口にせずにはいられない

同性愛的な表現があります、苦手な方はご注意を。

それがあれば平気なものが、個人にはある。
たとえば、人間は食事をしなければ生きていけはしない。
睡眠、食欲と性欲は人間の三大欲求だ。
もちろん鳴海は健全な人間なので、腹もすくし、眠たいと思う。
背は高くないとはいえ、鳴海も男なので、性欲だってある。
しかし、それらは生きることに必要であって、鳴海自身が個として存在するために必要かというと、そうではない。
生きることを前提として、それでなお、人が個として生活をしてゆくためには、人それぞれ必要なものがあると思う。
あるいは、それさえあれば、生きることに必要なものさえ、なくても平気というような。
鳴海にとってのそれは、耳にしたイヤホンから鳴り響く音楽ともう一つだ。
それは子供が嗜好するような駄菓子。
かさりとして様々な味のするそれを、鳴海は好んでやまない。
それさえあれば多少の嫌なことは平気だと思える。つらいことでも、嗜好品をもつことでその思いから目をそらしてごまかすのだ。
鳴海もそうして、嫌なことをごまかす時も多い。
しかしいつまでもくよくよもしていられないから、それは鳴海なりの気分の切り替え方である。
別段、卑怯なことでも何でもない。人間だれしも、常にすがすがしい気分でいられはしないのだ。
切り替える方法を明確にしておくことは一種の手段だろう。
「・・・鳴海、またお前は。口元を汚すな」
サークルの窓から外を見ていた鳴海は、横に立った男に苦言を呈された。
音楽を聴いていても響く心地の良い、甘い声で言われても改めようとは思えない。そう思わせるこの男のこういうところは欠点だと、鳴海は思った。
いつの間に入ってきたのかと首を傾げながら、鳴海は耳にしていたイヤホンを外した。
「平坂はうっせーなー。いいじゃないか、必要なんだよ」
口にくわえていた黄色い駄菓子をさくさくと食べきって、べろりと舌で唇をぬぐう。
唇の端に菓子のカスがついていたのがわかったが、えーと舌を伸ばしても届かず、仕方なく親指の腹で口元をぬぐう。
そんな行儀の悪い鳴海の行動を、平坂は咎めるようにじっと視線を送った。
鳴海は何も言わないなら知ったことか、とべろりと親指をなめてしまう。
しょっぱいなあ、水がほしいとぼんやり思っていると、はあ、という何か言いたげなため息が聞こえた。しかし、鳴海はするっと無視する。
そんな鳴海の隣で平坂は窓のサッシに腰掛け、視線を動かし、下で広がる光景を見下ろした。
「・・・ずいぶん、めんどくさそうだな」
その言葉に、鳴海も平坂の視線を負う。
鳴海は窓の近くに椅子を引き寄せて、腕を横について彼女のことを見ていた。
平坂も視線を向ける人物は同じようで、件の彼女は暇そうに頬杖をついている。
相変わらず変化がない彼女の後ろ姿に、鳴海は隣にいる男に視線を向けた。
平坂は少し猫背気味だが、そうして窓辺に腰掛けているだけでずいぶんと絵になる男だった。顔立ちが、彫りの深い、西洋人のような顔であるというのもそうだろう。
皮のついたアーモンドのような、こげ茶の目と髪は自前だというが、彼はどこか日本人離れした雰囲気を持っている。長めの髪は軽くパーマをかけていて、眼鏡をかけていても野暮ったく見えないのは、きちんと身なりに気を使っているからだろう。
対して鳴海は、染めた金色の長めの髪を後ろで適当に結んでいる。地毛はとても黒いので、眉も染めてしまった。
おかげで不良だとかたいそう軽くみられるのだが、学部で成績は一番である。
「あー、まあ、霞さん、たぶん、キセルが吸えなくてイラついてんじゃないかな」
はは、と苦笑して、鳴海は窓の外でつまらなそうにベンチに腰掛けている彼女を見た。
彼女の髪は黒い。短く切られたそれは白く細い首をさらしていた。
彼女は赤く染めた指先を苛立ったように首の後ろに向けて首と肩の付け根あたりをなでている。
彼女はいらいらとするとその動作を行うので、それを知ってる二人は顔を合わせて苦笑する。
「・・・霞さん、こっえーな」
「あれでも穏やかじゃないか」
違いない、と鳴海が笑うと、彼女はつまらなそうに上を向いた。
背もたれをすぎて、だらりとのけぞるように顔を後ろに向けた彼女と、目が合う。
彼女の素顔は派手だが、化粧によってさらにモデルのようになっている。
きつい色の赤い紅が彩る口元はしどけなく開かれ、中から赤い舌がのぞいていた。アイラインで強調された黒い目が猫のように鳴海と平坂をとらえる。
にい、と彼女がその赤い口元を裂いて笑った。
