子供を残し妻に失踪された男が寂しさから妻の衣類に手を付けたことから男に性的変化が起きて行く。

【一話】



「お願いです! 今夜は今夜だけは堪忍して下さい! 子供が熱を出して寝ているんです! お願いです! お願… い… お… ね… が… い…」

 小さな布団で眠る子供の横で、薫(カオル)は身体を畳の上に押し倒しされた。

 相手の男は手早く胸元のボタンを外し白いブラジャーとスリップの肩紐の両側を引き下ろした。

 薫の胸元が露になると我が子を横に見ながら薫は貪られる乳房からの刺激に唇を噛み締め口元を震わせた。

 捲り上げられるワンピースの裾の中に男の手が入り、黒いストッキングの上を嫌らしく滑りまわった。

 そして目を閉じて相手(おとこ)の業に耐える薫は涙を頬に伝えた。

 男は肉欲を拒絶する薫を無視し薫の胸を味わいながら、その嫌らしい手の平で薫の尻を持ち上げまさぐった。

 

 一年前、薫の知らない男と駆け落ちするように二歳の子を捨てて家を出て行った妻、菜々美の行方は知れず、興信所を使って調べたもののその消息は掴めなかった。

 元々サラリーマンをしていた薫だったが、その生活は親子三人で力を合わせて乗り越えられるレベルだった。

 しかし妻の菜々美の家出でその生活は一転した。

 元々、身体の弱かった薫に加え三歳児もまた父親似で生れながらにして病弱であった。

 病弱な二歳児の子育てとサラリーマンの両立で薫は心身共に疲れ果てて行った。

 そんな薫は会社を休みがちになっていた。

 両親や親戚の居ない薫にとってのサラリーマン生活と病弱な子育ての両立は甘い物ではなかった。

 妻の菜々美の実家も遠く、預けるわけにも行かない薫は病弱な子供の世話で会社を休むことも。

 また二歳の子は25年ローンで買った家の中を母親を探して泣いて歩き回り薫を苦しめた。

 小さな我が子を抱っこしてソファーで座って仮眠を取る薫は限界に達していた。


 そしてそんな時に小さな事件は起きた……


 薫は全身への突然の激しい違和感にハッとして目を覚ますと、息子が母親の乳房と薫の胸を間違えたのか出るはずのない薫の乳首に吸いついていた。

 自分の乳首に吸いつく息子を無碍(むげ)に引き離すことも出来ない薫は、そのままの姿勢で無かこの気が治まるのをジッと待った。

 生まれて初めて乳首を吸われた薫は、そのくすぐったさに笑いを必死に堪え身体を震わせながらも、言葉にならない鈍い官能(あまさ)に開いていた両目を閉じた。

 意図的なのか息子は薫の出ない乳首を強弱つけて吸い続けた。

 そして息子が小さな手を薫の胸にペタンと這わせスーッと横に滑った瞬間、薫はドキっとして再び両目を大きく見開いた。

 息子の小さな手が隣りの乳首を掠めた瞬間、薫は過去に感じたことの無い鋭い官能に全身をビクつかせた。

 薫は目を閉じて吸い続けられる乳首からの官能に身体の芯をトロケさせていた。


 
 乳首が感じることを初めて知った薫だった。



 薫は子供を寝かしつけると隣室のドアを少し開けて、ベッドに疲れきった身体を横たえた。

 だが薫の身体は火照ったように熱くなって中々眠ることが出来なかった。

 薫は自らのスボンの中に手を入れ慰めようとした。

 だが息子に乳首を吸われた感覚とペニスの感覚の違いに違和感を覚えた。

 薫が欲しかったのはペニスから脳に伝わる鋭い官能ではなく押し寄せる鈍い波のような官能だった。

 薫はスボンの中から手を抜くと、その手を真っ直ぐに自らの胸へと運んだ。

 そしてランニングシャツの上からそっと乳首に右手の中指を滑らせた瞬間、薫は全身を一瞬だけビクつかせた。

 驚いた表情をした薫は再び右手の中指で自らの乳首の上を滑らせた。

 ビクンッ! ビクンッ!

 激しい官能は脳へ届く前にジワァーっと胸と下腹部の全域に伝わり、シャツの上から勃起した乳首を抓んでコリコリすると、ゆっくりとした鈍い大きな官能が薫に喘ぎ請えを出させた。

 

 薫は乳首での自慰を覚えた。



 この日、薫は生まれて初めての乳首オナニーをベッドの上で繰り返し、一時の安らぎに心身を休ませた。

 翌朝、土曜日だった薫は熟睡したのかスッキリした顔で目を覚ますと、隣室に寝ている子供の様子を見に移動した。

 息子は家出した母親である菜々美の使っていたカーデガンを布団に引きずり込んで眠っていた。

 それは薫が泣き止まない息子を抱っこしてアヤスときに使っていた物だった。

 

 薫は息子が不敏でならなかった。



 音を止めてある卓上電話の留守電のランプがピコピコ光っていた。

 妻、菜々美の実家からの菜々美の安否と孫である息子を気遣うメッセージだった。

 薫は息子と二人の朝食を用意しながら息子が目を覚ますのを待ったが、中々起きてこない息子を心配した薫は息子が寝ている布団の横に添い寝した。

 小さな両手で菜々美のカーデガンを握り締める息子を横で見入っていた薫もウトウトしだした。

 ビクッ!

 突然の息子の声に驚いた薫は動けなかった。


「ママァー! ママァー!」

 薫の胸元に頬を寄り添えるようにして声を張り上げる息子はまだ寝ぼけていた。

 暫くすると薫はそのまま眠ってしまった。

 
 一時間ほどした時、薫は胸に重さと官能を感じて目を覚ました。


「チュパッチュッパ… ぁんっ! ピチャピチャ… ぅあっん!」

 身体に走る強い快感に全身をビク付かせ目覚めた薫は、仰向けの自分に乗り乳首に吸いつく息子に驚いた。


 薫は三十分以上も息子に乳首を吸われていて動けなかった。

 薫のズボンの下のトランクスの内側はヌルヌルした愛液が溢れて付着していたのを気付いてはいなかった。

 
「さあ♪ 御飯にするぞぉ~♪」

 薫は息子に朝御飯を食べさせながら、トランクスの内側に感じる冷たさにある種の屈辱を感じた。


「パパ、トイレ行ってくるからね♪」

 トイレの中で降ろしたトランクスの内側には、オビタダシイ量の愛液が付着していた。


 自分の息子に乳を吸われ愛液を溢れさせた薫は自分が情けなかった。


「溜まってるんだ! 畜生! シュッシュッシュッシュッ! 俺ってヤツは!!」

 薫はトイレの便座に座り溜まっている物を放出した。

 ゼリーのような黄色系の精液が次から次から射精後も溢れ出しペーパーにしみこんで行った。

 だが何故か薫は満たされてはいなかった。

 そんな薫はランニングシャツを巻くりあげると、両手の指で両方の乳首を抓んで弄って見た。

 射精直後だというのに薫は便座の上で全身を何度もビク付かせ喘ぎ声を喉の奥で押し殺した。

 下に向いているペニスの先っぽから透明な液体が溢れては糸のように便器の落ちていた。

 薫の両手は忙しく動きながらも、知らず知らずの内にその手を男が女の身体に指を滑らせるように自らの肌に滑らせた。

 その手は上半身のみならず下半身の太ももや横尻にまで広がり、中腰で胴回りや尻の正面にまで達した。

 薫は肌に指が滑るくすぐったさの中から生まれる官能に目覚めて行った。

 
「これが女の官能なのか……」

 一定の時間をトイレで過ごした薫はモヤモヤが取れたスッキリした顔に戻ると、ペニスを拭いてトイレを後にした。

 ただ薫は普通の自慰では満足出来ない身体になっていることに気づいたようだ。



 数日後の平日、隣家に預けていた息子を引き取りに行った薫は、妻のカーデガンが息子のヨダレでベタベタになっているのに気付いた。

 別の何かをと息子にテレビを見せながら、薫は滅多に入ることのない妻の菜々美の衣裳部屋へと入った。

 妻が普段から息子の前で着ていた服を探していた薫は思わず菜々美のスーツを手に取ると抱き締めてしまった。

 薫もまた息子同様に菜々美に会いたがっていたようだ。

 そんな薫は息子用に与える菜々美の服を探しながら、何気なく菜々美が使っていた箪笥の引出しを開けてみた。

 菜々美が普段履いているパンティーが仕舞われていて、他の引き出しを開けるとスリップやガードルやブラジャーが綺麗に折り畳まれていた。

 
「菜々美が履いてたパンストか……」

 薫はパンストを手に持つと顔に近づけた。


「菜々美…… 何処いっちまったんだぁー! 畜生!!」

 薫はパンストに顔を埋めながら声に出して叫べない辛さを心の中で喚き散らし畳に膝を付いて崩れた。


 
 この夜、子供を寝かしつけた薫は酒を飲んでほろ酔い気分になると、菜々美の衣裳部屋を訪れていた。

 明かりを小玉に切り替えた薫は、傍にある菜々美が使っていた椅子に腰掛た。

 持っていたウイスキーを瓶ごと一口含むと、辺りを見回し大きく溜息をついた。

 二つある縦型の洋服箪笥の観音扉を一度に開き、中に入っている菜々美の洋服を見入る。

 妻の菜々美が家出する直前を思い出す。

 可愛い笑顔して自分を会社に送り出した菜々美を思い出す。

 菜々美を抱いた日のことを思い出す。

 子供が寝た後、台所に起つ菜々美の後からスカートを捲り上げた日の菜々美の照れる顔を思い出す。

 時折、菜々美が見せた遠くを見るような表情と何かに冷めた表情を思い出す。

 
「好きな人が出来ました… ごめんなさい…」

 菜々美から薫の携帯に入っていた留守電のメッセージを思い出す。  

 ガックリと肩を落とした薫は再びウイスキーを一口喉に流し込んだ。

 

「菜々美………」

 静まり返った部屋の中、薫はフラフラと箪笥の前に立つとランニングシャツとトランクスを脱ぎ捨てた。

 箪笥の引出しを引いた薫は菜々美が履いていた白いパンティーを手に取ると息を押し殺してそれを両足を通した。

 薫はパンティーに押し付けられた性器に窮屈さを感じながら、ライトブラウンのパンティーストッキングを椅子に腰掛けて履いた。

 菜々美のブラジャーはブカブカしていたが、薫は何かに獲り憑かれたように気にすることなく、息を殺してその上から白いスリップをまとった。

 洋服箪笥の中から取り出したクリーニングカバーの掛かったスーツを取り出し、ブツブツと独り言を呟きながら薫は黒いタイトスカートを履き、そして白いブラウスを着衣した。

 大きな深呼吸をした薫は再び洋服箪笥の中に身体半分を入れると、菜々美が使っていたロングヘアーのカツラを自らの頭に装着した。

 静まり返った薄暗い部屋に女装子(おんな)が一人現れた。

 薫はそのままの姿で子供が寝ている部屋の入り口を横切ると、居間へ移動し台所に立って洗い物を始めた。

 台所からはジャブジャブと水音がしカチャカチャと食器の音がした。

 薫は手を休めることなく洗い終えると洗濯場に移り洗濯を始めた。

 そして時計の針が午後11時を回ろうとした頃、突然後からの子供の声に全身をビク付かせた。


 ドキッ!


