The Twelve Oriental Zodiac

ストーリーの細かい話は思いつくのに大筋が全然作れない、というすでに崩壊していたお話をどうにか再開出来ないかと思っていたのでいざ試そうかと。
目標は十二支にちなんで12章。 第1章は人をとりあえず出す、みたいな(←

「これにて第32回西山中学校入学式を終了します。」
学生服とセーラー服の集団が立ち上がり、頭を下げた。
(やっと終わったわね…。)
お偉いさんの話はいつも長くて嫌だわ、と斎槻彩加は動き出した
クラスごとに列になり、体育館を拍手の中、出て行く。
このまま渡り廊下を渡って教室へ――

彩加は体育館を出たところで列から引きずり出された。

目の前には黒服でサングラスの男が二人。
一人は体格的にはSPっぽい。もう一人は―
「…私には入学式に出る権利すらないってことかしら?このクソ兄貴」
「お前の願いどおり校長先生や来賓の挨拶で寝る体験は出来たじゃないか?」
寝癖なのかカッコつけなのかよく分からない髪形の兄、斎槻良介は笑って答えた。
「そういう意味じゃなくて―」
「そういうことは向こうでたっぷり喋ってくれ。お前を呼び出したのは俺じゃないんだ」
「それじゃあ神楽様が私をお呼びなのかしら?」
兄は何もいわず頷いた。
「分かったわ。あのお方にはお世話になってるから。行ってあげるわよ。」
「ありがとう!我愛しの妹―」
「さ、行きましょ。 道案内よろしくね、SPさん」
冷たいなぁ、兄はそうこぼした。
「ところで二人はどうやってここまで?」
「ほら。そこに見えるでしょ。」兄が指差した方向には校庭。ど真ん中には大きく機体に紋章の入ったヘリコプター。
「……あなた方は場所と状況を考えなさいっ!」



「入学式が終わって早々なんであんたらにつれてかれなきゃいけないんだ?なぁ?」
松戸凌駕、高校1年。学校の制服であるブレザーをちゃんと着ている。
ここでも東海高校の入学式を行っていた。
「あなたが無抵抗で協力してくれたためしがありますか?」
中肉中背、これといった特徴もない男。
矢崎賢一、凌駕のあるいみ「上司」にあたる人。
右手に持った拳銃が凌駕を向いていることが特徴だろうか。
「俺はこの仕事が嫌なんじゃねぇんだ。ただ、入学式くらいちゃんと―」
「つべこべ言わないでください。こっちだって君に無駄な時間と労力は割きたくないのです」
拳銃を持ちつつ顔色を一切変えずに男は答える。
体育館から移動しようとする生徒たちにはどよめきがおきている。

「だいたい昨年度の内部に対する経費の10%は君の起こした騒ぎの処理に使われてるんです。君の給料の不満だって君が暴れさえしなければ簡単に解決するんですよ」
「はっ、一桁「0」の足りない予算申請書にゴーサイン出したのはてめぇだろうが。え?」
矢崎は目線をそらす。
「…とにかく来てください。断るんでしたら強硬手段に?」
「今やれるならやってみろや」
すると凌駕はブレザーの右胸に手を入れた。
僅かに矢崎は溜息をつき、右手を宙に上げた。
体育館のすべてのドアが一斉に蹴破られ、軍服に身を包んだ男達がが銃口を少年に向けた。
ついには一般人も逃げ出し始める騒ぎになってしまった。
(何で私がまた始末書を書かなければならないのか…)
矢崎は頭を掻き、告げた。
「君はすでに包囲されている。大人しく投降しなさい。」
言葉に覇気は感じられない。凌駕にこれを何度言ったか。そんな事を思っていた。
「さぁ、お遊びの始まりだ!」
凌駕は嬉々としてブレザーから拳銃を取り出した―



