桜の木の下で
特別な場所って素敵な響き。
第一章 一人目の少年 ナル
遠い。
遠い。
届かない。
もう、届かない。
「シヌ」ってどうやるの?
会いたい。
会いたい。
たとえ、僕が消えてしまっても。
ぱぱ・・・
♔
「ナル、おっはー!」
どん、と僕の背中がたたかれた。
それは、僕の友達のレンとキョウの仕業だ。
僕らは、聖王国の教会に通う仲間でもある。
「おはよう。レン、キョウ」
「聞いたか、おまえら」
キョウが問う。
「なにがだよ」
そうレンが言うと、キョウは呆れたようなおちょくったような顔をした。
「なにがって、決まってるだろ。王女様だよ王女様!」
「あ、僕それ知ってる」
「だろー!レンはだめだなあ」
「うっ・・・」
レンは、むっと顔をしかめた。
「それってあれでしょ?王女様に隠し子がいたって・・・」
「はあ!?ソフィア様にか・・・?」
「ああ、そうらしいぜ」
聖王国王女ソフィア・ラキア。
清楚で純粋とされていた王女様だった。
国の誇りでもあった。
「で、これからが本題」
と、キョウが意地悪そうな顔で言った。
「その隠し子ってのがさ、この町を含め、七つの町のどこかにかくまわれてるって噂だ」
「つまり?」
「探しに行こうって話!」
キョウが自慢げに言うと、レンがそれに賛成した。
「その話、乗った!」
「よっしゃ」
そして、二人の視線が僕に向けられた。
「ナルは?」
「行くよな?」
「ううっ・・・」
どうしよう。
正直行きたい。
だけど、母さんに心配をかけたくない。
母さんに話せば、きっと行ってきなさいと言うだろう。
だから・・・余計に・・・
「そうゆうこと考えてる方が、おばさん悲しむぜ?」
「そうそう。子供に気ぃつかわせてしまったーてさ」
「え?僕口に出してた?」
「ナルってさ、すぐ顔に出るよな」
そう言って、レンはにかっと笑った。
「そゆこと」
キョウはすました顔で言った。
そして、キョウは問う。
「どうする、ナル」
「行く!行くよ」
「よっしゃ!」
ごめん、母さん。
迷惑かける。
ぱぱ・・・どうか母さんをずっとずっと想っていて。
そうして、聖王国にある最西端に位置する僕たちの町、マービレッジで小さな冒険と大きな出会いをする。
桜の木の下で