ある甲冑

 本町通りのそばに
 古びた洋館があって
 そこに甲冑が
 あるのが
 通りからも
 見えるだろう

 真夜中
 鐘が鳴る頃に
 それはもう
 こっそりと
 ひとりでに
 動き出すらしい

 幽霊の正体は
 あれを使っていた
 ルイなんとか十五世とかいう人で
 恨みがすごくて
 成仏できずに
 動き出すらしい

 つまりこう
 西洋刀だけが
 空中で
 それはもう豪快に
 ブンブンと
 振られていて
 そして甲冑は
 すこし離れたところで
 それをじいっと
 見ている
 そういう話らしいんだ

 そう
 中身だけ
 恐ろしい話だよ
 本当に
 

ある甲冑

ある甲冑

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-04-01

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