君に見る景色、君と見た世界。 (一章)
美しい花弁を散らせ、黒い痩身を朝日に照らす。桜吹雪の舞う街道の脇に、均等に植えられた桜木ソメイヨシノ。道行く多くの新入生たちに混ざって、一人空を見上げる少年がいた。
思春期特有の症状。まるでこの世の全てを悟ったかのような気分だ。「他人とは違う、自分は特別なんだ」と思ったところで、彼の視界に映る光景はいつもと同じ平坦な道だけだった…。
「人生には運命とゆう名のレールが敷かれている。俺たちはその上しか歩けない。そして、それ自体が既に抗えない運命というレールの一つなんだ。」
前置きは後にして、自己紹介と行こう。俺は関根京介、今さっき学校案内を終えたばかりのピカピカの高校一年生だ。
最初に断っておくが、俺はどっかの星から地球を侵略しに来た殺戮アンドロイドでなければ、内に秘めし力を宿して悪を殲滅するスーパー高校生でもない。
ごくごく平凡で、どこにでもいる、人参とメロンが大嫌いな高校一年生だ。
今は在学生にとっては始業式の真最中なので、一日早く入学式を終えた新入生諸君は自由時間になっている。
ということで、俺は特に目的もなく校内をうろついている次第だ。教室に残って新入生同士の自己紹介に混ざったほうがいいのだが…。いやしかし、人見知りでシャイな俺には少し無理な話だな。
あくびをしながら意味も無く校舎裏の狭い路地を道なりに進んでいくと、ふと視界に本校舎とは別の校舎が目に入った。
「部室棟」そう書かれた標識の先には古くさい建物が寂しそうに建っている。旧校舎を転用したのか、無駄にでかい建物に張り付く窓が、ぽつりぽつりと不規則に開いているのが目に入る。誰かいるのだろうか?
不意に「あ」という間の抜けた声と共に何かが頭上に降ってきた。咄嗟に身をかわして背後を振り向くと、サッカーボールがポンポンと跳ねながら過ぎ去っていく。
「ごめんごめん。大丈夫?」
頭上からの声に反射的に「はい、大丈夫です」と返事をすると、同じ高校の制服を着た女が窓から顔を出していた。
「ついでにさ、悪いけどそこのボールとってくれない?」
そういって眼前で手を合わせる彼女の笑顔からは悪気というものが全く感じられない。俺は無言でボールを足の甲に引っ掛けて優しく蹴り上げる。
ボールは回転せずにフワッと浮いたかと思うと、綺麗な放物線を描いて二階の窓から顔を出す彼女の両手に収まった。
「へぇー、コントロールいいね。もしかしてサッカーやってた?」
そう言って小首を傾げる彼女の仕草に一瞬ドキッとしつつ、目を合わせるのが恥ずかしいので彼女の口元を凝視しながら二度頷く。
「マジか、ちょっと部室きなよ。二階の階段上がって右側、サッカー部」
微笑みながら一方的にそう言い放つと、彼女は部室に引っ込んでしまった。まあ別に無視してもいいのだが…本当に無視してもいいんだが…しかしまあ、女性の頼みとならば断るわけにはいかない、紳士としてな。いや無視してもいいんですよ、俺は別に。でもまあ暇だし!そう自分に言い聞かせながら、俺は階段を一段とばしでかけ登った。
息を整えつつドアを開く。いや、というか息が乱れてたら実にまずいだろ。怪しいだろ、常識的に考えて。俺がいつものポーカーフェイスを気取りながら部屋に入ると、眼前にいきなりボールが飛んでくる。不意討ちに反応しきれずに、ポーカーフェイスで眼前に迫り来るボールを見つめながら、見事に顔面にクリーンヒット。
「アハハ、引っかかったわね」
甲高い笑い声が人気のない部室棟に響く。引っかかるも何も、罠があるとすら聞かされてないわけだが。というか初対面の相手にそもそもボールをぶつけるだろうか?常識的に考えて。イタタ…と手で顔を抑える俺に、尚もそいつは笑い続けていた。
これは部室に入る前に、新春とか一春のロマンスとかNGワードとかを不覚にも妄想してしまった、最近浮かれ気味の俺に対する神様の天罰なのだろうか。涙を拭き取りながら、表情を戻して彼女に向き直る。とりあえず、ぱっと見た感じで容姿を三行でまとめると
美人
茶髪
ポニーテール
貴重な二行をを髪の毛の特徴に使っているが、とにもかくにも要するに中々の美人だということだ。窓を見上げた時から既に気づいていたが、近づいて見ればやはりその端正な容姿に再度驚く。女子にしてはやや身長が高く、スタイルはもちろんのことながら、特に右目の端にある、色白の肌に浮かぶ二つのホクロが印象的で明るそうな子だった。
ハイヒール履いたら身長抜かれるなとか無駄な妄想に花を咲かせつつ、俺は言葉を発する。
「失礼しました」
