近未来小説「 Neo Border - The near future -」
The near future <ワインとシャイニングキャンディー>011
時を少し戻し"Ragnarok Crisis・ラグナロククライシス(ネットパニック)"の1年前。
Markは今や名誉だけをもらったメンバーの一人でしかありません。
身ぐるみはがされた状態、と言えば悲壮感につつまれますが、
本人はあっさりしたもので、
一つの目的をひとまず達成し、最高責任者の重圧から解放されたことで、
自由に世界を飛び回れる事に感謝すらしていました。
彼や、親友のJohn、Williamたちには新たに成すべき事が生まれていたのです。
このころ世界では、早くから予想されていた人工知能の危険性が、ローレベルな人工知能の暴走へとつながり、 情報化社会の脅威となりつつありました。
また、
”闇の妖精・Dark Fairy”の情報インフラの弊害が人類を脅かしています。
そして "GVR Revolution(GVR革命)" の数か月後に発生した地球規模の災害 ”地球の悲鳴” が、 それら憂慮すべき事由と重なって世界は混沌とし始めていたのです。
彼らは今、それらの解決策を求め、人類の正しき未来を探るために、様々なフィールドやエリアを飛び回っています。
そしてMarkは現在ヨーロッパを放浪中で、今はここスイスに。
季節はワインシーズンです。
"地球の悲鳴"による異常気象があちらこちらで起こり農作物などにも多くの被害が出ていましたが、人々は積み重ねてきた歴史を今年も守っています。
あちこちのワインフェスティバルを訪ねては大好きなワインを飲み、人々と語り合っていましたが、 フェスティバルも終盤に入った9月の終わりに不思議な少女と出会うことになりました。
その夜、いつものように知人や、街の人、旅行者たち、 この地域に住んでいる各フィールドの識者とお祭り騒ぎの中、横に座ってきた隣街に住むという成年が、 もっと旅の話が聞きたいから自宅に泊まるよう頼んできました。
回りの人たちもその成年を知っているようで、話しを聞かせてやってくれと言うので、そこまで言うならとお邪魔することにしました。
手首に巻いた細いブレスレットもセイフティを示しています。
(これは守護妖精Noahにつながっていて、人前に守護妖精が出ていない時にコンタクトできるアイテムです)
決して秘蔵のワインがあるからと言われて、お邪魔しようと決めたわけではありませんよ。(ハハハ)
店を出て成年に案内されながら少しふらふらしながら歩いていると ふと成年の姿を見失ってしまいました。
周りを見渡すと、路地の暗がりからフェスティバルの衣装をまとった少女がゆっくりと現れました。
そしてまるで大人のような口ぶりで
「今年のワインも格別においしくできましたが、来年もまた格別のワインを飲んでいただけるよう 今からお話しすることを出来るだけ早く実行してください。
集まった夢が流れ出さないように、ひとまず楔を打ちつけ、隙間は狼が入れないほど小さくしておいたほうがいいでしょう。
夢もみなさんの手が届かない所で迷子になれば、狼の餌食となり、その味をしめた狼は群れを成してやってきます」
前のにぎやかなストリートから成年が
「Markさーん。こっちですー」
手を上げて答え、振り返るとそこにはもう誰もいませんでした。
成年の家では、夜も遅かったのですが、家族がとても暖かく迎え入れてくれました。
リビングで秘蔵のワインを頂きながら、旅先でのいろいろな国の話を成年は目を輝かせながら聞いています。
時折
「ならば、Markさんは"地球の悲鳴"という世界的悲劇の中にあって"仮想地球(Globe of Virtual Reality)"はどうあるべきだと思いますか?」
「ハハ、なかなか鋭い問いだね。
だけどそれは"仮想地球(Globe of Virtual Reality)"の総意を持って自ずと導かれるものであって、 仮にも今の私の立場では何も言えないな。 ただ、メンバー一個人としては、心と未来を持った人類にとっての新しい、 そして最後の精神の集合体として世界樹のように凛とあってほしいとは思っているんだ」
そんなちょっと難しい話もはいったけど、成年の真剣なまなざしに、心高ぶるものを感じながら夜が更けていったのです。
次の日の朝、一家総出で見送ってくれました。
昨晩は夜も遅かったため出会えなかった娘さんも中央で微笑んでいた。
・・・・・なんとなく似ている
「また来年お会いしましょう」
「是非に!楽しみにしています」
笑顔で歩き出したMarkに一瞬冷たい風がふきぬけ、ふと、ワインの少女の言葉が脳裏に浮かび上がってきた。
「あぁ、俺たちの夢?そう、夢は・・・」
近未来小説「 Neo Border - The near future -」