ハーツペンダント color of mind
ギャグ満載です!
ギャグ満載! バトルが熱い!?
世界は変わった。人類が進化した。ヒトは能力を得た。そのかわり社会は法則は常識は覆されてしまった。
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冬の大学戦争を終え、無事勝利を修めた。今やカラオケやゲームセンターなどの娯楽施設に行けば浮かれた人達で溢れている。あと数週間でオレも大学生になる。つまりはやっと彼女ができるかもしれないということだ!
「ははははははは! ふっ、なんてったって高学歴だからな! これは可愛い女の子は待ったなしに違いない!! 」
などと浮かれた時間を過ごす今日この頃。オレは夢のキャンパスライフに胸を膨らませていた。
「やっぱり、清楚だよな。ギャルもそそるモノがあるけど……………駄目だ。清純が一番なんだよな!」
と一人で興奮が抑えられないでいます。だって、だってさ!さっきやっと合格通知が届いたんだぜ? 興奮せずにはいられないだろう?
「うおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!キャンパスライフぅぅぅっっ!!!」
ぴんぽーん
と間の抜けた、まるで今の俺のような音が家中に響いた。
「誰だ! オレは今、興奮しているっっ!」
興奮のあまりインターホンで見るのも忘れ扉を勢いよく開いた。それが間違いだった。一気に血の気が引く。というより直接血管に氷をあてられたような感覚におちいる。だって、なぜなら扉の向こうにいたのは小包を持った女性だったからだ。
「ぁ、あうぅぁぁ……………」
黙っちゃったよ!ヤバイよ。冒頭で犯罪に手を染めかけてるよ。どうすんだよコレ!?謝るの?署までご同行願われるのかオレ!!
「な、何してるの! 遊くん。いいい、いくら大学受験に失敗したからって、こ、ここここ興奮なんて言葉を言うなんてさ!」
天使の声が聞こえた気がした。そう、オレの知り合いという奇跡。これは神様が日々勉強に励んでいたオレに対しての褒美じゃないないだろうか。あぁ神よ、オレは今日から仏教やめてキリスト教に入ります。
「なんだ、歌代か。びっくりさせるなよ。あと失敗しなかったから。合格しました」
「なぁっ! びっくりしたのはこっちなんだけど! それより、受かったの!? すごいよ! あれだけ頑張ってたもんね。お姉ちゃんも勉強を見たかいがあるよー」
うんうんと独りでに頷き自慢げな顔をする身長が156の小さな体躯には似合わない豊満な胸を持つ一見中学生に見える彼女はオレの年上で小さい頃からお世話になっている天ノ歌代
。現役の大学生だ。家が裕福にも関わらず、体を動かしたいからという理由で配達員のバイトをしていると言っていた。バイト終わりの風呂とビールと格別なんだとも言っていた。要するに見た目は子供で中身はオッサンだ。こんな中学生ぽい見た目だがオッサンだ。オヤジだ!
「むぅ、今オヤジとか可愛いとか思ったでしょ! 」
「いや、可愛いは思ってない。微塵も一ミクロンも思ってない」
「あぅ! 酷いよ。私が遊くんの為にどれだけ尽力したか忘れたの!? あんなに色々教えてあげたのに」
「教えてくれたよ! カードゲームのやり方とか召喚方法とかな! 勉強を教えてくれたことなんて数える程しかないぞ!!」
「そんな! カードゲームにはね諦めない心を身に付ける力があるんだよ。私は君にそれを知って欲しかった。諦めない心を教えていく。そーいう人に私はなりたい」
こんな人だけれどオレと同じ大学の生徒で先輩だ。つまりは頭がいい。しかも計算問題なんて瞬時に答えを出すほどの頭脳を持っているから侮れない。
「ふふふ、ところで遊くん。 実はね新しいデッキが完成したんだよ。このバイトを終えたらデュエルと洒落こもうじゃないか。」
そう言いながらポッケからデッキを見せびらかす。
常にデッキを持っているだと………こいつ真のデュエリストか!?
「いいぜ、その勝負受けてたつぜ!」
「やったー! 私さ、女だからか分かんないけど、カードショップに行っても誰もデュエルしてくれないんだよね。ひどいよ!女でもデュエリストだよ!!」
「いや、それは歌代が可愛くて声をかけづらいんだろ」
「なっ、かわ、可愛い! ほんとに!?」
体を前のめりにして聞いてきた。こ、これは絶景です。どれがとは言わないけど、何がと言えば谷です。
「うぉっ、可愛いと思う。一般論で言うと」
「一般論? 遊くんの見解からはどーなの?遊論でおねがい」
「遊論? オレの意見はペットの可愛さと同等」
「か、可愛い!ペットと同じ! ふへぇー、うれしいよぉー、うひひひ」
キ、キモイっすわ!『か、可愛い!』まではよかったけれど、その後半、オヤジだ!こいつは生粋のオヤジだ!