ドアを閉めようとする俺に、彼女は笑いながら「待った待った」と静止をかけてくる。いかんいかん、俺としたことが…いつもの逃げ癖が出てしまった。というか、せめてこいつのクラスとか名前だけでも聞き出さなければ、と半ば執念のようなものに駆られながら俺は再びドアを開ける。
「えーと、どこの中学出身?」
半ば混乱した頭でやっと搾り出した職務質問のような定型文に我ながら失望する。そんな必死で出した高校生のナンパ文句(なのか?)を当然の如くスルーして、彼女は自己紹介を始めた。名前は宮木由子。二年三組に在籍している。趣味はサッカーとかそんなことを言った。
体裁的に自己紹介を返す俺。氏名とクラスだけを伝えた。…ていうかちょっと待て、あれ、今のところなんかおかしくないか。二年生って今、始業式の真最中だよね。え、つか新入生だと思ったし…。
そんな俺の疑問はもまたもや心地よくスルーされてしまい、宮木は続ける。
「で、京介君は何年くらいサッカーやってんの?」
きゅ…、と言いかけて咳払いする、つか最初っから名前呼びかよ。
「三年くらい」
本当は幼稚園年少の頃から九年くらいやっていたが、本格的に地元のクラブに所属してたりしたのは三年間だけだ。結局、中学に入ってやめてしまったわけだが。
「へえー意外と短いんだ。さっきのループパス?あれ凄いねえー、サッカー部に入んない?」
当然だ。ループはインサイドキックでボールを浮かせられなかった幼稚園の年少時代から高い弾道のシュートを打つために磨いてきた俺の十八番だ。いや別に秘技というわけではないから、一番とかかな。そんなことを考えながら得意げに「うんうん」と頷く俺の前髪を、宮木はくしゃくしゃにした。
「よしっ!決定だねっ」
え、と一瞬戸惑った俺の声よりどれくらい早くチャイムが鳴っただろう。コンマ一秒だろうか。いや、そもそもさっきの流れで、いきなり入部勧誘がくると誰が予想できただろうか?つか半ば誘導尋問だったろ。話題を切り替えるときは「ところで」や「てか」などの接続詞をしっかり入れ…。
「じゃあ、またねっ」
そういってスカートを翻して部室を去っていく彼女の後ろ姿は窓から差し込む光に美しく反射して…、ふと窓から見上げた空は燕が気持ちよさそうに旋回していた…な~んて呑気にナレーションをしてみる。
「忘れてたー、ちゃんと窓閉めといてねー。よろしく!」
宮木の声に混じって、気持ちよさそうに上空を旋回する燕のさえずりが部室に届く。俺は床に落ちていた鍵を拾い上げた。…部室のドアもな。そんな呟きと一緒に深いため息が溢れ出る。やれやれ、入部するとは言ってないんだけどな。
まだ春も半ばだというのに、窓から差し込む生暖かな日差しは一層際立つ。スパイクの散乱したサッカー部の部室にはほのかにラベンダーの香りが漂い、その微かな香りの余韻にしばらく浸っていたかった。
この世界は狭い。そんな一言が思春期の高校一年生の頭の中に浮かぶのはごく自然なことだろう。
眼前の講義台の上では数人の生徒たちに見守られながら、生徒会長様が長々と作文を読み上げていらっしゃる。一体どれほどの時間が経過したのだろうか。真昼間から講堂に響く、平坦なトーンの声に眠気を誘われ、俺は虚ろな目で隣に座る奴の話を聞き流していた。
「それでさ、そいつの脇腹にガーンてボディーブロー入れてやったのよ、ほら、ボコッ!、ドン!で、最後にベシー!みたいな感じよ!!そしたらそいつバターンでさ…」
そんな効果音ばかりの抽象的な説明で、前後の文章を知らないその他第三者の皆さんが文脈を読み取れるわけないだろ。
しかし世の中は本当に狭いものだ。まさか小学校の時に転校していったやつと高校である意味感動の再開を果たすとは…あの頃の俺には想像もつかなかった話だ。実際、小学生の時と(主に外見が)色々違って気付かなかったが、こいつの喋り方は相変わらずなわけだ。
そしてその他第三者の皆さんのために一応紹介しておくが、こいつは斎藤雄大。昔と違って名前通りに雄大…というか巨大に育ったようだ。どうでもいいけど。
「ちょっと君たち、静かにしてね」
後方から不意に囁かれ、斎藤のでかい図体が反射的にびくっとする。視界の端からヌーっと顔が現れ、短髪で黒いジャージを着た好青年が唇に人差し指を当てながら、シーっと注意を促す。見るからに体育教師って容貌だ。
その後は先程の体育教師が後ろに立ち、幸いにも斎藤が終始沈黙していたおかげで、長い生徒集会が終わるまで仮眠をとることが出来た。そして場面は変わるが、ホームルームなう。…死語かな?死語だよね…。
