星になったお父さん。

星になったお父さん。
緑色に染まった大腿骨
熱が残る銀の台。

星になったお父さん。
布団の上に置かれた守り刀
それを手に取り
喉元へ突き立てる。

白く覆われた空が
泣くのを見られまいとする父の心を表しているようで
風と共に舞う雪が
乾いた涙にも見える冬の朝。

昨日買いに行った喪服
念入りに磨いた黒いパンプス

「私の魂は、共に行くことを望んでいた。」

その願いは
哀れみと心配が頂点へと達したとき
父の心を動かすのだろう・・・・。

もし何かを感じ取り
伸ばした手を掴まれたのなら
(迎えに来たよ。)と理解するべきなのだろうか?

「お父さん。お父さん。」と
思いっきり抱きついて・・・・。

星になったお父さん。
忘れてしまった声/最後の会話
「忘れて欲しい。君達がこの先も生きてゆくために。」という気持ちで
大切な記憶を持っていってしまったのだろうか?

生きてゆく為に、無かったことにしてしまう。
生きてゆく為に、いなかったことにしてしまう。

やがて存在も感じ取れなくなり
大人にならざるを得ない苦しみに
あえぎだすのだろう・・・・。

星になったお父さん。
少しずつ薄らいでゆく思い出の一部
無言で別れを告げた
小正月の深夜。

星になったお父さん。

星になったお父さん。

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-03-16

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