斎妖奇譚

 タイトルは“いつき あやかし きたん”と読みます。時代物、妖怪、陰陽道…etc。好きなものをいっぱい詰め込んでます。マイペースながらも完結目指して頑張ろうと思いますのでどうぞよろしくお願いします。

〔序〕

 群青色の空で紅く染まった月が嗤う。
 ぽっかりと穴のあいたそれは、まるで血のようで不気味だ。

 思わず顔をそむけたその足元では、重たげな海水がのたり、と揺れうごめいていた。
 ここは人間(ヒト)を喰らう場所。
 噎せ返るほどの邪気が人々の肺を締め付け苦しめる。そして彼方へと導いていくのだろう。―――――屍の国へと。
 そうと知りながら、女はここに来てしまった。己の身の上すら忘れ、ただ欲望のために。いや、もしかしたらわかっていたからこそ来てしまったのかもしれない。俗世を捨て、遠ざけていた暗い感情がもはや抑えきれぬほどに肥大してその身を襲った。
 …私はあの人を見てしまった。
 女は後悔した。
「……ぁ…。ぁあ……。」
 微かに声が聞こえてきた。呻きに似たその声は、海の向こうにある黒い影から聞こえてきている。影がだんだん岸に近づいて来ると、それは大きな漁船だとわかった。
 奇妙な船だった。女がこれまで見たどんな船より大きく、立派な造りの船だった。しかしそうであるというのに、女の眼にはこの船がどんな船よりもみすぼらしく、恐ろしく、また賤しいものであるかのように映るのだった。帆は張られておらず、ぼろぼろに破れて揺れている。真っ暗だというのに灯火のひとつもなく、それでいて船は女がはっきりと見えているかのようにゆっくりと此方へ向かってくる。
 船と共に声も大きくなった。

「……せ。…ぁ、……ませ。」

 船が完全に岸に乗り上げると、一人の人間が降りて来た。顔はよく見えない。しかしその影はそう大きくなく、せいぜい大きな子供くらいである。
「お持ち致しました。」
恐らく男であろう。以前と同じ、しゃがれた声だった。その声が少しくぐもると、砂浜の上に白い包みが置かれていた。それは暗がりの中で特に眩しく光った。
「お開けなさい。」
 女が命じた。男がこれに応じると、中に包まれていたものが顕わ(あら)になった。彼女はそれを一瞥すると、引き攣るようにして嗤った。己の欲とこれから手にする栄誉に蝕まれ、頭がおかしくなりそうだった。


