桜吹雪
初投稿初小説、テーマ「桜吹雪」で同級生と書きました
春、それは出会いと別れの季節。今まさに新たな出会いが始まろうとしている。今までとは違う歩きなれない道を進み、今までとは違う制服を身にまとい、今までとは違う校門へと向かっていく。門まで伸びる広い大通りの両端にはまるで僕たちの先行く不安を和ませるかのように桜の花達が微笑んでいる。
新たなる生活を祝福してくれている薄桃色のシャワーに見とれていると背後から不意に声をかけられた。
「おはよ!」
ああ、と間の抜けた返事を返す。
彼女は裏山想(うらやま そう)想とは幼少期から家族ぐるみの付き合いをしている。小学校、中学校の十五年間同じ学校に通っていた。まあ要するに
「腐れ縁か……。」
ため息交じりに呟くと想は口を尖らせながら
「小学校も中学校も私がいなかったら友達なんてひとりもできなかったじゃない」
確かに想は僕に比べて社交的で中学時代もクラスの中心にいるような存在だった。以前なんでそんなに僕に構うのか疑問に思って聞いたこともあったが「別に、単に幼馴染だから」と早口で言うだけであとは怒ったようで何も話してはくれなかった。よくわからないやつだ。
高校の入学式も滞りなく進み、クラスメイトとも想のおせっかいのおかげで打ち解けることができた。 そこからの三年間は長いようで短く一日一日が濃く僕にとってかけがえのないものになっていった。
中でも特に変わっていったのが僕と想の関係だった。高校二年の文化祭で想がクラスの出し物の代表になった時、放課後一人作業をしている想を見つけるとその目には涙が浮かんでいた。僕を目にした瞬間いつも通り屈託のない笑顔を向けた。しかし僕の頭の中には今まで見たことのない彼女の涙が焼き付いて改めて僕に彼女が1人の女性であることを感じさせた。
高校生活最後の日、つまり卒業式は入学した時と同じような桜が咲いていた。あの頃は不安だった登下校路も今では後ろ髪を引かれる思いで歩いた。ふと、視線を前に向けると想が気恥ずかしそうにはにかんでいた――
コンッコンッ
背後のドアからノックの音が響いた。
「ここに、夕ご飯置いておくから」
弱弱しい、老いた声がドアの向こうから聞こえる。返事はしない、僕はあの手にできなかった輝かしい高校生活をここで取り戻しているのだから――
画面の向こうの可愛らしい幼馴染はまだ男に向かって微笑みかけていた。ただ、桜吹雪は彼を嘲笑うかのように画面いっぱいに舞い続けた。
桜吹雪
偉そうなことは言えませんが批評とか意見とかあれば書いてもらえるとうれしいです