AM5:00くらいの絶望

朝の青い光が、徐々にコンクリィトの壁を染めていく。
家々の輪郭が浮かび上がってくる中で、私は一人家路を急ぐ。ハイヒールのパンプスが、やたらと重い。
昨日の夕方に直したばかりの化粧は、ただの汚れになって、どろどろと顔に張り付いて気持ち悪い。口の中も、乾いてなんだかべたべたする。なんとか出勤までにシャワーを浴びたい。一歩踏み出すのもいちいち億劫な私を動かしているのは、ただその思いだけだ。
アルコールはもう抜けてるけど、疲労感は内臓の端々に残っているし、頭も重い。
でも、今日も平日でよかった。仕事があってよかった。
熱いコーヒーが飲みたい。何も考えずに仕事がしたい。そうして、気づくと頭を支配してしまう思いを、無理やり追いだしてしまいたい。
眠い。眠いけれど、このまま寝ると、きっと寝付けないだろう。まだ私の心は、いっぱいいっぱいのままで、ざわめく頭を寝かせるには、疲労感がまだ足りないだろう。
徐々に日が高くなっていくのを感じる。まだ、日が青いうちに、家にたどり着けるといいのだけれど。
まだシャワーを浴びていない私に、温かいオレンジの光は強すぎる。今日が始まるまでに、私を何とかリセットしたい。
目をこすると、目じりに涙の残りがこびりついていた。パリパリに乾いたそれを、指の腹でこすり落とす。
通行人は、まだいない。私の吐息は重いのに、空気だけが清々しくて、なんだか私は責められてるような気分になる。
この世界で、こんな気持ちなのは私だけ、油断するとそんな気持ちがふつふつと沸いてくる。そんなセンチメンタルな自分に自己嫌悪して、またより暗くて重い気持ちに沈みそうになる。
風がひゅうと吹いた。風が入らないように、前をしっかりと合わせる。朝は寒い。でも、温かいよりはきっとマシ。
はぁ、と息を吐くと、その分の温度が風に吹かれて消えていった。息と一緒に、もっといろんなものも、消えて行ったらいいのに。でも、悲しいかな、私の残りの体温は、まだまだ無限にあって、無くなりそうにない。
いったい、私の何が悪かったのか。そんな一晩中考えていた疑問に、いつのまにか、また手を出している。答えなんか出るわけないのに。


生まれ変わったら男の子になりたい。
こんな気持ちを抱えるくらいなら。


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AM5:00くらいの絶望

光は青が一番美しいと思います。

AM5:00くらいの絶望

散文。ほとんど詩。

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-03-23

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