進撃の巨大蛇

 その日、東京の上空は黒く粘りつく様な雲に覆われていた。日曜日の午後、快楽を求め 大勢の若者が集まった青山通り。一人の少女がふと立ち止まり、空を見上げた。
「それ」は、突然現れた。
 雲を突き破り、一匹の巨大な蛇が降りてきた。道路の幅と同じ程の太さの赤黒い胴体が粘液に光っている。顔は雲の中に隠れて見えない。得体の知れない恐怖に襲われた若者たちは動けない。くねくねと動きながら降りてきた蛇の尻尾が地面に着いた瞬間、渋谷から新宿方面に向かって走り始めた。粘着力のある粘液に絡め捕られた若者たちが何百人と蛇の胴体と一緒に渋谷から新宿まで移動し、口々に悲鳴を上げる。やがて、蛇はゆっくりと上昇を始めた。みるみるうちに雲の中に吸い込まれていく。途中、粘液と一緒に蛇の胴体から剥がれ落ちた若者が数名、地面に叩きつけられた。
 顔の見えない蛇は雲の中に帰っていった。若者たちで賑わっていた青山通りは切れた電線によってあちこちで火災が発生し、若者たちが血を流していた。その時、蛇と一緒に雲の中に消えた自動車が一台、空から降ってきて「ぐしゃ」と一人の若者を押し潰した。
 人々は蛇を怖れ極力外出する事を避けていたが、一週間経ち、二週間が過ぎる頃には外に出始めていた。日曜日、大勢の人が集まった遊園地。黒い雲が空を覆う。そして、またあの蛇が現れた。赤黒い胴体を粘液で光らせ、空から降りてきた。逃げ惑う人々を追い回し、絡め捕り黒い雲の中に連れ去ってゆく。その時、海から強い風が吹き、黒い雲を払いのけた。雲が途切れても太陽は見えず、そこにいたのは空を覆い尽くす程の巨大なオオアリクイだった…。(終)

進撃の巨大蛇

進撃の巨大蛇

  • 小説
  • 掌編
  • ホラー
  • SF
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-03-11

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