「うひひひ、あっ、いけない。荷物を渡さなくちゃ」
そういうとポッケから出した小包を渡してきた。差出人はいつも通り無記入だった。
「遊矢さんからだよね。これ」
父さんは母さんが殺されて以来、消えてしまった。ただ、一人暮らしには十分過ぎる程の額が月に一度送られてくるのと偶にこうして小包を送ってくる。もしかしたらオレが怖いのかもしれない。もし、顔をあわせれば実の息子を殺してしまうから。
「分からない。でもこうやって偶にお土産みたいなのを送ってくるってことは親戚か何かだと思う」
嘘だ、本当は分かっている。
「………そうだね。それじゃあ私はまだ仕事が残ってるから。終わったらすぐに向かうね! 私のモンスターにひれ伏すがいい!」
ウワハハハハ!と雄叫びを残して歌代は何も乗せていないバイクに乗って去っていった。俺は姿が見えなくなるまで見送りじきに見えなくなると扉を閉め自室へと向かった。
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これまで送られてきたモノは特産品を使ったお菓子や骨董品、時には黄金に輝く三角錐のペンダントなんかもあった。願いを叶えてくれそうだった。今回のお土産はいつもより小さい小包で来たから少し期待してしまう。何だかんだ言って父さんからのお土産は楽しみだ。いくら恨まれて憎まれていても。
ビリビリと無作為に紙を破くと箱が現れた。何にも書かれていない何処にでも売っていそうな安っぽい箱。開けてみるとその中には淡い水色をした水晶のように透き通る石が埋め込まれたペンダントが入っていた。
「ペンダントぉ?」
おかしい、父さんはこれまで同じ種類のお土産は送ってこなかった。以前黄金に輝くペンダントを送ってきた時点でペンダントは無いはず……………ミスかな?だって人間だもんな、ミスは誰にだってある。
そんなことは些細な事で、気になるのはオレに似合うかどうかだ。アクセサリーの類をこれまで一切身につけてこなかったオレからしたらペンダントを付けるというのは初めて自転車に乗るのと同じくらい勇気がいることで、恐怖を感じる。鼓動が激しくなるのを感じる。額には少し汗がにじみだし息も次第に荒くなる。ペンダントの留め具を外しそれを首の後ろにかける。まだ鏡を見ていない。つけることは出来た。あとは見るだけ、見るだけだ!
意を決して鏡見る。
「……………普通」
片手を前にかざしたり、髪を整えたり、時には中二チックなポーズをキメてもあまり変わりは無かった。別段チャラくなったわけでもないし、地味になったわけでもない。全く変わらないオレがいた。
「つけても変わらないんだったらつけとくか」
歌代とのデュエルを盛り上げる品となってもらおう。俺はこのペンダントで歌代は黄金に輝くペンダントだな。面白そうだ。たぎるぜ!
チカッ
振り返る瞬間、鏡から目を逸らした一瞬、ペンダントが光った……………気がする。電球の光とかではなくペンダントが発光したように見えたような。しかし、ペンダントは変わらず淡い色を彩るばかりで何の変化も見られなかった。
「気のせいかな」
『 』
!? 今なにか………………聞こえない。
「気のせいだな。やっぱり疲れてんのかな? 受験は終わったことだし。緊張することもない。歌代がくるまで寝るか」
そう言ってベッドに横になると眠りにつくのにそう時間はかからなかった。
ギャグが弾ける病院!?
……………嫌な夢を見た。昔の子供の頃の記憶。周りには誰もいなくて大量の血を流した女の人が横たわっていてオレは何も出来ずに体温を感じ取れなくなるまで呆然とするしか出来なかった。
「……………」
ふと時計を見れば時計の短針がちょうど真下をさしていた。この時間帯は歌代のバイトが終わる頃だ。春はまだ陽が沈むのが早い、もう空は少し薄暗くなっていた。
「歌代が来る前にデッキを再調整するか。一年以上触ってないからカードの効果とかあやふやだしな」
そう言ってデッキを再調整して待つこと三十分。
ぴぴぴぴんぽーぴんぴんぽーん
どうやら待ちきれないみたいだ。ドアホンを連打するとはなんとも子供じみていると思うだろうが、実際楽しみを前にしたらほとんどの人がああなる。俺だってなる。だってデュエリストだからな!