「ママー オシッコォー」

 子供は薫のスカートに後から抱き付いて尿意を伝えた。



 すると薫は…


「はぁーい、いい子ねぇ~ ママと一緒にトイレ行こうねぇ~♪」 

 薫は菜々美のように優しく子供の手を引くと子供に用足しをさせて再び子供を寝かしつけた。

 添い寝して子供を寝かせつけた薫は家の明かりを落とすと、寝室に入り明かりを小玉にしてブラウスとスカートを脱いで腰掛けた。


「菜々美、早くこっちこいよ! パンストなんか俺が脱がせてやるよ♪ 早くおいで♪」

 薫は菜々美を呼んだ。


「ぁ~ん♪ ちょっと待ってぇ~ 今すぐ行くから待って~♪ あんっ♪ もおぅセッカチなんだからぁ~♪」

 女装した薫は菜々美の口調で独り言を言いながら、目に見えない誰かに手を引かれるようにベッドへと身体を横たえた。


 仰向けになった薫は小さな明かりの下で独りブツブツ呟きながら、両手を自らの身体に這わせ指を滑らせて身悶えと切なげな喘ぎ声を奏でた。

 スリップとブラジャーの肩紐を外し、自らの乳房を手の平で回しながら乳首に指を絡め、その官能にパンティーストッキングに包まれた両足をクネクネと絡めた。



 薫は一人で二役を演じていた……




【二話】



 
 

 薫は翌朝から再び父親として息子を隣家に預け会社へ向かった。

 会社への通勤路、薫の目につくのは黒い長い髪とストッキングに包まれた足を出して歩く女性ばかりであった。

 見ている事を気付かれぬよう薫は女性達を凝視し続け、そして会社へ到着しても薫の視線の先には常に女性がいた。

 そんな薫がトイレに入ると大して混んでいる訳でもないのに、何故か入ったのは大便用だった。

 トイレ内で降ろされたスボンの下には日の光に反射するブラウンのパンティーストッキングが薫を包んでいた。

 女性のように両手で降ろされたパンティーストッキングの下は、菜々美が薫との夜の営みで身につけていた白いパンティーだった。

 薫はパンストとパンティーを膝の上に乗せると女性のように座ったまま小用を足し、先っぽを振った後でペーパーで拭き取ると再び菜々美のパンティーを履いてパンティーストッキングで下半身を覆った。

 歩く度にスラックスの内側にパンティーストッキングが擦れそれが薫には心地よく新鮮だった。

 会社の廊下を歩く薫は妻の菜々美の感じた感触を自分のモノにしていた。

 そしてパンティーとパンティーストッキングを履いて歩くという行動は薫を楽しませ、徐々にそれをエスカレートさせていった。

 仕事を終え帰宅すると隣家に子供に迎えに行き一緒に夕飯と風呂を共にする。

 そして子供が眠ってからの薫の一人の時間は薫から仕事と家事の疲れを一度に取り除いた。

 薫には少し小さ目に感じられた妻のサイズは薫にとっては身体にフィットして妻(おんな)を感じられるサイズでもあったようだ。

 妻の下着とストッキングを身に付け全身を覆うワンピースは瞬時に薫を女にした。

 エプロンをつけてスリッパを履いた薫はこの夜も一人台所に立ち洗い物を済ませると、音を立てられないからと家の中をホウキと塵取りをもって掃除に励んだ。

 動くとずれるカツラの使い方もマスターし、ネットで覚えた化粧も完全にマスターした薫はルンルン気分で妻の菜々美に成り切っていた。

 一仕事を終えソファーに座り足組してウイスキーを飲む薫は、ストッキングに包まれた自らの足先を見て小さな笑みを浮かべた。

 そして夜の11時、寝る前に子供に水分を与えないことで目を覚まさなくなった子供の寝顔を見てから薫は寝室に入った。

 ワンピースを脱いでベッドに横たわる薫は薄暗い明かりの下で女性下着に包まれた自分を慰めた。

 仰向けや横位、そして斜め位置にと身体を様々な体位にし、小さな裸電球に反射するストッキングに包まれた下半身を演出させた。

 自らの乳首を自らの両手で触手しては切なげな喘ぎ声を奏で身悶えしてベッドを揺らし、ストッキングに包まれた太ももに自らの指を滑らせヨガリ声と共に首を上下左右に振った。

 勃起した乳首を片手の中指で弾きながら時折親指で抓んではコリコリさせ、同時に別の手の親指の腹でパンティーの中にあるペニスの先っぽをヌルヌルした自分の愛液で滑り回した。

 ベッドの上に頬を横置きし起てた両膝で身体を支えながら乳首とペニスを弄る薫にタレ下がったスリップの裾は、大きくユラユラと揺れていた。

 薫の身体から溢れた愛液は、薫の親指とペニスの先っぽにベッタリと絡みついていた。

 そして心身共にトロトロになっていた薫の耳を隣室で寝ていた息子の泣き声がつんざいた。

 薫はトロトロになっていた我が身を起こし、ブラジャーを外しベッドに膝立ちすると愛液塗れになった自分の親指を自分の口の中にいれチュパチュパと味わいながら飲み込んで、パンティーとパンスト引き揚げると慌てて隣室の息子のもとへと急いだ。

 
 スリップ姿の薫の足音が廊下に響いた。


「どうしたの♪ ホラホラ~ ママが傍にいるでしょ♪ 安心なさい♪ ポンポンポンポン…」

 薫は菜々美のように息子を抱き上げると息子の尻を軽く叩いてあやし始めた。


「ママァー! オッパイ… ママー オッパイ!」

 息子は薫に抱かれながら乳をねだった。


 薫は良心の呵責に苛まれながらもスリップの肩紐を外し、自らがさっきまで愛欲のために弄っていた乳首を子供の前に晒した。

 子供は晒された薫の乳首に夢中で吸い付くと、薫は首を後に仰け反らせ全身をビク付かせた大きな溜息交じりの喘ぎ声を発した。

 足を崩し斜め座りした薫の上で息子は乳の出ない乳首を吸い続け、喉まで出かかる喘ぎ声を押し殺して薫は息子からの愛撫に全身を震わせ続けた。

 あってはならない行為だと知りつつも薫はその官能にトロトロになっていった。

 薫は右乳首に吸いつく息子の向きを変え左乳首を吸わせた。

 パンティーストッキングに覆われた薫のパンティーは内側からグッショリと濡れていたが、息子からの愛撫に薫は別の液体をパンティーの内側に放出していた。

 自分の息子に乳首を吸われオーガズムに達した薫は深刻な自己嫌悪に陥った。

 

 そして最初は癒されていたはずの女装は次第に薫から体力と気力を奪って行った。

 毎晩のように行われる一人二役の自慰と乳を強請る息子からの愛撫は薫から人間性を奪おうとしていた。

 そんな矢先、会社の仕事で出向いた訪問先の商談を済ませた薫がその会社の入るビルを出ようとした時、後から声を掛けられた。


「君っ! 君、女装の趣味あるんじゃないのかい♪ スラックスの後… それってパンティーラインだろ♪ 心配しなくてもいいよ、実は僕も君の仲間だから安心して~♪ それよりどう♪ 僕が遊びに行ってる会員制の店があるんだが行って見ないかい♪」

 振り向いた薫の傍に居たのはさっき話したばかりの訪問先の係長だった。


 薫は商談先ということもあって直ぐには断れず、取敢えずはメアドの交換を済ませて会社に戻った。

 すると商談先から連絡があって商談は成立しオマケに納入数も倍増したと上司から知らされた。

 薫は周囲から肩を叩かれて好成績を喜ばれ課長や部長からも喜ばれた。

 薫はメアド交換した先方の竹崎のフォローだと直ぐわかった。

 そしてそれを機会に竹崎からのメールは頻繁化した。

 時には女装した自分の姿をメールに載せたり、通っている店の雰囲気のわかる写真を送ってよこした。

 薫は竹崎の通う店に行って見たいと思うようになっていた。


「人前で女装子(おんな)になって見たい……」 

 薫の思いは募っていった。


「本当は僕も行って見たいんだ… だけど小さな子供が居て…」 

 薫は苦しい胸の内を竹崎にメールした。


 すると竹崎から返信が直ぐに来た……


「僕の家内に面倒見させるよ♪ 丁度同じくらいの子が居るし数時間なら面倒見てもらえるようにするよ♪」

 竹崎の返信メールに薫は飛び跳ねて大喜びした。

 薫はワクワクし胸を躍らせた。


 薫は週末、竹崎の自宅に行き奥さんと子供達を紹介された。

 竹崎との打ち合わせ通りに薫は仕事の打ち合わせでと相槌を打って息子を竹崎の奥さんに預けた。


「この奥さんは彼が女装していることを知らないんだな……」
 
 薫は竹崎の奥さんに申し訳ない気持ちになった。


「今回は見学ってことで入場料も無料だし、一円もお金は掛からないからねー♪ 僕達のような女装子(おんな)がウヨウヨいるよ~♪ てか、逆に結構稼げるんだよ♪ 普通に女装を楽しみたい人も居れば逆に女装子と店内デートしたい人もいるんだ♪ そっち系の人に好かれれば酒の相手するだけで一時間に1万円も貰えるんだ♪ 勿論、お互いに気が進めばそれ以上もありだよ♪ てか、薫さんは処女なんだろ? 処女は高いんだよ~♪ お互いに相手を気に入れば店にある二階の部屋でフリータイム♪ 一回60分で処女なら5万円から8万が相場かな~♪ 処女じゃなくても3万円くらい貰えるんだよ♪ もちろん愛人契約もあるけど、まあそういう話しは今回は関係なさそうだし♪」

 竹崎は嬉しそうに店のことを薫に話して聞かせた。


 繁華街から少し外れた場所にある五階建てほどの古いビルが二人を迎えた。

 ドアを開けて中に入ると別のドアがあって、小窓がついていて、彼がノックするとその小窓は開かれ彼はその小窓にカードを差し入れるとドアが開いて、ワイシャツに蝶ネクタイの男が薫達を招きいれた。

 薄暗い店内は必要な箇所だけが明るくなっていて、大広間の周囲にはグルリと無数のドアが設けられていた。

 薫は、竹崎の後ろを神妙な面持ちで付いていくと、一つのドアに辿り着いた。


「薫くん、ここが僕の部屋だよ♪ さあー入って入って♪」
 
 竹崎に誘われて中に入ると、照明がつけられ辺りを照らした。


 細長い六畳ほどの部屋には洋服箪笥と和ダンスの二つが並んでいて、化粧台と小さな冷蔵庫の他に、三人掛けのソファーが置いてあって、小さなテレビとパソコンが設置されていた。

 どうやらレンタルルームのような感じだと薫が思っていると、竹崎は薫の前でサッサとスーツを脱いで裸に、そして洋服箪笥と和箪笥を開くと、手際よく女装子(おんな)へと変身して見せた。

 
「今日はね、薫くんはゲストだから着替える必要はないけど、女装子(おんな)になって、建物内を見学したいなら、下着とストッキングは有料だけど、無料の貸衣装が利用できるサービスを使うといいよ♪ 有料といってもその辺のスーパーの安物と同じ値段だから心配しないで♪」

 竹崎は話しながら手早く手際よく化粧を続けた。

 そして薫を振り向いた竹崎は美人顔に変身していた。


「驚いたでしょ~♪ お化粧でなんとでもなるのよねぇ~♪ うふふふふ~♪」

 話し方まで女性になった竹崎に薫は胸の奥をドキッとさせた。


 薫は変身した竹崎に連れられ見学コースの売店でパンティーとパンティーストッキング、スリツプを買うと、無料のドレスを竹崎に見立ててもらった。

 そして薫も竹崎の部屋の中で女へと変身をして見せると、見る見る間に化粧をした薫に竹崎は呆気にとられた。


「薫ちゃん… すごい♪ てか上級者じゃなーいあっはははは~♪」

 竹崎は薫の手を引いてバーへと出向いて薫を店の人達やお客に紹介した。

 薫は生まれて初めて他人の前で女になった自分を見せて弾けそうなほど感動した。

 そしてバーのボックス席に居たサングラスをかけた客達が一斉に薫を見て歓喜し、バーのスタッフ達も白い歯を見せて喜んだ。

 
 すると一人のサングラスをかけた初老風の男性がバーのマスターらしき人物になにやらヒソヒソ話しを持ちかけていた。


「ホラ来た♪ 早速、カオちゃんにお客さんが付いたわぁ~♪ あの人、お金持ちの常連さんよ♪」

 竹崎は嬉しそうに薫に耳打ちした。


 すると今度はバーのマスターらしき人が薫に近付き耳打ちした。


「お嬢様にアチラの方からお酒のお誘いが来ておりますが、いかがなさいますか? 一時間25000円のお値段が付いております… 当店の取り分が20%の5000円ですから、お嬢様の取り分は20000円になります♪」

