横断歩道をいく人
激しい雨。雷雨だった。
高校1年の牧田は、退屈な部活を終わらせ、暗い夜道を急いだ。
雨は一向に止む気配が無い。雷の回数も増えるばかり。
牧田は、少し肌寒い夜道で彼女に早く電話がしたかった。
5メートル前の信号が点滅しだした。
彼は走った。
横断歩道を半分渡ると、青の点滅から赤に変わるはずの信号は
黄、いや白に光った。
少し驚きながらも、横断歩道を渡り切ると、雨も雷も止んでいた。
夜空には、星空も輝いている。
彼は、少し動揺したが、家への帰路を急いだ。
家に着くと、いつものように、風呂、晩飯を済ませ、彼女に
電話を掛けた。
彼女は、電話をするとすぐに
「3号公園に来て欲しい」
と言った。話があるのだそうだ。
すぐに用意を済ませ、玄関を出ると、また激しい雨。雷。
彼女に電話をした。
「雷雨だよ」
すると彼女は
「公園は、晴れている」
と言う。
訳が分からなかったが、取りあえず、晴れている公園へ急いだ。
さっきの信号を渡り、公園まで10メートルのところに来た。
すると雨がさっきとは比べ物にならないくらい激しく降り出した。
でも、10メートル進めば晴れている。
しかし、彼にはそれが信じられなかったので、家に急いで戻る事にした。
5メートル前の信号が点滅した。彼は急いで横断歩道を渡った。
半分まで渡ると、信号が青の点滅からまた黄、白の光へと変わった。
横断歩道を渡ると雨は学校の帰りの時ほどに弱まっていた。
そうして、家に帰ると、母親が彼に駆け寄ってきた。
彼女が交通事故に遭って、死んだと言う。
彼は頭が真っ白になり、その場に倒れ込んだ。
目がさめると、彼は自分の部屋で眠っていた。
携帯の画面には午後9:37とある。
彼女からの着信履歴もあった。
彼は彼女へ急いで電話を掛けた。
彼女はいつも通りで、死んでなどいなかったのだ。
つまり、夢だったのである。
しかし、なぜか、彼の肌は少し冷たかった。
横断歩道をいく人