抑えれば

現代って、たくさんの人がたくさんのことを抑え込んでるといつも思います。
でもそれで起きることって、本当に正しいことなんでしょうか、そう思います。
でも抑えないことで起きる事って、誰もが辛い思いをするんじゃないんでしょうか。

難しい世の中ですね。

雪の降る時

 夢を見た。
 真っ赤な夕日が海岸にあって、お空も海も私も真っ赤。
 まるで世界が真っ赤に燃えているようで、私は目を細めた。
 ここはどこだろう。どうしてここにいるんだろう。
 細めた目を下に向けると、私の体が映った。
 私は水色のスモックと、赤色の短パンを履いているみたいだ。ただし、真っ赤な夕日に服は燃えているため、実際の見た目は真っ赤だ。
 この服は幼稚園の制服の上から着るもの、確かそんな感じ。
 じゃあここは幼稚園? そんなわけない。だって幼稚園は都会の真ん中にあったはずだもの、こんな真っ赤な夕日が見える海岸にはなかった。
 目も夕日の刺激に慣れてきたぐらいに私は辺りを見回した。
 後ろには自転車たちがお行儀良く陳列しており、後輪部に取り付けられた椅子が母親たちのものだと連想させた。
 やはりここは幼稚園なのだろうか。
 ぼーっと考えながらも自転車の周りをうろついてると、後ろから声が聞こえた。

「ごめんね遅くなって、帰ろっか」

 声の方を見上げると、真っ赤に燃え上がる母が立っていた。
 母がいる、ならばここは幼稚園なのだろう、母が迎えに来たんだろう。
 確か私は母に迎えに来てもらったことは全く記憶にはないのだが、それは考えないでおこう。

「ママ、自転車出してくるから、ちょっと待っててね」

 母が真っ赤な顔で微笑み、陳列された自転車に向かった。
 ここから帰る、お家に帰る。
 この真っ赤な世界とはさようなら。

「きれいだな」

 母と自転車に背を向け海を見た。
 真っ赤な真っ赤な夕日は海岸に溶けていく。
 トロトロと溶ける夕日は私を溶かしていく。
 なんだか怖いと、夕日の死骸に呟いた。


 後ろを振り返ると、母はいなかった

抑えれば

抑えれば

幼い少女「雪」のお話です。 ※虐待、家庭内崩壊、鬱表現あり

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-04-08

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