 太い声を無理に細めたマスターは薫に視線を合わせた。


 薫は満面の笑みを浮かべる竹崎を見てから小さく頷いて見せた。


「交渉成立ですね♪ 良かった♪ では、お席へどうぞ♪」

 マスターは別のスタッフを手を上げて呼ぶと、薫をエスコートさせた。

 薫はエスコートされボックス席に座るとその初々しさで辺りを明るくした。

 アチコチのボックス席から、マスターへの交渉が押すな押すな状態で盛り上がった。

 薫は初老っぽい男性を前に恥かしさに俯いて話すことさえおもうように行かなかったが、常連の客はその薫を前にして酒を美味そうに飲んでいた。

 そして、50分ほど過ぎた頃、初老の男性は薫に耳打ちして来た。


「アナタをワシのモノにしたいんだが… どうかな♪ これはこの店用の携帯なんだが、考えてもらえんかな… 処女の子の相手は慣れとるから心配しなくていい♪」

 初老の男性は薫にメモを渡すと名残惜しそうにバーのスタッフを呼んで薫をその場からエスコートさせた。

 薫は男性からの思いがけない言葉に動揺しながらも、次々に入る指名を閉店までこなして行った。

 そして竹崎と備え付けのシャワーを浴びて店を出る頃には、薫の財布の中には数十万円の札束がギシリと入っていた。

 薫は半分の25万円を竹崎に渡したが竹崎は受け取ってはくれず、子供の預かり代として一万円だけを何とか受け取ってくれた。

 そんな竹崎は初心者の見学者を一人連れていくことで、店から数万円を貰っていたことを正直に話してくれた。

 薫は正直な竹崎に友達として付き合いたいと話すと、竹崎は最初から友達だと薫の肩をポンと叩いた。

 

 この夜、薫は菜々美が失踪して依頼、久々に辛さを忘れて楽しんだ。




【三話】




 薫は会社勤め以外の自宅での暮らしの殆どを女装子(おんな)として過ごすようになった。

 会社へは下着とパンティーストッキングだけを身につけて行き、帰宅すればズボンと服を脱いでその上から女物を着衣し、子供の面倒を見るようになっていた。

 子供も最初は違和感を持っていたが、いつしか女になった薫と自然に接するようになった。

 子供は女になっている時の薫をママと呼び男の姿で会社から戻るとパパと呼ぶようになった。

 乳を強請る子供は直ぐに応じてくれる薫に好感を示し、薫もまた乳を与えることで女の官能で心身を癒されていた。

 そんな中、薫は次第に乳を強請られることを日々、期待するようになっていて強請られると事前にペニスにコンドームを被せパンティーが濡れないようにした。

 ただ、この日はいつもと少し違っていた。

 薫はいつものように乳を強請られ子供を前側に抱っこし胸を晒すと子供は乳に貪りついてきた。

 全身が大きくビク付き乳房の奥から腹部にかけて身体の内側が発熱し、言葉にならない官能が薫の身体を震わせた。

 いつも通りの展開に薫は安心して乳首を子供に預けていた。

 その時、突然、薫の乳首に激痛が走った。


「痛ああいぃ!! 痛い痛い痛ああぁーい!」

 乳首が千切れんばかりの激痛は官能に浸る薫を天国から地獄へと引き摺り下ろした。


 初めて乳首を噛まれた薫は口を開けて痛みに唸り声を震わせた。

 乳首を噛む子供を降ろすわけにも行かない薫は、子供が乳首を離す瞬間をジッと耐えて待っていた。

 ジリジリと焼けるような痛みの中、乳を子供に与える母親の辛さを実感した薫だった。

 
 薫の乳首は腫れていた。


 噛まれた乳首は直ぐには元に戻らず腫れたまま時間だけが経過し、歩く度にスリップに擦れる乳首の痛みに薫は飛び跳ねた。

 夜の十時、そろそろ寝ようと寝室へ入った薫は痛の薄れた胸に気遣いながら服を脱ぐと、乳首をガードしていたブラとパットを外した。

 視線を下に向け自分の乳首を見入ると丸く腫れた片方の乳首を指で軽く弾いてみると、痛みと同時に快感が乳首の根元から周囲に広がった。


「今夜は、やめておこう……」

 薫はスリップの肩紐を元に戻すと、パンティーストッキングを脱いで傍にある一人用の椅子の背凭れにフワリとかけた。


 この夜、かおるは夢を見た。

 性転換して女になった美人の自分に大勢の男達が群がる夢だった。

 そんな夢から目覚めた薫はベッドの上でポツリと無意識に呟いた。


「女になりたい…」

 誰の声だろうと、薫はムクリと布団を跳ね除け起き上がると、辺りをキョロキョロと見回した。

 視線を下に向けスリップの片方の肩紐を外すと腫れていた乳首は元に戻っていた。

 ツン… ツン… 腫れていた乳首を中指で軽く突っついた薫は腫れていた乳首の快感が倍増していることに驚いた。


「どうして……」
  
 腫れていた乳首と何でもない乳首を突っついて触り比べた薫はその官能の差に寝ぼけまなこをパチパチさせた。

 薫は腫れていたほうの乳首を何度も中指で触り続けているうちに、起き上がった身体を再びベッドに横たえると、倍増した快感から両足をクネクネと絡め悶え始めた。


「ぁんっ! あああああ… んっ! ぅあっ! ぅんっ! ぁあんっ!」

 下半身を上向きのままに上半身だけを左斜めに半回転させ、乳首を中指と親指で抓んでコリコリ連続させた薫は早朝からベッドを身悶えで揺らした。


 薫はパンティーの内側を愛液でグッショリ濡らした後、ドライオーガズムへと突き進んで終焉した。

 妻の菜々美が失踪して以来、薫のペニスは完全にはエレクトせず精々、半立ちだったが女装するようになってからは殆ど硬くなることはなかった。

 グッショリ濡れたパンティーを脱いだ薫は愛液に塗れたペニスを一人恥かしそうに拭いた。

 

 そしてこの夜、薫は子供が乳を強請るのを更に心待ちにし、薫の思いが通じたように子供は薫の別の乳首に歯を立てた。

 薫は涙目になって子供の歯に耐え、これで両方とも同じになったと痛みに涙を零しながらベッドに我が身を沈めた。

 翌日、逸る気持ちを抑えて前日に噛まれた乳首を指で触れた薫は、今までに無い激しい快感にベッドの上で女の喜びを満喫した。

 

 一ヶ月が経過した。



「もっと大きな乳房が欲しい…」

 子供が傍でお絵かきして遊んでいる横で、髪の毛が伸びて耳が隠れるようになった薫はショーパン姿にタンクトップという格好でパソコンに向かっていた。

 毎日のように弄っていた乳首は肥大し乳輪と乳首の区別が出来ないほどに急激に成長し、その肥大した乳首を見ながら豊胸手術をネットで検索しては内容に見入っていた。

 
「男でも豊胸できるんだ……」

 薫は大きく息を吸い込むと手術した男(ひと)の写真に見入った。

 マウスの動きが時折早くなりピタリと止まる。

 カチカチとボタンが打ち込まれる。 

 
「手持ちじゃ心もとないな…」

 薫は交流のある竹崎にメールして例の女装クラブに入会したいと伝えた。

 竹崎から返信のメールが届いて週末に出掛けようということになった。

 薫は竹崎と初めて行った見学の日に稼いだ金を増やしたいと考えた。

 

 薫は竹崎に連れられ一ヶ月ぶりに夜の女装クラブに足を運んだ。

 薄暗い店内の回りにあるドアを出入する大勢の女装子(おんな)達は、思い思いの服装でバーの明かりに引き寄せられていった。

 入会金の年額と月会費を一年分、個室の年間使用料を支払うと薫の持参した金額24万円のうち14万円が消えた。


「大丈夫よ♪ そんなはした金なんかカオちゃんなら直ぐに稼げるわ♪」

 自信を見せた竹崎は意気揚々としていた。


 薫は竹崎に連れられ二階に数店ある衣料品の店の中に居た。

 下着やストッキング類の他、ドレスやワンピースに普段着まで扱うこの店は、何処にでもある普通の店で特別高額に買わされるということはなかった。

 欲しい物をレジに持って行き清算を済ませれば指定した時間に個室へ届けてもらえるシステムで、店で働く人達は全員が女装子(おんな)だった。

 店内は無理に似合うを連発して買わせる雰囲気ではなく、買物をも女として楽しめる空間を薫は気に入った。

 衣類の他に化粧用品やらカツラや靴の店があって、どの店でもノンビリと買物が楽しめる雰囲気だった。

 竹崎の話しでは、1階のバーで遊ぶことをせずに、この二階での買物オンリーでここに通う女も多いという。

 薫は子供みたいに大はしゃぎして買物を楽しんだ。

 そして、竹崎と1階で別れレンタルした自室に戻ると数分後、買物した店から商品が次々に届けられた。

 掃除の行き届いた狭い空間に置かれた洋服箪笥や和箪笥の引出しにはチリ一つなく清潔感が漂っていた。

 テレビのスイッチを入れようとテレビの上の説明書に視線を移せば、バーの様子が見えるチャンネルもあって、薫は覗き見気分でテレビのスイッチを入れちゃんねるを回した。

 さっき別れたばかりの竹崎が黒いドレスを着てバーのカウンターの前に立って誰かと話しているのが見えた。

 背中に掛かるロングの黒髪、そして深いスリットから露出した黒いガーターストッキングが艶かしさを演出していた。

 カウンターの前の席に座り親しげに話す竹崎の横にいる男の手が竹崎の尻を触っているように見え、薫は胸の奥をドキドキさせた。

 薫はテレビを消すとドキドキしたまま、届けられた商品を一つ一つ確認しながら和箪笥と洋服箪笥の中に仕舞いこんで行った。

 一通り仕舞った後、改めて薫は今夜の衣装を決めようと腕組みをして考えたが、上手く考えが纏まらず結局、普段から家で着ているような物にした。

 小さめのフリルの付いた薄ピンク色のパンティーに両足を通し、その上からショコラブラウンのパンティーストッキングを履き、黒いオーバーニーを両足に装着すると、黒い光沢の有るインナーキャミソールで上を覆い、その上から白いタンクトップを着衣した。

 スルスルと擦れる音をさせながら青いデニムのショートパンツを履いた薫は、手早く化粧台の前で薄化粧しショートヘアーのカツラを装着した。

 足の甲にキラキラ光るビーズの付いたサンダルを付けると、薫は立ち上がって身体を一回りして前後左右の乱れをチェックした。

 薫は元気いっぱいの女子高生のような笑顔を鏡に映し出した。

 個室を出た薫はドレスやワンピースに身を包む大勢の女装子(おんな)達の集うバーへと足を運んだ。

 回りは華やかな服装に身を包んだ女装子(おんな)達で溢れ、薫は自分の服装と比べ引け目を感じ、中に入っていくことを躊躇った。

 そんな時、竹崎が薫を呼んで手招きしてくれた。

 一斉に大勢の女装子(おんな)達が薫の方を向いた。

 周囲の女装子(おんな)達は薫の顔と姿を見るや否や何故か後退りをして竹崎までの道を作った。

 前屈みになり俯いて開かれた道をカウンターに向かう薫は神妙な面持ちだった。

 
「カオのこと、みんな見て驚いてるわ♪ カオちゃん可愛いもの♪ アタシだってカオちゃんのこと食べて見たいもの♪ うふふっ♪」

 薫を抱き寄せてカウンターの席に座らせた竹崎は得意げに薫をバーのスタッフに改めて紹介した。

 するとカウンターの中にいたスタッフの一人が、覚えていると笑顔で声を掛けてくると薫は恥かしそうにハニカんで俯いた。

 初々しいという言葉がピッタリと似合う薫だった。

 周囲の女装子(おんな)達は勝てないと思ったのか、一人また一人と薫の傍から離れ、客から声の掛かるのを待っていた。

 
「ホラホラ、お客さんたちにちゃんと顔を見せないと~♪ 声かけてもらえないぞぉ~♪」

 竹崎は椅子に座る薫の身体をクルリと回して客席に顔を向けさせた。

 すると間髪いれずにボックスの客席からボーイさんに声が一つ、二つと一斉に掛かり始めバーのマスターがボックス席へ忙しくメモ帳を持って足を急がせた。


「ホラホラ来たわよぉ~♪」
 
 竹崎は嬉しそうに薫に耳打ちすると走り回るマスターに見入った。

 薫に同席を求めたのは12人の客たちで、何れも薫に高値をつけてきた。

 そしてその中に見学の時に薫を同席させた初老の男性も含まれていた。

 薫は見覚えのある男性をチラっと見ると頬を紅くして恥かしそうに視線を変えた。

 数分後、バーのマスターがニコニコして薫に近付くと、ヒソヒソとメモをみながら耳打ちした。

 薫はコクッと小さく頷くと、竹崎の傍から蝶ネクタイのスタッフにエスコートされてボックス席へと移動した。

 
「いやぁ♪ 暫くだったねぇ♪ その顔は覚えていてくれたんだねぇ~♪ 倍率が高くて無理なんじゃないかってヒヤヒヤしたよ♪」
  
 初老の男性は満面の笑みを浮かべると声高らかに語り、周囲は羨ましそうに男性を見詰めた。


 男性は俯いて何を話していいか解からない薫をリードするかのように様々な種類の話題を切り替えてきたが、薫は自分を気に入ってくれている男性に自分の声を聞かれることに申し訳なさを感じていた。

