空虚空間
紅い夜を抱くほどの空虚もない
喉元を支える繊細さを齎して
あなたには適わない 血塗れの足元を歩み
沈丁花を腐らせる
言葉のない虚無だけで築かれた地よ
聴覚や
視覚のみがあなたを作り上げる
無意味に散った菖蒲には目もくれぬ
蒼い唇で私のなかの 空っぽ を迎え入れ
時を刻むだけの
数えるだけの一本の針に
あなたは変質する
空虚はあなただ
あなたは誰にも抱かれない
あなたは紅い夜を知らない
あなたは白い浅瀬を視ない
あなたは何も要らない
聞き流された歌を踊れ
空虚はあなたであり私である
私は色を奏でない
私は音を触らない
私は痛みを殺さない
私は 私は
きっと白い夜を藍せない
空虚空間