煙。

影送りが

色濃く映る空の下

火葬場の入り口では

これから家を見る妹が

父の遺骨を抱えている。

後から来る私は

父の遺影を掲げ

笑った顔に笑い返し

すっぽりとマスクで顔を覆いながら

遺影を眺めてひたすらに泣いた。

(華やかな会場を眺め、賑やかに送り出される父の心情を思い

一人一人に下げる頭が、余計に重たい。)

三人の娘は

生涯随一の宝物。

母の傍らに寄り添い

丁寧な礼をする父が居るようで

曇り空の間から

少しだけ光が見えた・・・・。

(これからの旅路で、無事に祖父母に会えるよう

父のこれからを静かに思う。)

灯した蝋燭がゆれて

呼吸の変わりに波打つ様は

たくましく燃えた命にも似て

残されたという想いが

母と娘を支配する。

「また、帰っておいで・・・・。」と

手渡された3千円の電車賃。

それはまだ

都内のアパートの引き出しで

使われる日を待っている。

煙。

煙。

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-03-28

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