 そんな緊張している薫を承知しているとばかりに男性は面白い話をいくつも語った瞬間、薫は耐えられなくなって、口元を隠して無意識に一瞬噴出してしまった。


「可愛い♪ 何て可愛い子なんだ…」
 
 男性は薫の自然な仕草に心の中でそう思った。

 男性の口から次々に飛び出す面白い話しは薫の緊張をほぐして行き、遂には両手で口元を多い身体を前後させて大笑い場面もあった。

 すると突然、テーブルを挟んで正面に居たはずの男性が薫の真横にピタリくっ付くように座った。

「ここに居てもいいかい♪ 傍に居たいんだ…」
 
 薫は一瞬、ビクンっとして目を大きく見開いて驚いたが直ぐにニッコリ微笑んで小さく頷いて見せた。

 男性は薫の肩に手をかけたい気持ちをグッと堪えて薫の笑顔が見たくて話を弾ませた。

 
「おぉっと! もうこんな時間だ!」

 腕時計を見た男性は名残惜しそうに話しの勢いを鈍らせた。

 すると薫は突然背筋を伸ばして男性の方を向いた。


「ここがいい… ここに居たい…」

 薫は唇を微かに震わせて男性に真剣な眼差しを送った。

 すると薫の言葉に男性は一瞬息を飲んで言葉を失った。

 
 男性はバーのマスターを自分の傍に呼ぶと耳打ちし、マスターは賑わうボックス席を一つ一つ回って頭を下げて回っていた。


「ここではね♪ ワシ達も客なんだが、薫ちゃんたちも客なんだよ♪ だから気にしなくていいんだよ♪」
 
 自分を指名してくれた客達に申し訳なくて俯いている薫に男性は優しく丁寧な口調で教えた。


 そして再び男性のトークが始まると薫の顔は次第に笑顔を取り戻していった。

 その間、竹崎はといえば客から客を忙しく渡り歩いては慣れた口調で、時には客の膝の上に乗って大きな笑い声を立てていた。

 そんな中で男性のトークは勢い良く走り続けたが、その話した内容に一瞬ピクリと表情を変えた薫を、男性は見逃さなかった。


「薫ちゃん、豊胸とか興味あるの? いや、もしあればワシの友達で医者がいてね♪」
 
 薫は男性の言葉に一瞬、俯いていた顔を上げた。


 男性は薫の視線に自らの視線を重ねると、淡々と豊胸の料金やらシステムやらを細かく丁寧な口調で薫に教えた。

 この店に集う何人かを紹介したと言う男性に薫は心を奪われていった。


「薫ちゃん処女だろ♪ あっ! ごめんごめん♪ 薫ちゃんを見れば経験が無いのは誰でも解かるけどワシは嫌われることを覚悟して言うが、初めて薫ちゃんを見た時から自分の彼女にしたいと心底思っていたんだ… 二度しか会ってない君にこんなことを言うのは嫌われるかも知れんが、ダメならダメで早いほうがいいからね♪」

 嫌らしさを微塵も感じさせない男性に薫は困り顔をした。


 二人の会話が途切れた。


「私も兵藤さんが好きです… でも… でも… もう少し時間が欲しいです… 怖いんです…」

 薫は両手を並べた太ももの上に置くとモジモジしながら男性に返答した。


 すると男性は両目を大きく見開いて満面の顔して見せた。


「おおー♪ 初めてワシの名前を呼んでくれたねぇ♪ こりゃー目出度い♪」

 男性は声を高らかに嬉しそうな顔すると薫の方に上半身をねじり、薫の両手の上から自らの両手を重ねた。


 生まれて初めて男性(おとこ)に手を重ねられた瞬間だった。


 薫は大喜びする男性に悪い気持ちにはならなかったが、手を重ねられた瞬間、キュンと胸を時めかせたのは事実だった。

 そして楽しげなトークは続けられたが、遠くから手招きする竹崎を見て、帰宅の準備があるからと薫は席を離れようと小さな声を発すると、男性は立ち上がった薫に笑顔で財布から札束を出して手渡そうとした。

「今夜は楽しかったよ♪ 少ないがとっておきなさい♪」

 金銭を貰うつもりの無くなっていた薫は、両手でそれを断ったが後に引かない男性は強引に薫にお金を渡した。

 ニッコリして男性に深々とお辞儀した薫は竹崎の下へ近寄るとそのまま竹崎の個室へ同行した。


「50万円あるよおー♪ 凄ーい♪ カオちゃん、やったんじゃーん♪ このまま行けば兵藤さんの専属じゃ~ん♪ もしかしてカオちゃん兵藤さんに捧げる心の準備してたりしてぇ~♪ ムフフフフ~♪」

 竹崎は目を丸くして薫の前で飛び跳ねて大ハシャギして見せた。
 
 薫も竹崎につられて妙にワクワクした。


「さっ! カオちゃんも自室でシャワーで浴びてらっしゃい~♪ 男に戻る時間よぉ~♪」

 竹崎は薫にそういうとドレスを脱いで黒いガーター紐の付いたスリーインワン姿になった。

 薫はその脱ぐ仕草と姿を見た瞬間、胸の奥を何故かドキっとさせた。



 そんな薫が自室へ戻り下着姿に戻った時、パンティーの内側が自らの愛液が溢れていたことに気づいた。

 恐らく兵藤に手を重ねられた時に違いないと思った。

 薫は熱いシャワーの下で自分が兵藤に処女を捧げている瞬間を俄かに想像していた。

 
「これで豊胸出来る……」

 薫の脳裏には豊胸した自分を愛欲する兵藤が霧に包まれて映し出されていた。



 薫は竹崎と竹崎の自宅へとタクシーで向かった。

 互いに化粧や香水の匂いを、さり気無く確認し合いながら。

 

 この夜、薫は子供を竹崎の家から抱きかかえるようにタクシーに乗せると自宅へと向かった。

 時間は深夜の零時を少し過ぎていた。

 子供は竹崎の子供達と遊び疲れたのか目を覚ますことなくそのまま自宅の布団に寝かされた。


「ごめんね… 悪いママで…」

 薫は子供の寝顔を見詰めてオデコの軽いキスをすると、ネクタイを緩めながら居間へと移動した。


 ネクタイを外しワイシャツを脱いだ薫は、スリップの肩紐を外しながら寝室へ移動しブラジャーを外しベッドに身体を横たえた瞬間、パンティーストッキングに包まれた内モモにそっと右手の中指を滑らせた。

「く… あん! うんっ… ぁんっ!」

 両膝起てて内モモに滑らせた中指からの刺激に薫は首を仰け反らせ上半身を左右に振った。

 そして薫の脳裏には薫を優しく愛欲する兵藤が居て内モモに指を滑らせながら、右乳首に唇を重ねるシーンが幾度も繰り返された。

 両手で自らの両乳首を弄り上半身を仰け反らせる薫は喘ぎ声を寝室に奏でながら、両太ももをプリプリと揺らした。

 
「はぁはぁはぁはぁ… 兵藤さん… はぁはぁはぁはぁ… シュッシュッシュッシュッシュッ! はぁはぁはぁはぁ…」

 パンティーストッキングとパンティーを足首まで降ろした薫は、スリップの裾を慌しく揺らせ、ベッド左肩と頬を付け右手で硬くなった肉棒を扱いていた。

 女になっている時、ペニスを弄ることのなかった薫だったがこの夜は普段と様子が違っていた。

 左手で右乳首を激しくコリコリと弄り、右手で硬い物を扱く薫は時折、身体を額だけで支え左手の指で肛門の表面を滑らせて兵藤からの愛撫を想像していた。

 そしてオーガズムを迎えようとした瞬間、身体の柔らかい薫は体位を正常位に戻し両足を頭の位置にデングリ返りすると、尻を宙に高く上げ自らの顔を目掛けて勢い良く射精した。

 飛び散った精液は薫の顔に当たるとピチャピチャと音を立て鼻と口にドロドロした生暖かい感触を伝えた。

 そして薫は意思的に唇を開くと自らの精液を舌で舐め取り喉に流しこんだ。

 薫は兵藤が自らの顔に射精した瞬間を想像したようだ。

 それでも興奮の覚めない薫はそのままの体位で数分後、二度目の射精を自らの顔で受け止めた。

 肩で荒い息をする薫は両足を元に戻し膝起てをすると、両手をベッドに投げたして顔に充満する男の精液の匂いに浸った。


 放置された薫のペニスからは薄くなった残液が俄かに湧き出ては黒い陰毛に絡み付いていた。

 

 
【四話】
 



 妻の菜々美に家出されて以来、作り笑も満足に出来なくなっていた薫は日に日に元気を取り戻していった。

 子供を預かってくれる隣り家人たちもそんな薫の変化に気付いたのか、薫に向けた作り笑顔から本来の自然な笑顔になったようだ。

 隣家は薫が会社へ出かける時、子供を預かって保育所のバスに乗せてくれ、保育所のバスが子供を送ってくると再び預かりして薫の帰宅を待つというサイクルだった。

「これ、今月分の託児料です♪ いつも助かります♪ 今月から少しなんですが上乗せしましたので、お納め下さい♪」

 薫はいつものように子供を隣家に連れて行くと隣家の家人も満面の笑みで対応してくれた。


「うちはもう子供も大きくなって家に来ないしねぇ♪ 逆にこの子が私ら夫婦の生きがいなのよぉ♪ お気遣いなさらないで下さい♪」

 隣家の老夫婦は子供を抱っこすると嬉しそうに薫を見送った。


 薫は老夫婦の親切に安心して会社へと向かった。

 
 いつもと同じ顔ぶれの徒歩の道とバスの中、そして電車の中と同じ時間帯に出会うお馴染みの顔も、今朝は何もかもが明るく鮮明に見えた。

 それは徐々に心引かれる兵藤の所為だったに違いなかった。


『カオちゃんを彼女にしたい……』
 
 バスの窓に兵藤の面影を見る薫。


「兵藤さんにならあげてもいい… うううん、兵藤さんに貰って欲しい…」

 電車に揺られる薫の脳裏に常に浮か兵藤からの言葉に薫は、胸の奥で女心を熱くし自ら処女を兵藤に捧げたいと思った。


 妻の菜々美が失踪していらい仕事で失敗ばかりしていた薫だったが、日に日にいつもの勘を取り戻し会社の信頼を取り戻していった。

 そんな時、デスクワークをしていた薫の耳に同僚達の雑談が飛び込んで来た。

 それは薫が会員になったばかりの女装クラブの話しだった。

 薫は耳を澄ました。

 同僚達が営業を仕掛けている訪問先の誰かから女装クラブへ飲みに行こうという誘いを受けたと言う内容だった。

 薫はドキッとしてパソコンのキーボードを打つ手を一瞬止めた。

 耳を澄まして聞き入る薫は自分が会員なっている店ではないことを知るとホッと胸を撫で下ろす思いをした。

 
「いゃあ~♪ とにかくさあ♪ 美人っつうかぁ~ 女よりも色っぽいらしいんだわ♪ 胸もちゃんとあって足も顔もモデルさんみたいらしい♪」

 一人の同僚が照れ笑いしながら聞いた話しを小声に強弱つけた。

「いくら美人たって男だろう~ 俺はチョイ考えちまうなぁ~♪ いくら美人でもパンツ脱がしたらベロンって一物がなっ♪ おいおい♪ 想像したくねえぞそんなもん♪ カッカカカカ♪」

 別の同僚が拒絶するかのように身を引きながら話した。

「てか、俺ならどっちでもいいかもぉー♪ 抱く抱かないは別として美人ってのはいいなぁ~♪ 最近の女共よりは遙かにいいかも知れん♪」

 更に別の同僚は肯定するかのような発言をした。


 薫は自分が品評されているような妙な気分だった。


 トイレの個室の中、ズボンを降ろしワイシャツの裾を捲り上げると天井から漏れる明かりに、下半身を包むライトブラウンのパンティーストッキングがテカりを見せた。

 パンティーラインを隠すために買った少し大きめのスラックスがズリ落ちないように膝を曲げて、パンティーストッキングとパンティーを同時に降ろした。

 蒸れていた蒸気が一気に上昇し香るの鼻先にツンとした匂いを掠めた。

 座りながらの小用にも慣れた薫は小用を終えると、狭い便器のスペースでペニスを降ってペーパーで蒸れて汗ばんだ周囲と一緒に拭き取って捨てた。

 身体を屈めパンティーを慣れた手つきで装着し、パンティーストッキングを伝線しないように気を配りながら下半身にフィットさせると、今度はワイシャツの裾を丁寧にセッティングしスラックスを履いた。