ひらひらと手を振られ、鳴海もひらひらと手を振る。
「霞さん、ほんと名前をけっとばすよなあ。今日も赤いお色が美しいことで」
彼女の名前であるかすんだ色は、そのファッションには一切反映されない。
どきつい赤と黒で着飾る彼女は、しかしそれがよく似合う。
鳴海は常々、赤い唇は女を選ぶと思う。
かわいいと思える子、例えばモデルでも赤い唇が違和感を発していたら、それはだめなのだ。
そんな女は、薄紅色でも指していればいい。
鳴海は彼女をみて心の底からそう思う。
口を彩る紅の色でさえ、似あう、似合わないがある。
女は顔だちと選んだ色によって印象が変わるから、それをよく理解すべきだ。
そのことをよくわかっている彼女は、だから芸術品のようにさえ思えてしまう。
「だからあの人のペンネームは黒崎アカネなんだろ」
平坂は眼鏡を押し上げて、だらりとこちらを見上げる彼女を見下ろす。
「うん、まあねえ。・・・そろそろ霞さんにお助けかな。あとが怖いし」
鳴海はスマートホンを取り出すと、彼女の名前を引っ張り出して、電話をかけた。
その動作を見ているのだろう、彼女もスマートホンを取り出して画面を見た。
やがて電話がかかり、彼女が態勢を戻して電話に出る。
「はろー。脚本家さん」
『・・・遅いぞ、お前。もっと早くしろ』
彼女の不機嫌そうな声が電話越しに聞こえてきて、ははと鳴海は苦笑した。
「毎回、貴方を助けて怒られるのはぼくらだよ」
ちっと電話越しに彼女は舌打ちした。
『あたしの見えないとこでやりやがって・・・文句ならあたしにいえっつうんだ』
いやあ、ははと鳴海は笑って。
「そりゃあ無理でしょ。あの監督、霞さん大好きなんだから」
『・・・ああ、わかった、そっち行く』
ぷつりと電話が切れて、視線の先の彼女はベンチから立ち上がった。
「・・・霞さん、なんて」
平坂の平坦な声に、ははと鳴海は苦笑して見上げた。
「こっち来るってさ。不機嫌そうだったから、怒られるかも」
はあ、と平坂は下を向いて息をつくと、くしゃりと鳴海の頭をなでた。
「あとでうまい棒かってやる」
わーいと嗜好品の獲得に無邪気に笑って、鳴海は体をねじる。窓に背を向け、深く腰掛けて、埃っぽい室内を見やった。
室内にはたくさんの段ボールと、物置のようにいろいろなものがあふれている。棚もあり、そこには一応の湯呑と急須が置いてあった。
そんな室内を見て、ふいに。
「っつーかさ、何してんだろうなって、たまに思うわ・・・」
そう思って、それをそのまま口に出した。
平坂は前髪をくしゃくしゃと撫でたあと、そっとすくように後ろまで頭をなでる。そして金色の髪を結んでいるゴムに手をかけると、ばさりとそれをとってしまった。
「いいんじゃない。最初より、いい顔してるから」
ぐしゃぐしゃと撫でられて、鳴海はさすがにおい、と平坂の手をつかんだ。
「いい加減に・・・」
と、鳴海が顔を上げると、平坂のきれいな顔が近づいてきていた。間近で見る平坂の目は、色素が薄く、目が悪い人によくありがちなように少し濡れて光っている。
ふ、と視界がおおわれ、鳴海の唇に他人の体温がふれた。
しかし、それは触れただけですぐに離れて行ってしまった。
「・・・ナニ」
固まって、いぶかしげに顔を伺えば、平坂はゆったりとほほ笑む。
「さあ?なんかチューしたくなった」
あっそ、と鳴海は白けたように膝に頬杖をついた。
慣れとは恐ろしいもので、平坂がこうして触れてくるのは初めてではない。
はじめこそ混乱していたものの、平坂の接触に性欲を掻き立てるようなものはなく、ゆるやかな接触は回数をこなすうちに抵抗がなくなってしまった。
「ほんっと、平坂はよくわかんねえ」
そうかな、と平坂が微笑むので鳴海はつかんでいた手を放した。
平坂はそっぽを向いた鳴海にかまわず、同じように窓に背を向ける。
接触は緩やかで、急くようなものは何もない。
母親が子供にするような、慰めの動作は、むず痒いけれど、居心地がいいと思う。
鳴海は、きっと平坂は己のことを憐れんでいるのだろうなと、ぼんやりと思う。
大丈夫だというように、泣きそうな子供にするようなしぐさの通り、鳴海の心は傷ついていて、軋むように泣きたがっている。
それを察しているだろうに、平坂は突っ込んで聞いてくることはない。
ただ、いつもこうして隣にいるのだ。
気づいているはずだと、鳴海は思う。
自分が髪を金色にしている意図に。
「・・・鳴海は、愛らしいよな」
成人を迎えようかという、仮にも男にその言葉はどうなんだと、平坂に非難する目を向けた。
