異世界を行く魔女
プロローグ
どうやら私は、異世界に転生したらしい。
どうして唐突にこんな事を言い出したのかって?うん、それはね――――――
なんでもない極ありふれた一日だった。
決まった時間に起きて、
決まった時間に一人暮らしのワンルームマンションを出て、
決まった時間学校の授業を受け、
決まった時間に帰路に着く。
そんななんでもない、ありふれた一日。
だけど、一つだけいつもと違ったのは、そうバケツをひっくり返したような雨が降っていたことだった。激しい雨で視界の悪くなった帰路を、傘を忘れた事で手持ちの鞄を翳して駆けていた私は、
目の前の細い十字路に迫る、車の影に気づかなかったのだ。
ガンッという強い衝撃を感じた一瞬後、自分が宙を舞うのが分かった。
車に跳ねられたというのに不思議と痛みはなくて、スローモーションで映る、雨の降る様をぼんやりと綺麗だなと思って眺めていた。
それからしばらくして、不意に意識が浮上したときには、私は赤ん坊になっていたんだ。これから自分がどうなるのか、どうしてこんな事になったのか、何も分からないまま、
ただ漠然とこれからの生活に不安を感じていた。
異世界を行く魔女