「桜100周年」vs「震災1周年」。
3月1日。タイムズスクエアに行ってみると、日本の桜でいっぱいになっていた。タイムズスクエアのいくつもの大型ディスプレイには、桜の花が満開に咲いている。また、ブロードウエイを走る2階建てバスには、満開の桜がラッピングされている。さらに、タイムズスクエアには、桜の柄のまさに桜色した着物に身を包んだ日本人女性が何人も笑顔で立っている。僕は、これだけ桜ばかりに囲まれたのは、ニューヨークどころか長い海外生活で多分初めてだと思う。
今年は、日本の桜の苗木3千本がワシントンに寄贈されてから100周年になるという。だから、それを記念してのイベントだ。それに関連して、僕は今週の7日にはワシントンで開催される藤崎駐米特命全権大使の「桜寄贈100周年に関する講演会」というものに招かれている。ワシントンの桜との縁は不思議なもので、25年前の1987年の桜寄贈75周年の際にも記念イベントに携わった。けれども、このタイムズスクエアの桜満開の大型スクリーン、2階建てバス、桜の着物を着た女性たちなど、こんな桜一色に包まれたことはない。
今や昔だが、1987年の桜寄贈75周年のちょうと前年の1986年に、全日空がグアムに初めての国際線定期便を就航し、続いて北米路線の定期便としてロサンゼルスとワシントンにも定期便を就航した。グアム線が3月、ロサンゼルス線とワシントン線が7月だった。それだけに、全日空のワシントン線が就航してわずか1年も経たない翌年4月のイベントが全日空の協賛だったので、ワシントン線のプロモーションを兼ねていたのを覚えている。
一方、今年のタイムズスクエアを「桜でいっぱいにする」イベント企画は、日本からアメリカへ桜寄贈100周年もあるけれど、同時に去年3月の東日本大震災からの1周年もある。だから、タイムズスクエアの大型ディスプレイには、満開の桜を背景に、「Thank You for Your Support 」と映し出している。そして、桜満開の絵柄と共に桜色に染まった2階建てのラッピングバスのボディには、大きな文字で『Japan Week』と書かれている。3月1日から「日本週間」というわけだ。グランドセントラル駅では、お茶のお点前などのイベントも行なわれていた。
僕は、桜で埋め尽くされたタイムズスクエアに身を置いて、体の奥底から日本人の心がふつふつと湧き出てくるのを感じた。それは、100年も前に桜の苗木をアメリカに寄贈した日本人の美意識に対する喜びであり、同時に、1年前にアメリカのテレビでも何度も放映されたまるで模型の家が流されているような東日本大震災からの復興を願う気持ちだ。「桜100周年」vs「震災1周年」。僕は、どこに住んでいても、日本人の心をあらためて感じるのだ。
「桜100周年」vs「震災1周年」。