双子のアリスと不思議の国#1
プロローグ
舞台は、不思議の国。
主役はアリス。
双子のアリス。
赤い薔薇と黒い薔薇。
赤い薔薇はただ純粋に赤く。可愛らしく。
黒い薔薇はただ冷酷に黒く。美しく。
二つの薔薇が始まりを告げる。
祝福するはハートの空。
歓迎するはダイヤの風。
因果はクローバーの丘。
終焉はスペードの街。
赤の薔薇は種から始まり、樹木へと変わり
黄金の実を落とし枯れる。
黒の薔薇は赤の薔薇から分かれ、樹木へと変わり
根元から切り落とされて枯れる。
不思議なことに、二つの薔薇は
誰も見えない根元から繋がっており
一つの種から生えていた。
姫の誕生
ゴー・・・ン
ゴー・・・ン
ゴー・・・ン
「女王さま!おめでとうございます!!」
「女の子ですよ!」
「まあ・・・なら良かったわ・・・」
「ですが・・・」
「え?」
使用人の手には、赤子が抱えられていた。
「泣かないのです。」
「・・・? どういうこと?」
「普通、赤子は生まれた瞬間、泣くのです。
それは、呼吸をするためなのです。」
「なのに、この子は泣きません。」
「死んでいるってこと?」
「いいえ。そうではないのです。」
「この子は・・・」
赤子の瞳は赤黒く、淀んでいた。
「イレギュラー。・・・普通ではありません」
「ということは・・・」
「ええ。お察しの通り。」
「あの者に頼むしかございません。」
翌週。
不思議の国全土に渡った知らせは。
”双子の姫が生まれた。”
その一言だけだった。
誕生日の時
ゴー・・・ン
ゴー・・・ン
ゴー・・・ン
「・・・まー!・・さまー!
アカ様ー!アカ様ー!!」
「何処に行かれたのですかー?」
「居ませんね・・・」
「メイリア!そっちは?」
「居られませんでした・・・。」
「そう・・・」
慌ただしく走り回るメイド・執事達。
否、彼らは王族直属の使用人たち。
「ああ・・・なんかやばいかも・・・。」
走り回る使用人たちを見ながら少女はつぶやく。
少女の名は、”赤のアリス”。
使用人達の言う、”アカ様”だ。
「うー・・・どうしよ・・・」
少女は大きなトランプのオブジェの後ろに隠れていた。
不意に。
ガッシャーーーーーーーーーーーーンッ
あ、やべ。
トランプのオブジェの横に置いてあった
ウツクシ草の植木鉢を倒してしまった。
「あーーーーーーーーッッ!アカ様!」
「げっ!見つかったっっ!」
メイリアが叫ぶ。
途端に走り出すアカ。
「お待ち下さい!アカ様!」
「うおおおーーーー!!」
負けじと追いかけるメイリア。
メイリアが次に言った言葉はこうだった。
「今日こそメイリアがアカ様を捕まえるのです!!!!」
おおー、がんばれーメイリアー、アカ様も負けないでくださいー、わー
などと応援の声。
そして、ついにメイリアの手がアカに届きそうになった。
わー!いけー!その調子だー!
きゃー!アカ様ー!がんばってー!
応援もいっそう大きくなる。
そして、廊下の角を曲がった時・・・
ゲームは決着の着かないまま終わった。
-使用人室にて-
「何をやっているのですか!!!!」
「ううう・・・」
「はうう・・・」
教育係のナノの声が部屋いっぱいに響く。
(後で聞いたが、ナノの声は
遠く離れたクローバーの港でも観測されたそうだ。)
「何のために、使用人と姫が王宮内で追いかけっこを
しなければならないのですか!!しかも他の使用人たちも巻き込んで!!」
彼の名は、ナノ=サルバルト。姫の教育係である。
「あ、あの、他の使用人たちは、わ、私がお願いしたんです!」
「ごめんなさい!ナノ!許して!私が暇だったからメイリアにお願いしたの!!」
「許しません!もう当分アカ様は学問に励むこと!
