの扉。そのひんやりとしたノブを掴んだ時、「藤沢」低くて、少し急いたような杉原の声が背中にぶつかって、心臓がドキンと揺れる。
「俺は欲張りだからさ、『気持ち』だけじゃ満足できねぇんだよな」振り向いたアタシに杉原はメモをヒラヒラとさせて続けた。
「気持ちってぇのは、実体の中にあるもんだろ。俺は全部丸ごと手に入れたいんだよ。なのに、これだけ押しつけて、藤沢が離れていっちまったら意味ねぇじゃん」だから戻ってこいよ。と言わんばかりに手招きする。改めて杉原と向かい合ったアタシの胸、鼓動がうるさいほど鳴いている。ねぇ、教えて。ただのクラスメートから距離を縮めたい時、どうすればいいの?何て言えばいいの?慣れないシチュエーションに、戸惑っているアタシの手をとって「捕獲成功」と笑う杉原。そうして、なんでもないことのようにサラリと口にした。
「友達初記念ってことで、一緒に授業サボろうぜ」寝転がった杉原に引っ張られて、一緒に倒れこむ。柔らかい青の中で泳ぐ小魚の群れは、どんどん遠くにいってしまったけれど、もう大丈夫。居心地のいい場所を見つけることができたから。アタシは温もりを確かめる子どもみたいに、杉原の手を何度も何度も握り返した。

きっかけ

私自身がとても不器用な人間なので、人間関係に悩み傷つき、情けない。そんな自分だからこそ、自分じゃなくなりたい。変わりたい。とあがく、女子高生を描いてみたくなりました。

今の世の中、辛いという気持ちに学生も社会人も、世代もありません。拙い文章ではありますが、この物語の中で胸の痛みを和らげる、飴玉みたいな癒しに出逢っていただけたら嬉しいです。

きっかけ

  • 小説
  • 短編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-04-18

Copyrighted
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