 男の仕様なら簡単に出来る身支度も女用では中々面倒なようだ。

 本当ならブラやスリップも着けたいところだがワイシャツになれば薄っすら見えることが薫を諦めさせた。


「女だったら普通に身に着けられるのに……」

 スカートを履いてオフィスを行き来する自分を俄かに想像した薫の表情は暗かった。

「性転換すれば楽になれるのかも知れない……」

 蒸れて辛い陰部を掻けるのはトイレの中だけだった薫は、部署へ戻る途中、廊下で俄かに考えていた。

「豊胸して性転換すれば完全になれる……」

 自分の席に戻った薫は性転換に想いを寄せながら、スリスリと膝を曲げる度にズボンに擦れるパンティーストッキングの心地よさに貧乏揺すりをした。

 そして、自分の席から見える女子社員達のストッキングに包まれた足を見ては溜息を幾度も繰り返した。



 外回りの無かった薫は定時の17時で仕事を終えいつものように帰宅路を歩いたが、目に付くのはスカートを履いた女性達ばかりだったことに気付き一人照れた。

 買物をしたい思った薫は上着から携帯を取り出すと、子供を預けている隣家に連絡をして残業で遅くなると嘘をいい、その足で会員制の女装クラブへと足を運んだ。

 スーツ姿のままクラブへ入った薫は貸し出し用の大きなサングラスを手に取ると慌てて顔を隠した。

 
「確か… この店にあったはず…… あった! これだこれ!」
 
 薫は擬似ペニスを探して回っていた。

 兵藤に処女を捧げる前の予行演習と言うところだろうか。

 薫はアナル用と通常の擬似ペニスを買うと、専用のゼリーを数本とコンドームを纏め買いした。

 早く入れてみたいという思いを押し殺してレンタルルームへ足を急がせた。

 
「どんな気持ちなんだろう… 痛いのかな…」

 ドアにカギを掛け椅子に座りながら擬似ペニスを握り締め、自分のエレクトした時のサイズと想像で比較してみる。

 そして下着姿になった薫は上半身にスリップを着けてタバコに火をつけた。

 握り閉めた擬似ペニスをそのままにボンヤリと兵藤を受け入れている我が身を想像した。



「ポトリ! うわあぁ! ジィージャジャジャ! ビリビリビリッ! アッチィ! 熱! 熱! アッチィー!」

 薫の吸っていたタバコの火種が足組みしていた足に落ち、手で払い落とそうとしたものの火種はパンティーストッキングの上に広がって両太ももは伝線が広がった。


「何、この感覚…… ドキドキドキドキドキ……」

 薫は伝線して焼け焦げたパンティーストッキングが熔けて太ももに軽い火傷を負ったのに胸の奥をドキドキさせた。


 そして焼け焦げて伝線しながら熔けたパンティーストッキングを両手で触りながら、軽い火傷を負った自分の太ももに微かに残る快感に似た何かに気づいた。

 薫は下半身を覆うパンティーストッキングが伝線したことに強い辱めと快感を感じ、自分はマゾなのかも知れないと初めて思った。

 ソファーに腰掛け、伝線したパンティーストッキングに包まれた両足を開き気味にして前側に伸ばして見た。

 ライターを点火してパンティーストッキングに包まれた自らの左の内ももに近づけて離した瞬間、パンティーストッキングは新たな伝線を始めた。


「ビリッ! ぁんっ! ビリビリビリッ! ああああああんっ! ジジジジジジー! ぅあんっ!」

 薫は首と上半身をいっぱいに仰け反らせた。


「気持ちいい…… ?……」

 薫は自分の発した言葉に驚きながらも余韻に浸った。

 熱いという一瞬の感覚と同時にストッキングが伝線する音が薫の耳に心地よく、同時に肌に伝わるピリピリ感は全身にウェーブのように広がった。

 数回同じ事を繰り返すと出来る箇所がなくなり、薫は虚ろな眼差しでスリップの裾を少し捲り上げてみた。

 パンティーの内側に大量の愛液が溢れていることが解かった。

 身体の内側から官能していた薫は買ったばかりの擬似ペニスにコンドームを被せ、ゼリーを塗るとソファーの上に四つん這いになって、パンティーとパンティーストッキングをムンズと膝まで引き降ろすと肛門に擬似ペニスを押し付けてみた。

 最初は肛門の表面を何度も滑らせ肛門を開き気味にして入れようとしたが中々上手く入らなかった。

 既に内側から官能しきっていた薫は早く入れてみたいと焦りながら熱い思いを擬似ペニスに託した。



「ニュルッ! ぅぐう! ヌプッ! ぅあんっ! ヌプッ! ヌプヌプヌプッ! はうっ! ぅぐうっ! はぁはぁはぁ!」

 四つん這いでコンドームを被せた擬似ペニスを入れた瞬間、想像を絶する強い便意が薫を襲った。

「痛い! いたたたたたたっ! ヌップヌップヌップ… ぅぐう! はんっ! 痛ああ~い!!」

 擬似ペニスをゆっくりと抜き差しする薫は顔をしかめ痛みと激しい便意に息を途切れさせた。

「気持ち良くない…… 辛いだけ! だっ…… ぅぐう! こんなの何度もされたら! 私! 耐えられない! ぅぐうううう!」

 ソファーに付いて身体を支える左手は震えていた。

「うがあああぁぁぁー! ダメエー! 我慢出来ない! ニュポッ! バタバタバタバタバタ! ブビィ! ブババババ!」

 薫は擬似ペニスを引き抜くと慌ててトイレに駆け込んで激しい便意を便器にブツけた。


 トイレから出て来た薫は男が女に挿入し出し入れする時の勢いを想像して顔色を変えた。

 
「こんなんじゃ… 兵藤さんにあげられる訳ない… こんなの耐えられない!」
 
 擬似ペニスをコンドームから外した薫は小さな声で独り言を放っていた。

 そんな薫は身体の内側から燃え上がっていた炎を自らの手で消し止めてしまったものの、何とかして擬似ペニスに慣れる方法はないかと個室の中で思案に暮れたが結局、何も思いつかなかった。

 
 薫はタバコの火で伝線したパンストをハサミで切ってクズカゴに入れると、愛液で溢れてシミになったパンティーを買物袋に入れ、箪笥の中から前回買ったパンティーを出して履き替えその上からグレーのパンストを履いた。

 襟の少し大きい淡いパープルのワンピースを着衣し腰ベルトを回し、サッと軽く薄化粧したあとで肩までのカツラで地毛を隠した。

 大きな鏡の前で全身を左右に振って全体を見回して、ワンピースの裾に静電気が起きてないか確認して白いローヒールで両足を包んだ。

 バーで軽くウイスキーでもと意気揚々とバーへと足を運んだ。

 
「いらっしゃいませ♪ あ! カオさん♪ お久し振りで~す♪」

 カウンターの中にいた蝶ネクタイが似合うボーイさんが薫に声を掛けた。

「こんばんわ~♪ 今日は普通にお酒を楽しませて頂きま~す♪ クラブドレミーありますか~♪」 

 開店して間もないバーのカウンターの席で薫はレミーを一口、喉に流し込んだ。


 薫は竹崎に連れて来られて以来、初めてバーテンダー相手に話しをした。

 バーテンダーもまた、薫を気に入っているようで二人の会話はスムーズに弾んだ。

 
「えっ! 女性なんですか?」 

 薫は目の前に居るバーテンダーが女性だと初めて知らされて驚きの表情を隠せなかった。


「性同一性障害なんです♪ 僕はカオさん達とは逆なんです♪ 驚かせてすみません♪ だから僕は最初の日から男の目でカオさんを見てますよ♪」 

 バーテンダーはニッコリ笑って薫に視線を重ねた。


「ああ、その前に自己紹介をさせて下さい♪ 名前は工藤俊介… みんなは俊って呼んでます♪」

 工藤は薫のタバコに火をつけて爽やかな笑顔を見せた。


「胸はもう取りましたし子宮も… 穴はまだ塞いでませんけど♪ この通りヒゲも! カオさんも性転換したいんじゃないですか~♪ そんな気がします♪」

 工藤は隠すことなく自分ことを話してくれたが浅い時間の所為か客は誰もおらず、バーは薫と工藤の彼の声だけが弾んでいた。

 薫は清潔感があって笑顔のステキな工藤を可愛い思っていた。

 そんな薫も時間と共に若干酔いが回ったのか、俊介に酔った勢いで相談を持ちかけた。


「実は好きな人がいて、その人から私のこと欲しいって言われたの… それで私…」

 薫は俊介にアナルセックスの練習をしたことを話しその恥かしさに顔から火の出る思いをした。



 すると俊介は薫の思ってもいない提案をした。



「兵藤さんでしょ♪ 兵藤さんもカオさんに首ったけですらね~♪ カオさん、良かったら僕がアナルセックスの正しい知識を指導しますよ♪ 勿論秘密厳守で♪ これが僕の住所と連絡先です。 良かったら今度尋ねて下さい♪」

 嫌らしさを微塵も感じさせない俊介は薫にサラリと話し、薫は俊介に視線を重ねた。


「いらっしゃいませ~♪」

 俊介は薫に軽く頭を下げると来店した客の応対に回り、薫は他の客と会話する俊介を黙って見ていた。

 すると薫は立て込んで来たバーの雰囲気から逃げるように店から離れ個室に戻って来た。


『僕が指導しますよ♪』

 薫の脳裏に残った俊介の笑顔と言葉は薫の胸の奥をドキドキさせた。

 薫はソファーに浅く腰を掛けると足組して左膝に両手を置いて目を閉じた。


 俊介の言葉を思い出した薫は閉じた瞼の内側に想像を働かせた。


 四つん這いになった自分の肛門に俊介が後から擬似ペニスを入れる。

 ワンピースの胸元のボンを外し、中に入れた右手の中指で左乳首の先っぽをプルプル弾く… ビンビンっと、脳に伝わる刺激で乳首は直ぐに勃起し、親指と中指で勃起した左の乳首を抓んでコリコリさせれば、パンストに包まれた薫の組んだ足はクネクネと変化を続けた。

 喘ぎ声を喉の奥で押し殺し全身のビク付きで腹の筋肉が伸縮を繰り返す。

 閉じたり開いたりを繰り返す両足の爪先。

 モガクように下げた後ろのファスナーが途中で引っかかってヤキモキした。

 両肩からワンピースを外しスリップの肩紐を外すと、薫の両手は両側の乳首に添えられた。

 組んでいた両足はいつのまにか崩れ、ソファーの上で体育座りになって軽く開かれた。

 両方の乳首を弄る度にワンピースに浅く隠れた両足が動く。

 グレーのパンティーストッキングに包まれた太ももが閉じたり開いたりを繰り返す。

 そして同時に両足の爪先が閉じたり開いたりを繰り返した。

 蛍光灯の光に晒された乳輪と一体化した薫の乳首は官能に硬さを見せた。

 丸見えの肛門に恥らう薫に擬似ペニスを持つ俊介の手が前後を繰り返した。

 腰に添えられた俊介の手の温もり。

 
「カオさんの丸見えだよ……」

 俊介が薫を辱める想像をした。


 薫は俊介のこの言葉に下腹部をキュンと熱くさせた。


「痛くないかい……」

 優しい俊介の労わりの言葉に四つん這いの薫は首を仰け反らせて軽く頷いた。


 乳首から離した両手の指をパンティーストッキングに包まれた両太ももの内側に滑らせると、内モモに広がった心地よさが背筋からジジジッと脳裏に伝わった。

 滑らせた両手の指先を無作為にアチコチに動かすと、喉の奥で押し殺していた喘ぎ声が一つ二つと漏れ出した。

 内モモから外モモ、外モモから尻の両側へと無作為に滑る両手の指先に、かおるの全身がビクンビクンと大きくビク付く。

 内モモに左手を残し離れた右手は左の勃起した乳首を再びコリコリと弄る。

 大きなビク付きの所為で膝から滑り落ちたワンピースの裾。

 室内に晒された下半身に残された左手は蜘蛛のように肌をうごめく。

 右手の中指はその腹で勃起した乳首の先端をクリクリと回し、時折親指と使ってコリコリと抓んだ。

 大きく開かれた両足、内モモの付け根部分に左手の蜘蛛が近づいた瞬間、ビリッ! ピリピリピリっと引っ掛けた爪の先がパンティーストッキングを伝線させた。

 パンティーストッキングの伝線に一瞬、閉じていた瞼を開いたものの、薫は再び瞼を閉じると左手の蜘蛛が引っ掛けて伝線させた部分に、乳首を弄っていた右手を蜘蛛にして移動させた。

 ビリッ! ビリビリビリ! 二つの蜘蛛(手)が伝線した部分に群がり伝線した部分を広げた。

 ピリピリピリっと伝線は両太ももに素早く走り、見る見る間に香るの下半身は恥かしい様に転じた。

 女にとってストッキングの伝線ほど人目を前にして恥かしいものはないが、自慰の最中の薫はその恥かしさを官能に変えた。

 閉じていた瞼を開いて伝線した自らの下半身を凝視した薫は、パンティーの内側から溢れて滲んだ恥かしい液体に口元をすぼめた。

 
「俊介くん! そこはだめえぇー!!」

 口をモゴモゴさせた薫の両手は勃起した両乳首を弄り、素早く伝線した両内モモに這わせられ滑らされた。

 恥かしさが勢い良く官能に変わった。
 
 薫の中でアナルセックスの指導は消え、俊介に辱められる自分(おんな)に変化していた。

 ビリッ! ビリビリビリイィー!