 ただ覚えているのは生臭い、海の血肉の臭いだけ。




「さあ、召しませ。」

〔壱〕

 衣紋坂(えもんざか)を登り、大門をくぐるとそこはもう桃源郷である。大門(おおもん)から真っ直ぐに伸びた仲の町(ちゅう ちょう)はこの地を左右に二分する大通りだ。両脇には引手茶屋がずらりと並び、遊客が妓(おんな)を目当てに寄り集まって来る。
 江戸の遊郭・吉原は日暮を前に沢山の客でにぎわっていた。或る者は連れだって妓楼へと入り、また或る者は張見世の前で遊女の品定めをしている。この手の道に疎い浅葱裏などに至っては下手に知恵をはたらかせて、切見世の立ち並ぶ浄(じょう)念(ねん)河岸(がし)へと連れ去られていく。
 華やかな色街の景色とは裏腹に、揚屋町の一角にある妓楼の花魁・胡蝶は機嫌が悪かった。彼女は綺麗に整えられた爪を腹立たしそうに噛みながら下界を睥睨した。
「全く厭になるわねぇ…。どなたも朝露の零れ落ちるような若い花が好きだなんて言ってさ。わっちを枯れた花扱いするんだよ。まことに不愉快ったらありゃしない。」
彼女は一人そう呟いた。
 真っ赤な紅を引いた唇が不満げに歪む。
「さっきの客だって何のつもりでありんすぇ。結局お初を見たかっただけでない。あの子が他の男に取られてしまいんしたからってなんでわっちが相手しなくてはいけありんせん。今時の客は格の違いも判りんせんっていうのか。」
どうやら彼女は気に食わない客が来て苛立っているらしい。彼女の周辺の世話をする新造や禿(かむろ)といった者たちも、彼女を恐れなんとか機嫌を取ろうとしているが、そうでなくとも最近の胡蝶は随分怒りっぽい性格をしていた。
 新造のうちの一人が口を開いた。
「すべてはお初が悪いのでございんす。あの娘は上っ面ばかり良くて教養といわすものが無いのでありんすから。自然、客のおつむも弱いのでありんしょう。そのことが姉様に迷惑になってありんすことさえ気が付かないのでありんすもの。本当に不出来な子ですこと。」
 周囲にいた者たちすべてが首を縦に動かした。
 その様子を見て胡蝶は笑みを浮かべた。
(馬鹿な小娘たちだ。)
彼女たちが次の花魁になろうと必死で自分に媚を売っているということに彼女は気づいていた。
 それ故に初を敵視しているということも。
 しかし胡蝶はそれらすべてをまるで知らないというように装って言った。
「ふん。それは言うまでもないことぇ。わっちはあの高尾と肩を並べたとまで言われる妓でありんすぇ。高尾と言えば江戸で一番の遊女と名高い妓ではありんせんか。そんなのと比べられるわっちが初音なんていう青草に負けると思いんすか?
まあ、わっちもあの子の客が流れて来んしたっていうんで腹立ててしまいんしたけど、大人げなかったわ。許しておくれ。
ここんところではお忙しいのか、お大尽様もいらっしゃりんしんしねぇ…。」
彼女は溜息を吐き、脇息に肘を掛ける。客の喧騒や妓の嬌声にそれは掻き消され、彼女の居る部屋だけがやけに静かに感じる。
 胡蝶は太夫だった。しかもただの太夫ではない。彼女はそう自負していた。
 他の大きな妓楼と違い、小さな妓楼は良い妓がいなければ店を切り盛りするのは難しい。それまでは安い玉代で大妓楼からのおこぼれを掻き集めるのが常だったこの妓楼を、胡蝶は一変させた。それがいまでも彼女の自負になっている。
 毎日のように彼女を一目見ようと客が集まった。彼女の眼に適わなかった者は肩を落として帰っていく。遊女にとって極まりない栄誉であった。そのうち噂を聞きつけた名士たちもが足を運ぶようになり、彼女はついに有頂天になった。
 それが段々と変化してきたのは去年の暮れ頃からであろうか。胡蝶が特に気にいって使用していた新造が部屋持ちになったのだ。
 それがお初、つまりは初音である。
「お初、あんた今度部屋持ちになるんだって?わっちがいなくても平気かい。」
彼女の肩を抱いて尋ねてやった時のことを胡蝶は昨日のことのように覚えている。
「姉様!初は姉様のもとから離れるのがえらい淋しゅうございんす。でも、姉様。初はもう少女(おとめ)ではありんせん。姉様の下から巣立って立派にお客の相手をせんことには合わせる顔などえらいない…。
どうか見守ってくんなまし。」
そう言って初音は深々と頭を下げた。その小さな頭の旋毛を、胡蝶は黙って見つめた。
 この娘はいつもそうだった。ひた向きな娘の頃を失わない。
彼女はふっ、と笑みが零れそうになるのを抑えた。
「そんな遠慮はするもんでないよ。さあ胸張ってお行き。わっちは此方の妓楼の一番高いところでお前さんがのし上がって来るのを待ってありんすからね。」
そう言って彼女は微笑んだ。
 初音の眼に涙が浮かぶ。
「はい、姉様…!有難う!どうも有難う…。」
 思い出して胡蝶はさらに爪を噛み締めた。あんな労い(ねぎら)の言葉を掛けた自分が情けない。まさか飼い猫に首を掻かれる羽目になるとは…。
 すでに初音は彼女に匹敵するほどの上客がいると言われている。彼女がこの見世の花魁になるのも時間の問題か…。
 胡蝶は自らの両手を見つめた。今までの張りのある体は徐々に消え失せつつある。それを自分でも感じている。たるんだ皮膚がしわになり、一世を風靡した遊女も末を迎えようとしているのだと思うと、彼女の脳裏にいくつもの呪詛に似た、いや…呪詛に満ち溢れた言葉がよぎる。ぎりぎりと奥歯を噛み締めると、鉄さびの臭いと苦虫を食んだかのような悔しさが口の中に広がった。
「……様。胡蝶様!」
はっと我に返る。いつの間にか一人で考え込んでいたらしい。気付けば全員が胡蝶を見ている。
 禿の一人が心配そうにこちらを窺った。
「どうしたんでありんすぇ。どなたか客でも来んしたのか。」
「はい、あの…。お大尽様が胡蝶様にお会いしたいと…。」