メイリアは、一ヶ月間、大広間の掃除をやるのです!」
「「えええええええーーーーーーーーーーっ!?」」
「文句は言わせません!さあ、アカ様は部屋で学問をお教えしましょう。
メイリアは、これから自分の持ち場に戻ってそこが終わったら大広間の
掃除へ行くのです!」
「「はぁあーい・・・。」」
メイリアが去っていく。
「さあ、部屋でおべんきょーするのです。姫。」
そう。
さっきから怒られているこの少女が不思議の国の姫。
そして・・・・
「アカ、またメイリアとおいかけっこしていたの?」
「あ、クロ。見てたの~?」
クロと呼ばれた少女もまた、姫。
”黒のアリス”。アカの双子の妹である。
「アカ様、もう少しクロ様を見習ったらどうですか?
クロ様は、朝からずっと勉強していたのですよ?」
「ええっ!?クロ、すごーい・・・」
「あたりまえのこと」
少し恥ずかしそうにクロが言う。
「このままでは、女王の座はクロ様のものに
なってしまうかもしれませんねえ・・・」
横目でアカを見るナノ。
「ええっ!?・・・負けてられないよぉ!!」
それもそのはず。
姫が双子で生まれたので、優秀なほうが女王になる。
アカは運動は得意だが、学問は苦手。
クロは学問は得意だが、運動は苦手。
だからアカは学問でクロに勝てばいいのだが、
最近、クロが急激に運動能力が良くなり始めたのでさあ大変。。
「よぉーしっ!ナノ!今日こそ4桁の引き算をマスターするのよ!!」
「おお!アカ様がやる気になられた!このナノが張り切ってサポート致します!!」
「4けたのひきざんって・・・」
(クロは既に掛け算をマスターしている。)
「それにしても、クロ様はまだ50歳なのにもう80~90歳の勉強をやっていらっしゃる・・・
天才ですね。」
「それほどでも(照」
照れるクロ。
彼女は、あまり感情を表に出さないほうだが、
照れる・怒る・喜ぶの三つは、しっかり分かる。
それに対してアカは感情がすぐに顔に出てしまう。
「ちょっとぉーー!早く教えてよ!」
「はいはい、今。」
今日も、平和な時が続いていた。
「・・リア、例の<アレ>。・・・ってるの?」
「・・・・ん調に進んでおります!」
「しっ!声が大き・・・」
「なーんーのーはーなーしー?」
「「わあああああああああああああ!!!!??」」
「ひゃあっ・・・声が大きいなあ、二人とも。」
メイド二人がひそひそ話をしているのが気になったのか、
割り込むアカ。
「す、すみません。何でございましょうか。アカ様。」
「さっきの話、何~?」
「そ、それは、お教えできません。」
「え~。きーにーなーるぅ~」
「駄目ですっ!これは、さぷ・・・ムグッ」
メイリアの口を塞ぐ。
「さぷ?さぷ・・・何?」
「い、いいいいいぃいえっ何でもありませんのっ
オホホホホホホホ・・・」
笑ってごまかすドリカ。
んで、メイリアの口を塞いだまま去っていった。
「何だろう・・。さぷ・・・?」
「どうかなされましたか、アカ様。」
「あ、ナノッ」
「はい?」
ナノに詰め寄るアカ。
「さぷ・・・なんちゃらで、私に教えれないことって何~?」
「えっ?・・・てゆーか、まず。さぷなんちゃらって何ですか。」
「しらーん」
「じゃあ、ナノにはお答えできません。」
「え~、ナノって何でも知ってるんじゃーなかったのー?」
「いくら私でも分からないことだってあります。」
そのままナノは去っていってしまった。
「くっそーどいつもこいつもごまかしやがってー。」
前、いとこのクランが言っていた言葉を真似してみる。
・・・むぅ。気になる・・・。
「さぷなんちゃらに一体何が・・・?」
‐夕食の時間-
「いただきます。。」
「いただきます。」
うーんなんだろう。
「母様?」
「なに?」
「さぷ・・・なんちゃらって何?」
「え?」
首をかしげる。
母様にも分からないのか・・・。
こうして、既に夕方。
「結局何もないのかな・・・」
「アカ!」
「え?」
クロの声。
「アカ様!こちらです!」
メイリアが手を引っ張る。
「えっちょちょちょちょッ」
引っ張られていったのは・・・・
大広間。
「え・・・?えええええええッ!?」
そこには・・・
「すっごーいッ!!」
ステージの垂れ幕には大きく
”アカ様・クロ様ご生誕10周年!!”
と大きく書かれており、
その下には大きなケーキがあった。
「「「「アカ様・クロ様!お誕生日おめでとうございまーす!!」」」」
そこに居る全員が口をそろえてそういった。
「みんな・・・・」
「もう、アカ様ったらこーゆー時だけ
すっごく勘がいいんですから。いつバレるかと・・・」
「ヒヤヒヤしましたよ・・・」
「えっ?じゃあ、さぷ・・・なんちゃらって・・・?」
「”サプライズ”なのですよ。」
「ナノ!ナノも知ってたの??」
「勿論なのでございます。元々これをやろうと言ったのは私なのですから。」
「ええええええっ!!??これナノの提案なの?!」
「・・・・え、何でそんなに驚くんですか?((怒」
「さ、ささささささあっケーキ食べましょうよアカ様!」
ドリカは慌ててアカをケーキの方に連れて行った。
一方、クロはというと。
「クロ様!おめでとうございます!」
「これ、誕生日プレゼントです!」
「ぷ、ぷれぜんと?」
「さあさあ、お料理を召し上がってください!」
「え、えと、その・・・」
なんか囲まれて困っていた。
『さあ!最後に、アカ様からのメッセージを頂きましょうか!』
マイクを通したナノの声が聞こえる。
『ええっ!・・・えーと、私っこんな凄いことやって貰えて、とーっても
幸せです!!』
アカの声。
ワアアアア・・・と歓声。
『これにて!パーティーは終了と致します!各使用人は自分の持ち場に戻ること!
担当の者は会場の片付けを開始して下さい!』
そして人々は自分の場所へ戻ってゆく。
私は・・・
うれしいと思う。
こうやって祝ってもらって
パーティーを開いてもらって。
本当は存在するべきではない、私のことを。
外の世界へ(1)
『姫様達は1ヶ月ほど前に12歳になられましたね。
どうですか?ひとつ大人になられたお気持ちは?』
『えーと、私は、あんまりじっかんがないです。えっと、ええと・・・』
『わたしは、もうすこしで14さいになり、せいじんするのでアカにまけないように
もっとがんばります。』
『あー!私もそーゆーこと言おうとしたのにー!』
『仲がよろしいですね・・・。』
「はー疲れたー。」
「つかれんのはやすぎ。」
「この後、スペードの街へ行きます。そして、果樹園の視察。シロ様・・・
貴女方の母様が、クランの果樹園がどうなっているか見てきてほしい、と。」
「え~まだあるの~?そんなん使者を出して終わりでいくな~い?」
「いくないです。」
「くっそ~」
「言葉使い。」
「はーい」
ダイヤの街の皇城のセレモニーに出席してから、ダイヤの街の全く反対側にある、
いとこのクランの果樹園まで。
国の端から端まで移動することとなる。
「めーんーどーくーさー」
「うーるーさーいー」
「こら、二人とも。」
「わたしは、わるくない。」
「さあ、移動中も、勉強勉強!」
「ええ~」
いくら、女王の勉強だとはいえ・・・
「女王って、こんなに面倒くさいのか・・・」
「何ですか?」
「いえ。」
「着いた~!!!!」
「よう!アカ!久しぶりだな!」
「わあークラン!久しぶり!」
やっと着いた、クランの果樹園。
いつもよりクランは、なんか
畏まった格好をしていた。
「あれ?なんかいつもと格好違くない?」
「あ~。なんかお母様がさあ、姫様が遊びに来るんだから
ちゃんとした格好しろってよ。」
「わー。そんなのしなくてもいいのに~。」
「・・・!」
「・・・?」
何か会話をしている二人。
「・・・うらやましいなあ。」
「やはり、クロ様は引っ込み思案なのですね。」
「・・・ナノ。”引っ込み思案”ってなに?」
「引っ込み思案とは、
”積極的に人前に出て、ものごとをするのがにがてな性質”
ということです。」
「ナノはにんげんこくごじてん・・・」
「はい?」
意味不明なことを呟いて、クロは果樹園の視察へと向かった。
「クロ様。こちらがクロ様のお好きな果実でございます。」
「人間界では、”ブルーベリー”というとか。」
「へぇ・・・。ぶるーべりー・・・?」
「はい。かの有名な”魔女ルベッタ”の魔力を受けた
魔道師が、屋敷に居りまして。
その魔道師が、人間界とこの不思議の国を行き来するという
術をもっておりますの。」
「それで、人間界に使いを出し、色々なことを調査させたのです。」
「へぇ・・・。魔道師・・・」
クロは。
「まじょ・・・ルベッタ!」
「うわおっ!」
「”魔女ルベッタ”。クロ様もご存知で?」
