アンデルセンの時計台

小さな頃から記念日は
ずっとここで
過ごしてきたから
僕もパパとママみたいに
ここで幸せになるんだって
思っていた

噴水の上がるあのひろばに座っていたあの人は
今は小さな背中で
ただ時計台を眺めている

大きくそびえる
ショッピングモール
やけに冷たくなった風を背に
駅に向かうんだ

あれから季節は繰り返した
めまぐるしく回る
メリーゴーランド
子どもたちのはしゃぐ声も
今はもうここにはない

時計台から流れるメロディ
それだけがここに私たちが
ちゃんといたことを
教えてくれる

アンデルセンと仲間たち
いつでもここで待ってると
言ってたのは
いつのころだっけ
思い出せない
そんな日がいつか来てしまうのかな

黄色のおかっぱ頭に
ソバカスを蓄えた
笑顔の彼にさえ
きっともう会えないんだ

アンデルセンの時計台

アンデルセンの時計台

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-03-15

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