すると、カツカツ、と高いヒールが床を鳴らす音が鳴海の耳に届く。
そしてすぐにバン、とドアが開いた。
「・・・おい、とっとと窓閉めろ。私は花粉症だ」
入ってきて早々、偉そうに顔を上げていったその言葉に、にはと鳴海は笑みを見せた。
平坂は息をついて、からからと窓を閉める。
「さっきまで外にいた人のセリフじゃないよねえ、霞さん」
「薬飲んでるに決まっているだろう、じゃないと外だって歩けやしない」
どかりと部屋の中央に置かれた机のそばにあるおいてある椅子のひとつに腰かけて、彼女はゆっくりと長い足を組む。
「花粉があたりに飛散するのに、私は異議を唱える気はない。生殖行為が害悪だというのなら、人間こそ滅べばいい」
と、彼女はふうと息を吐く。
「忌むべきなのは、花粉とまじりあうことで害悪になる、排気ガスだ。ああ、まったく車の数は減らないものかな」
悪態をつく、黒と赤のコントラストを纏う彼女こそ、先ほど外にいた霞だった。
黒いスキニージーンズに、赤いヒールを履いているせいもあって、ひどくすらりとした印象を受ける。上は赤いシャツに黒いジャケットというずいぶんラフな格好だが、それでもモデルのような華やかさがあった。
スタイルがずば抜けているのかというと、そういうわけではない。けれど彼女はどんな姿でも、トップモデルのような芸術性を感じさせる。けばけばしさとは違う、華やかさがあった。
例えるなら彼女は、赤いバラのようだ。
「撮影のほうは順調か?」
平坂の言葉に、ふんと霞は鼻を鳴らした。
ジャケットの内側からペンケースのようなものと、細長い、黒いケースを取り出す。細長く黒いケースは筆のようにさえも見え、けれど中から彼女が取り出したのは煙管(きせる)だった。
「花魁煙管(きせる)じゃん。相当フラストレーションたまってるの、霞さん」
細長い筒の部分は赤く、吸い口は金色。火を置く火皿の部分も同じような金色で、使い込んでいるせいか、少しばかりすすけている。
これが花魁煙管(きせる)、というものであるというのを、鳴海は持ち主である霞自身から聞いていた。
霞はタバコがたいそう好きで、どこからうまいと聞いてきたのか、煙管(きせる)まではじめてしまった。
そして彼女はいらいらすればするほど、それを出してすぱすぱと口にする。
煙管(きせる)の煙がたいそう『うまい』らしい。残念ながら、駄菓子を嗜好する鳴海にはそのうまさがわからない。
「ろくに吸う時間もありゃしない。私は原作者であって、脚本家じゃないんだぞ」
彼女はペンケースのようなものから刻みタバコという草のようなものを少し取り出して、先端の皿である雁首に詰める。そしてライターで火をつけると、掌で持ちながら、ぷかりと煙をくゆらせた。
赤い口紅が、彼女の煙管(きせる)の吸い口についている。
まるで血でもすすったみたいだと、鳴海は思う。
「だいたい、なァーにが、私の作品を使いたい、だ。脚本家がいるんだから、こんなさびれた文芸サークルの作家を引っ張ってくるな」
霞は目を細めて、悪態をつく。
それには反論しようがない平坂と鳴海は顔を見合わせて苦笑した。
三人が所属するのは、有名な総合大学の文芸サークルだった。ほかにも何人か所属している人はいるが、年に一回、文化祭で会誌のようなものに作品を乗っけて発行する程度で、ほとんど活動はしていない。
文芸サークルはサークルが置かれている棟の、最上階の端から二番目に位置している。窓からは中庭がよく見えるようになっていて、春にお花見をするには最適だった。
そんなさびれたサークルによく来るのは鳴海を入れて五人ほどだ。ちなみにその数は鳴海自身も含まれている。
静かで騒音を好まない人間などにとっては非常に心地よい場所なのだ。もちろん、そんな風に考えるだけあって、相当異色な人間が多いサークルではあるのだが。
「脚本家の人の、作品みた?」
鳴海が首をかしげると、霞は目を細めて、肩をすくめた。
「ああ。だめだ、ありゃ」
そんなサークルの中でもとりわけ異色な作家が、煙管(きせる)をくゆらす黒崎アカネこと鴉百合霞だった。
彼女は、おそろしく感情的なものを書く。
どこまでも純粋なものから、狂気に満ちたものまで、彼女の作品の中には、あらゆる感情が炎の塊のように、激しく燃え盛るように存在している。
それは読んでいるものを引き込み、おぞましさを植えつけるほどだ。
霞の作品のファンは割合多く、会誌はそのためにかすぐになくなる。学校内ではかなりレアなもので通っている。
