空虚空間

 紅い夜を抱くほどの空虚もない
     喉元を支える繊細さを齎して
 あなたには適わない 血塗れの足元を歩み
      沈丁花を腐らせる

 言葉のない虚無だけで築かれた地よ
 聴覚や
       視覚のみがあなたを作り上げる

 無意味に散った菖蒲には目もくれぬ
 蒼い唇で私のなかの 空っぽ を迎え入れ
 時を刻むだけの
       数えるだけの一本の針に
 あなたは変質する

 空虚はあなただ

 あなたは誰にも抱かれない
 あなたは紅い夜を知らない
 あなたは白い浅瀬を視ない
 あなたは何も要らない
 
 聞き流された歌を踊れ
 
 空虚はあなたであり私である
 
 私は色を奏でない
 私は音を触らない
 私は痛みを殺さない
 私は 私は

 きっと白い夜を藍せない
 

空虚空間

空虚空間

  • 韻文詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-04-04

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