 薫の下半身を包むパンティーストッキングは俊介の手によって大きく破られ、無理矢理その手で薫からパンティーを剥ぎ取った。

 顔をシカメて首を左に捻り俊介からの恥辱に耐える女を演じた。

 晒された薫の恥かしい部分を見た俊介は愛液に塗れた陰部の匂いを嗅ぐと、開いた口の中にその部分を収めた。

 薫の右手の親指は自らの体内から溢れた愛液を付着させペニスの先っぽをヌルヌルと回した。

 ガクンガクンと大きく首を前後させビクンビクンと素早く反応を繰り返す薫は唇の周りをペリと舌舐め擦りした。

 ペニスの先っぽを回す親指の腹は次第に速度を上げた。

 
「俊介くん……」

 薫の脳裏は俊介で覆われた。


 止め処なく溢れる愛液に滑らせた右手の親指を離して薫は自らの口の中に入れて貪った。

 そして交替するように素早く左の親指が薫のペニスの先っぽへと到達し再びヌルヌルヌルと先っぽを回した。

 チュパチュパチュパと自らの愛液に塗れた右の親指をムシャブり嫌らしい音を室内に響かせた。

 ソファーの上で体育座りしていた体位を、浅く腰掛け体位をスリスリと下げ目前のテーブルを手前に引くと、その上に両足を乗せ仰向け状態になった薫は、左手の親指が十分に愛液を絡めている事を確認すると、その指を中指に擦り付け自らの肛門に何度も滑らせた。

 両足を大きく開き、体位を後転姿勢にして愛液の絡みついた中指を肛門を開きながら少しずつ入れて行った。

 肛門の中に左中指の第一関節まで入れると薫はその指を優しく前後させた。

 激しい便意も痛みも無い中で薫は右手で乳首を弄りながら左手の指を前後させた。

 
「ぁんっ!」

 鈍いながらも少しずし肛門の入り口に微かな快感を感じた薫はそのまま指を出し入れさせた。


「ぅあんっ! ぅあっはっはっはっぅんっ! ぁんっ!」

 出し入れする度にその快感は感度の度合いを薫の脳に伝えた。


「気持ち… いい… ぁんっ! ぅぐぅぅっ!」

 薫は下半身を右に左に捻り首を後に仰け反らせ、乳首を弄る指の速度を上げた。


「はぁはぁはぁはぁはぁ…」

 無理な姿勢は薫の心拍数を上げ、我慢して押し殺していた喘ぎ声を次々に個室に響かせた。


「俊介くん! 来てえぇ! 私に入って来てぇ!」

 薫は肛門から左指を抜くとテーブルに置いた擬似ペニスを握り締め、ペニスの先っぽに溢れた愛液を絡め慌てて肛門に挿入した。

 この時の薫は心から入って来て欲しいと願っていた。


「ヌプヌプヌプヌプ…  はふっ! ぅあんっ! ヌッチャヌッチャヌッチャ… ぁぁああんっ!」

 指の太さとは余りにも違う大きさに薫は閉じていた瞼を一瞬開いて動かした擬似ペニスの動きを止めたが、口元に微かな笑みを浮かべ再び動かした。


 薫は肛門の入り口に鈍いながらも高まりつつある快感に心を身悶えさせ、自分の中に俊介の肉棒が入っていると言う想像の元でドライオーガズムに達するまで時間を費やした。

 そしてオーガズムに達した薫は後戯のように両乳首を弄りながらその余韻を楽しんだ。

 
 ドライオーガズムに達した薫のペニスの先からホンの少しだけ精液が滲んでいた。



【五話】



「ママァー! ママ! ママ!」

 夜泣きしてグズル我が子に妻である菜々美の代わりに乳を与える薫は母性愛でいっぱいだった。

 時折、乳首を噛む我が子に耐え、歯を食いしばる薫は哀れなほど母親だった。

 出るはずのない薫の乳を貪る子供もまた、一日中会えない肉親との再会に安心感をとり戻す日々の暮らし。

 失踪した菜々美を案じながらも乳を吸う我が子の不敏さに遠くを見詰める薫。

 薫の乳首は子供が夜泣きする度に痛々しいほど腫れた。

 そんな生活の中で、会社から戻り我が子を引き取れば自宅で素早く女になり家事をこなす薫は誰が見ても楽しげだろうか。

 妻の菜々美が居た頃は飲みすぎることもあった薫だったが、失踪して以来、子供の面倒を見ることが加わり今では酒に酔いしれることもなくなっていた。

 酒に酔えない薫は女になることで男の業を捨てていたかも知れない。

 寂しさから妻の衣類に心を奪われ気付けばそれを身につけて癒していた。

 乳を子供にせがまれどうすればいいか解からずに与えた自らの乳。

 胸が欲しいと豊胸を望み、悩んでいるうちに性転換をも視野に入れている薫は、自分を欲しいと言う兵藤に処女を捧げてもいいとさえ思い始めた。

 その反面、バーで話した工藤俊介にも心を奪われて行った。

 深夜、ベッドの上で俊介を思いながらする自慰の回数は兵藤を思いながらする自慰の回数を上回っていた。

 妻の菜々美の失踪からエレクトしなくなったペニスの奥でするドライオーガズムは、薫から射精を奪うことで薫をいっそう女に近づけた。

 そんな薫はとあるクリニックを尋ねていた。



「ええ、男性でも豊胸は可能ですよ♪ で、実際にはどの程度の豊胸ほ希望していますか?」

 白衣に包まれた銀縁メガネの医師は椅子に座る薫に柔らかい視線を重ねた。


「気持ちとしてはCとかBなんですが、会社勤めもありますからAカップくらいでと思っているんですが…」

 女装していない男装のままでの問診に臨む薫は医師の質問に淡々と答えた。


「では、ちょっと身体を拝見します。 上半身脱いで診察台に仰向けでお願いします。」

 医師は薫に診察台に横になるよう指示すると、若い女性看護師が診察台の枕を直した。


「これがAカップです… そしてこれがBカップでこちらがCカップ… そうですねぇ、会社勤めされているならAですかねぇ… これなら普通に隠せますからねぇ。」

 医師は仰向けの薫の胸に擬似乳房を乗せて説明をした。


 一通りの診察を終えた薫は医師から重要説明を受け、自宅で納得の上で書類にサインをして持参するよう指示して診察を終えた、診察中に医師が薫の胸に当てた擬似乳房の大きさを思い出しながら薫は神妙な顔をして帰宅の途に付いた。

 豊胸の予算は入れるパーツの種類によって変動することが解かったが、薫はより自然な胸を希望したことで全ての経費を入れて80万円だった。

 頭金を入れて残りをローンでと薫は豊胸に向けて考えを纏めようとしが、電車の中で楽しげに騒ぐ女子高生たちの声に薫は鼻で一笑いすると窓の外に豊胸した自分を想像した。

 
「えぇ、乳首の大きさも今の技術で大きく出来ますし、乳輪も形成が可能ですから安心して下さい♪ 乳房に合っ大きさに出来ますよ♪」

 医師の言葉を何度も思い出す薫は時折、窓の外に笑みを投げた。


 豊胸相談でクリニックを訪れてからの薫は会社から真っ直ぐに帰宅せずに、女装クラブに出入しては10万、20万と稼ぎながら検査のためにクリニックに通う日々を送った。

 そして女装クラブでは兵藤が必ず薫を隣りに置いて楽しい時間を過ごさせたが、薫は自分を遠くから見る工藤俊介の視線にモドカシさを感じていた。


「私のこと好きなら好きって言えばいいのに! そしたら私だって!」

 返り際に何度も俊介に言いかける薫だった。


 それから一週間後のある日、薫は手術を受けるために会社から有給休暇を取り、出張と称して子供を隣家に預け手術のためにクリニックへと入院した。

 不安と期待が過ぎる中での豊胸手術は成功し、医師や看護師の拍手に薫は感無量とばかりに涙を頬に伝えた。


「いいですね♪ 今後はこれらを厳重に守って下さいね♪ そうしないと大変なことになりますからね♪」

 看護師は術後の薫に愛らしい笑みを見せながら聞かせた。



 ・ お薬は決められた容量をまもり、きっちり内服してください。

 ・ 術後2日間は外出せずにゆっくりとすごしましょう。

 ・ 固定はきめられた期間はずさないようにしましょう。 (3日後にはずしてください)

 ・ 施術部位に内出血(青タン)が見られる場合がありますが、心配ありません。また、重力の関係で腹部から下肢付近にみられる場合がありますが、自然に(2週間位)で目立たなくなります。

 ・ 胸囲および腹部付近にむくみがでますが、これも2週間ぐらいで自然とひいてきます。また、むくみのため、体重が一時的に1~2キロ増える方がいますが、全く心配ありません。

 ・ 軽い運動は2週間後から激しい運動は1ヶ月控えて下さい。

 ・ 飲酒・たばこは1ヶ月は控えたほうがいいでしょう。傷の治りを遅くします。

 ・ シャワーは下半身のみ当日から可能です。全身シャワーは4日目より可。 入浴は7日目より可

 ・ ブラジャーは6ヶ月は禁止ですが、クリニック指定のものであれば固定をはずした日より使用可能。

 術後、薫は四日目で退院した。

 身体のバランスが上手く取れずに苦労したが、退院する頃には看護師の指導で何とか普通に歩けるようになった薫は、一週間ぶりに我が家に帰宅すると、空港で買って来た土産を持って隣家へと出かけた。

