雪風「不幸だわ」

艦これの二次創作になります。

「不幸だわ」
そうつぶやいたのは扶桑でも山城でもない、私、雪風です
ため息混じりにつぶやいたのはその言葉は彼女のモチベーションを下げた。
幸運艦と呼ばれる私が、なぜこんなことをつぶやいたのは何故か、話せば長くなります。
「運」それは万物に与えられたものであり、その時の調子を表すものです。
幸運な時があればもちろんついていない時もある。
それが運です。
いくら幸運値が高い私でもついていないときもあります。
例えば、私がイ級めがけて雷撃を放ったらクリティカル値が500超えるなど、どうでもいいところで幸運なことが起こるなどなど。
まあ、その程度ならいつものことなのでいいのですが、今の私に起こっているものはそんなものではいのです。
つまり何が言いたいかと言うと。
私雪風は現在、「絶不調」です。



雲ひとつない青空、晴天という言葉が適切な今日。
澄み渡った空とは裏腹に私のテンションは雲で覆われております。
午前の演習が始まるというのにこの調子で大丈夫か?、と自分に言いたい。
旗艦は私、雪風。
他は金剛、榛名、利根、蒼龍、飛龍、私以外この艦隊は改二である。
演習海域の海上で6人並んでいると相手の艦隊が来た。
相手の艦隊は電の単艦だ。
俗に言う放置勢の提督なのだろう。
「よっよろしくお願いします。」
緊張しているのか電は少し恥じらいを持ちつつ言ったようだ。
「よろしく」
私は柄にも無く、空気の抜けたような声だった。
いつもなら、よろしくお願いします!
と元気良く言うのだが、私は気分そんな気分ではなかった。
不幸続きの最近はテンションも下がり、モチベーションもダウン、いつものように振る舞うのは難しい。
いざ演習が始まる時、隣の航行序列にいた金剛が
「雪風、元気ないネー!」
と話しかけてきた。
「気にしないで下さい」
むしろその元気を分けて欲しい、私は思った。
妖精さんの合図で演習が始まる。
最初の一撃は電の砲撃だった。
電が放った砲弾はまっすぐこちらへと向かってきた。
調子がいい時の私なら、動かずとも勝手に砲弾が外れてくれるのだが、今の私はそうはいかない。
幸運の女神様が私についてくれない以上、実力で避けるしかない。
それに、幸運の女神様が私についてくれていれば、避けても当たらない。
私が回避行動を行うと測ったかのように強風が吹いた。
風向きは、私が回避行動をとっている方向。
ここで予想できた、この後起こりゆく出来事が。
電の放った砲弾は私の眉間に直撃。
演習弾とはいえ、当たれば痛い。
判定は大破だった。
衝撃で海上に叩きつけらる。
わかってた、わかってたさ、最初からこうなることは。
今の私は幸運艦でも不沈艦でも、死神でもない、不幸艦なのだから。
やがて私の意識は遠のいていった。



目を冷ますと、そこは鎮守府近くの病院だった。
いや、艦娘の整備工場と言った方が正しいかも。
「目を覚ましたようね、雪風」
首を横に向けるとそこには白衣の如月がいた。
「如月、貴女沈んだはずじゃ」
「アニメでは沈んだけどこの鎮守府じゃ沈んでないわよ」
「ってこのやり取り何回目よ」
如月のツッコミを聞き流しつつ
「演習の結果は?」
そう尋ねた。
「貴女達の勝利よ、MVPは金剛」
「そう」
布団を握りしめる。
「貴女、頑張り過ぎよ、少しは自分のことも考えなさい」
「どういうこと?」
「貴女がレベル95になった頃から貴女お得意の笑顔が減ったわ、最近の貴女は結果に囚われすぎよ、不調なら演習ぐらい休みなさい、休めば調子ぐらい治るわ」
私は起き上がる。
「そんなわけにはいかない、全ての海が深海棲艦の手から開放されるために私の力は必要だから」
靴を履き、立ち上がった。
如月には目を向けずドアへと手を伸ばすと
「雪風」
如月が呼んだ。
振り返ると如月は薬の入った袋を投げてきた。
右手でキャッチ。
「気休め程度だけど飲んでおきなさい」
私は部屋から出た。
病院の廊下を歩いているとさっきの如月の言葉が思い出される。
「笑顔が減った……か」
今思えば私は最近笑っていない。
笑い方を忘れてしまったのか、そんな感じだ。
その後、如月にもらった薬を書いてある通りに飲んだが、調子は戻らなかった。
演習に出れば一撃大破、その度に如月にお世話になった。
今思えば如月にもらった薬には奇妙なマークがあった。
カプセル状の薬で、真ん中に、丸の中に"ま"の文字があるマークがあった。




久しぶりの休日、とは言っても毎週日曜も私は演習で自ら潰している。
今日は祝日で、艦娘も司令も休みだ。
私は提督に誘われて、鎮守府から一駅の水族館へと来ていた。
なぜ司令が私を誘ったのか、私にもわからない。
まあ、気を使ってくれたのだろう。
水族館には当然だが、たくさんの魚がいた。
中には私が戦いに行ったことのある海域にいる魚もいた。
それは司令が教えてくれた。
戦いのことを忘れて、楽しんで欲しいのだろう。
提督は日々戦い漬けの艦娘達に癒しが必要だと考えて、日々艦娘が喜びそうなことを企画し、実行している。
司令の努力のかいあって艦娘達はただの兵器ではなく、一人の人間としていられる。
私達の自慢の司令だ。
まあ、提督が一番楽しんでいたりもする。
現に今、イルカのショーを立ち上がってみている。
そんなことを考えていると雪風の頬が熱くなってくるのを感じた。
あ、あれ?司令のことを考えていたら、頬が急に…
わからなかった。
なぜ、私が今赤面しているのか。
このモヤモヤした感覚はなんなのか。
わからない。

