トライアングル▲
青春!!
プロローグ
いつまでも変わらないと思ってた。
この一年が終わればクラスは変わるし、あと三年すぎれば私たちは高校生活を終えるし、そんなかんじの変化はあると思うけど。
そうじゃなくて・・・少なくともこの一年間、気持ちに何の変化も無いと思ってた。
優は明るくてカワイイ活発な女の子で、私はおとなしめの読書好きな女の子で、あの人は私が片思いしてるだけの男の子。
ただ、それだけ。
友達をやめるつもりも無いし、告白するつもりも無い。
だから、この関係は変わらないと思ってた。
ずっと・・・
寅と馬はもういないってば!!
「・・・・・・り・・・まり!!まりってば!!!」
名前を呼ばれた気がして、境真理(さかい まり)は読んでいた本の世界から引き戻された。
すぐ目の前には、ジャージ姿の橋本優(はしもと ゆう)。
「・・・うるさいなあ・・・いいトコだったのに・・・」
しぶしぶ本を閉じる真理。
「いいトコだったのに・・・じゃ、ないでしょ!!!もうみんな帰ってるし!27回も名前呼んだんだよ!!」
「数えてたんだ・・・」
「えへへ・・・って―――そうじゃなくて!!」
微妙なのりツッコミを流して、真理は本を開く。
「待って待って待って待って待って!!!話を聞いて!!」
「もう。。。何?」
真理はうるさそうに顔をしかめた。
「あのね!!」
嬉しそうに笑顔をつくる優。
「なんと!!真理が前から行きたがってたお店の割引券をもらっちゃいました~~~!今度行こ!一緒行こう!!」
「・・・・・・・・・・・・・・うん」
「返事に時間かかったね。。。。。。」
寂しそうな優を放って、真理は開いた本に視線を戻した。
真理も優も、高校1年生。二人はまだ出会って2ヶ月とちょっとしか経っていない。
性格も真逆で、入学の日に真理は優を見て「あの人とは仲良くなれそうに無い」と思ったのだが、なぜか二人は親友になった。
真理はいつも本を読んでいるような子で、優のような明るい子達が集まって話をするグループとは縁が無かったのだが、優と仲良くなってからは少し、そういうグループの中にも入るようになった。
が、真理はそのノリにイマイチついていけず、今ではひとりで本を読んでいるところに優が来るようになった。
「・・・まりぃぃぃ」
優はまだ真理が【明るいグループ】に入らないのを諦めていない。
「お店なら行くって言ってるじゃん」
「そうじゃなくって!!一緒にコッチ来て話そうよ~~!!
みんなで話してるとたのしいよっ!!部活までちょっと時間あるし!!」
「いーの!あのノリがよく分からないんだから本読んでるほうが楽!」
残念そうに優がつぶやく。
「ええ~!?本当は入りたいんじゃないのぉ~??」
ぎくっ
真理の肩がぴくっっと動いた。
「そんなわけない!!」
「えぇ~~~~。。。」
本当は、すっっっごくあの中に入りたいんだけど・・・!!
真理はそう叫んでいる心の中の自分を、心の中で殴った。
そんなこと言えるわけ無いじゃん!!!そんなコトでも、もしばれたらどうするの??