「えーと、名前は有田武、25歳で、教科は数学を担当しています。えーと、呼び方はなんでもいいです。」
見た目には似合わず小さな声で自己紹介をするうちのクラスの副担任。前言撤回しよう、先程のジャージ男は数学担当の教師だった。うちのクラスは担任が学年主任で何かと忙しいので基本的に行事やホームルームなどはこいつが指揮を執るらしい。
自己紹介が終わると一部の女子たちからは、キャーとしか形容しようのない歓声のような悲鳴のような声が上がる。それに続いて、ちょっとかっこよくなーいだの身長高いねーなどの会話がボソボソと聞こえてくる。顔に反して恥ずかしがり屋なのか、有田は頬を赤らめてうつむいていた。
「えーと、それじゃあ相葉君から自己紹介とかしてって。名前と誕生日、あと趣味もね」
教壇机の上にある座席表を見ながら向かって左端の列に手を向ける。えーと、が口癖なのか。妙にいらつく奴だ。
大体、身長(推定)190㎝の巨体で短髪で黒いジャージのくせに声が小さくて、しかも数学教師とか。どう見てもお前は体育教師だろうと。別に容姿がいいことに嫉妬してるわけではないが、断じてないが、とにかく俺はこいつが嫌いなのだ。
そんなふうに有田の第一印象を、頭の中でずらずらと並べていると、いつの間にか俺の番が近づいていた。
「名前は斎藤雄大、誕生日は8月2日のしし座、趣味はサッカー、ちなみに童貞っす。んじゃよろしくってことでー」
斎藤がドヤ顔で席に座る。いや実際には背後からでは見えないが、俺の第六感が「笑いとったり」という斎藤の思惑を受信して視覚情報を補完する。案の定、クラス全員がドン引きなわけだが。そんなことお構いないのか斎藤がゆっくりこちらに振り返る。
クラス全員が冷めた目で斎藤から目を逸らす中、不思議にも有田は幸せそうな微笑みを斎藤に向ける。次は俺の番か。つか斎藤てめえ、そのニヤけ顔やめろ。そして語尾伸ばすのウザイから。思えばこいつは昔からこういう奴だったわけだが。
「俺の名前は関根京介、誕生日は4月6日、趣味は…」
あれ、趣味なんてないぞ。これって言わなきゃダメなのか。さすがに健全な男子高校生に趣味がないってのも不味いよな。根暗とか変な勘違いされても困るし。一瞬迷ったが、まあ別に何でもいいよな、テキトーに言っといても。
「趣味はサッカーです、よろしく」
俺が席に着くと、斎藤は妙に気持ち悪い笑顔でパチパチと拍手した。焦って斎藤と同じ趣味にしてしまったが、そもそもこいつってサッカーやってたか?転校していったのは小学5年生の冬だから、始めたのはその後か。どうでもいいんだけどさ。
「そっかー、関根もまだサッカーやってたのか。もち、サッカー部入るっしょ?」
やっと長かったホームルームを終えて解放されたと思ったら、また面倒なのが絡んできた。曖昧な返事をしながら荷物を鞄に詰めていると、突然、教室のドアが大きな音を立てて開いた。驚いて、その場にいた生徒全員が必然的にドアの方へと視線を向ける。
「あー、良かったまだ居たかー。京介君、これ持ってきたわよー。」
まさに仁王立ちと呼ぶに相応しい、堂々たる姿で宮木がドアの前に立っていた。片手には何枚かの紙切れをヒラヒラさせている。宮木はクラスにいる男子全員の視線を集めながら、ずかずかと俺の席まで一直線に歩いてくると、入部届けと書かれた紙を机に叩きつけた。例えではなく、本当にパンッという音が響いたくらいだ。
「二時からミーティングあるから、遅れないでね」
宮木は透き通るような声で言い放って去っていこうとした。
「え、てかまだ入部するとは言ってないんですけど…」
今はまだ仮入部期間だ。ほかの部活を見た上で決めようと思っていたのに、というか高校は軽音部に入ろうと決めていたわけなんだが。しかしながらそんな俺の言葉も彼女の耳(脳)には届かず、虚しく風を切るのだった。
「つか武、担任になったん?やるじゃん」
何がやるじゃんなのかよく分からんが、宮木はどうやら有田に面識があるらしい。俺の意思とは関係なく、俺の中での有田への評価がまた一段と低下する。副担だよ、とボソボソ返事をする根暗な有田にお構いなしに宮木は続ける。
「あそこにいる京介君、新入部員だから。そんじゃよろしくね、顧問」
またもや一方的に言い放つと、宮木は入ってきた時と同じようにずかずかと教室を出ていった。有田が意味ありげに頷きながらこちらに顔を向けて微笑む。相変わらずむかつくイケメンスマイルだ。ん?つかあいつ今、なんて言った?有田が こ も ん だと?