「うん。しってる。かあさまがなかよかったからな。」
「え!・・・お知り合いですか・・・」
「・・さまーーーー!!クーロー様!」
「あ、ナノ。」
「ああ、いらっしゃった。最初には名もなき赤い実・・・
アカ様の好きな果実の場所を見るのでは?」
「いや。ぶるーべりーのほうがみたかったから・・・」
「ブルーベリーですか。先日名前が判明した果実の名前ですね・・
ってちょっ!勝手に行かれると困るのですよ!」
「おなかすいた・・・」
「あとで、このブルーベリー。お渡ししますので!」
ぶるーべりー畑。
視察終了。
「うわあああああ~~~!!!」
「お静かに。」
次は、アカの好きな果実の畑。
「ねぇっ!コレは名前まだ分からないのっ?」
「残念ながら。」
「え~。ナノでも分かんないの~?」
「残念ながら。いくらこのナノでも、人間界のことは分かりかねます。」
「え~。なーんだあ。」
「アカ、後でブルーベリーと一緒にコレも渡すよ。」
「えっ!まぢで!」
(ナノがアカを睨む。)
「・・・ごめん言い直す。」
「どうぞ。」
「えっ!ほんとに!」
「ほんとだよ。可愛いいとこのためなら、たくさんあげるよ。」(きらーん。。
「やぁったあ!クラン大好き!!」
(↓ナノ&クロ&その他諸々の心の声。)
『単純・・・。』
「姫様のお帰りです!」
わーーー・・・・
歓声が起こる。
「クラーン!ありーがーとー!!!」
「また来いよー!」
アカは、いつまでもクランに手を振っていた。
終わり。。
って!こんなとこで終わるわけないしッ!
-後日。
「大変です!」
クランの果樹園まで御礼の品を届けに行っていた
使者のアルワンが帰ってきた。
「何だ?アルワン。会議中に入ってくるのは関心しませんよ。」
大臣が言う。
「いいえ!そんなこと言っている場合ではございません!」
「どうした。落ち着けアルワン。何があった。」
「いつもの優秀なアルワンはどうした。前だって、盗賊に襲われた時・・・」
「ああああーーー!!!話がそれているのです!!」
ナノが必死で話を戻す。
「・・・で、どうしたんだ?アルワン。」
「クラン様の果樹園が・・・」
-クランの果樹園
「これは・・・・」
果樹園は、畑は。
<枯れていた>。
いや、正しくは、
<焼け焦げていた>。
「非道い・・・」
「どうして・・・」
まさに、”変わり果てた姿”だった。
「・・・アルワン。」
「はい?」
「当時の状況を説明してくれ。」
「はい、それが・・・」
-私は、そのとき、クラン様の一家、ラッカー家の皆様に、
贈答品・献上品を差し上げておりました。そのとき・・・
『・・・ねえ、あなた。何か焦げ臭くない?』
『あっ、本当だ。調理場か焼却炉で何かあったのか?』
-最初に、奥様が気づかれまして、その時、皆様は
やれやれ。新人の使用人が何かやらかしたか?
ぐらいにしか思ってなかったようで・・・
でも・・・
『母さんッ!父さんッ!果樹園が!』
『ええっ!?』
-皆様と私が見に行った時は、もう、時既に遅し・・・
「既に果樹園は焼け野原となっておりました・・・」
「なるほど・・・」
「クラン!?クラン!?」
「アカ!?何故此処に!」
「クランが心配で来たの。(※本当は様子を見に皆で来てます。)
果樹園、大丈夫なの?」
「ああ・・・。大丈夫・・・では、ないな。
屋敷に被害がなかったのが不幸中の幸いだけどな。」
「お屋敷は、無事だったんだね・・・」
「うん。でも、果樹園はほぼ焼けてしまったからなぁ。
もう、当分ティータイムの果物はあげられないかもな・・・」
「そんな・・・」
-王宮内
「どうしたものか・・・」
「一体誰がこんなことを・・・」
「いや、そんなことよりこっちの食材の問題だ。」
「あと一ヵ月後にシロ様、いや、女王様の御生誕パーティーがあるというのに・・・」
「それよりも、毎日姫様も女王様にもあるティータイムの時間にもあそこの果樹園の
果物が使われているのですよ!?今日から3日間までなら、先日貰った果物で間に合うが、
無くなった後はどうするのですか!」
「・・・そうだ。スペードの村にある農家から買えばどうだ?」
「いや、駄目だ!あそこの農家には、一度買ったことががあるが、クロ様の
お口に合わなかった!それに、その農家の野菜を食べた国民が、食中毒になったと聞いた!」
「静かに!」
ナノの声が響く。
「焦るな!まだラッカー家の果樹園が駄目になった訳ではないのですよ!
