君ともう一度

輪廻とか、前世とか、そういうのは一切信じたことなかった。

自分に前世なんかがあるのだとしたら、きっと蟻か何かだったんだろうと思っていた。

けど、はっきりと思い出した。

前世の俺のことも、君のことも、皆のことも。

生まれ変わっても、また皆に出会えたのだと思うと

無性に嬉しくなって

柄にもなく、笑みが零れる。

0日目ープロローグー

夢を見る。

何処の誰だか分からないが

誰かが俺の側で泣き叫んでいる夢。

周りには弓が刺さっていたり

銃が撃たれた後の煙が上っている。

そっと自分の腹を触ると、ヌルヌルとした鉄臭い物が手につく。

段々視界もぼやける。

あぁ…俺死ぬのか。

そう思うと、自然に涙がこみ上げてきた。

嫌だ、死にたくない…!

……でも、多分もう駄目だ。

どうか、君だけは生き延びて。

大丈夫、君は強いから。

最後の力を振り絞って、君の名前を呼んだー。

1日目ー午前ー

ピピピヒッ ピピピヒッ ピピピヒッ……

「…そんなに鳴らなくても分かってるっつーんだよ」

何度も鳴る目覚まし時計を止め、今日も一日が始まる。
どこからか鳥の鳴き声が聞こえ、日光が部屋を照らしている。
部屋で飼っている犬ーポチ太が気持ちよさそうに寝ているのを見て、下へと下りる。

この時間はまだ祖父母は寝ているので、部屋の前は静かに歩かなくてはならない。

居間に入ると、いつものように親父が新聞を広げて読んでいる。
あれ、日本語で書かれてるのに読めてるのかな、なんて思いながら冷蔵庫まで行って、食パンを取り出す。

パンの袋で、俺が起きたのだと確認し、英語での挨拶を交わす。

親父はイギリス人だ。
表向きは、大手企業の社長だが、裏ではただの暴走族総長だったらしい。話を聞いただけだからあんまり知らないけど。まあ、怒ったらこわいし、何しでかすか分からないから、そうだったのだろうと思う。

「…あ、親父」

「ん?」

「俺、今日出かけるから。帰り遅くなると思う」

「OK、わかった」

笑顔でこたえると、また新聞の方を向く。

(…学校に行くのか、とは聞いてこないのか)

俺は基本的に学校に行かない。
中学は行ってないとしても卒業は出来るし、行ったところですることもないし。それなら家でゴロゴロしてる方がましだ。

チン、とオーブンから音が聞こえ、パンを取り出して、冷蔵庫からイチゴジャムを取って、パンに塗る。

(…朝9時、この時間だとニュースしかやってないか)

そう思いながらもリモコンを手に取り、テレビの電源をつける。

予想通り、ニュース番組しかやっていない。
が、一つのニュース番組が俺の手を止めた。
何故だか分からない。
関わりもない人物のニュースなのに…。

『先日、大手企業である千葉株式会社の株が一気に上昇し、社長である千葉進一氏は次のようにコメントしています。ーーー……』

何故か、俺はこいつが気にくわない。

(朝から…きったねえ顔映してんじゃねーよ)

