夢ものがたり
私は変な夢を見た。
私は変な夢を見た。
言葉では表しずらい、そんな夢。
あの事も全部、夢だったら…
ピンクのライトに照らされている10畳半くらいの部屋にキングベッドに横たわっている2人。
まだ眠りの世界に入っている彼に軽く口付けた。彼の身体からは昨日、私と契りを交わしたときに出た汗の匂いと、香水の香りが混ざり合ってより一層彼との親近感を覚えた。私は彼に気づかれないように軽くカーテンを開けた。
寒い。もう三月下旬だというのに。窓の外には、白いものが降っていた。雪だ。開けたままにしようか、しまいか迷ったものの、開けたままにしておいた。
低い唸り声を上げて殆ど開いていない目を擦りながら尋ねた。
「おはよう…。…雪?」
「そうみたいだね。まったく、いつになれば春が来るのかしら」
私は肩をくすませた。
「春はもう来てるよ。君が見えていないだけで」窓をみつめながら彼は微笑んだ。
「…どういうこと?」
「どういう意味だと思う?君は」
声を上げながら彼は悪戯に笑った。私と同じ立派な笑窪が浮かんでいた。まるで何も知らない少年のように。彼の笑顔を見ると無性に胸が苦しくなるのは私だけだろうか。
すると、彼は急に話題を振った。
「誕生日プレゼント何が欲しい?」家族以外から貰ったことがない私はとても戸惑った。私は答えずにいた。ベッドがきしめく。部屋中にその音が響き渡った。
喘ぎ声をあげて抱きしめあった昨晩のように彼は私の背中に胸板をくっつけた。
冷たい。荒くなっていく彼の鼓動。かすかに感じる彼の浅い吐息。
彼は目の前にいるのにどうしてか自分の手の届かない距離にいるような。
「あ、シャワー浴びてくるから…離してくれない?」
彼から離れたかった。理由は自分でも分からない。言葉にできないくらい彼のことが好きなのに、それを分かっているのに…。
「5分だけでも…だめ?」寂しそうに彼はそう尋ねた。
「うん…、いいよ。…今日だけね。」またこれだ。小さく自分の胸が疼いた。
されることはもう分かってる。キスをして、私の上で腰を激しく動かす。
いつも5分じゃ足りない。1時間でも足りない。彼は私を愛しているのではなくただ快感を得たいだけ。私は知ってる。どうせ私は彼を気持ち良くさせるだけの道具。
そこには「愛」という一文字すらない。一体いつになれば偽りは無くなるんだろう。
いつになれば、翻弄の縄を解けるんだろう。
また私は彼の胸元で喘ぎ声をあげる。
夢ものがたり