  *   *   *   


 「いやあ、申し訳ない。随分と間ができたものだ。お元気だったかね、胡蝶殿。」
大夫の部屋に通された男は両手を袖に入れながらそう言った。普段から快活でよく笑う男である。
 対する胡蝶はというと、存外素気ない様子で障子のむこうを向いたまま男を見向きもしない。
「お仕事はもういいんです?」
刺々しさを含んだ声で冷やかに言い放つ。さすがに申し訳ないと思ったのか、男はあわてて懐から何か差し出した。
「悪かったよ。ほら、これを見て御覧。金の簪(かんざし)だ。上方へ行ってきた時に買ってきたものだ。胡蝶殿によく似合うだろうと思ってね…。」
興味を惹かれたのか、目の前の遊女は少しこちらを向く。
「その玉はなんといわすお名前でありんすか?初めてでありんすぇ。」
「トルコ石、というらしい。綺麗だろう。ここまで鮮やかな色をした玉は見たことがない。」
「とるこ…。」
耳慣れない異国の言葉に遊女の瞳が輝く。
「そう。さっきも言った通り、今回は上方へ言って南蛮の装飾品や器の類を見てきたんだ。案外いい物が仕入れられたよ。その中でもこれは一級品だね。さ、これを胡蝶殿に差し上げよう。下の者に言って差してもらいなさい。」
男は簪を差し出したが、彼女は手を伸ばすのを躊躇った。しばらく思案するように俯いて、それから彼女はこう言った。
「そうですわぇ。そういうことならお大尽様が差しなすって。そしたらわっちももうへそを曲げるのはよすことにしんすわ。」
胡蝶はそうして男の肩に頭を寄せる。途端に男は照れたように笑って相好を崩した。
「ほう、そうか。そうかね。じゃあそうしよう。
どれ、こちらを向きなさい。どこに差せばいいのかね?」
「何処へでも。」
胡蝶はそう言って瞼を閉じる。
(馬鹿馬鹿しい…。)
 男なんてこんなものだ。そう思った。
 男にとっても女にとっても大事なのは要するに駆け引きなのだ。
 男は女を振り向かせようとあらゆる手を使い、女は男に簡単に捕まらぬようひらりひらりとつかず離れずの距離で彼らを躱(かわ)す。それはある意味とても美しいかもしれないし、片や残酷でもあるかもしれない。
 男は女が手に入りそうで入らないもどかしさを感じるだろう。そしてそれは時に悦楽的である。
 しかしそれはまた、心にある種の空白、空洞、つまりは虚無を生むものでもあるのだ。
 肉体と精神は乖離し、彼のすべてを奪うだろう。
 一方女の方はといえば、男に言い寄られるのに厭な気はしない。しかし彼女たちは元来気まぐれな生き物であることに違いはないのだ。いくら男がかくあるべきと思ったところで、女とは移り変わるがその存在のすべてであるといっても過言ではないであろう。
 胡蝶もまたその一人である。彼女は既にこの男に飽きていた。
(面白うありんせん男…。)
 彼女はため息を吐いた。
 江戸と大坂を行き来する貿易商というだけあって、このお大尽、三宅という男は銭は有り余るほどに沢山持っていた。しかし、それ以上に彼女を満足させる何かを持っているわけではなかった。それが一種の退屈さを感じさせた。
 美貌、愛情、欲望…。
 これらのうちどれか一つでも彼が有していたとすれば、或いは胡蝶の気持ちも変わっていたかも知れない。しかしそうでないとすれば、彼女は自分がこの男に捕まるにはあまりに憐れな気がしたのだ。
 女は自分を愛する男の運命を見たがるものだ。
 胡蝶が女である限り、それは無視できないことだったのは間違いない。
