どうでもよいっ!
どうでもよい。どうでもよい。どうでもよいことは普段言葉に出さないものだ。何故ならどうでもよいと思っているからだ。でも出したくなる欲には勝てなかった。そんな随筆です。
どうでもよい
時々生きているのがしんどくなる。別に死にたい訳ではない。死ぬのが怖いとはそれほど感じないが、死にたい訳ではない。ただ生きていても仕方がないように感じてしまうことがある。
僕の中には何かが渦巻いている。それが分かる。だが何が渦巻いているのかはよく分からない。ただどよどよとした渦が底に溜まっているのだけが分かる。
アイデンティティを落とした。アイデンティティって何だ?僕のアイデンティティとは何だろう?とにかく何かやってやろうとは思う。どれほど小さくても、歴史に小さな爪痕を残したいと思っている。だが切実ではない。やんわりと思っている。それが自分で嫌になる。そんな自分が嫌になる。
やる気が出ない。出すものではなくつくるものだ!とか敏感講師は言いそうなものだ。だが作り方も出し方もまるで見当がつかない。ただ出るときは普通に出る。自分でも全くその法則性が掴めない。そして集中力はないのでそのやる気もすぐに切れてしまう。また自分が嫌になる。
友人は何人かいるが、無くしても特に困りはしないだろうと思う。家族が居なくなったら経済的には困るだろうが、感情的にはあまり悲しくならないんじゃないだろうか。友人も家族も僕にとって大切なひとたちであることは違いない。でも泣けない自分がいるのを知っている。ここ数年、感情の昂りで泣いた記憶がない。あくびで泣いたことはしばしばあるが。
時間の恐さと老いの恐さと夜の恐さは僕にとても影響を与えた。どれも人間より遥かに遥かに強い存在で、勝ち目がない。人間にとってこれらは絶望そのものである。僕にとってもこれらは絶望そのものだ。長く鈍い絶望だ。
ものすごくしたい訳ではない。だが一番したいことはある。物事には順位がつく。だから僕のなかの微かな欲望がそれに爪を立てる。それをしてそれをして、いつか歴史にこの名を残せたら、素晴らしいなと思う。素晴らしき素晴らしきこの世界に虚弱に立つ、僕ひとりの小さな渇望。
どうでもよいっ!
どうでもよいと思っている。悩みも嬉みも決意も僕にとっても世界にとってもとてもちっぽけなものですぐに移り変わり心変わりする可能性を持っている。でもそれをその時確かに僕は思っていたって、そのことを記録していたってあとの僕が知れば、きっとちょっと良い気持ちになってくれると思う。どうでもよいことには違いないが、この感情は無駄なことではないはずだと、僕はそう信じる。