パンを一気に口の中に含み、自分の部屋に着替えをしに行った。

1日目ー午後ー

「んじゃ、行ってきまーす」

そう言って家を出ると、友人…と呼ぶべきなのかどうなのかいまいち分からない奴ー足立照(あだち てる)がいつもの笑顔で待ち伏せていた。

「おはよ、アリア!遅かったねぇ、寝坊?」

「…ちげえよ、親父に絡まれたんだ」

と、適当な嘘をつく。
いや、寝坊はしてない。親父にも絡まれてないけど。

「ふぅん?まっ、いいや!」

「他の連中は?」

「あぁ、アリアがあまりにも遅いから先に行かせたよ。アリア寝起き機嫌悪いから、新入りちゃんたち怖がっちゃうでしょ?」

「そんなに遅かったか」

「…ほんとは、そんなに。でも、皆に話す前に聞いておきたくて」

…?なんだ、急に真面目な顔になって。

「今朝ね、可愛い女の子がこの家入ろうとしてたの見ちゃったんだよね、またストーカー?」

「…っは?」

「にしてもさー、女の子も物好きだよね、こんなこわい顔してんのに」

………。
珍しく真面目な顔したと思ったらこれだ。

「知らねえよ、そんな女。それと自分がモテねえので俺を僻むのやめろ」

「ぶー!良いよね、モテる人は!そうやって余裕ぶってさ!」

「あー、もう、鬱陶しい!さっさと行くぞ」

「うわあ!自分が寝坊したのにい!」

「だから寝坊じゃねえっつってんだろ、だあってろ!」

そんな言い争いをしながら、俺たちはいつもの集合場所へと歩き出した。
…に、しても……

「おい、照」

「んー?へっ、てか、えっ、名前!呼ばれたの久々じゃない??!え、ちょ、もっかい!ワンモア!!」

「海に沈めんぞ」

「…すみませんでした、んで?何?」

「お前が今朝見た女って、どんな奴だった」

「えー、何、アリア。彼女作る気?俺が最初に見つけたのにい」

「おい」

「もー、つれないなあ…。どんな子って可愛い子だよ?ハーフっぽい顔でー…あ、髪は黒髪を腰あたりまでだったかな?」

……、夢で見たあいつは、一体誰だったのか気になったんだが、夢の中の顔を思い出せないな。

「?どーしちゃったのさ、そんなこわい顔して」

「…なんでもねぇよ」
そうこうしてる内に、1つの倉庫へと辿り着く。

ド派手な落書きや、大量のバイクがそこにある。

ここは、俺たちー白龍の溜まり場になっている倉庫だ。

「あ、やっと総長のお出ましだね」

「あっ、おはようございます、アリアさん!」

「あぁ」

一部、知らない奴もいるが、多分この天パが言ってた新入りだろう。
各自が朝の挨拶をしてくる。

「まあまあ、そんな堅っ苦しいのはやめてさ、気楽にいこうよ!」

「…何故お前が仕切る」

「やっだ、アリアこわーい…、って、うそうそ、嘘だから、ね?その右手の拳をしまおうか??!」

「…ったく」

倉庫の奥の方にある椅子に腰をおろす。
そして、話は本題へと入る。

「…最近、烏の奴らが動き出したらしいな」

「そうみたいっすね、まあ、最近では色んなとこが暴れ出してたんで、それに乗っかったんでしょう」

「あ、そういえば、晴哉から連絡来てたんですけど…鷹と烏でやり合うらしいっすよ」

「鷹と烏が…?」

「えぇ。なんか昔から因縁の仲みたいで」

…そんな話聞いたこともなかったが。

「…晴哉の情報は確かか?」

「それは、そうでしょう。この前の蛇と蛙の時も情報提供してたじゃないですか」

「俺は、烏と鷹が因縁の仲だったなんて話、聞いたことないけどね」

「…おい、天パ」
「ん?え、今天パって言った?…じゃなくて、何でしょう、総長」

「お前、2人くらい連れて晴哉んとこ行ってこい」

「…それは別に構わないけど、何?まさか仲間を疑ってる訳じゃないよね?」

「頼んだ」

その後は何も言わず、照の顔も見ず、時間が過ぎていった。

君ともう一度

君ともう一度

初投稿です。 完結まで何日かかるか分かりませんが、最後まで書けることを 自分自身も願ってます。 初めての投稿作品ってことで、どういう内容にしようかと悩んだ結果 転生した人たちの話に挑戦してみました。 細かい設定とか全然決めてないので、後から色々変えてしまうかもしれませんが、 最後までお付き合いいただきたいと思っております。

  • 小説
  • 掌編
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-03-16

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