あまりにも会誌がレアであるため、霞の作品を読みたさに、ネットにあげるものもいたりするほどだ。
最近はそういうこともできるので困るとサークル長が常々こぼしていた。広く情報が知れることはいいことだが、その分デメリットも、もちろんある。
今の世の中では情報における秘匿性は保たれにくい。
だが、そういう不届きものは、このサークルの長がネットやら人海戦術やらを使って、首謀者を特定してしまう。さらにネットにさらした挙句、触法行為をきっちりと証拠とともに羅列して大学側に突きつける。
それでも制裁がない場合は何のツテか、警察につきつけ、それでもダメだと首謀者は自主退学して社会から消えてしまう。
らしい。
らしいというのも、さらして大学に突きつけた時点で、何かしらの処分が科されるのでそこまで行ったことはない。
ただ、それだけの権力はあるそうなので、いくらでも頼っていいというのがサークル長の口癖だった。
ちなみにサークル長は法学部であり、非常に優秀である。
ともあれ、少数精鋭の文芸サークルに撮影だのなんだのは必要ないはずなのだ。
だというのに今そんな言葉が飛び交うにはちょっとした事情がある。
大所帯の映画サークルで、業界からも注目されているという監督が、霞にぜひ作品を使わせてくれと頼み込んできたのだ。
ちなみにこの映画サークル、自分たちで映画を作るのである。
彼女は面倒くさがり、脚本は拒否。
代わりに原作提供という形で終えたのだが。
しょっちゅう映画監督に現場に呼び出されては、撮影現場をみて演出兼脚本の真似事をさせられている。
ぷかぷかと煙を吸い込む霞は少し機嫌を直したのか、ふうっと息を吐いて、眠たそうに瞼を半分ほど降ろした。
「才能がないというのか、なんだろうな。あの脚本家には、きっと、美しいと思えるものがないんだ」
と、本来ならば作品を書くであろう脚本家のことを、霞はそう評した。
「あるいは、中毒者じゃない。だからこそ、だめなんだろうな」
霞は雁首から燃えてしまった灰を、持っていない手で筒の部分、羅宇を、とんとんとたたいて灰皿に落とした。
煙管(きせる)の煙はうまいらしいが、あまり長くは楽しめないらしい。
それも鳴海は霞から聞いた。
そして彼女は灰皿の上に煙管(きせる)を置くと、珍しくペンケースのようなそこから紙巻の細長い煙草を取り出した。
火をつけて、ふうと息をつく。それは甘い香りを含んでいて、そこらじゅうに甘ったるいにおいが充満した。
「ちょっと、霞さん」
平坂は顔をしかめて、窓を開けた。
「オイ、変態坂」
窓を開けたことに霞は思いっきり顔をしかめた。
しかし平坂も口元を覆い。
「俺は変態じゃないし、香りきつすぎ、それ」
という。
ふーん、と鳴海は、うるせえという霞の言葉を聞き流す。そして中毒者じゃないという霞の言葉に首を傾げた。
「中毒者だったら、霞さんみたいなの書けるわけ?」
霞は指の間に煙草を挟んだまま、口に持っていく。そして思案するように甘い香りのするそれを手で支えた。
「・・・別に、あたしみたいなのじゃなくてもいい。たぶん、あの迷惑な監督が、私が『美しい』と思うものを、価値があると思っただけなんだろうな。・・・あの脚本家は、あの監督みたいに、入れ込んで考えてしまう、まじめにやろうとしてるやつほど、いらないと思うだろ」
美しいねえ、と十分美しい彼女を見つめて、鳴海は平坂に顔を向けた。
「平坂は、その脚本家知ってる?」
いや、と首を傾げて、平坂は窓のサッシに腰掛けた。
「あの監督は知ってる。物好きだなあって思ったけど」
そうだな、と霞は口の先をすぼめて、ふうと白い煙を吐いた。
「まあでも、あいつの考えていることは、わからなくもない。あのクソ迷惑な監督は、私たちに近い」
ただ、と霞はきつく彩られた目を伏せた。
「近いだけであって同じではないよ。鳴海、できるだけお前はあいつと話さないほうがいいと思う」
なんで?と首をかしげると、霞は柔らかく目を細めた。
鳴海は自分が黒と赤の芸術品のような先輩にそれなりにかわいがられていることを知っている。なので、なんとなく気恥ずかしさを覚えた。
パイプいすの上に体育座りをして鳴海はその感情をごまかす。
「不愉快に、お前は思うだろう。あいつは、自分で美しさを手に入れることはできないやつだから」
「監督なのに?」
そうだよ、と霞は微笑んだ。
それは少々加虐的なものであり、あざけりの色さえうかがえた。
彼女はふーと長い息を吐いて、目を伏せた。
