異世界を行く魔女

プロローグ


 どうやら私は、異世界に転生したらしい。
 どうして唐突にこんな事を言い出したのかって?うん、それはね――――――



 なんでもない極ありふれた一日だった。
 決まった時間に起きて、
 決まった時間に一人暮らしのワンルームマンションを出て、
 決まった時間学校の授業を受け、
 決まった時間に帰路に着く。


 そんななんでもない、ありふれた一日。


 だけど、一つだけいつもと違ったのは、そうバケツをひっくり返したような雨が降っていたことだった。激しい雨で視界の悪くなった帰路を、傘を忘れた事で手持ちの鞄を翳して駆けていた私は、
目の前の細い十字路に迫る、車の影に気づかなかったのだ。


 ガンッという強い衝撃を感じた一瞬後、自分が宙を舞うのが分かった。
 車に跳ねられたというのに不思議と痛みはなくて、スローモーションで映る、雨の降る様をぼんやりと綺麗だなと思って眺めていた。


 それからしばらくして、不意に意識が浮上したときには、私は赤ん坊になっていたんだ。これから自分がどうなるのか、どうしてこんな事になったのか、何も分からないまま、
ただ漠然とこれからの生活に不安を感じていた。

異世界を行く魔女

異世界を行く魔女

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-03-03

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