気がつけば、日が傾き始めていた。
司令と私はお土産屋にいた。
いろいろなお土産がある中で私はイルカの形をした物、それに引かれた。
触るともふもふとした感触。
それを見ていた司令は
「欲しいの?そのぬいぐるみ」
そう言った。
「ぬいぐるみ?」
私は知らない単語に首を傾けた。
「うん、ぬいぐるみこの棚にあるものは全部ぬいぐるみって言うんだ、もちろん種類があるよ、それはイルカのぬいぐるみ、そのうえにあるのがラッコのぬいぐるみ」
司令はふふっと少し笑った。
「そっか、雪風はまだこの世界のことあんまり、しらないんだね」
今覚えば私は建造されてからこの世界について全く知らなかった。
知っているのは艦娘と海の匂い、深海棲艦、そして…司令。
「欲しいなら買ってあげるよ。」
司令はそのぬいぐるみをレジまで持っていった。
司令が戻ってくるとぬいぐるみを私に手渡してくれた。
「ありがとうございます」
「雪風」
「なんでしょうか」
「今度2人で色んなところに遊びにいかないか?たくさん見せたいものがあるんだ」
「本当ですか!絶対ですよ!」
思わず大声を出してしまった。
「あっ」
「どうしました?」
「雪風、今笑ってる」
「えっ」
笑っていた。
いつぶりだろうか、気がつけば毎日戦いばかりで笑うことを忘れていたような気がする。
そして今ずっと忘れていた笑い方を思いだした。

突然、耳に響くサイレンの音が聞こえた。
「水族館前の海に深海棲艦が現れました、直ちに避難してください、」
アナウンスも聞こえた。
戦わなきゃ、頭の中にその言葉がよぎる。
隣にいた司令は携帯で鎮守府に連絡をとっているようだ。
その時、深海棲艦の砲撃が天井を破壊した。
崩れ落ちる天井。
司令はとっさに、私を庇った。
ピンポイントで私達の場所を狙ってくる、これはわかっててやったものじゃない、他でもないまぐれだ。
このまぐれを引き起こした原因は…
そんなものわかっていた、私だ。
今の私は周りの人間を傷つけるだけ。
「大丈夫か?雪風」
司令と私は無事なようだ。
司令が私の顔をみた。
私は多分、泣いていたのだろう。
この自体を引き起こしたことに対することと、自分の無力さ、やるせない気持ちが涙として、溢れてきた。
「雪風…」
司令は私をそっと抱きしめた。
「大丈夫だ、お前のせいじゃない、悪いのは深海棲艦だ」
司令は私を励ましてくれた。
「でも、私」
「気にするな!、お前は…笑っていればいい」
「笑えませんよ」
「そんなことはない!、お前はいつも笑って辛い時も、苦しい時も乗り越えてきたじゃないか!」
涙が止まらない。
「それに、泣いていたら幸運の女神様は笑ってくれないよ?」
司令は笑っていた。
その一言で涙が止まった。
「そう…ですよね」
腕で涙をぬぐった。
「雪風…本当は夜空の下で渡したかったんだけど…」
司令はポケットから、箱を取り出した。
開けるとそこには、光を反射し、輝く指輪が入っていた。
「司令…」
この時、イルカのショーの時に感じた感覚の正体がわかった。
これは恋、私は司令のことが好きなんだ。
その時、何を思ったか覚えていない。
司令から指輪をもらった時、多分私は笑ってたんだと思う。



目の前には20体足らずの深海棲艦。
対して私は艤装を装備していない。
だが、絶対の自信があった。
なぜなら決めたから、どんな時だって
「笑顔でいるって」。
深海棲艦達の一斉砲撃。
どれも、雪風を狙ったものだ。
水しぶきが消えると、雪風は一歩も動かず、そこにいた。
「そんな程度ですか?」
深海棲艦達は負けじと魚雷を発射した。
が、魚雷は雪風の方へ行かずに、他の深海棲艦に当たった。
その一撃で深海棲艦は大破した。
「ヘーイ!雪風!」
金剛の声だ。
「雪風!艤装、持ってきたネー!」
雪風の頭上に雪風の艤装を積んだ艦載機が飛んでいた。
「ありがとうございます!」
「雪風、げんきになったネー!」
雪風の艤装は雪風めがけて落下してくる。
それを雪風は落下してくる艤装を受け止め、装着した。
「雪風は!沈みません!」
四方八方に魚雷を発射した。
魚雷は深海棲艦に見事に当たり、そこにいた深海棲艦は皆、轟沈した。
「私達の出る幕じゃなかったネー!」
私達の活躍により、水族館での負傷者、及び死者は0人だった。

その後、鎮守府に帰ると、薬指にはめている指輪についてみんなに問い詰められたけど、みんな納得したみたいだった。
私は再び幸運艦になり、次々に戦果をあげていった。
変わったことといえば、司令と出掛けることが多くなったことかな。

この先、どんな敵が現れようとも、私と司令、艦娘のみんなは笑顔で乗り越えるって決めたから、なんだって乗り越えてみせる!。

「雪風、女神のキスを感じちゃいます!」

雪風「不幸だわ」

雪風「不幸だわ」

  • 小説
  • 短編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-03-26

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

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