 薫の胸にはクリニック指定のブラジャーが装着され胸の揺れを押さえ、それを背広が覆い隠していた。

 
「申し訳ないのですが、こんなに懐いてしまって… もし御嫌でなければもう少しこの子を預からせてくれませんか? 私達のような老夫婦も孫が出来たように……」

 子供を引き取りに行った薫は思いもよらない隣家からの提案に驚きの表情を隠せなかった。

 手を差し伸べた薫から逃げるように後退りして老夫婦の影に隠れる我が子に薫は愕然とした。


「そうですか… ではあと数日、宜しくお願いします……」

 薫は落ち込んだ様子を老夫婦に見せながら自宅に入ると、胸に注意しながらソファーに腰掛け大きな溜息をした。

 窓にカーテンを掛け下着姿になった薫は風呂場へ移動すると、クリニックで受けた指導通りに身体を洗った。

 酒もタバコもやれない薫はチョコレートを口に入れると、衣裳部屋へ移動し数日振りにパンティーを付けクリニック指定のブラの上からスリップを纏った。

 事前にブラを隠すために購入した厚めの男用のシャツを見て出社した時のことを想像しながら、伸縮するハウスドレスを下着の上から着込んだ。

 久々に下半身に履いたパンティーは薫に窮屈さを与えたが、衣裳部屋から居間へ戻る頃には直ぐに慣れたようだ。

 
「半年はこのブラか…… 性転換はまだ先だな~」

 ソファーに腰掛けた薫はテーブルに有ったペンを口にくわえてタバコを吸う真似をした。


「豊胸手術は無地に成功して只今自宅に帰還したよー♪」

 薫は兵藤と工藤と竹崎に同じ文面のメールを送信した。


「カオちゃんおめでとう♪ カオさんおめでとう♪ カオーオメー♪」

 兵藤、工藤と竹崎の順に祝福のメールが薫を喜ばせた。

 
 薫は三人と同時にメールで手術の話しに華を咲かせ、一時間が経過した頃、一通のメールが飛び込んで来た。

 それは薫が失踪した妻の消息の捜索を依頼していた探偵事務所からだった。


「奥様らしき女性を福岡で見かけたという情報を得ました。 再び捜索を続行しますが委細は後ほどメールします。」

 メールを見た薫は豊胸した胸をみながら複雑な心境に顔を曇らせた。


「菜々美が戻って来てこの胸のことを知ったらどうなるんだろう……」

 薫は携帯をテーブルに置く手を俄かに震わせた。


 そして薫は頻繁にメールをよこす兵頭、工藤、竹崎をそのままにして疲れた身体を労わるように、寝室のベッドに身体を横たえた。

 寝るにはまだ早い夜の八時、クリニックに指導された通りの胸を庇う姿勢にした薫は枕元に擬似ペニスとジェルを置いた。


「一週間は胸は弄っちゃダメですからねぇ♪」

 薫は看護師の言葉を脳裏に過ぎらせながら乳首に触れたい気持ちをグッと堪えた。

 そんな薫だったが胸の奥でムラムラする気持ちに我慢出来ないとばかりにパンティーの上からペニスの先っぽを指で擦った。

 一瞬大きく全身をビクつかせると、ブラに包まれた胸が大きく揺れた。

 目の前にあって触ることの出来ない乳房に薫は唇を軽く噛み、何度もパンティーから中のペニスを擦り続けた。


「どうせ起たないしこのままで……」

 薫はパンティーの上からペニスを擦り続けた。

 プルプルと太ももが揺れるた。


「ぁんっ! ぅあんっ! ぁぁあああんっ!」

 身体を揺らさないように気遣えば気遣うほど、薫はロープで身体を縛られたように欲求が増大していった。


「兵藤さんが私の…… ぁんっ! あああああん…」
 
 薫は兵藤にペニスを貪られる想像に駆られていた。


「早くカオちゃんのオッパイを食べたい! 私も! 私も早く兵藤さんに食べられたい!!」

 想像の中の兵藤は薫に苦しい心の内を叫び、薫もまた兵藤に切ない想いを叫んだ。


 薫は兵藤の手に例えた自分の手で自らパンティーを剥ぎ取ると、下半身をベッドの上に晒した。

 そして勃起することのない愛液の溢れたペニスの先っぽを右手の親指でニチャニチャと何度も滑らせ官能に浸ると、自らの身体をドライオーガズムへと導き始めた。


「だめえぇ! イッちゃだめえぇ! まだよ! まだ兵藤さんが私に入ってない!」

 薫は慌てて枕元の擬似ペニスにジェルを塗りつけると右手に逆に握り閉めた擬似ペニスを肛門に挿入した。


「あん… ヌプッ! あひぃ! ヌプヌプヌプ! あああああぅ!」

 薫は擬似ペニスを自らの中へ挿入し指の第一関節ほどのところで前後を繰り返すと無意識にヨガリ声を発した。

 そして尻を少しクイッと持ち上げた薫は擬似ペニスを小刻みに前後を繰り返しながら奥へ奥へと挿入した。

 激しい便意が薫を襲い耐えられずに抜き取ろうと思いながらも、兵藤が自分を抱いてくれていると自分に言い聞かせその違和感に耐え忍んだ。


「我慢するのよ! こんなんで泣いてたら兵藤さんに処女なんか捧げられない! 薫! 頑張って!」

 薫は自分に言い聞かせて擬似ペニスを前後させた。


 数分後、薫は激しい便意と違和感に負け擬似ペニスを抜き取り、悔しさに涙を滲ませながらトイレに駆け込んだ。

 薫はペニスの先っぽに白く乾いた自分の愛液を見ながら、糞に塗れた擬似ペニスを手洗い用の水で何度も洗いトイレを流し、再び寝室に戻りペニスの先っぽを弄り身体の興奮を誘ったがすっかり冷め切った性欲は元には戻らなかった。

 そんな薫は残りの有給休暇を自宅で過ごすべく一人で自宅に篭り二十四時間のフルタイム女装子に徹していたが、酒もタバコもやれない辛さから一人モンモンと時間を過ごしていた。

 その間、何度もアナルセックスの練習に励み、自宅で始めてから三日目の夜にようやく三十分間耐えることに成功した。

 アナルセックスの前に浣腸して中の汚物(クソ)を出しきってからすることをネットで学んだ薫は、普段の激しい便意を感じることなく三十分が一時間でも耐えられることを知った。

 
 薫は女装クラブに足を運んでいた。


「カオちゃん♪ 久し振り~♪」

 両手を広げてボックス席で薫と待ち合わせていた兵藤は満面の笑みで迎えた。

 兵藤はいつもと変わらぬ高価なスーツ姿を薫に披露し、照明にキラキラと靴を光らせ足組するとタバコに火を点けようとして、禁煙している薫のためにそれをやめた。

 ソファーに腰掛けた薫は、黒いストッキングに包まれた足を組むと黒いタイトスカートの裾を軽く直した。

 そして兵藤は薫の着ていたクリーム色のブラウスの膨らみを見て俄かに嬉しそうに口元を緩めた。


「おめでとうカオちゃん♪ これはワシからのプレゼント♪ 気に入ってくれるといいんだけどな♪」
 
 薫は手渡されたエルメスのレディス腕時計を見て瞼をパチパチさせ目を丸くさせた。


「こんな高価な物… 頂けません…」

 薫は渡された物を兵藤へ押し返すと、兵藤は薫を心配そうに見詰めた。


「だって! 私… まだ何も兵藤さんに……」

 薫は困り顔して兵藤に言葉を言いかけた。


「カオちゃん! ワシはね! こんな物でカオちゃんを釣ろうなんて思ってないよ。 これはカオちゃんの記念日の印だからね、貰ってくれないかな……」

 薫は兵藤の真剣な眼差しに軽く頷いて兵藤に視線を重ねた。


「私! ホントは今直ぐにでも兵藤さんに! でも… まだ時間が必要で… もう少し待って下さい! 身体が… 落ち着くまで……」

 薫は胸の安定期が半年であることを兵藤に伝えると申し訳無さそうに俯いた。

 そんな薫を見て兵藤はニッコリと微笑むと膝に乗せられた薫の手をポンポンと軽く叩いて重ねると、薫の真横へと席を移動した。

 薫は間近に座った兵藤に胸の奥をドキドキと高鳴らせ、頬を紅色に染めた。

「カオちゃん♪ ワシは待ってるよ! カオちゃんからOKが出るまで半年でも一年でもね♪ クイッ!」

 兵藤は薫に小声で笑いかけると薫の肩に腕を回して自身へと引き寄せた。

 薫は突然のことに全身を小刻みに震わせた。

「カオちゃん、可愛いなぁ♪ 許されるならこのまま持ち帰って食べてしまいたいくらいだ♪」

 兵藤は肩を抱き寄せても拒絶しない薫に御機嫌口調を飛ばした。

 薫はカウンターにいる工藤俊介の突き刺さるような視線を感じていた。

「カオちゃん、これはワシの経営している会社の名刺じゃ♪ ヘットハンティングするつもりではないが、カオちゃんさえ良ければワシのところで秘書として働いて貰ってもいいんだが♪ 勿論、他の社員達には女性と言うことにしとけば問題なかろう♪ 考えてみてくれればいいんだが♪ スゥー…」

 兵藤は薫に思いも依らぬ提案をしたあと、初めて足組みしている薫の左足の膝に手を滑らせた。

「ドキッ! ドキドキドキドキドキ…」

 ストッキング越しに感じた兵藤の手の温もりが薫に伝わった瞬間、薫は胸の奥を更にドキドキと高鳴らせた。

「カオちゃん…… スゥー……」

 兵藤の手が薫の左の膝から太もも方向へと少し流れると薫は緊張したように身体を強張らせた。

 
 すると突然の甲高い声が耳に届いた。


「あらあぁ~♪ 兵藤さん、お久し振り~♪ あらあら! 今度はこんな可愛い子を味見しちゃうのおぅ~♪ 兵藤さんてば手が早いんだからあ~♪」

 兵藤の手が薫のスカートの中に入ろうとした瞬間、突然、兵藤に掛けられた声に驚いて兵藤は手を引っ込めてしまった。

 声に驚いた薫が声の方に視線を向けると、前に竹崎と親しげに離していた古株の明美さんだった。

 明美は薫をシッシッと追い立てるように手を振って席を移動させると、薫と兵藤の間に自身を置いて兵藤に談笑を持ちかけた。

 そして薫が視線を感じてカウンターに視線を移すと、中に居た工藤俊介が笑っているのが見えた。

 工藤は薫に手招きして呼び寄せた。


「もう帰りな! カマトトが遊ぶ時間は過ぎてるよ!」

 薫がカウンターに近付くと、俊介は不機嫌な表情を見せて薫を子ども扱いして帰るように言い放った。


「あとでメールするから!」

 薫は俊介が自分と兵藤に焼餅を焼いて明美さんをけしかけたのだと思い、俊介に不機嫌な表情を見せるとバーから出た。


 個室に戻った薫はブラウスを脱ぎ捨てると工藤にメールした。


「何で邪魔したの!! それに私を子供扱いするなんて最低!」

 薫は思っていることを率直に俊介にブツけた。


 すると俊介からの返信は直ぐに来た。


「男としては大人だろうけど! 女としては子供だろ!! 違うか! カンマトトのくせに!」

 俊介もまた思っていることを率直にブツけて来た。


「もういいよ! 俊介のバカ!! バサッ!」

 薫はメールを送信すると携帯の電源を落としてスカートに八つ当たりするように脱ぎ捨てた。


 スリップ姿になった薫はソファーにドスッと座ると足組みして兵藤からのタッチを思い出した。

 生まれて初めて女として男性に膝を撫でられた薫は撫でられた膝を凝視して残念そうな顔をした。


「もう少しで兵藤さんに太ももを触って貰えたのに! 俊介ったら!!」

 薫は兵藤の手の動きを真似て自分の左太ももに右手を這わして遠くに視線を移すと動かなくなった。

 薫はパンティーの内側を濡らした。


 夜の十一時、店を出た薫はタクシーで自宅へ戻ると携帯を覗いた。

 俊介からのメールが一通届いていた。


「兵藤さんに一度でも肌を許したら直ぐに捨てられる、店には捨てられて来なくなった子が大勢いるんだ。 よく考えないとダメだよ。 いいね!」

 俊介からのメールは焼餅というより忠告に近かった。


 だが薫は俊介の忠告を無視するように翌日の夜も兵藤と待ち合わせてクラブへと出かけた。

 その兵藤はいつもはカウンターの傍のボックス席だったのに、その日、兵藤が居たのはカウンターから一番遠い造花が生い茂る、通称、店では隠れ蓑と呼ばれるシートだった。

 奥の隠れ蓑から手を振って薫を呼んだ兵藤は白いスーツスカートの薫に笑顔を見せた。



「ゴメンゴメン♪ 見た通り満席だったもんだから、ここしか空いてなくてね♪ ここでいいかい♪」
 
 兵藤は片手を伸ばしてボックス席を見渡すと薫を席に付かせ自らも席に付いた。


 そんな兵藤は酒を断っている薫に合わせるように自らも酒を飲まずに紅茶を飲んでいた。

 そして兵藤はいつものようにダンディーに薫を笑わせる話しを連発し続け丁度一時間が経過した頃だった。


「今日はねぇ、カオちゃんにこれをプレゼントしちゃうぞぉ~♪ これもカオちゃんには良く似合うぞおぉ~♪」

 薫の目の前に出された箱を開けるとそこにはヴィトンのバックが入っていた。
 

「今日は! 黙って受け取ってもらうからねぇ~♪」

 兵藤は薫の方に身体を向けると首をロクロックビのように左右に曲げながら両手を薫の肩に乗せ、自らを薫の左横に移動した。

 薫は黙って小さく頷くと両手を膝の上に乗せた。

 そんな薫を見て口元を緩ませた兵藤は辺りを軽く見渡すと、兵藤は薫の肩に右腕を回して自らに引き寄せた。

 薫の胸の奥はドキドキと高鳴った。

 そして突然、兵藤は抱き寄せた薫の左側から薫の左の耳たぶに唇でタッチした。


「ドキッ!! ドキドキドキドキドキ…」

 薫の胸の奥の高鳴りは耳たぶへの軽いタッチで最高潮に達した。


「スゥー スリスリスリ…」

 兵藤の左手が突然、薫の太ももに這わせられた。

 薫は目をキョロキョロさせ全身を強張らせるように緊張させた。

 兵藤は暗がりの中でそんな薫を見て口元をニヤニヤさせて楽しむように、その手をストッキング越しに滑らせた。


「ビクンッ! ぁん! ぅぐぅんっ!」

 薫は兵藤の手に全身をビク付かせ出そうになる喘ぎ声を喉の奥で押し殺し、無意識に軽く開いた両足を閉じようとすると兵藤はそれを止めた。



 薫は兵藤に左の太ももを自由にさせた……


 その兵藤は恥かしさと驚きに動けなくなった薫の顔を覗き込んでは口元をニヤニヤさせた。

 薫は兵藤の手が動く度に身体をビクつかせ、漏れそうな喘ぎ声を必死に抑えた。

 そして兵藤の手は薫のスカートの中を滑り回り、薫の内モモへも容赦なく自らの体温を伝えたると薫は再び無意識に開いた両足を閉じようとして、兵藤にそれを止められた。


「ぁんっ! ぅぐうぅ! ぁっ! ぁっ! やぁ… あんっ! ソコは… ぁんっ! ソコはだめえぇ… 兵藤さん! ソコは…… はうっ! はぁん! はぁ…あっ… はひぃ!」