 また溜息を吐く。
「そういえば。」
三宅が突然思い出したかの様に声をあげた。胡蝶の肩を抱きながら、彼女の顔を覗き込む。目が合うと嬉しそうに微笑んで言った。
「胡蝶殿、今度うちの倅を連れてこちらへ来ようと思うんだが、誰か良い相手になりそうな者はおらんかね。なにせ初めての奴なのでね。
 今まで堅物でこんな世界はまっぴらだと言い張っていたが、そういうわけにもいくまい。そろそろこういった遊びの一つでもできんと他の者に舐められる。何かいい案はないものかね?」
三宅は心底悩んでいる風だった。
 彼は子供にあまり恵まれず、長男は夭折し、次男を火事で失った。彼の後を継げるのは今いる三男のみである。
 以前彼から聞いたことだった。
「そんなに好かんならそれでもいいでありんしょうに。男方といわすのは変な生き物ですんねぇ…。」
胡蝶は小首を傾げて云った。
 …本当に、面倒臭い生き物だ。見栄の塊だと言ってもいいだろう。
「そういうわけにもいかん。立派な男であれば妓遊びのひとつやふたつできなければなぁ、仲間内では腰抜けだとからかわれてしまうだろうて。
 儂は自分の息子をそんな意気地無しの奴のままにして死ぬわけにはいかん。」
胡蝶の心情など知りもしない三宅はそう熱弁した。
「全く、お客を連れて来るのはいいんでありんすが、それがお大尽様のお倅とあってわぇ。吉原嫌いを直すにも無理強いはできんし…。」
胡蝶は肩肘を脇息に掛けるようにして腕を組んだ。
「なんとかこう、ならんもんかね。なんだったら禿でもいい。座敷に上がらせてしばらく話をするだけでも十分だ。あとは慣れというものだろう。」
「いいえ、いかほどなんでもお大尽様のお倅であれば禿にお相手させるなんてことできはしんせん。」
胡蝶は力強く首を振った。
 しかし、だからといって胡蝶が彼の息子と会うわけにもいかない。彼女は悩んだ。
「ふむ…。若くてそう男と馴染んでいない遊女であればなんとかなるかと思ったのだがね。いないのかね?そういった遊女は。」
胡蝶の見世は小さい。しかも遊女の生活費はすべて見世が負担している。そう多くの遊女を抱えるのは不可能だ。少ない遊女のなかで、どの遊女も若いことには若いが、一番若く、それなりの格式があるのはお初だけだった。
 近くに控えていた新造がにじり寄ってきて、胡蝶に耳打ちする。
「胡蝶太夫、お初にさせたらええのじゃありんすか。別に馴染みになるかどうかもわかりんせん、お初に任せたら。」
胡蝶の眉間に皺が寄る。それを察して新造が続けて云った。
「聞けばその方はあまり廓遊びが好きな方ではありんせん。お相手がどなたであれ厭といわすのであればお初が相手だとしても問題ないでありんしょう。むしろあの子が失態を犯してしまいんした方が…。」
 口元を袖で隠しながらうっすらと微笑む。彼女もお初にいい気持ちを抱いていないものの一人なのだ。
 しかし胡蝶には彼女の云うことに気乗りしなかった。それには自分自身も危険を背負わなければならなかったからだ。
 彼女は云った。
「けど、わっちの勧めとあれば話は別。もしお初がしくじりでもすれば…。」
「安心してくんなまし。お初が自分から進んで名乗り出たことにすればいいでありんすぇ。」
「成程、お前さんの云う通りかもしりんせん。でありんしょうが、そんなことがまことにできるのでありんすか?」
「わっちに任せてくんなまし。」
新造がにっこりと笑った。