焦りすぎて王宮内にある備蓄庫にまだ野菜も果物もたくさんあることを忘れたのですか!」
「あ。」「そうだった・・・」「忘れていた・・・」
「いいですか!ラッカー家の果樹園が回復するのを待つ!シロ様に許可を頂いて、
我々も支援する!それで決定で良いか!」
「異議のある方は、手を挙げてください。」
ミーシャ議長の冷静な声。
手を挙げる者は、一人も居なかった。
「では、ラッカー家の果樹園についての議論はこれにて終了とする!それぞれの持ち場(仕事)に
戻ること!」
こうして、会議は、幕を閉じてしまった。
「では、おやすみなさい。姫様たち。」
「おやすみなさ~い。」
「おやすみなさい。」
珍しくナノの指導も無く一日が終わったアカとクロ。
「・・・クラン、大丈夫かな。」
「だいじょうぶだ。る・・じゃなくてナノがなんとかしてくれる。」
「そうかな~。心配。」
会話は、それで終わったと思われた。
「あっ!そうだっ!いいこと思いついた!」
「なに?」
「あのね・・・で・・・して・・・・・・」
「! いいね。やってみるか。」
「よっし!そうと決まったら早速明日から準備だー!」
「んじゃ、あしたにそなえて。おやすみ。」
「おやすみ~!」
だれもしらない。
しんしつでこんなかいわがされていたことを。
外の世界へ(2)
「ついに・・・来ましたねえ、クロさん。」
「そうだね。アカ。」
「ついに、この時がッ!」
「ていうかさ、アカ。」
「なんでこんなとこなの?」
はい。ここは、使用人室のタンスの中です。
何故タンスの中かというと・・・
-あの夜の会話。
『あのね。何かの中に入ってたら、うちらって軽いからバレないじゃん?』(w
『うん。』
『だから・・・今度とかなんか・・・箱とかを運び出す日とかって、ない?』
『ちょっとまって。』
そして、クロは目をつぶって何かを考え始めた。
『あ。』
『あった?』
『しようにんしつのおおそうじ。さらいしゅう。』
『あ!そういえばあったね。』
『しようにんしつのものをいったんぜんぶそとにだすから。』
『あ、そうだね。でも、私たちが二人は入れるサイズの家具ってあったっけ?』
『ドリカのクローゼット。』
『あぁ・・・』
『ちいさいころ、ふたりではいってあそんでた。』
『よし!今になっては入れるか分からないけど、そこでけってー!』
『じゃあ、さらいしゅうまでにじゅんびを。』
『よっし!そうと決まったら早速明日から準備だー!』
『んじゃ、あしたにそなえて。おやすみ。』
『おやすみ~!』
「・・・と、いうことで、このドリカのクローゼットの中って言う案は、
クロの提案なんだよっ!」
「だれにはなしかけてんの?」
「ともかーく!このまま静かにしてること!」
「はいはい。」
こうして、なんか重いなこのクローゼットとか思われながらアカとクロの入ったクローゼットは
運ばれて行った。
「せめぇな。」(クランの真似。
「こら。」
「ねみぃな。」(クランn(ry
「こら。」
「腹減ったな~。」
「はげしくどーい。」
-午後4時。
「・・・・。」
「・・・・。」
「・・・・。」
「・・・・。」
「・・・・もう、いいかな。」
「・・・・もう、いいんじゃない。」
「・・・・腹減ったし?」
「うん。」(即答。
「・・・・そろそろ出るか。」
「・・・・わかった。」
ぱかっ
「ふぅ~狭かったー。」
「はぁ~おなかすいた。」
「さてと。んで、クロ?」
「なに?アカ。」
「ここ何処か分かる?」
「クローバーのまちのかじゅえんのちかく。」
「ええっ!まぢかー歩く手間はぶけたわー」
「で?いくの?」
「もっちろんさー!」
二人は、果樹園に向けて歩き出した。
・・・パン食べながらw
