桜の木の下で

桜の木の下で

特別な場所って素敵な響き。

第一章 一人目の少年 ナル

遠い。

遠い。

届かない。

もう、届かない。

「シヌ」ってどうやるの?

会いたい。

会いたい。

たとえ、僕が消えてしまっても。

ぱぱ・・・

「ナル、おっはー!」
どん、と僕の背中がたたかれた。
それは、僕の友達のレンとキョウの仕業だ。
僕らは、聖王国の教会に通う仲間でもある。
「おはよう。レン、キョウ」
「聞いたか、おまえら」
キョウが問う。
「なにがだよ」
そうレンが言うと、キョウは呆れたようなおちょくったような顔をした。
「なにがって、決まってるだろ。王女様だよ王女様!」
「あ、僕それ知ってる」
「だろー!レンはだめだなあ」
「うっ・・・」
レンは、むっと顔をしかめた。
「それってあれでしょ?王女様に隠し子がいたって・・・」
「はあ!?ソフィア様にか・・・?」
「ああ、そうらしいぜ」
聖王国王女ソフィア・ラキア。
清楚で純粋とされていた王女様だった。
国の誇りでもあった。
「で、これからが本題」
と、キョウが意地悪そうな顔で言った。
「その隠し子ってのがさ、この町を含め、七つの町のどこかにかくまわれてるって噂だ」
「つまり?」
「探しに行こうって話!」
キョウが自慢げに言うと、レンがそれに賛成した。
「その話、乗った!」
「よっしゃ」
そして、二人の視線が僕に向けられた。
「ナルは?」
「行くよな?」
「ううっ・・・」
どうしよう。
正直行きたい。
だけど、母さんに心配をかけたくない。
母さんに話せば、きっと行ってきなさいと言うだろう。
だから・・・余計に・・・
「そうゆうこと考えてる方が、おばさん悲しむぜ?」
「そうそう。子供に気ぃつかわせてしまったーてさ」
「え?僕口に出してた?」
「ナルってさ、すぐ顔に出るよな」
そう言って、レンはにかっと笑った。
「そゆこと」
キョウはすました顔で言った。
そして、キョウは問う。
「どうする、ナル」
「行く!行くよ」
「よっしゃ!」
ごめん、母さん。
迷惑かける。
ぱぱ・・・どうか母さんをずっとずっと想っていて。

そうして、聖王国にある最西端に位置する僕たちの町、マービレッジで小さな冒険と大きな出会いをする。

桜の木の下で

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特別な場所。 そんな思い出ありますか? 三人の少年と一人の少女とともに、あなたの特別な場所をもうひとつ。

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 青春
  • 冒険
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-04-12

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