お父さん、頭 かたすぎ
お父さん、頭 かたすぎ
「お父さん、頭 堅すぎ!
知らないの? 今はみんな使ってるよ。
漢字を書くより楽だし、早いし、
ちゃんと気持ちも伝わるし、別にいいじゃない!」
「気持ちが伝わればいいというものではない。
この国が培ってきた豊かな表現、語彙が失われる。
もっと漢字を使って書きなさい。」
「別に漢字つかわなくても、豊かな表現はできるし。
っていうか、自分が使えないから否定してるだけでしょ。
今じゃ、私が自作した物語を絵にしてくれる絵師だっているのよ。」
「絵師? あ、こら、どこへいく、待ちなさい。
…どうも、すみません、お恥ずかしいところをお見せしました。」
「いえいえ、気になさらず。
しかし、為時殿。
ご息女が書かれた源氏物語。
平仮名だけで書かれてはおりますが、
宮中でも、かなりの評判ですぞ」
「だからこそ漢文で書いてほしいのだ。
女子供が使う俗な平仮名など、いずれ廃れる。
漢文で書けばいつまでも読み継がれる物語になるであろうに。」
お父さん、頭 かたすぎ