ダイエット反対!

(おれはダイエットに反対だ)
(そもそも、人類の長い歴史の中で、大多数の人間が食べ物に困らないなどということは、極々最近の出来事じゃないか。それまで人類は、飢餓を乗り越えてやっとありついた食べ物を、なるべく効率良く体内に蓄えるため、当座必要のないカロリーを脂肪に変換するように進化してきたのだ)
(だから、今でも世界の一部の地域に風習として残っているように、かつては男女とも太っていることが魅力であり、異性にモテるための必須条件だった。そう、ちょうど砂漠を旅するラクダのコブのように、女性は乳房を膨らませ、男性は腹を出っ張らせたのだ)
「あなた、さっきから何をブツブツ言ってるの。夕食前のお菓子はやめるって約束したでしょ」
「あ、ああ、わかってるさ」
 渡辺も我ながら情けないものだと思った。タバコをやめてからというものすっかり甘党になり、休日には子供のオヤツを相伴するクセがついてしまった。おかげでみるみる太ってしまい、しょっちゅう妻に節制するよう言われている。その点、仕事中は間食できないし、体も適度に動かすから健康的だ。若い頃は休日明けは辛かったが、今では少しホッとするくらいである。
 翌日、渡辺は張り切って出社したが、なぜかすぐに人事課に呼ばれた。
 行ってみると、今では人事課長になっている後輩の山口が、渡辺を応接間に案内した。
「ああ、すみません先輩。お呼び立てして」
「どうした。何か相談事かい?」
「あ、いえ。相談というより、お願いなんですが。実は、今回、我が社も思い切って経営体質のスリム化を実施することになりまして」
「会社もダイエットするのか」
「は?」
「いや、何でもないさ」
 渡辺はため息をつき、自分の腹をなでた。
(おわり)

ダイエット反対!

ダイエット反対!

(おれはダイエットに反対だ)(そもそも、人類の長い歴史の中で、大多数の人間が食べ物に困らないなどということは、極々最近の出来事じゃないか。それまで人類は、飢餓を乗り越えてやっとありついた食べ物を、なるべく効率良く体内に蓄えるため…

  • 小説
  • 掌編
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-04-14

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