俺は今日二度目の深いため息を付くと、口を開きかけた有田を無視し、更に死んだように固まってドアの彼方を棒立ちで眺める斎藤を残して足早に教室を去った。背中に痛いほど多くの目線を感じながら。
で、部室棟の前なう。あれ、古いかな?古いよね、すみません。とにかく、始業式に出会った謎の女子高生に強引にサッカー部へ勧誘された挙句、無神経にも他人のクラスにずかずかと入りこんで入部届けを押し付けてきた暴君よろしく自己中万歳な女王様に、愚かにも俺はノコノコと付いてきたわけだが…。
何か質問ある?え、ないですか。ないですよね、ごめんなさい。いや待て、ちょっと待て。なぜそんな愚行に及んだのかについての弁明が必要だ。被告にも常に人権というものがある。俺にはその罪を犯してしまった健全、明確かつ絶対的な理由があったんだ。
真実はいつも一つ!…そう何を隠そう、どストライクなのだ。え、何がだって?断言してもいいが、俺は宮木より容姿が端麗な女性を過去に見たことがない。
いや、もちろんテレビの中とかそういうのは除くが。まあ健全な思春期の男子が可愛い女子の後ろを追いかけるというのは、古来何万、何百万年にも及ぶ人類の歴史の中で繰り返されてきた、至極当然で健全な文化である。
いや別に好きなわけじゃないぞ。そんなことは決してない。まだ内面もよく知らないからな。まあでも性格はちょっと可愛いかもな、絶対「チョコレートケーキ派」だな、あいつ。あ、いやいや別に可愛くないね。決して可愛くない。断然可愛くない。…ちょっと可愛いだけだ…。
まあ、とにかく!室町時代(多分)とかに行われた夜這いを代表する、脈々と受け継がれてきた神聖なる文化や歴史を俺たちの代で終わらせるわけにはいくまい。
毅然とする思いで自分を言いくるめながら俺は階段を二段飛ばしで駆け上り(※良い子は危ないからマネしないでね)、ちょっと息を切らしながらも部室棟の二階にたどり着いた。
静かな廊下に二種類の騒音が響く。声の元はどうやら二つの部屋からだ。向かい合った部屋同士から漏れ出る笑い声や話し声。その中で俺はサッカー部と書かれた黄色いステッカーの貼ってあるドアをノックする。あれ、ノックってなんか気不味くならないか?とかちょっと後悔しながらも、ワンテンポ挟んで浅黒い肌の青年がドアを開けた。
「あ、もしかして関根君?」
得意のポーカーフェイスで低めにに「はい」と頷くと、その青年は笑顔で「入って入って」と言いながらドアを開けた。部員たちは、部屋に入ってきた可愛い新入部員に特には目もくれず、相変わらず自分たちの話に夢中のようだ。
「宮木から聞いたよ。まさか始業式初日から新入部員が来てくれるとわなー。あ、ちなみに俺はサッカー部キャプテンで三年の松嶋だ。よろしくな、後輩」
妙に感じのいい青年だ。爽やかな笑顔に微笑み返しながら部室全体を見回す。部室にいる部員は全部で10人ちょいってとこか。当然のことながら全員が先輩だ。
そこで俺は、練習着を持っていないことに気づいた。まさか始業式初日から、新入生が練習着を必要とする機会はそうそう訪れないだろう。そのことを松嶋に告げると、代わりに体育着を貸してくれることになった。ちなみに洗って返す必要はないとのこと、やけに気前のいい先輩だぜ。でも気が引けるし、一応洗って返さないとな。
「とりあえず、もうすぐミーティング始まるからちゃっちゃと着替えて。場所は確か…一年二組の教室つってたな」
松嶋はそれだけ言うと、「じゃあ」と手を振って部室から出ていってしまった。ほかの部員たちは相変わらず他愛の無い話に夢中だ。俺は妙に心細くなってしまっい、すぐに松嶋から借りた体育着に着替えて、自らの教室に逆戻りした。
「ちゅうもーく!!」
宮木が教卓を両手でパシンと叩くと、部員たちは話すのを一時中断して宮木の方を向く。教壇に立つ宮木の隣にはもう一人、宮木に比べてやや小柄な女子生徒が控えめな微笑を顔に浮かべながら立っている。
肩まで伸ばしたセミロングに、左側のミドルセクションに巻かれた大きなピンク色のリボンが特徴的だ。女子高生二人組の立つ教壇の脇には、椅子に座った状態の有田が腕を組みながら微笑んでいる。相変わらずむかつくイケメンスマイルだ。
「そんじゃ、これからミーティング始めるわけだけど…そうね、まずは新入部員の紹介ね」
ほらこっち来て、と宮木は手招きしてくる。マジか…ただでさえ相手が全員先輩で、敬語を使わなきゃいけない上に、シャイで人見知りな俺が初対面の相手に自己紹介だと?いや、自己紹介なんてものは初対面の相手にしかしないわけだが…とにかく無理っす。無理無理無理。