クローバーの街は、少しだけ寂れたように見えた。
「前来たときは、もっと綺麗だったのにな・・・」
「そうかな。でも・・・なんだか、たしかにさびしくみえる。」
「うん。・・・寂しく見える。」
「うん・・・。」
「・・・ねえ、クロ。」
「なに?」
「・・・」
「そっちのパンの方がでかく見える!」
-クランの果樹園
・・・・カーン。(呼び鈴
「「・・・・・」」
・・・・カーン。
「・・・いないのかな。」
「さあ。」
「さあ。でなくてさぁ~」
「はい、どちら様でしょうか?」
「うわああああ!!」
「うおっ」
「きゃっ・・・」
不意に使用人が出てきたので、アカは飛び上がった。
クロは、びくともしなかった。
「ええと・・・」
「ああああ!!これは、姫様t・・・」
「スットーップ!!」
アカが、慌てて使用人の口をおさえる。
「しーーーーっ!」
「・・・ひ、姫様たち、何故此処へ?」
「それは、あとで!」
「・・・とにかく、お入り下さい。」
と、屋敷の中にはいったとき。
「あ・・・」
「あ。」
「あ。」
「あ。」
クランと、バッタリ。
「えええええええええぇぇぇぇぇぇえええぇぇぇ!!!!!!!」
-応接間にて。
「なんでクロとアカがいるんだよぉぉおおおおぉぉぉぉおおおぉぉぉ!!!!」
「く、クラン様、落ち着いてください!」
「クランおおごえだしすぎ。おじいちゃんになったらこえでなくなるよ?」
冷静にいつものように返すクロ。
「お前ら、どうやって来た!いつかみたいに、『だって、私たちお姫さまだもーん』とか言ったら
ぶっ飛ばすからな!」
「じりきできた。」
「クロの言うとおり。」
~しばらくお待ち下さい。~説明しております。
「で、なんでお前ら、ここに来たんだよ。」
「いやあ・・だって~この前の果樹園の火事の犯人を見つけたくて・・・」
「それは、お前らが解決できる問題じゃないだろ?」
「でも、ちからになりたくて。」
珍しく、クロが会話に口を挟んできた。
「ほら、ええと・・・”仲間は多い方がいい”んでしょ?」
「・・・クロ。」
「あ、あの~」
使用人も、口を挟んできた。
「私も、何かお力になれることはないでしょうか・・・?」
「レイカ・・・」
「ほら~!皆力になりたいって思ってるんだよ!」
「・・・有難う。みんな。」
クランが少しだけ目を潤ませる。
「じゃあ、まず!」
「現場検証ー!!」
-クランとこの果樹園。~チャラリーン←
「ふむ。」
「・・・何がわかんの?これみて。」
クロは、最初に火がついたという木を眺めていた。
「・・・うーむ。」
「なにか、分かった?」
「まっっっっったくわからん。」
がくっ。
「ん?」
「・・・え?何か発見した?」
「これは・・・」
その木の近くには、”マッチ”という火を点ける道具が落ちていた。
おお。何か手がかりになりそうな物だ。(え。
「これって。この前人間界から”魔女ルベッタ”がなんちゃらとか言ってた魔道師とか、
アルワンとかの調査団が持ち帰ったやつだよな・・・?」
「ま、まさか・・・アルワンが・・・?」
「いやいやいや。それはないでしょ。アルワンは、此処に来たことないって言ってたし。」
「え・・・?でも、おやしきには・・・」
「ううん。お屋敷しか来たことないって。」
「え?じゃあ、アルワンうそついt((」
「だーかーらっ!!」
「あんたは何でアルワンを犯人にしたがるのよぉおおお!!」
-ラッカー家の屋敷。
「うーん。結局手がかりはなしかー。」
「いや、てががりといえば、このマッチってやつだけだ。」
「うん・・・。」
アカは、クロの手の中のマッチを見つめた。
「・・・・ん?手の中?」
うん。手の中。クロが持ってきてますよ?
