過去巡り~おもいでめぐり~

深夜、何気なしにコンビニへ行く。
そんななんでもない日常のコンビニへ行くまでのお話。

休日、もとい休日の深夜二時頃のことである。

深夜二時頃、明日と言っても、今日になるのだが、バイトも休みということもあり、夜ふかしをする。

やらなければならない事がある訳ではなく、かといってやりたい事があるわけでもない。


なんというか、なんとなくである。


小さい頃、夜の九時を過ぎると両親に寝るように言われていた。

自分はまだまだ起きていたい、眠くないなどの反論は意味をなさず渋々布団の中へと身を収める、という事は多々あった。

まだ『夜』と言うものの経験が少ない為であったのか、はたまた本当に眠くなかった為なのか理由は解らない。
いや、今思い返すと一つだけ期待している物があったりした。
時折、父が作る夜食の即席麺である。

夜九時を回る前に父が即席麺を作る事がごく稀にあった。
その時に食べた即席麺は、子供の時の私にはそれはそれは美味しいものだったのである。
父が作る即席麺は、ざく切りにした茹でキャベツにシャキシャキ感の堪らないもやしが入っており、中心には半熟に仕込まれた卵が少量の麺を自分の中に取り込みながら陣取っている。

あの当時の私にとっては父の作る即席麺は、特別なものだったのである。

それを自分が寝ている間に食べられるなどとんでもない、故に『喉が乾いた』、『トイレに行きたい』などと何かしらの理由をつけては目を覚ましている時間を多くしようと努力していたのは、懐かしい思い出である。

そして、翌朝起こされた時に感じる睡眠の欲に早く寝なかった事を後悔する。

学校を休みたいなどと駄々をこねるが、喝を入れられ夜とは打って変わり渋々と布団から出る始末。


1日で恐らく一番静寂な時間帯。
深い闇を張り付ける空を窓から眺めながら幼い頃の事を思い出す。

今は実家を出て、東京で夢を叶える為に日々もがき足掻いている…などと言った恰好いい事は言えないような生活を送っているが、楽しく無理のない生活を送りながら夢に携わる事を微量ながらも続けている。
私はこれでいて結構充実している気はするのである。


そんなことを思っていると、先程まで全く無かった空腹感が沸き上がってくる。


深夜というのはこれがあるから困る。
この手の空腹感は何かしらの物を腹に入れなければ、ずっと存在を主張し続けるのだ。


私は財布と携帯をポケットにいれ、家の鍵を手にしスリッパをつっかけて家を出る。


近所のコンビニへ向かう為である。

何となしに空を見上げ、薄くも光る星を意味もなく見つめ電柱にぶつかりそうになり、懲りて前を向いて歩く。
そんな何でもない事をしていると、コンビニの店内から漏れる明かりが進行方向に見えてくる。

この『深夜のコンビニ』と言うのは、不思議で店内に入ると凄く安心するのは私だけなのであろうか?
心が落ち着くのである。

ゆっくりと近づいてくる明るい空間を体で感じながら、夜食のメニューを頭の中で考える。


今日は袋入りの即席麺にしよう。
ざく切りにしたキャベツともやしが入った野菜のミックスを入れて、卵を落としたものに。



心の隅で、また太ってしまうな…と思いつつ、コンビニへと入っていく。


父が作っていた即席麺を夢見て。


「終」

過去巡り~おもいでめぐり~

この作品は本当にコンビニへ行きたくなった時に書いたものです。深夜に一人で夜道を歩いていると、凄く自分自身と対話しませんか?
いや、変な宗教とかではありませんよ?

なんか過去の事を何気なく思い出したりとか、そう言う事が起こりやすいと僕は思うんです。

これはそういった出来事の作品です。

過去巡り~おもいでめぐり~

父の作るインスタントラーメンとかご飯って、なんであんなに魅力的なんですかね…

  • 小説
  • 掌編
  • 時代・歴史
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-04-01

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