首を大げさに振って抗議していると、後ろから思いっきり背中を叩かれた。驚いて後ろを振り返ると、松嶋がニカッと笑いながら親指を立てている。結局、俺はいつの間にか目の前に立っていた宮木に手を引かれて教卓の前まで連れて行かれた。
ここで質問なんだが、自己紹介ってなにいえばいいの?名前以外に思いつかないんだが…誰か知ってる奴いたら教えてくれ。そんな俺の心を見透かしたのか、宮木は「名前、ポジション、サッカー歴に…そうね、あとは好きな食べ物」と命令した。好きな食べ物はいらないだろ。
「名前は関根京介、一年二組所属で、ポジションはウィングとトップ下です。小学生の時に3年間だけ、地元のクラブに所属してました。…」
…しばし沈黙の間を置いて周囲から徐々にパチパチという拍手が起こる。え、何これ?もしかして好きな食べ物も言うべきだったのこれ?自問自答をしながら席に戻ろうとすると、横から「よろしくね」と囁かれた。もう一人の女子生徒だ。至近距離からの女子の微笑みに、内心ドキッとしながら「よ、よろしく」と反射的に返す。キョドるなよ俺…。
「じゃあ改めてよろしくな、関根」そう言って笑う松嶋に軽く会釈を返した。それに続いて周りの何人かの先輩からも「よろしくな」と声をかけられ、俺は「よろしくお願いします」と何度か首を前に傾けた。じゃ、早速本題に入るけど…。宮木がクラスを見渡しながら前置きした。
「次の日曜日に練習試合入れておいたわ。相手は市立桜ヶ丘よ」
宮木がニコッと微笑みながら首を傾げると、先程まで和やかな雰囲気だった部員たちが一斉に固まった。市立桜ヶ丘と言えば、同市内にある公立高校だということしか知らない。数秒の沈黙を挟んで、何人かの部員から「マジかよ…」という動揺したような声が漏れる。
「今回は市立桜ヶ丘の第二グラウンド、アウェーでの試合になるわ。今日から練習始めるから、この後すぐにグラウンド集合よ。じゃ、一時解散!」
宮木は凛とした声で言い放つと、傍らに立っていたもう一人の女子高生の手を引いてスタスタと教室を後にした。それと同時にクラス内が一気に騒々しくなる。ミーティング前の他愛ない会話の続きを話すものもいれば、日曜日の練習試合について話すものもいた。次第に、一人また一人とグラウンドに向かい、クラスに残されたのは席に座ったままの俺と、練習メニューの日程表と睨みっこする松嶋だけになった。
「あの、市立桜ヶ丘が何か問題なんですか?」
俺の問いかけに松嶋はちょっと真剣な表情で頷く。
「昨年のインターハイ都代表だよ。まさか練習試合を組んでもらえるとはな…。今年は有名な奴がスポーツ推薦で入ったって聞いたけど、誰だっけ?」
松嶋は眉間に指を当てながらしばらく考えている振りをしたが、すぐに「ま、なんとかなるっしょ」と笑って親指を立てた。短絡的な奴だ。俺は意味も無く二度頷いてから立ち上がり、松嶋と二人でグラウンドに向かった。
グラウンドに出ると、ほかの部員たちは既にウォーミングアップを始めていた。松嶋に促されて、俺もジョギングの列に加わる。
はっきり言おう。俺は長距離を走るのが嫌いだ。ダラダラとペースを守りながら走って貴重な時間が浪費されていく感覚が嫌なんだ。
早く終わらせようと、速く走れば更に無駄な時間を費やす。要するに俺の中で、長距離とは我慢の競技だ。どれだけ前に出たい気持ちを抑えて、最後まで体力をキープできるかの戦い。長距離種目をやっている人には悪いが、俺はそんな競技に全く魅力を感じられない。
幸い、1キロ程度走ったところで14人程の列は円を囲むように並び、アップは柔軟体操へと移った。俺は松嶋とペアを組んで体を慣らしていく。その過程で今日の練習メニューについて説明をされた。
「鳥かご、シュート練習にミニゲームだな。今日は比較的軽めだよ、始業初日だしね」
体柔らかいなーと感心しながら、松嶋は俺の背中をさらに強く押す。しばらく動かしていなかった関節は思いのほか柔軟なままだ。
更に各々準備体操を終えてから、4人一組を作って鳥かごの練習を始めた。
鳥かごというのは何人かでグループを作り、パサーと鬼インターセプターに分ける。パサー同士でパスを回し、鬼がボールにタッチすると最後にボールを触ったパサーと交代する。つまりパサーは鬼がボールに触れないようにパスを回し、鬼はパサーたちの間を動き回ってボールを取りにいく…というのが一般的な鳥かごだ。