好きな人がいるって・・・
考えると、一気に顔が赤くなるのを感じた。
「・・・どしたのまり?顔赤いよ?大丈夫??」
「!!!!!!」
思わず顔をおさえる真理。
優は心配そうに真理を見つめる。
「ゆーーーーう!!!部活だよーん!」
教室の後ろのドアから、他のクラスの人たちが優に話しかけてきた。
「もうそんな時間かー!」
「あ!そーいえば!!今度行く予定のさー!!」
「あーー大花森田公園前遊園地!」
「そうそれ!長いよねー名前!!んで、いつ行くか決めてるんだけど~」
友達と遊びに行く・・・いっいいな。。。うらやましい・・・
真理は無意識に目を輝かせる。
「んー待って!今行く!!」
返事をしてから、優は真理に向き直る。
「コレも一緒行かない??みんなでさ」
にこっと笑う優。
真理は自分の顔が面白いことになっているのに気づき、慌てて瞬きを繰り返す。
「・・・私はいい。みんなで行っておいで」
「ええーー」
「私一人だけ知らない人だしさ。ほら友達待ってるじゃん。部活あるんでしょ?はやくいかなきゃ?」
「うーん」
みんなそんなの気にしないのに、といいながら、優は小走りでドアの方に駆けていく。
それを見届けた後、真理は ばたっ っと机に突っ伏した。
危なかった!!あのグループに入っていきたいとか、好きな人がいるとか、もしばれたら・・・。
また、あんなことになってしまう。
そう考えると、寒気がした。
『真理、もしかして好きな人いるの??』
『え!?そそそそそんなっわけないじゃん・・・!!』
『あー!やっぱりいるんだ!!だれだれ??このクラス?』
小学校5年生の頃。仲がよかった女の子にいきなり聞かれ、ついついその時好きだった人を教えてしまった。
『私の・・・好きな人は、〇〇・・・。ぜったい絶対、、他の人に言わないでよ??!!』
『へー!〇〇かぁー!!』
『ぜったいだよ!??言わないって約束してね!!??』
『うん言わないって!約束!!真理と私の秘密ね!』
もちろん、念を押した。
が。
『真理ちゃんの好きな人、〇〇だったんだねー!』
ある日、クラスの女の子数名に聞かれた。もちろん否定したのだが。
『え、!!?ちがうよ!?』
『あれー?でも△ちゃんは 真理ちゃんが〇〇が好きっていってた って言ってたんだけど・・・』
クラスの人全員が知っていて、他のクラスの人にもいつの間にか広まっていた。
同じ人が好きだった女の子にハブられ、挙句の果てにはその好きな男の子に『きもい!』とみんなの前で言われた。
そしてそれはそのまま中学にも持ち上がり・・・・。
軽いトラウマだ。
好きな人を教えた自分が悪い。
けど、他の人には言わないで、って言った。
信じて、教えたのに・・・。
受験をして遠いこの高校に来たけど、もし似たようなことがあれば・・・・。
最悪、とつぶやいて、頭の位置を変える。
・・・もうあんな思い、したくないから。
それ以来、人と話すのに積極的ではなくなった。
優の事信じてないわけじゃない。けど、怖い。だから・・・
重い頭を持ち上げ、窓の外を眺める。
まだわずかに咲き残っている桜を、風がさらっていく。
好きな人の事は言わない。その人に告白もしない。
・・・そう、心に決めている。
「ーーーーー!!!!」
優の大きな声が聞こえた。
楽しそうだな・・・
そう思ったとき、大きな声は自分に向けられているのに気がついた。
「来週の日曜日になったから!一緒に行こう真理!!!大田・・・花森前公園遊園地!!」
「!?」
「大花森田公園前遊園地だからね!真理ちゃん!と、優!」
「あ!そうそれ!お・お・は・な・も・り・・・」
「ちょ!?何それ?!行くとか言ってないけど!!?」
「おっとソロソロ部活の時間だあ!行かなくっちゃ!!」
言いながら、優と優の友達は、颯爽と廊下を走って行ってしまった。
「・・・・・・どうしよう」
真理はもう誰もいない廊下にひとり立ち尽くした。
好きな人
大花森田公園前遊園地は、大きさこそ小さいものの、アトラクションの種類も豊富で人気がある。
開園は朝8:30から。