  



  *   *   *



 時を同じくして、吉原から少し離れた寺社の境内で男が一人大樹に腰かけていた。
「斎(いつき)、何を見ている」
「んー?別に何も見てないよ。」
斎と呼ばれた男は答えた。くるくると長い指で影を持て遊ぶ。
「嘘をつけ。面白いものでも見つけたんだろう、教えろ。貴様はいつもそうやって隠し事をしていけない。あとから自分だけ美味い思いをするのは目に見えてるんだ。俺様にも少し分けろ。」
影が怒ったように蠢く。
「まあまあ、落ち着くんだ焔(ほむら)。私はただ見ているだけだよ。」
「何も見てないって言ったじゃあないかよ。」
焔がうんざりしたように言う。獣の腔(くち)のように裂けた影からぽっと小さな火玉が噴き出た。焔のため息だ。
「まーた悪事でも働こうとしているんだろう。わかるぞ俺様には。貴様の脳みそなどこちらにはお見通しだぜ。ふんっ。」
影が得意げに言った。
 …脳みそは見えても意味が無いのではあるまいか?
 斎はそう思ったが黙っておいた。その方が都合がいいだろう。
「餌でも見つかったのか、それとも獲物か?どちらでもいいから早く外に出させてくれよ。符からちょっと貌を出すだけじゃあ窮屈なんだ。俺様のでっかい優美な尻尾が嘆いてるぜ。って、おいコラ聞いてんのか斎よぉ…。」
「ふむ、餌か…。確かお誂え向きなのがあったな。」
斎が一人ごちると焔がそれに気づいて首を傾げた。
「あー?やはり獲物か。どれどれ、今回は何を使うんだ。既存のものか。」
斎が一人ごちると、焔が首を傾けた。
「いや、こちらに呼び入れる必要があるだろう。焔、達磨(だるま)は何処へ行った。」
斎は影のちょうど首の辺りを撫でる。すると影は気持ち良さそうに咽喉(のど)を鳴らして言う。
「こちらには居ない。恐らくあちらに居るんだろうな。自分で呼んだ方が早いぞ。」
焔が欠伸を噛み殺す。
「そうか。」
「楽しようとするんじゃあない、大馬鹿者。」
…ばれていたか。斎は嘆息して、此方を睥睨する影から眼を逸らすように樹から降りた。符呪のようなものを取り出し詠唱する。


 ひがしに ひとたび  きたに ふたたび
 うしとらの もんにて  すずの かしわで     
 われは ちのうえの みことなり

 ひらけたまへ ひらけたまへよ  こんはくのとびら
 かしこみ かしこみ もうす


「召し上がり、達磨。」
 斎が唱え終わると、符呪に火が付き地面が二つに裂けた。割れ目からはまるで火山のように火炎が立ち昇り、そこから大きな影が現れる。
「お呼びですか、斎殿。」
影は車の形をしていた。ただ、それは普通の車とは違い灼熱の炎を纏っていた。
「悪いが達磨、人探しを頼みたい。恐らく淵の周辺を彷徨っているだろう。探してきてくれまいか。」
「かしこまりました。ただちに。」
そういうと達磨は先程出てきた地面から再び地中へと帰って行った。
「何をする気だ。」
「別に大したことはしない。ただ暇潰しをするだけさ。」
斎はそう言うと再び大樹に腰掛けた。
 生温い風が、何故か心地良かった。

斎妖奇譚

斎妖奇譚

  • 小説
  • 短編
  • ミステリー
  • 時代・歴史
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-02-29

Copyrighted
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