「私は、人の『感情』を美しいと思う。特に、憎愛混じった女の激情は最高だよ。夜叉姫の話は知ってるか。子を失った女が、狂うて人を惑わし人を食らう。もう、その狂気は最高の美だよ。絵画を見るよりも素晴らしいと、私は思う」
酒を飲み食わせばその話をするので、聞きなれたそれを、はいはいと鳴海は半目になってうなずいた。
彼女の美しいものは明白だ。
ヒトの『感情』、『激情』あるいはすこしの『情』でいい。
人が見せる情が、彼女にはどんな宝石よりも価値があるという。
だから彼女は、書かずにはいられないのだと口にする。
「だから私は書くのさ。悲劇でも復讐でもいい。青春だって構わない。憎さと表裏一体の、美しい愛をね」
だが、と霞はタバコを口の端に咥えて両手を組んだ。
「あいつは、美しい世界を作り出すことはできない。なぜなら監督であり、あの男はすでにある世界を表現することにしか才能を発揮できないからだよ」
ああ、と平坂は納得したような声を出した。
「あの男は、そのことに関しては才能がある。だから、物事を淡々としか綴らない脚本家ではだめなんだ」
霞の言葉に、なるほど?と面白そうにいったのは平坂だった。
「つまり、霞さんのような、強烈な、表現しがいのある世界観に、彼は憧れるわけだ」
平坂はふ、と笑みをこぼして、鳴海の頭をくしゃりと撫でた。
よくわかっているじゃないか、と霞はにやりと笑った。
たしかに霞の持つ世界観は圧倒的だ。
激情でも感情でも、彼女は人間の情の交わすさまを描くことにかけては特筆しがたいものがある。
表現するとしたら、したいと思う側からしたら、その世界観は素晴らしいとさえ思えるのだろう。
鳴海はたしかになあ、と平坂に頭をなでられながらも納得した。
「その分、やつは他人の世界に、あるいは他人が引いている一線の内部に軽々と踏み込んでくる。土足で、隠したいような、嫌な部分さえ知りたいと迫ってくる」
自分自身で生み出すものよりも、他人が生み出すものに、興味がやまないのさ。
そういうと、く、と霞は喉を震わせて、口の端を持ち上げた。
「ああ、それやだな」
と、苦笑した鳴海の上で、へえ、という、聞きなれない低い声がこぼれた。
鳴海が顔を上げると、平坂は鳴海が見たこともないような暗い顔で、うっすらと笑っている。
色素の薄い瞳に光はなく、どろりと淀んでいるようだ。暗く濁ったそれは様々な感情をにじませている。
怒りのような、敵意のようなものがにじんだその顔に、鳴海は思わず顔をこわばらせた。
すると何に気づいたのか、すぐに平坂は鳴海を見下ろす。
鳴海が体を固くしたのを察したのか、平坂は苦笑をにじませて眼鏡の横のフレームを親指と薬指で持つようにして押し上げる。
「ごめんごめん」
何がごめんなのか、平坂はかがみこむと、鳴海の額にそっと唇で触れた。
さすがに霞の目を意識して、ばちんと鳴海は平坂の頬をひっぱたいた。
「・・・んだよ、もうセックスでもしたか?飯おごりに行ってやろーか?赤飯のうまい店なんかあったっけなあ・・・」
まだ明るい時間にそんなことを平然と口にする霞に、鳴海は顔を伏せて縮こまった。
「してないし、ぼくゲイじゃないし、まだ昼間なんですけど!」
鳴海の叫びに、ふんと霞は鼻を鳴らした。
「お前らは二人でいちゃこらしてりゃいいんだよ。鳴海も抱っこにおんぶがお似合いだぞ?」
白い歯を見せてにやにやとする霞を、鳴海は思いっきりにらみつける。
反論しない平坂も平坂なので、鳴海はぎりぎりとしかめっ面をして不快感を示した。
「まあ、鳴海?お前は、なんかあったら私に言えよ?ぼこぼこにしてやんから」
そしてにらみつけられても平然と霞はそう口にして、煙草をくゆらす。
はあ、と吸い込んで煙を楽しむ彼女のその言葉が、案外本気なのを鳴海は知っていた。
もともとこの先輩は手が早い。元ヤンキーじゃないかと鳴海はひっそりと思っている。
しかし彼女は粗雑な言動をしていても、情の深い人だ。
人が困っていて、助けられるならば平然と人を助ける。っただし助けられないと判断すれば霞はあっさりと切り捨てる。
そんな彼女が無理をしてでも助けるのは、いわゆる彼女が『身内』認定しているものだけだ。
鳴海はそのことをはっきりと明言されていて、そして甘やかされている自覚もかわいがられているという自覚もあるので、多分この先輩はぼこぼこにすると言ったら本気でする。
まったくこの先輩は、と、うれしいやら恥ずかしいやらで、鳴海は足を投げ出して、照れ隠しにしかめった面をするしかなかった。
そんなとき、ばたばたっとせわしない音が聞こえてきた。
その音にちっと舌打ちをしたのは霞だった。