人気がある並ぶアトラクションに早く乗るため、朝6時から門の前に並んでいる人もいる。
「何乗る??何乗る??」
「やっぱ最初はジェットコースターだろ!!」
「マジで!??俺苦手だ!!!」
「ひとりで待っとけよー!」
「きゃははは」
早くも楽しそうな優たち。
その中に真理の好きな、高城 翔(タカシロ カケル)もいた。
翔はイケメンで性格もいい為、女子からの人気が高い。
真理も翔を支持するたくさんの女子の中の一人だ。
まあ、真理は顔ではなく性格で好きになったのだが。
「まりー??!なにやってんの??乗るよー?!」
「ああー!うん」
返事をして優たちを見ると、もう既に並んでいた。
「なに乗るの?」
「ん?ジェットコースター!ここのやつすっごく怖いんだー!!」
「!!!!?????」
「あ、真理絶叫系無理だっけ?」
「うん・・・待っとくね」
「じゃー翔と待ってて!あいつも絶叫系無理なんだよー」
翔は、ベンチに座っていた。真理が近寄ると、「座ったら?」と自分の座っている横に手を置いた。
「俺絶叫系ほんっと無理でさー」
「・・・そうなんですか~・・・・。」
すぐに沈黙がやってくる。
あ"!!いまのは私も~って言ってたほうがよかったぁぁぁ!!私バカ!?バカか!!!うわぁぁぁ
「・・・・・・・・・・。」
「・・・。」・・・・・。
沈黙が、重い。
真理はさらに黙り込んでしまう。
普段はうるさい翔も、真理につられて静かだ。
きっ・・・・気まずい・・・!!
何か話さなくちゃ、と話題を探してみる真理だが、何も浮かばない。
「あの。。。さ、」
翔が不意に切り出す。
「なななななな、何!??」
必要以上に緊張する真理。
そもそも、真理は、真理にとって友達と遊園地に来る様なこと自体奇跡で、好きな人と二人っきりでしかも話をするなんて考えたことすら無い。
だが、翔の話はもっと予想していなかった。
「俺、優が好きなんだ。」
一瞬で、さっきまで舞い上がっていたのが恥ずかしくなる。
「な・・・なんでそれを今私に・・・?」
真理は動揺を必死で隠しながら聞いた。
「境って・・・優と仲いいだろ?だから・・・」
何かが、胸を締め付けた。このまま黙っていることさえ苦しくて、とっさに口から出た言葉がサイアクだった。
「協力するよ!!」
翔の表情が、まぶしいくらい明るくなる。
「マジで!?やった!境ならそういってくれると思った!!マジ助かる!ありがと!!!!」
その言葉でさらに苦しくなる。
翔が飛び上がったところで優たちが帰ってきた。
「お!?何盛り上がってんの翔~」
「ん!いや何でもねえよ」
「ふ~ん真理ちゃんコイツになんかされたりしてない?」
ドキっとした真理は、笑って答えた。
「なっ何にも!!」
そんな真理の作り笑いに気づいたのか、優が明るく言った。
「次はみんなで乗れるやつにしよ!!!!」
「お~!」
話がそれていく。
安心した真理を見て、優が近づいてきて、コソっと話しかけた。
「真理っホントに翔になんか言われたりしてない?」
「ぜんぜん!むしろ気まずかったし・・・!!」
ウソはついてない・・よね?
いくら何でも翔が優を好きなことは話したらバカだろうと思い、また明るくしてみせた。
優は私が翔を好きなこと知らないから・・・
「大丈夫だよ!!」
「そう?ならよかったー!なんか無理してるような気がしたから~」
太陽がきらきらと眩しい。それが優と重なって、きれいだった。
小さなことも気づいてくれるっていうか・・・翔も、優のこんなトコが好きなんだろうな。
そう思った。
「よっし!!!じゃー楽しもっか!!!!」
走り出す優の後姿を見ながら、敵うわけない、と思った。
次回予告
「真理!!!今度はプール行く計画立ててるんだけどー」
優のグループから声をかけられ、ビックリする真理。
遊園地に行ってから三日後のことだ。
「い!いいんですか!!?」
とびついて、今のはさすがに図々しかった、と反省する。
「いいに決まってんじゃン!!」
にへへ、と笑う優。
初夏、太陽が照りつける夏の日のこと―――――
トライアングル▲
長かったっ!!です。。。
続きますんでよかったら次も見てください。