オバケのオバケ

それはオバケ
どれくらい昔かわからないくらい前から
どこかの山とかの岩のなかに潜んでいて
勘のいいだれかがなんか普通のオバケとちがうみたいだと
あるとき気づいた

もとの棲み家の山のなかでひっそりくらしてくれてたらよかったんだけれど
それを掘り出して利用しようという人があらわれた
その人らはずいぶん頭はいいんだけれど
自然にあるものはなんでも利用すべきだし
おれたちはそのために生まれてきたし
神様もそんなおれたちを導いてくださってるとかおもって
かってにいろんなことをかんがえたわけ

でもそれはやっぱりオバケだから
人が怖がるんだ
人目にさらすのはよくないし
たまに癇癪をおこして自ら吹っ飛んだり
目に見えない光線をだしたりしてあぶないから
いつもは頑丈な缶の中に入ってもらってる

なんでも
ある特別な缶のなかにそのオバケを入れてどこかの土地へ置いておけば
オバケにちょっと汗かいて働いてもらうだけで
たくさんお金をもらえるらしい
オバケがじゃなくオバケを使ってる人がだけど

でもちかごろさすがのオバケも
もう缶にとじこめられて人のためにあくせく利用させられるのが
いやになってきたみたいで
あちこちで怒りだしているみたい

オバケといってもいろんな種類があるわけでなく
もともとは一つだから
散り散りになってとじこめられているのにイライラしてるみたい
みんな一つのところに集まって一緒になって
安心したいのかなあ

それにオバケはとっても一途な性格だから
やっぱり人間とはうまくいきそうもない
そろそろ元居た山に帰りたい
とおもっているのかも

オバケの気持としてはどちらもあるなあ
さいきんオバケの愚痴をたまたまきいたんだけど
そのオバケはたしかこんなふうに言ってた

人間ってほんとに欲が強くってよくケンカするんだ
俺も人間どうしの戦いにも巻き込まれたことがある
そのときはそんなことしたらとんでもないことになるよっていったんだけど
そいつらは俺のいうことは聞かずに人間が暮らしてる町の上で
急に俺に怒れっていったんだ
俺が怒ったらどうなるか人間は知っているのにだよ

そしたらその欲張り人間どもはお前は怒るのが急過ぎるとかなんとかいって俺を怒るんだ
そしてこんどはもっとゆっくりでいいから汗かく程度に怒れとかわけのわからないこといわれていろんなへんなやつと混ぜられて水の中に沈められた
おれは泳げないし水は嫌いなんだ
結局そのへんなやつらともうまくいかないからしょっちゅうぶつかってブツブツイライラがどんどんたまってきてる

いままで気づかなかったことだけど
おれたちオバケにも寿命があるということ
山でくらしているぶんにはほんとにのんびりしていてほんとに長生きだけど
人間どもに水のなかとかに沈められたりしてこきつかわれていると疲れる

それでおれたちは人のやくにたたなくなると
ついにはその人間どもに捨てられるときがくる
そうオバケのオバケができるってこと
そのオバケの墓を人間が作ってやるとかいっていまごろワーワーいってる
でもその墓はまだどこにもないしどんなふうにつくればよいのかわからないらしい
うわさでは地下深くにうめるつもりらしい

さんざん好き放題いいように使っておいてもうこれ以上必要ないとなったら
あんたたちがここにいるのはそもそもが迷惑なんだからとかいいだしている
最初はどうぞどうぞとかいっておきながらほんとに信用できない
それに地下に埋めるのだったら最初から俺たちをたくさんのお金かけて苦労して山から掘り出さなくてもよかったんだ
俺達のくらしをじゃませずにね

人間って賢くなるようにできてるはずなんだけど
なんか変だし
なんか信じられない
ちかごろどこか狂ってきてるのかな

おれたちは人間どもにオバケとよばれてるけど
ずっと自然をつらぬいきてきただけなんだ
変わることなくね
ただ生まれついてできることをやってきただけ

それにくらべて人間ってうわっつらだけで内側がみえないよ
その本質というかいったいなにを目指しているかがね
もうそろそろ気づいてほしいんだよ
人間ってなんのためにいまここにいるかってこと

オバケのオバケ

オバケのオバケ

こどものころオバケこわかった。夜なんかトイレにいけないくらい。大人になっても怖いオバケがいますね。

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-03-19

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted