未来からの刺客

未知の島

日本国 福岡県 築城基地

2017年 7月 29日



「あっつ〜い…」

「同感…」

セミが鳴き始めた7月終盤、気温は30℃の大台を突破していた。
パイロットスーツに包まれた肌は蒸した様に汗を吹き出し、空中を飛び舞う蚊が血を求めんと容赦無く針を刺してくる。だから物凄く痒い。

それは相棒も同じようで、やたら背中を掻いたり、もっている書類をうちわ代わりにぱたぱたと仰いでいた。

「春奈、ムヒ持ってない?手、刺されちゃった」

「持ってないよ、楓、待機室まで戻る?」

問いかけに対し相棒の山下 楓三等空尉は首を降って戻らないという意思を示した。

現在は午後1時30分。太陽が真上に上がり一番暑い時間帯でもあるため、蚊の行動は活発になるし足元のコンクリートも暑くなりまるでステーキを焼く鉄板に変化している。

「なんで機種転換訓練を行わなくちゃいけないのよ」

楓が言っている事は一理ある。自分達がいまから操縦するために機種転換訓練を行う機体は今まで操縦していたF-2Bを改良したモデル
のF-2BN「ナイトヴァイパー」で、特に操縦方法は変わってないはずだ。が、何かと心配性の上層部の事だ。もし機種転換訓練を受けずに操縦して墜落でもしたらきっとマスコミなどから「どうして機種転換訓練を行わなかったのか?」と酷いバッシングを受ける事になる心配をしているのだろう。

灼熱のコンクリートを数分歩いていると目的地の格納庫に到着した。格納庫の扉はすでに開いていて、洋上迷彩が施されたF-2NBを外から伺うことができた。F-2NBはF-2Bと外見はそれ程変わっていないが、中身は魔改造されていた。夜間航空能力の向上、対地攻撃機能の追加、そしてF.B.W(フライ・バイ・ワイヤ)操作性の向上などの改良がされていた。

格納庫の中には小さいながらも扇風機が置いてあり小さなオアシスとなった。機体の周りに立っているのは整備員4人と防衛省の技官1人、管制官が2人と自分達合わせ計9人。格納庫はある程度広いので人口密度はそれ程狭くなく、暑苦しくないのが幸いだ。


………………………………………



技官と管制官の話し合いを聞き始めて数分経った頃、いきなり轟音と共に格納庫の頑丈な扉がぴしゃりと閉じられた。

「えっ……」

技官達も何事かと周りを見渡したり扉を見つめたりしている。
普通、空自の格納庫は手動で開くようになっており機械で動かされる自動式ではない。外からも閉めれるがこの猛暑のたむ外には誰いなかった。つまり扉が閉まるはずが無い。どういう事だ…

整備員の2人と管制官1人が扉を開けようとすると扉は難なく開き、青い空と元気過ぎる太陽が顔を覗かせるかと思い、顔を出してみた。

眼前に広がるのは黒白の滑走路と青い海、そして期待していた青空だった。

「はぁ…?」

築城基地は福岡県の内陸部に点在する基地のため海は少し遠い。だから滑走路の向こうに海が見えるなんて事はおかしいのだ。しかしこの後更なる衝撃が来た。滑走路と格納庫の間には先ほどまで歩いていたエプロンが無くなり、2つが直にくっついていた。更に管制塔や待機室など、基地の施設もすべて消えていた。

「どういう事だ」

技官の一人が呟いた言葉はここに居る全員の気持ちを表していた。


………………………………………


しばらくの間呆然としていると、滑走路の方から足音が聞こえて来た。誰かと外に出てみると、白い制服を着用した海上自衛官だった。

「あなた達はどこの所属で?」

「私達は築城の第三航空団です。そちらは?」

「我々は舞鶴の第四護衛隊、港の方には陸自のヘリ部隊と特科小隊もいる。」

一番の疑問をぶつけてみた。

「なんなんですか、この状況は」

海上自衛官も困った顔をし、「わからない」と答えた。

この後一通り基地を歩いてみて、わかった事はかなりあった。

1、陸自、空自、海自の基地の一部がくっ付いて島ができている。

2、その島へ飛ばされた人員は約650人。

3、飛ばされた兵器

やましろ型イージス艦「みかさ」
x1

E-2哨戒機x1

F-2NBx1

UH-60Jx3

UH-1x3

AH-1x2

特科小隊x1

74式戦車x1

89式戦闘装甲車x1

4、レーダーや通信は使えるが基地などとは通信できない。


などとだいたいの事は分かり、この後どうするかと幹部が集まって話し合おうと「みかさ」のCICに集まっていた。

未来からの刺客

未来からの刺客

  • 小説
  • 掌編
  • 青年向け
更新日
登録日
2015-03-30

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