「ユリカ!見つけた!!なんでこんなとこいるんだよーって、甘ッ!?なんかむっちゃ甘いにおいする!!」
鳴海が首を傾げる間もなく、音を立てていた張本人は室内に入ってきた。
すらりと背が高いが、筋肉質なのが服の上からうかがえる。パーカーとジーンズといったラフな格好なのに、中世的な顔のせいか、はたまた豊かな表情筋のせいか、ずいぶんと決まっていた。
染めているのか、赤茶けたオレンジ色の髪は後ろで結んでいるようだ。
霞は一瞥もくれず、ふーと煙を吹いているばかりだ。
突然の闖入者に平坂も鳴海も目を見張り、二人で顔を見合わせる。
しかし闖入者は霞の歓迎しない態度にも、鳴海たちの動揺も意に介さず、ずかずかと入り込んできた。
「へーずいぶんとものがあるんだな、あ、君知ってる!」
入ってきた男は顔を輝かせて、鳴海を見た。
その一言に。
(あ・・・)
どく、と心臓が跳ねる音が、した。
いたい、と鳴海はトレーナーの上から、左胸を抑えた。
「君、橋詰凪だろ?ほら、ピアニストの!高校生の途中までいろんなコンクールで賞を取りまくってた、あの!」
「ち・・・」
ちがう、と声が出なかった。
鳴海の心臓はばくばくと大量に血を吐き出している。痛いくらいに高鳴るそれに、死んでしまいたいと泣きそうに思う。
平坂と霞には、このサークルのメンバーには知られたくなかったのだ。
ここの人たちは一風変わっているが、やさしい人ばかりだった。
ひどい顔をしていた鳴海を引き入れ、それでもそんな状態にあるのをなぜと問い詰めても来ない。
事情があるのは仕方ないと、触れずにいてくれたことが、鳴海には本当にうれしかった。
腫れものを扱うようでなく、仕方がないのだと、そうして一緒にいてくれる人たちが好きだったのに。
「でも事故したって聞いたけど、本当?高校の途中でさ、めっきりコンクールでなくなったから、引退したって話も聞いたけど・・・あ、頭に傷跡が・・・?」
(だ、だめだ。しられ、た・・・)
伸びてくる手に、鳴海の目の前が暗くなる気がした。
もう終わりだと、うつむきそうになったとき。
ふ、と視界に赤いものが飛び込んできた。
それと同時に、ぐいと肩をつかまれ、硬い体に触れる。
鳴海の目にはやけにゆっくりとその姿が映った。
赤いものは、霞のハイヒール。
それは目の前の、無邪気に話す青年の頭の横まで来たかと思うと、思いっきり頭をけっ飛ばしていった。
があん、とけっ飛ばされた青年は頭から吹っ飛び、木製の棚にばあんと思いっきりぶつかっていった。
九の字に折り曲げた、細長い黒い足を、霞はゆっくりとおろして、ふーと煙を吐く。
かつ、と赤いヒールで歩き、机の上にある灰皿に、短くなった煙草を押し潰して消す。
彼女は淡々と煙管(きせる)をしまうと、くるりと鳴海に向き直った。
何が起こったか理解できつつ、それでもあっけにとられていると、彼女はもう一本白い煙草を取り出して。
「お前が誰であろうと、どうでもいいんだよ、私は。20年も生きてりゃ、トラウマも、それなりの事情も生い立ちもいろいろ抱えないといけねえんだ。それらが理解できねえ奴は、一生ガキのまんまだからな」
いいんだよ、と霞は冷たい掌で、くしゃりと鳴海の頭をなでた。
そしてしゅ、とライターで火をつけると、甘い香りのする煙をぷかりとくゆらす。
「長とか、あの人のほうが、よっぽどまずいしなあ」
はは、と苦笑交じりに鳴海を抱き寄せた平坂はそういう。
「いって・・・あ?」
うめく青年を霞は目元を眇めて見下ろした。
「オイ、てめー。あたしの作品を使いたいだけだろうが。カンケ―ねーやつに触手伸ばしてんじゃねーよ」
がん、と棚にぶつかった頭のすぐ横に赤いハイヒールをたたきつけ、無表情に煙をくゆらす。
鳴海はこの人は実は本当に元ヤンなのでは、と思わずにはいられなかった。
「・・・ユリカ、なんで怒ってるの?」
青年は傷ついたような、それでいて不可解とでも言いたげに顔をゆがめた。
「私でよかったんだぞ。あそこの変態坂は、もっとおっかないことになるからな」
変態じゃないから、と平坂は相変わらず鳴海を抱きしめながらつぶやく。
「なに、あの人、カレシかなんか」
鳴海としては、美しい芸術品のような先輩は鑑賞するだけにとどめたい相手だった。過激だし、何よりも苛烈すぎる。
付き合うとか付き合わないとか、そんなことは恐ろしすぎるので考えたくもない。
「中学生かっつうんだよ。コイアイで世界回ってんじゃねー」
つうか、と口元に手を当てて煙草を挟み。
「カンケ―あんのか、お前に」
と、霞は感情を移さない目で、青年を見下ろした。