俺と松嶋、それに福山と山崎という二年の先輩たちが同組だ。まずは松嶋が4つのコーンを5メートルおきに並べて正方形を作る。この中でパスを回せという意味だ。次にジャンケンで鬼を決める、これは山崎がグーで負けて鬼になった。お互い3メートルほどの距離を空けて三角形を作り、山崎がその真ん中に立つ。
いくぞーという掛け声と共に福山が松嶋にパスする。松嶋はワンタッチで俺にボールを送る。すると山崎がすぐに距離を詰めてボールを取りに来た。俺は落ち着いてトラップしたあとに足裏でボールを転がして山崎の股下にボールをスルーさせて山崎を抜き去り、松島にパスを折り返した。
福山と山崎がポカーンとした表情でこちらを見ている。フッ、どうやら俺の完璧なドリブルテクニックに畏敬の念を抱いて固まっているようだぜ。そりゃまあ、俺は小学時代はクラブで不動のレフトウィングを張った程の男だ。ドリブルに関しては非凡ではないと約束しよう。などと俺が内心ドヤ顔で自画自賛に浸っていると、やれやれといった表情の松嶋が肩を叩いてきた。
「説明しなかった俺が悪いな。うちの鳥かごはツータッチまでだ。ディフェンダーがパスコースを消す前にワンタッチでパスを出すか、ファーストタッチでディフェンダーをかわしてパスを出すかの二択を試合中に素早く判断するための練習」
松嶋は早口で告げると、ゆっくりと二回意味深に頷いてから持ち場に戻った。ふ~ん。なるほどな…。今まで深く考えたことはなかったが、鳥かごは正確にパスを出す相手を見極める練習だと思っていた。勿論その目的も入っているんだろうが、やり方や見方によっては試合中にパスかキープの判断を正確にするための練習にもなるよな。
いやでも俺のテクニックは褒められべきじゃないか?と、素直に感心、半ば不満を並べているとダイレクトで福山に送り返したボールが山崎の足に引っかかった。
「関根、チェック!」
松嶋が反射的に叫ぶと同時に、松島と福山がボールを持った山崎との距離を詰める。俺が呆然としていると、山崎がドリブルして俺の横を通り抜けた。
コーン同士のライン際にボールを止めた山崎が「関根交代っ」と振り向きざまに嬉しそうな声で言った。同時に、「関根、守備しろよー」という福山の落胆した声が聞こえてくる。え?、と反射的に聞き返すと松嶋は腕を組みながらため息をついた。
「ボールとられてボーッとするな、大事なのは取られてからの動きだ。コーチに言われなかったか?」
言われてないですけど…。標準的な鳥かごは鬼がボールをカットするか、キープすれば交代である。というかパサーがボール奪っていいなら、下手な奴がずっと鬼になってしまう。敬語でその旨を告げると松嶋は一瞬、「うーん」と首をひねってから答えた。
「まあ、そういうことになるな」
納得できない。ドリブルが得意な俺などはともかく、サッカーを始めたばかりの初心者じゃまともにできないと思うが。
「でも大事なのはボールを奪われてからの守備、奪ったあとにボールをキープするための一瞬の判断、それが試合の全てだ」
俺の表情から察したのか、松嶋が納得したようにウンウンと頷きながら説明する。まあ、言われてみれば…などと妙に納得したようなしてないような感覚で「あー」と不服そうに頷くと、後方からピーッという笛の高い音が響いた。いつの間にか赤いジャージに着替えた宮木が口に笛ををくわえ、腰にメガホンを持った片手をのせながら仁王立ちで立っている。その脇には白いジャージを着たもう一人の女子生徒。
「集合ー!!」とわざわざメガホン越しに叫ぶ宮木に驚いたのか、校門側の通学路を歩いている何人かの生徒たちが振り返るのが見えた。
「んじゃ、シュー練行くわよ」
シュー練とはシュート練習のことだ、久しぶりに聞いた。宮木が全員集まったのを確認してグラウンドの隅を指さすと、ペナルティエリア内にフットサル用の小さめのゴールが三つ程、1メートルおきくらいに並べられている。
シュート練習にあるまじき不思議な光景にしばらく呆然としていると、宮木がさらに説明する。
「全員で13人ね。3週して20ゴールがノルマよ。ファーストタッチしてからシュート」
宮木は最後に「いい?」と強めに言い放った。ゴール前に立つのは三年の吉川。このチーム、すなわち私立桜ヶ丘高等学校サッカー部の正ゴールキーパーだ。難しく考えることはない、三つある小さなゴールのうちの一つにシュートを決めるだけだ。
後ろに立つ福山が山なりのフライングスルーパスをペナルティエリア内、足元から3メートル程離れた場所に落とす。ボールが着地した瞬間にワンタッチで大きめに内側に切れ込んだ俺は、一度顔を上げてゴールキーパーの位置を確認する。