「で、民間人いっぱいの入学式の式典中に拳銃ぶっぱなってスッキリしたのはどこの馬鹿?」
彩加はあきれた声で話す。
東京都千代田区霞ヶ関、新設された国家安全保障・危機管理省の一室に3人はそろっていた。
「しょうがねぇだろ、このおっさんが無理矢理連れて行こうとするから―」
「だからって日本の精鋭達を集めた部隊に1人で立ち向かうことはないわよ」
凌駕の傷に彩加が借りてきた救急箱のマキロンが容赦なく消毒する。
「うるせぇ、俺は味方以外なら誰でも戦うんだよ。」
「私は味方じゃないんですか。」
矢崎は落ち込んでいる。
「それよりお前も何でここに来てるんだ?」
「知らないわよ、兄さんに入学式終わった途端、いつものここへ連れてこられたのよ。でも、神楽様がおいでになられるらしいわよ。」
「…マジか?」
微笑みを送る彩加に凌駕は青くなる。
「ええ、私の兄が言ったのよ?」
「確かに良介が皐の事の嘘は付けないだろうな…」
「何をゴチャゴチャと言ってんのよ?」
凌駕の背後にスーツ姿の女性が現れた。
神楽皐、良介の旦那。その後ろに立つ旦那が何かに怯えて震えているのは気のせいだろう。
「別にそんな細かい事はいいんだけどさぁ、」
皐は呆れた声で話し始めた。
「あんた、また学校で大騒ぎしたんだって?」
「もう皐さんの所まで伝わってるんですか?」
笑って言った凌駕に鉄拳が降った。
「ヘラついてんじゃないわよ。情報課行って早々その第一報が私の仕事始めだったのよこっちは」
凌駕と彩加は止まった。
「制服組じゃないんですか!?」
良介が無駄口を叩いてしまった。
「そうなんだよ、どう考えたって、制服組並みの、いやそれ以上の戦闘力…あ、いや、本当にゴメンナサイ、っちょ、その拳銃はどこから、……ぎゃぁぁぁぁっ!」

「ちなみに今回の改革で私は『警察庁警視総監』から『国家安全保障・危機管理省大臣』と役職が変わりました。何卒よろしくお願いします。」
矢崎はこの夫婦喧嘩は見飽きているらしい。
「神楽さんは旧陸上自衛隊から、良介君は旧公安調査庁から、二人とも国安保省の中央情報局へ異動になったんでしたよね?」

「そんなことは俺らには関係ねぇんだよ」
凌駕が来客用のソファーに寝転がって話し始めた。
「俺たちはあんたらの日常の夫婦喧嘩を見るために来させられたのか?」
「違うわよ、そんなのいつ来たって普通に見られるでしょ?」
旦那を締め上げるのに満足した女が答えた。
「そんなのじゃないわよ、本来の目的はね、」
そう言うと、皐は二枚のカードを胸ポケットから取り出した。

国安保省のエンブレムが輝く、「国安保省十二支特別調査官」と書かれた免許証のようなカード。

「矢崎さんのおかげであなた方が正式に人員として認められたのよ。」
そういうと、学生服の二人に手渡した。
「ずいぶんとデザインがかわったのね」受け取った彩加が表をまじまじと見ている。
「前のパウチと違ってちゃんとカードにしたしね。」
「裏面のこの文字量は何なんだよおい」
「えっとねぇ、今回の改革で、例外が強化されすぎちゃったんだよ」
良介がようやく立ち上がって話す。
「海外では外交官と同様の扱い、国内ではありとあらゆる調査行動が出来るようになったらしいね。」

「じゃぁ、今日はこれで終わり。帰っていいわよ♪」
皐がヒラヒラと手を振った。
「ちょっと待てよ」凌駕がソファーから起き上がる。
「俺達ゃこんだけのために入学式を早退させられたんじゃねぇだろうなぁ・・・?」
「確かにこのくらいの事なら後でも良かったのではないかしら?」
彩加も不満に思っていたらしい。
「あぁ、まだそういえば言ってなかったわね。」
皐は地図を二人に手渡した。
「あなた方の初仕事がもうあるのよ。これから島根に行ってもらうわ。」
「「島根……?」」

The Twelve Oriental Zodiac

The Twelve Oriental Zodiac

――人間は生まれながらにして十二支の血族の力を持っている―― そんな世界で生きる、特に血族の力の強い人たちの忙しい日常のお話。

  • 小説
  • 掌編
  • 恋愛
  • アクション
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2010-12-30

CC BY-NC-ND
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