【ナルマヨ】本当は

逆転裁判より、成歩堂くんと真宵ちゃんのお話。逆転裁判5までやっていること推奨。ネタバレはあまり含みません。
ほのぼのらぶらぶが好きなかたは、申し訳ありません。

時はたった。


「パパ~。真宵さんからまたお手紙来てるよ。」

「そうか、ありがとう。」

真宵ちゃんとは、お互いにいろいろと忙しくなってしまったためなかなか会えなくなって数年が経ち、

その代わりに月に何回か、真宵ちゃんと手紙のやりとりをするようになった。

倉院の里は電波も通じにくいし、なにより、メールが苦手なぼくに気を遣ってのことだ。

いつものように、見慣れた文字で書かれた手紙。いつものように封を開ける。

しかし、そこに書かれていたのは……

「…うそだ。」

いつもとは違う、内容だった。

冷や汗がにじみ、手足が冷えてゆくのを感じる。鼓動が速くなる。

「パパ?どうしたの?顔色が…」

みぬきの声にハッと我に返る。せめて、みぬきの前では平然としていたかった。

「大丈夫だよ。それより、パパ、ちょっと出かけてくるから。」

手紙をポケットにねじ込むと、事務所を飛び出した……

二時間かけた道のりは、ほとんど記憶にない。どうやって駅へ向かい、どの電車にのったのか。

それでも、なんとか到着する。

久しぶりについたその場所は、何も変わることがなくて…

ぼくだけ、老けた気がした。

倉院の里

「嘘だよね?…真宵ちゃん…」 

口の中でつぶやいた。

―――手紙には、結婚するの、という言葉が書いてあった。

真宵ちゃんは、もう27になる。ぼくからしたら、ずっとどこか幼い印象のある子だったけど、

世間的には立派な大人の女性だ。むしろ、今まで結婚しなかったのが周りに不思議がられるくらいで。

それが、今になって、結婚?

だが、ぼくは「なぜ今頃?」という理性で現れた疑問よりも

もっと感情的な疑問が強く浮かんでいた。

なんだ?この胸の痛みは…

「真宵ちゃん、どこにいるんだ…」

真宵ちゃん家の修行場には何人か修行をしている人がいたが、真宵ちゃんの姿はない。

そっと、見つからないように中庭を覗いてみる。なんか悪いことしているみたいだな…

「…あ…」

そこもまた変わっていない中庭の、縁側に、真宵ちゃんはいた。

日向ぼっこでもしているのだろうか、空を見上げてぼーっとしている。

真宵ちゃんは、出会ったころとは比べ物にならないくらい、大人っぽくなっていた。

千尋さんにも似てきて、美しくなって。

昔はそんなに気が付かなかったなあ。

空を見上げていた真宵ちゃんは、何かの気配を察知したのか、こちらを向いた。

最期に

「あ、、、」

誰か理解した真宵ちゃんは、大きく目を見開き、驚きを身体全体で表している。

「や、やあ。」

「な、な、なるほど、くん…なんで…」

それは…

―――やっぱり、来ちゃったんだね…

小声で、そう言っているように見えた。

「真宵ちゃん…あの」

「…なるほどくん。少し歩こうか。今日はとってもいい天気だから。」

ぼくの言葉をさえぎり、真宵ちゃんは微笑んだ。

沈黙の時間。ただ、遠くから鳥のさえずる音や、水の流れる音が聞こえる。沢でもあるのだろうか。

勇気を出して、そっと切り出す。

「真宵ちゃん、あの…手紙、読んだ。」

やっといえた言葉は、そんな意味のないものだけ…本当に言いたいことは、それじゃないのに。

「そっか。……あのね。

 相手の方、とってもいい人なんだ。こんなあたしにも優しくしてくれて。」

痛い。聴きたくないとぼくの脳が告げる。でも、きかないといけない。そんなことはわかっている。

「ほら、あたし、家元でしょ?それに、倉院流は今が一番大切だから。政略結婚ってヤツかな!