「あ、そっかー。・・・ってえええええええええええぇ!!!??」
「ん?なにかもんだいでも?」
「おいおいおいおいおいおいおいおいおい!問題大アリだよ!!!!問題がありすぎるよ!!
何でいつの間にか持って来てんの!!!??」
「・・・いや、なんとなk・・・(((」
「なんとなくで持ってくんなああああぁぁぁぁあああぁぁああ!!!」
絶叫するアカなどには目もくれず、クロは考え込んだ。
思考回路は順調に廻る。
『あと一ヵ月後に女王様の御生誕パーティーがあるというのに・・・』
「せいたん・・・パーティ・・・」
「え?ど、どしたの?クロ。」
『スペードの村にある農家から買えばどうだ?』
「スペードののうか・・・。」
「クロは何か分かったんじゃね?」
「えっちょっ!!何が分かったの!?」
『その農家の野菜を食べた国民が、食中毒になったと聞いた!』
「しょくちゅうどく・・・?」
「え、なに食中毒って。」
「あーなんかねー。スペードの村のとこの農家の果物とか、野菜とか
食べた人が食中毒になったってナノが言ってたから、それだと思う。
・・・あれ?そういえば食中毒って死んじゃうこともあるってナノが・・・」
『食中毒で死んじゃうこともある』
「わかった。はんにんが。だいたいだけど・・・。」
「えっ嘘!!」
「はんにんは・・・」
-スペードの村。~ジャース家の農家。
「ここだ。」
「ここって・・・?」
「ああ、俺たちラッカー家のライバルって名乗っているジャース家の農家だ。
ライバルとか、勝手に言われてるだけだけどなw」
「ふうん・・・。」
コンコン・・・
「あれ?誰も来ないな・・・。」
「いないのかな・・・。」
「いるだろ。」
「居ますかね・・・。」
コンコン・・・
「-はい!どちら様でしょうか?」
使用人らしき人の声聞こえてくる。
「・・・レイカ、お願い。」
「はい。・・・あの、ラッカー家の使用人レイカでございます。
今日は、ラッカー家9代目のご令息が直々にいらっしゃいまして、こちらの当主と話を
されたいと・・・」
「・・・すみません、本日当主はこちらには・・・」
「きょうレニシア=ジャースさまはいるんですね?」
クロがいきなり喋った。クロだってことがばれませんように!!
「・・・ええ。只今、ご令息のレニシア様は、食事中でして・・・」
良く考えてみたらもうディナーを食べている時間だ。
空もだいぶ暗い。ああ、ナノに怒られるなあ。((
「しょくじがおわったらあわせてください。」
「え?しかし・・・」
ラッカー家の名だけでは駄目か。
ならば・・・。
「・・・クロ、いいよね。」
「うん。いいと思う。」
「レイカさん、お願いします。」
「はっはい・・・。」
レイカは、大きく息を吸い込んでこう言った。
「クラン様だけでなく、不思議の国第十七代目女王候補、現女王様のご令嬢である
クロ様、アカ様も直々にお忍びでいらっしゃっております。」
先ほどとは明らかに違う、緊張感のある、凛とした声だった。
「・・・ッ!?姫様!?お忍びで!?・・・少々お待ちくださいませ。」
先ほどとは明らかに変わったレイカのこえと、ご令嬢という言葉に動揺したのか、
バタバタといったような足音が聞こえた。
「これで入れるかな・・・」
「たぶん・・・」
「レイカ、なかなか迫力あったぞ!」
「あ、有難うございます・・・!」
先程の迫力とはうってかわってレイカはおどおどしながら答えた。
「レイカさん、凄いね~。さっきと全然違った!!」
「お、お褒め頂き、光栄でございますですわ・・・」
緊張しているのか、何か敬語がおかしい。
可笑しい。
「いやあ、さすがだな!!レイカ!俺が見たお前の才能はやっぱり本物だった!」
「ひ、ひぃいい・・・お褒め頂ぎ、ヴォううえ・・・」
あ、噛んだ・・・。
なんか違う。((
「あの~。」
中から、先程の使用人らしき人の声が聞こえてきた。
双子のアリスと不思議の国#1