「・・・霞さん、殺意出てるから。さすがに長も、殺人をもみ消すのは大変だと思う」
そうじゃないだろ、平坂、と鳴海は頭を抱えた。
彼女はぷかりと思案するように煙をくゆらせ、そっと足をどけた。
そして霞はくしゃりと自分でこめかみにかかる髪を掻く。
「・・・まあ、そうか。はあ、なんかもう、この間から散々だな。はあ。っとによー。ワリィ、平坂、鳴海のほう頼むわ。・・・あ、ここは使なよ?」
悪いな、と霞はかすかに目を細めて、鳴海の頭をなでた。そして彼女はくわえ煙草をしたまま、カツカツと歩いてゆく。
出て行ってしまう、と思って、何か言わなければと、鳴海は口を開く。
「あ、あのさ、霞さん」
彼女は入り口で止まると、顔だけを向けた。
「ぼ、僕、間違いなく、鳴海凪だから。あの、あのちゃんと」
話すから。
小さく、うつむいてそういうと、ふ、と彼女が息を吐いたのがわかった。
そろりと顔を上げると、彼女は無表情にいいよ、と口を動かした。
「いくらでも待ってやるし、つうか、無理して話さなくてもいいぞ」
お前は、と鳴海に背を向けて、かつりと彼女は歩き出す。
「鳴海だろ。私のかわいい後輩だ」
ひらひらと手を振ると、彼女はカツカツとハイヒールを鳴らして颯爽と立ち去った。
そして彼女の姿が消えると、すくりと霞に吹っ飛ばされた青年が立ち上がる。
彼女が歩いて行ったほうを見つめて、不可解な顔をする。
「・・・ねえ、君らどっちか、彼女の恋人?」
人目もはばからず平坂がひっついているのに突っ込めず、鳴海は顔を上げた。平坂も顔を下に向けて、お互いに顔を見合わせる。
「「まさか」」
と、そして二人同時につぶやいた。
「・・・まあ、霞さんは一端内側にいれると、けっこう大事にするから。あなたはそれを見誤ったんだよ」
平坂はそう言って、にっこりと笑う。
確かに事実だが、そんなことを言ってどうするのだと、鳴海が顔をしかめると、そっか、と青年はぽつりとつぶやいた。
「うん、ありがと。あと、君、鳴海くんだっけ?ごめんね」
と、言うや否や、彼は霞の後を追うかのように走り出す。
ぱたぱたとあわただしく出ていった青年に、鳴海は嵐が去ったような気分さえ味わっていた。
知られると恐怖していたのが、ばかばかしくさえ思えた。
それでも素直にすべてを話せるかといえば、鳴海はやはりそんなことはできないだろうと思う。
もう四年だ。
それほどの歳月を経てもいるからなのか、昔よりは軽く思えていることに気が付いた。
当時は、死にたい気分を味わって、食事もろくに通らなかったというのに。
気が付けば、酒を飲めるような大人になっている。
「・・・良くも悪くも、月日は残酷だな」
平坂に抱きしめられているが、鳴海は特に文句を言うこともなかった。
彼はよしよしと大きな手で鳴海の頭をなでる。
甘えさせるのがうまい平坂に、鳴海はついつい甘えてしまうのだ。
平坂は、男らしくしっかりとした体躯の持ち主だ。女のような柔らかさはなく、その体は堅い。
けれどそれゆえにしっかりとしていて、どこか安心感があった。
「仕方ない。月日が流れていくのも、人を愛することも、仕方がないんだよ」
時間の流れと愛は一緒かと、鳴海は平坂を見上げて笑った。
平坂も苦笑交じりにアーモンド色の目を細めて、両手で鳴海の頬を包んだ。
「仕方ないだろ。どうしようもなく、」
いとおしいんだから、と平坂のささやくような声が、祈るように降ってくる。
じわりと、鳴海はどうしようもなく痛んだ。目に涙を浮かべてしまって、こぼれる水の粒に、顔がくしゃりと歪む。
見えているはずだった。
平坂には、金髪の中に隠れた、鳴海の頭にある傷痕が。
それでも平坂は、目を細めて、大丈夫だという風に微笑んでいる。
そんな平坂がやさしさを差し出してしまうから、鳴海は泣かずにはいられなかった。
「・・・ぼく」
声が震えて、うまく言えないなと鳴海は思う。
平坂は仕方ない、とそう言って、鳴海の目からこぼれる涙をぬぐった。
「そういうことだってある。苦しいこと、いえないこと、あるから」
鳴海はトレーナーの袖で目元を覆った。片腕で隠すようにしてから、すうと息を吸う。
「高校の時に、突き落とされた。そうだよ、ぼくはピアニストだった。泣いてもわめいても、苦しくて死にたいと思っても、ピアノに指を置くような人種だった」
だった。
そう、過去の話でしかないのだと、鳴海は思う。
「駅のホーム。僕は指が傷つくのが恐ろしくて、頭をかばわずに指をかばった。頭を打って、傷がひどくて、こうして縫って、あとが残った」