 へへ、なんかかっこいいでしょ?お昼のドラマみたいで!」

そんなふうに笑わないで。ぼくがうまく笑えないことに、気づかされるから。

「その方ね?『本音の部分は政略結婚かもしれませんが、私は、真宵さまのことをちゃんと愛してゆくつもりです』

 って言ってくれたの!!かっこいいよね~」

昔みたいに、子どもみたいに、笑って話すキミと、昔のような大した返しもできず、薄汚れた大人のように、虚ろな笑みしか浮かべないぼく。

そのどちらも、ぼくたちが大人になってしまったことを表わしていた。

「……なるほどくんは、すぐ顔にでるね。」

大人びた笑みを浮かべた真宵ちゃんから、目を離せなくなる。

それは、成長した子を見守る親でなく、久しぶりに会った冴えない同級生が、綺麗になっていたときのような、驚き。

「…顔に出てるかな?これでも、マシになったほうだけど。」

やっと一言言えたぼくに安心してくれたのか、優しい笑顔を浮かべ、

「あたしね。なるほどくんのこと、好きだったよ。ううん、今も好きかな。」

鳥のさえずりが、一瞬だけ止まった気がした。

あらゆる意味で、一番聴きたくなかった言葉かもしれない。

ぼくの胸の痛みの理由が、わかってしまったから。

「でも、ね。一緒には、なれないから。こんな気持ち、抱いちゃいけないから。」

真宵ちゃんは気づいているのだろうか、キミが泣いていることに。

声はいつも通りで、表情も明るいのに、頬が濡れている。

「黙ってるつもりだったのに、なるほどくん、来ちゃったから。来てくれたから。」

そっと自分の頬をぬぐうと、遠くの空を見上げる。

「悲しくなんてないのに、どうして涙があふれてくるんだろ。…本当の気持ち、言えたからかな。」

すがすがしい表情で笑う真宵ちゃんは、とてもきれいだ。

「もしね。霧咲先生の事件で、正当防衛で無罪になってたら、家元はつげなくなるでしょ?

 そうしたら、なるほどくんと一緒になれたかもしれないね。専業主婦になって、なるほどくんに守ってもらうの!」

そんな“悲しい未来”でも、ぼくらにとっては“幸せな未来”の冗談を言う真宵ちゃん。

昔のことを思い出した。

真宵ちゃんはみんなから、千尋さんからも『強い子』と言われていた。―ぼくはあまりそうは思えなかった。

本当は弱くて、みんなにそれを隠している。と。だから、ぼくが守らなくちゃって。

でも―真宵ちゃんは、強くて、清い。ぼくは、こんなにも弱く、汚れてしまったというのに。

「なるほどくん。一つだけ、約束しよう。」

春の風が、ぼくたちの間を吹き抜ける。それはまだ冷たかったが、どこか暖かい。

「あたし、幸せになるよ。絶対。だから、なるほどくんも、今の弁護士をやめないで。

 弱い人を守ってるなるほどくんが、世界で一番好きだから。」

「……うん、約束、しよう。」

――――今、キミの手をとって、ここから二人で逃げ出したら、ぼくたちは幸せになれるのかな。

    いや、きっと、キミの描く幸せに、ぼくはそばにいない。

【ナルマヨ】本当は

5やっての感想として、ナルマヨが大好きな私としては「出てこない上に結婚とかもしてないの?もう27でしょ?!この甲斐性なし!」でした。
もちろん、結婚させてはいろいろとアレなのかもしれませんが、とにかく悲しかったので、実は、こういうことなんじゃ?と思いしたためました。
あの煮え切らない関係を、どういう形でもいいのでしっかりと蹴りをつけていただきたいです。

【ナルマヨ】本当は

逆転裁判より成歩堂くんと真宵ちゃんのお話。本当はほのぼのした二人が好きなのですが、現実はこうなんじゃないかなって思います。 5までやっていること推奨です。もちろん、まだって方にもおすすめですし、これがきっかけで4とかやってくださったらうれしいかなと。

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 青年向け
更新日
登録日
2015-03-25

Derivative work
二次創作物であり、原作に関わる一切の権利は原作権利者が所有します。

Derivative work
  1. 時はたった。
  2. 倉院の里
  3. 最期に