吉川は向かって正面、真ん中にあるゴール前で構えている。俺は素早く右足を振り抜き、インステップでボールをニアサイドの左側のゴールに蹴り込む。
しかし、ボールは思いのほかゴールのポストを少しかすって左側にそれてしまった。久しぶりのシュートだが感覚は掴めた。次はおそらく決められるだろう。
そして二回目の順番が回ってきた。今度はチップ気味に右へそれるスワーブパスだ。回転のかかったボールをインサイドのワンタッチで収め、顔を上げてゴールキーパーの位置を確認する。
さっきと同じ位置だが、重心がニアサイドにむいている。俺はまたも勢い良く右足を振り、右側のファーサイドを狙ったが、ボールは中央と右のゴールの間の何もない空間へと力強く飛んでいった。
…言い訳をするわけではないが、何かがおかしい。何故かボールの感触に違和感を感じる。妙にふわふわしてるような。違和感の正体に頭を悩ませていると、三回目の順番が回ってきた。
福山がペナルティエリア左のスペースに送ったスルーパスに追いつく。顔を上げると吉川がシュート範囲をカバーしながら距離を詰めてきていた。この距離じゃ角度的にファーサイドは無理だし、ニアもカバーされている。ファーストタッチで抜くことも考えたが、ペナルティエリア内で手が使えるゴールキーパー相手にドリブルを仕掛けるのは得策じゃない。
ゴールキーパーとの間合いが3メートルになろうかというところで反射的に左足でループシュートをした。同時に周囲から「おおー」という歓声と息を呑む音。だが、打った瞬間に思ったとおり、山なりのボールはファーサイドのゴールバーを超えた。
「ナイストライ!惜しかったな」
松島の一言に続いて周囲からも「ナイスシュート!」と声があがる。俺はそんな声に少し励まされたが、しかし試合じゃシュートを決められなきゃ意味がない。どんなに内容で上回っていても、得点が相手より少なければ負けだ。俺は三回全てのチャンスで一度も得点できなかったのだ。
でも今は、口々に「ナイスシュート」と褒めてくれる先輩たちの温かさが素直にありがたかった。
「一周目は13ゴールか、まだまだね」
片手で前髪を撫でながら宮木は細い首をかしげる。俺は心の中でこっそり、宮木の行動一つ一つにドキッとしてしまう自分を否定する。可愛いのかなあ?そんな疑問文で埋めつくされた俺の頭の中に、何故か宮木の、小首を傾げて不可解そうな顔がやけにリアルに再生される。
宮木の顔はどんどん近くなり、俺との距離が更に縮まる。やばいな、末期だ。妄想だ。ありえんぞ、断じてありえん。そんなはずは…。「ない」そんな掠れた声がいつのまにか口元から出てきて、自分でも驚く。ほのかにラベンダーの香りがした。
「ねえ、ちゃんと聞いてる?」
不意に視界が明るくなった。目の前には相変わらずの至近距離に、不可解そうに小首を傾げた宮木の顔がある。「え、あ、うわわ」自分でも笑えるほど裏返った声をあげながら半歩後ずさる。部員全員が不思議そうに俺に注目している、死ぬ程恥ずかしい…。
「じゃあ、皆は先に初めててー」
宮木がそう言い放った後、俺に向かって手招きしてきた。ありえないと分かっているが、自分の心の内が見透かされてような気分になり、フラフラとした足取りで近付いていくと、顔を寄せて囁かれた。
「あんた、もっとサッカーやってたでしょ。それも小さい頃から」
俺の視界に宮木の不服そうな瞳が映る。宮木の微かな吐息の音が鼓膜を突き破り、そして心臓に深く突き刺さる。ジェットコースターに乗るとき、落ちる瞬間のあのフワッとしたような感覚だ。頭がボーッとしながら、抑揚した声で答える。
「まあクラブに入ってたのは3年だけですけど。でもサッカーは9年くらいやってました」
「あー、やっぱり!」
宮木は無駄に嬉しそうにはしゃぐと、俺の肩に手をあてて「でね」、となぜかまた小声に戻って前置きする。
「ボール蹴る時に、重心が高いんだ。多分、小さい頃の感覚なんだろうけど、体が大きくなったから、今はボールの重心が蹴れなくて、うまく方向がコントロールできてないの」
ああ~、なるほどね。ボールを蹴った時のあのフワフワした感じ、ボールの中心を蹴っていなかったから弾力が小さくて違和感を感じたわけだ。納得して首を大げさに縦に振る俺を見て、宮木は言う。
「だからアドバイスなんだけど、次はコントロールシュート蹴ってみて」
コントロールシュートというのは文字通り弾道をコントロールしたシュートのことだ。ボールをインサイドで蹴る分スピードはインステップキックに劣るが、キーパーのセーブしにくいコースを狙いやすい利点がある。