うん、と平坂の声が、鳴海の耳に響く。鳴海は寄りかかったまま、だけどと続けた。
「目が覚めたとき、動かない指にがくぜんとした。僕は三日も眠り続けて、おかげで指が三日分なまった。そのあとも、ケガがひどくて、ピアノに触れなかった」
もっとひどかったのは、と鳴海は涙を止めた顔から腕をどけて、すがるように手を伸ばした。
「ピアノ、聞こえなくなって。自分の音が、聞こえなくて聞こえなくて。そのくせ、絶対音感がでて、日常の音はもう音階がわかるほどに聞こえて」
もう、むちゃくちゃになったんだ、と鳴海は、すがるように平坂を見上げた。
彼は痛ましいような表情で、鳴海の伸ばした手を握る。
そしてなだめるように、幼い子供にするように、唇で額に触れた。
触れるだけのそれは本当に穏やかで、だからこそ鳴海はまた泣きそうに顔をしかめた。
「だから、ぼくは、ぜんぶぜんぶ捨てた。ぼくには何もなくなった。ピアノがないと、生きていけないと、そう思ってたのに、死ねなくて、ずっと」
うん、と苦笑いをした平坂は、横からすくうように鳴海を抱き上げた。
視点が逆転し、今度は鳴海が平坂を見下ろすことになった。
「死ねなくて、じゃない。誰も鳴海に死んでほしいなんて思ってないだろ。いいんだよ、鳴海」
どうしようもないんだ、と平坂は眉根を下げて、困ったように、それでも笑った。
「理屈では、どうにもできないんだ」
泣けば?と平坂は鳴海の背に手を回した。
「泣いて泣いて、それでもやってくる明日に、絶望して生きよう?誰かに愛されて、苦しんでいこうよ」
なだめるような言葉に、鳴海は平坂に素直に抱き着けなかった。
「愛されても、返せるものなんかないのに?僕のすべては、ピアノにささげてる」
愛も、苦しみも鳴海のすべてがピアノだった。
霞が人の感情を美しいというのなら。
鳴海は、軽やかなあの音色が、きっと美しくて仕方ないのだと思う。
彼女が作家として書かずにはいられないのと同じように、鳴海は演奏者として音を鳴らさずにはいられない。
文字の代わりに鳴海は語らうために指を鳴らす。
あの白と黒の鍵盤の上で鳴海の指先は踊った。
それがないのに、どうしろと答えを求めた。
そうしても意味がないことを理解しながら、それでも鳴海は問うた。
「見返りなんかいらないよ。少なくとも俺の愛はね。俺の愛では足りない?・・・それか、うまい棒でもつける?」
ふふ、と笑って見せる平坂の腕は、かすかにふるえていた。
それがきっと平坂の素直な心だということはわかっていた。
男なんだけどなあ、と鳴海は言い訳のように思って、うまい棒食べる、と平坂の首に抱き着いた。
「鳴海ほんと軽いなあ」
ほっとしたような吐息交じりにそう言われて、鳴海は平坂の耳を引っ張った。
「いたいって」
苦笑交じりの言葉に、はあ、と鳴海は息を吐いた。
鳴海に必要なもの。
あれば他に要らないもの。
音楽と、うまい棒。
それにもう一つ、平坂も追加されるかもしれないと、鳴海は思って、脱力した。
「あれ?鳴海?」
だらりとする鳴海に、平坂が怪訝な声を出す。
(こまった)
どうやら鳴海は、自分に対して甘いこの男に中毒を起こしているらしい。
明日はわからない。まだ、ピアノにこだわる自分がいる。
ピアノをなくして嘆かない日はなかった。これが絶望というのなら、きっと鳴海は明日も絶望して生きていく。
自分を突き落した人間に対する恨みは晴れない。
ピアノに愛すらもささげているから、きっと鳴海は平坂に同等のものは返せない。
それでも愛すると、平坂は恥ずかしいことを平然と口にする。
返せるかもしれない、とそう思いもするのだが。
それをまだ素直に認めるわけにはいかないと、鳴海は目の前の男に抱き着いた。

口にせずにはいられない

三題噺『花粉症』『中毒』『うまい棒』の題を友人に借りました。友人に盛大な感謝を。
一応、三題噺のつもりです。

理屈がつけられない好意は、まるで中毒のようです。
人でなくとも、何かが好きな理由を考える時、それは『好きだから』で終わるような気もします。

口にせずにはいられない

金髪の大学生が所属するサークルとその周囲にいる人々の話。 赤と黒の芸術品のような先輩、甘やかすのがうまい同級生。 仕方ないことについて、みんなが話すだけです。

  • 小説
  • 短編
  • 青春
  • 恋愛
  • 青年向け
更新日
登録日
2015-03-28

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted