imaginary affair
今日が嫌な日だと思うのはなぜなんだろう。朝、起きたときに朝食が作られていなかったから? 鍵が二重に付けられていたから? 雨が降っていたから? いいや違う。妻がいないからだ。妻は私の暴力でどっかに行ってしまった。私は妻を、ストレスのはけ口として使っていた。サンドバッグがなくなったボクサーはきっとこんな気持ちなんだろうな、そんなくらいにしか昨日は考えていなかったのに。いざいなくなられると、心の中にぽっかり穴が開いてしまった。
それでも私は今日も仕事に行かなくてはならない。この葛藤だ。しかし結局、もう行く気にはなれなかった。
だから酒を飲むことにした。こういうときは酒に限る。いっぱい飲む毎に妻への恨み辛みが出てくる。
どうしようもなく、行く宛もなしに、ぶらぶらと彷徨うことにしよう。町ゆく人にわざとぶつかるくらいの気迫はないが、かなり人が多かった。私は心底いらいらしていた。雨で地面はぬかるんでいるし、人はこんなに溢れていた。
私は一軒の家で立ち止まる。そこには明りが付いていて、子どもの声がした。その金切り声が、耳に響く。そういえば妻にやんわりEDであることを言われたときに初めて私は手を出した。そんなことを思っている私自身が哀れだった。ふと気付くと、ドアが開いているのが見える。それは今ではあんまり見ない。横にずらすタイプのドアだった。それで開いているから声が聞こえるのか。
立ち止まり考える。もしここで、やつらを殺してやったらどんなに楽しいのかを。私は性に対して執念に近いものを持っている。死姦はいいものだ。一度したが、もう一度したい。それに泣き叫ぶ子どもの頭を殴り続けるとどうなるのだろう。きっと床に血が飛び出て、脳みそがえぐり出されるのだろう。きっと私のあそこも、大きくなるだろう。
私は長々と考えて――天使と悪魔が何度も喧嘩して――そら、駄目だという結論に至った。すると急に現実に戻る。私は妻の死体が前にあるのに気付いた。
imaginary affair