近未来小説「 Neo Border - The near future -」
Episode 4 勇者の光束 Ⅲ
ふとみると、ロレンツォの頬に流れるものがあった。
Lorenzo
「・・・生きててよかった・・・ヴェズルフェルニルと一緒に仕事ができるなんて最高だ」
「あるミッションで悪い偶然が重なって、どうにも身動きが取れなくなっていよいよ俺もおしまいだなと思った時、 奇跡的にバックウインドが現れた。
もちろん、そんなことはありえない状況だったし、罠と考えるのが自然だったが、 不思議に何の疑いも感じなかった。
俺はすぐにそこに飛び込んだ。
・・・そして生きて戻ってこれた。
俺は確信した。
この奇跡を起こせる奴は彼しかいない、と。
俺は感謝を伝えたくてそのバックウインドの痕跡を追ったがいつもミストが遮った。
もちろん、様々な組織もこのバックウインドを送り込んだ奴を罠やフェイクでおびき出そうとしたり、 無数の追跡AIを放ったが、ことごとくLostしていった。
最後には、奴らは
”多くの偶然からバックウインドのバグが生まれた。その証拠に追跡不能で、痕跡もない”
と結論付けるしかなかった。
とはいえそんな結論を長官が受け入れるはずがないから虚構をでっち上げたわけだが、 でもそんなわけはない!
おれはこうして生きている。
偶然にできたバックウインドなら、 必ずしも脱出ルートのみを示すわけがない。
ましてバグで生まれたルートなどは、ほとんどが行き止まりとなるに決まっているじゃないか。
そして俺と同じように命を救ってもらった奴らを、俺は知っている。
偶然があちらこちらで起こるとするなら、それは偶然じゃなくて 必然と言わざる負えないだろう?
・・・とにかく、本当にあえてうれしいよ」
レスクヴァはターミナルに流れていく黒い集団を見ながらハンカチを手渡した。
Roskva
「演説は終わった? あなたの悪いところはおしゃべりが多いこと。あなたの声がこの風に乗ってハワイまで届くとしたら困ることもあるんじゃない?」
Lorenzo
「え!あれはまだ先の・・・」
Roskva
「でもね、 あなたの良いところはその抑えようとしても抑えきれない素直な心。 私はそこは好きよ」
Lorenzo
「え!今なんて言った!ちょっと風が吹いてきてよく聞こえなかったよ。もう一度言ってくれ」
Roskva
「それは偶然?必然?
ただね、実は、私もバックウインドに飛び込んだことがある」
「だから、そう・・・ヴェズルフェルニルを出迎えに行かないと」
レスクヴァはそう言うとデッキを後にした。
ロレンツォと共に、
ヴェズルフェルニルに心を伝えるために
近未来小説「 Neo Border - The near future -」