毒薬

いつまでも僕を覚えていてください。

『好きな人ができた。』

彼女はある日突然僕に言った。

『貴方の事は今でも好きだけれど、これから先の事を考えるときっとお互い幸せになれないから。』

「僕が幸せにするから。だから・・・!!」

僕は彼女に何度も縋り付いた。
今考えても女々しい行為だったと思う。

彼女は心底めんどくさそうにした後、

『私の荷物は今度取りに来るから。それじゃあね…。』

とだけ吐き捨てて僕の部屋を出て言った。

部屋に残された僕はへたり込んだ。
そのあとは彼女との思い出の品をひっぱり出してきた。

初めてのデートでの写真やら彼女からの初めてのプレゼントやら…。
付き合って3年しか経っていないのにすべてが彼女で埋め尽くされていたことに気付いた。
そこから疑問が生まれた。

―――彼女が他の男と付き合い始めたら、彼女は忘れるのか―――?

忘れられるくらいなら・・・
彼女をいつまでも苦しめて・・・・
忘れられないようにしてしまえばいい・・・・。

―――3日後―――

私は元彼のマンションの前にいた。
元彼は嫌いではなかった。
でも、一緒に幸せになれるような相手ではない。
本当は今日も来たくはなかったが、
捨てるみたいな最後だったのも気になってきてしまった。

彼の部屋のインターフォンを押した。
でも、反応がない。
何度かインターフォンを押した後、なんとなくドアノブを回してみる。
ドアノブはあっさりと回り、ドアが開いた。

―――なんだ、あいつ居るんじゃん―――。

「居るなら出てきてよねー。」

声をかけながら部屋に入っていくが、何かがおかしい。
出来るだけ違和感に関して考えないようにしながらリビングのドアを開けた。

そこにはソファにもたれかかる彼が居た。

「居るなら返事位…!!」

彼に声をかけながら肩を叩いた。
彼は返事はなく、ずるりと横に倒れた。

私は彼を何度も揺らしながら彼の名前を呼んだ。
でも、彼は起きてくれない。
いつものように笑ってくれない。

「きゅ・・・救急車呼ばなきゃ・・・。」

携帯電話から急いで電話をかけて、救急車とそれから警察にも通報した。
それからへたり込んだ。

テーブルの上には私が最初の誕生日にプレゼントしたマグカップと見たことのない薬品の瓶、
それと、二つ折りになった白い便箋が置いてあった。

本当は触れてはいけないのだろうけれど、気になって開いてみた。

『君は新しい恋人ができたら僕を忘れてしまうよね?
僕は君に忘れられることが耐えられないんだ。
こうすれば君はずっと覚えていてくれるよね?
これから君に何人恋人が出来ても、結婚したとしても僕という存在を忘れられないよね?
これが僕の最期の願いなんだ。
いつまでも苦しんで、僕を忘れないで。』

私は震えながらすべて読んで、彼を見た。
死んだ彼が笑っている様に見えた。

毒薬

いつも通り、暗い話になってしまいました・・・・。
そして、何をトチ狂ったのか友人にこの小説を見せてしまい、色々とご指導いただきました。
友人曰く、「薬飲んでもきれいには死ねん」と…。
あと、「薬より凍死の方が綺麗」らしいです。
それ以外にも色々なご指導いただきましたよ…。
私は「何故お前はそんなこと知ってんだ!?」という疑問でいっぱいでしたが…。
友人と色々協議の結果、「彼は死ぬ3日前まで断食していた。」という結論に至りました。
久しぶりに飲みに行って良い年した女二人で何つー会話してんだと…。
近くの席で飲んでらっしゃったOLさんとかは彼氏の話とかしてるのに、我々は死体の話とか…。
後々「友人にどうしてこうなった…。」とLINEしたところ、
「それが我々だからだから仕方ない。」と…。
これからもこの友人について行こうと思いました…。
…これ以上続けると大変なことになりそうなのでこの辺で。

読んでいただきありがとうございました。

毒薬

  • 小説
  • 掌編
  • 恋愛
  • サスペンス
  • 青年向け
更新日
登録日
2015-03-25

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