君の時を止めたのは僕、本当に翼があったのは誰

電話

「夏音、お前なあ無理しすぎなんだよ....」
今日も大ちゃんはめんどくさがるような、少し照れたように目を右下に向けてる。
大ちゃんは照れてるときは絶対目を右下にやるのだ。
これは私だけが知ってる大ちゃんの癖。
「えへへ~」
「バカじゃないのか、無理しすぎて風邪ひくとかさ」
大ちゃんはクシャっと前髪を左手でかき上げた。
ちょっとクセのある茶色っぽい髪。 茶色っぽいからよく高校の生徒指導の先生からどうにかならんのかと言われている。
そのたびに大ちゃんはムッとした顔で髪をつまんで地毛ですからと答える。
ムッとした顔もかわいい。 だって大ちゃんはモデルにスカウトされるくらい顔が整ってるから私はデートするとき一歩離れて歩く。
大ちゃんが、こんな私といて恥ずかしくないように。
でも、大ちゃんは知ってか知らずかぐいッと私の手を引いて「離れるなよ」と言う。
その時の大ちゃんは真っ黒に日焼けした肌をちょっと赤く染めていたのを私は知ってる。
「俺、行ってくるわ」 大ちゃんがヨイショと立ち上がってカバンを担いだ。
「うん、気を付けてね。 変な人に狙われないようにね!」
「お前、アホか」大ちゃんが口元に手を当ててはにかむように笑う。
今にも、大ちゃんの背中に羽が生えてどこかへ行ってしまいそうで私は怖い。

君の時を止めたのは僕、本当に翼があったのは誰

君の時を止めたのは僕、本当に翼があったのは誰

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-03-30

CC BY-ND
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