「あせるなよ、まだデュエルは始まったばかりだぜ?」
ガチャ、と音をたて扉を開くとそこには息がたえだえで体中にいくつもの切り傷を刻み込まれそこから大量の血を流した女の子が立っていた。
「ごめん……なさい。匿って、ほしいの。お、ねが、い」
それだけ言うと女の子は俺に体を預けるようにして意識を失った。このとき、女の子の肌に触れて柔らかいとかいい匂いがするなんて感想は全く思い浮かばす、ただ鉄の臭いと生臭い不快な臭いでいっぱいになった。
吐きそうになる気持ちを抑えてオレは、
片手に持ったデッキを床に置き女の子をとなりの医者の家にまで運ぶことした。今のオレにはまだ治療する技術なんて全くもっていない。だからあの人に頼もう。現役の医師に。
なるべく足を引きずらないよう背中に女の子を乗せて隣のクリニックへと足を運んだ。
それにしても匿ってほしい、か………
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「いや、驚いたよ。緊急の診察なんていつぶりだろうか。君がまさか血まみれの女の子を背負ってきたときは通報するか迷いに迷ったよ」
気さくで優しそうな雰囲気をかもしだしながら毒舌をふりかますこの医師は|黒井(くろい)まる。身長は高めで髪は白髪、老人というわけではないけれど父さんと同年代らしい。それなりに歳を食っていることは確かだがなぜか外見は20代にしか見えない。若作りの域を超えていると言っても過言ではない。呼吸法をマスターしたとかほざいたのを覚えているが本当かは分からない。
「ちなみに遊君が人物紹介に絶対身長から入るのは自分の身長が平均より低いからなんだよね。つまりはコンプレックスだから」
「馬鹿! それを言うなよ! 黙っていれば175という夢の高身長になれたかもしれないのに。あとオレの心を読まないでくれよ!」
「僕は医師だぜ? 患者の心を知り尽くしてどうやったらまた診察に来てくれるかを考えていかなくちゃ駄目なんだよ。これも生きるためなんだ。わかるだろ?」
「分かんねぇよ! 怖いよそんな医師! 診察に来ただけで心まで見られるとか不気味すぎる!」
「あっ、今診ると見るをかけたんだね。うまいうまい」
「いや、かけてないから」
「よし、お遊びはここまでにして、君が連れ込んできた傷だらけの女の子についての容態を言うよ」
この人はいつもオレをからかうので少し苦手だ。掴みどころがないというか、雲のような存在だからかもしれない。それが不気味で仕方ない。
「あの女の子。体のいたる箇所に切り傷のようなものがあった。驚いたことにその切り傷が医師の僕から見ても綺麗すぎたんだよね。」
「綺麗?」
「ああ、綺麗だ。美しいという言葉が似合うほどにね。まるでメスをいれたかのような切り傷だよ。細胞を限りなく傷つけず、傷をつけるのが目的のようだった。もしかしたら彼女を傷つけたのは生粋のサディストかもしれないね。もしくは最近噂の切り裂き魔」
「切り裂き魔って|巷(ちまた)で噂のアレか?」
「勿論さ。|能力者(マーカー)も|一般人(ノーマーク)も関係なく切り裂くただの悦楽者だろうけどね」
「その切り裂き魔に対抗するヤツも現れたとかネットで話題になってたけどな」
「さぁね、ネットなんて結局は噂の塊だよ。真実は情報を見て確かめるのではなく自分で見て確かめた方が君のためになるよ。絶対にね」
治療は済ませてあるから早く連れて帰ってよ。と虫を払いのけるようにシッシッと手を動かし、急かされるようにオレは診療室を出た。
診療室をでてすぐ右の部屋が手術室でそこには開けっ放しにされた数個の薬品の瓶、血に濡れたガーゼや包帯などが散乱していて、治療が大変だったことが伺える。あれだけの血を流せば出血多量で死んでもおかしくなかったはずだ。それを難なく成し遂げる人がこの世に多くはいないだろう。それだけの技術を持ちながらあの人は今もなお……………
ヒタヒタとスリッパの音がよく響く手術室の手術台にはくぅくぅ、と女の子が可愛らしい寝息をたてている。当初よりも断然顔色は良くなっている気がする。
「よかった。一時はどうなることかと」
『本当にそう思ったか?』
は?
首は動かさず目だけを動かしてまわりをみる、しかし声の主は見当たらない。思い切って振り向くもそこには鉄製の扉があるだけで誰かがいるということはなかった。
さすがにこれは気のせいではない。気のせいなはずがない。確かに聞こえた。第三者の声。
チカッ
手術室に置いてある液晶画面に何かが反射する。オレはまっさきにペンダントを見る。するとペンダントには血液のような紅色が映し出されていた。だが、それは発光してはいなかった。どちらかというとこれも反射しているようだった。
……………これはペンダントから発した光じゃない。ペンダントも光を反射している。もちろん天井にある電球の光なはずもない
なら発光源はどこか。導き出される答え。オレはポケットにしまっていたスマートフォンを取り出し自撮りモードをオンにする。
「なぁっ!?」
紅く光を放っていたのは電球でもペンダントでもなくオレの片眼だった。
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ハーツペンダント color of mind
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