わかりました。そう一言告げてから俺は再度、練習に加わる…が、既に終わっているようだ。
「あと2ゴールでノルマだ」
列の先頭でボールを転がしながら松嶋が言う。どうやら、俺の三回分をとっておいてくれたらしい。
「ま、手加減はしないけどな」
中央のゴール前、ゴールキーパーの吉川が腰を低くした待機姿勢でこちらを見据えている。
ゆっくり深呼吸する。練習とはいえ、俺の双肩に皆の運命が預けられているわけだ。準備はいいか?と背後から問う松島に「はい」と頷く。
まずはペナルティエリア右にグラウンダーのスルーパスが出た。一瞬反応が遅れたキーパーを確認しながら中央に切れ込み、最後は右足のインサイドでニアのゴールに沈めた。「ナイスシュート」と緊張した声が聞こえる。あと一回だ。
「いくぞ」という掛け声と共に、チップ気味のスルーパスがエリア中央に切れ込むように送られる。今度は素早く反応したキーパーが飛び出してきたので、左足のアウトサイドで距離をとる。
再度距離を詰めようとしてくる吉川、左足のループでファーサイドを狙う。瞬間、皆が息を呑む気配。しかし、これがやや早かった。素早く反応した吉川が後方に飛びながらギリギリでボールを弾く。同時に「おお」という歓声が上がった。ファインセーブだ。
「次がラストだぞ」松島の声に無言で頷く。エリア右に高めのループパスが送られた。キーパーの位置を確認すると、既に距離を詰めてきている。
この勢いじゃ、ループは無理だ。ニアもファーもコースがない。一瞬迷ったが、キーパーを注視する。吉川がコースを塞ぐために足を外側に広げた。その瞬間に落ちてきたボールをインサイドのワンタッチで吉川の正面に向かって蹴った。
周囲から先程より大きい歓声が上がった。思惑通りにボールは吉川の足の間を抜けて、中央のゴールへと吸い込まれた。同時に「ナイスシュート!」という歓声、次第にパチパチと拍手が起こった。さすが俺!軽く有頂天だ。実際、また抜きシュートはテレビでしか見たことないし、やってみたのも初めてだったが、決まると気持ちいいなこれ。
スライディングしたままの姿勢で吉川が手を差し出した。起こして、ということらしい。片手で引き起こすと、「ナイスシュート」と微笑みながら肩を叩かれた。
何気なく視界の端に目をやると、神妙な顔をしたままの宮木がこちらを向いて頷く。手を挙げて、親指を上に立てる。「サ・ン・キュ・ウ」と口の形を作る。黒いフワフワのシュシュを春のそよ風になびかせながら、宮木はクスッと微笑んだ。
その後の練習は至って普通だ。紅白に別れてミニゲームを行い、俺たちは松嶋先輩と山崎先輩の計2得点で勝利した。
ここに来て俺の心の中でも彼らを先輩と呼ぶようになったが…まあなんだ。気が変わったというか、なんというか。単に彼らに尊敬の念が生まれたからかもしれない。今日一日だけだが、笑い声の絶えない彼らの輪の中にいるのは少し心地よかった気もした。
そういえば、さっき気になってシュート練習の形式について松島先輩に訪ねてみた。俺がクラブ所属時にやっていたシュート練習はノルマ式ではなく、時間式だったからだ。ノルマ式だと一巡目で終わる可能性もあるから、効率的ではないと思ったのだ。
しかしながら、松島先輩曰く。
「時間式だとダラダラやっちゃうけど、ノルマって目標があれば皆一回一回ちゃんと集中してやるでしょ」
ということらしい。言われてみれば納得だが、でも一回目で終わったら結局もう一周とか言われそうだな。と口にしてみたが、それはないらしい。松島先輩の理由を聞いて納得した。
シュート練習は毎回、一度目は左サイド、二度目は右サイドと交互にやっていくからだ。考えてみれば難しい話じゃない。ほとんどのサッカー選手は右利きだろう。それはうちの部内にも言えることで、つまり、ノルマはほぼ右サイドで始める二回目以降の偶数巡目で達成される。勿論、ノルマはクリアできるかギリギリの所に定めるから、一巡目で終わったことは今までないらしい。
最近のサッカーは論理的だなとか一人で感心しながら部室棟を出る。夕焼けに赤く染まった空に、カラスたちの今日一日の太陽の仕事ぶりを称える鳴き声が穏やかに響く。
そういえば宮木ともう一人の女子生徒(さっき聞いたが、原雪路というらしい)は「まだ用がある」といっていたから、おそらくもう少し部室棟の一室に残るようだ。
ちなみに、松島先輩から借りた体育着はしっかり洗って後日返却しました。
君に見る景色、君と見た世界。 (一章)