 兵藤の手はとどまることを忘れたかのように薫のスカートの中を自由に滑り回ると、薫の恥かしい部分の上で移動を止めスリスリスリと何度も執拗に薫を辱めた。


 無意識に両足を閉じようとする薫の両足を止めて足を開かせる兵藤は鼻息を荒くしていた。


「お願い… ソコは… ソコは許して… 兵藤! ぁんっ! さん… ぁんっ!」

 薫は途切れる声で兵藤に哀願し続けた。

 立ち上がろうとしても肩を抑えられている上に激しい快感に身体が強張って足腰に力が入らなかった。

 薫は激しい快感で崩れそうになる身体を必死に右手で支えていた。

 そんな兵藤の手と指は薫のペニスの上に磁石のようにくっ付いて離れることはなかった。

 そして兵藤の右手は薫の肩から右腰に移され兵藤は更に自分へと薫を引き寄せると、スカートの中に入れた左手の爪を薫の下半身を覆っているパンティーストッキングに引っ掛けて伝線させた。

 ビリビリビリとゆっくりと音を立てて伝線するパンストに薫は顔を引き攣らせ身体を強張らせた。


「ぃや! やめてえぇ… 兵藤さん! やめてえぇ! 怖い! 怖いの!」

 パンティーストッキングを破る兵藤に声を細める薫は泣きそうな声を発した。

 そして薫の下半身を包むパンストはパンティーの辺りを丸く破かれていたことを薫は知らず、兵藤の手は首を軽く仰け反らせ怖さに涙を潤ませる薫を見ることなくペニスをパンティーの上から触りまくった。


 薫はパンティーの内側をグッショリと濡らし、その愛液は表面にまで滲み出ていた。

 兵藤はパンティーに滲み出た薫の愛液をパンティーの上からヌルヌルと手と指でぬめらせると、時折その指を口に入れてチュパチュパ貪った。

 そして感高まった兵藤は薫の身体の向きを自らの方へ少しズラスと、両手で薫がペニスをガードしていたナイロン製のスキャンティーを真ん中から力任せに引き破った。


「グイッ! ビリッ! ビリッ! ビリビリビリッ!!」

 薫はスカートの中でスキャンティーが縦に破かれる感覚を目を丸くして身体を強張らせた。


 六十代とは到底思えない腕力に薫は恐怖さえ覚えた。


 そして薫がペニスに外の空気を感じてヒヤッとした瞬間!


「兵藤様♪ この店はそういう趣旨の店ではございません… 御慎み下さい……」

 突然、聞こえた工藤の声に薫は潤ませた涙を頬に伝えた。


 工藤の声に我に返った兵藤は辺りを見回すと腕時計をチラッと見て、逃げるように無言で立ち去った。


「ェッグ… ヒックッ… ヒック… 怖かったよおおぉぉぉー!!」

 薫は蝶ネクタイ姿の工藤俊介に大粒の涙を零して泣き出してしがみついた。


 工藤はそんな薫をしっかりと抱き締め続けた。


「もうバカなことすんなよ! 今度やったらもう知らないからね! 男は女にとってオオカミだってこと忘れんじゃないよ!!」

 工藤に連れられ個室に戻った薫は工藤から散々説教された。


「解かった… もうしない… バサッ! キヤァー!」

 薫は説教し終えた工藤の前でタイトスカートを脱いだ瞬間、突然工藤の黄色い悲鳴に耳を押さえた。


 静まり返った個室…


 両手で顔を覆う工藤俊介。

 それを息を飲んでビックリした顔して見詰める薫。

 ハッとした表情を見せた工藤俊介。

 薫は顔をひきつらせた。

 
「何で男なのに男の物を見て悲鳴上げるの?」

 そういう顔して目を丸くする薫と視線を交えた工藤俊介の顔は恥かしさに真っ赤に染まっていた。


「あ… あ… ああ… こ… これはその… 余り見たことないもんだから… その… あの… ソレを… つい…」

 タイトスカートを脱いだ薫の股間にスキャンティーを破られブラブラする一物に視線を合わせまいとする工藤俊介は声を上ずらせた。


「あ? ああ… そっ… そっかぁ… ああ… うん… あっ! あああー!? あっ!」

 薫も工藤に合わせるように声を上ずらせ、ブラブラする一物を床に落としたタイトスカートで慌てて隠した。


 静まり返った個室…


「俊介… 今なら私のこと味見してもいいよ…… その… お礼っていうか… 私のこと食べてもいいよ…」

 薫はタイトスカートで前を覆いながら腰を少し屈めて恥かしそうに俊介に上目遣いをすると、ソファーに腰を下ろしながら囁いた。


「ゴクッ!」

 工藤は突然の薫の申し出に喉を鳴らしソファーに座る薫に近付いて個室の明かりを落とした。


「カオ…… かっぽっ…」

 薫の前を隠すタイトスカートを取り除いた工藤はソファーの背凭れを倒してベッドにすると、薫の両足を膝立てさせ抱きかかえるように薫のペニスを口に含んだ。

 
 薫のペニスを口に含んだ工藤は吸い付いて舌をペニスに絡みつけて味わうように回した。
 

「あん… あひぃ! あああああぅ! あああああーーーん! あんあんあん!!」

 暗闇の個室に激しい薫のヨガリ声が響き渡り狂おしく身悶えしてソファーベッドを軋ませた。



 薫は工藤からの激しい愛撫に久々にエレクトさせた肉棒から体内に溜まっていた肉汁を溢れさせた。

 首を仰け反らせ左右に振りながら腰をガクガクさせ、身体をクネクネさせるとブラに包まれたAカップの乳房がプルプルと大きく揺れた。

 工藤は荒い吐息を立て薫のペニスに貪り付き激しく身悶えする薫を両手がガッシリと抑えて放さなかった。

 肉棒化したペニスの先っぽに、裏側にと工藤のネットリとした舌が絡みつき、薫のエレクトした肉棒は工藤の舌に紫色に変色していった。

 薫の下半身を覆う兵藤に破られたパンティーストッキングに工藤の手が蜘蛛のように徘徊をし始めると、薫は太ももの両側からの官能に再び肉棒から愛液を溢れさせた。

 ゴクゴクと薫の愛液を喉に流し込む工藤は片手で自らを裸にすると、自らを包むパンティー1枚になった。

 女気の無い無地の白いパンティーを身につけている工藤は陰部から愛液を溢れさせその内側を濡らし始めた。

 伝線したパンティーストッキングに包まれた薫の両太ももに工藤の両手が蜘蛛のように徘徊し、同時に工藤の口はエレクトした薫の肉棒を痛いほどの吸引力で吸った。

 薫は喘ぎ悶えながら生まれて初めての他人からの愛撫(あじみ)に涙を流した。

 自分の手を滑らせるのとは雲泥に違う快感は薫の身体の奥の細胞の一つ一つを重苦しく官能させた。

 太ももを徘徊する工藤の蜘蛛(て)は太ももの外側と内側を無作為に歩き回り、軽く持ち上げた尻にまでその感触を官能に変えさせた。

 初めはくすぐったかったウエストはいつの間にか壮絶な官能で薫の身体を小刻みに震えさせ、工藤の舌は肉棒から玉袋へ移り玉を覆う皮を口の中に取り込むとチュパチュパと音を立ててしゃぶった。

 玉袋の皮に滑らされる工藤の舌は袋のシワの中にまでそのネットリ感を伝え、時折、零れそうになる玉袋の味が混ざった自らの唾液をすする工藤の口からの音が、薫の官能に追い討ちをかけた。

 持ち上げられた薫の両足は宙を舞い押し広げられた肛門に工藤の舌先が触れた瞬間、薫は声を裏返させ笑い声とも喘ぎ声とも付かない呻き声を奏でた。


「あひっ! あひっ! あひっ! あひっ! あひっ!」

 両足を宙でバタ付かせ身体を左右に振り声を震わせる薫の両手は床のクッションフロアーに爪が刺さった。


「あひっ! あひっ! あひっ! あひっ! あひっ!」

 そして宙で両足をバタつかせる薫をガッシリと押さえつける工藤はその舌先を薫の肛門に押し付け無作為に滑らせた。


「ぅあっ! あひっ! あああああーーーんっ!! ぅんっ!!」

 力の抜けた声と力の入った声を交互に時に重ねて奏でる薫の両足はダラリとその膝を曲げた。


 肛門を無作為に滑る工藤の押し付けられた舌から唾液が滑り落ち薫の肛門を包み、そのヌルヌルした唾液は肛門から溢れ後転姿勢の薫の尻の割目を伝わり裏玉へと滑り落ちると、工藤は慌ててその唾液を舐め取った。

 尻の割目を後ろ側から滑り上がる工藤の舌に薫は頭の中を真白にして放たれるべき声と吐息を体内へと引き戻した。

 スルッ! スルスルスルッ!

 突然、工藤は薫から兵藤に破られたパンティーを、そしてズタズタになったパンティーストッキングを剥ぎ取った。


「ぁあああああーんっ!! ぅぁあああんっ!」

 薫は脱がされる愛欲の被写体である我が身に喜びの叫びを奏でた。


「あん… ピッチャッ! あひぃ! ニュルゥッ! あああああぅ!」

 そして薫の両足を持ち上げ再び始まった薫の肉棒への工藤の愛の証しは、シャブリついたまま首を前後に忙しく振った。


 薫は肉棒を銜えられての前後に両足を持ち上げられたまま首を仰け反らせ動かなくなった。

 工藤は荒い吐息を立て無心になって首を前後に振った。


「ぅぐううぅぅ!」

 肉棒から押し寄せる快感は薫に唇を噛ませ、工藤はテンポよく首を振り続けた。


「はぐうぅ! ぅぐうう!」

 肉棒の奥から押し寄せる波に薫はその度に声にならない唸り声を喉の奥へと押し戻した。


 そして薫から切なく重苦しい呼びかけが工藤に発せられた。


「俊ちゃーーーん!! イクウゥー! イッちゃううぅぅー!! いっ! 痛ああぁーい!! 痛ああーーいっ!!」

 重圧的な苦しげな声が首を振る工藤に届くと工藤は突然、肉棒に歯を立てた。

 薫は焼けるような強い痛みに首を左右に振った。

 工藤は少し縮んだ肉棒を再び蘇らせるべく首を前後に振った。

 
「ぁんっ! ぁぁぁぁんっ! ぅっん!」

 再び薫から切ない声が辺りに漂った。


 工藤は薫を終焉へと近付けると歯を立てそして縮むと再び肉棒を刺激した。

 そしてそれを何度も繰り返されると、追い詰められたように薫はドンドン逃げ場を失い、最後は泣き出しそうな声を工藤に聞かせた。

 
「薫… はぁはぁはぁはぁ… お前可愛いな… はふはふはぁはぁはふはふはぁはぁ…」

 荒い吐息をしながら工藤の嬉しそうな声が薫に届いた。


「お願い!! もう虐めないでえぇ! 俊ちゃん! もう薫のこと虐めないでえぇ!」

 肉棒を銜えたまま話した工藤に薫は首を持ち上げて哀願した。


 工藤は薫の泣きそうな声を聞くと物凄い勢いで肉棒を銜えて首を前後させた。

 やがて薫は全身をプルプルと小刻みに震わせ尻をギュッ!と、閉めた。

 押し上げられた両足は硬直し両足の爪先はギュンッと内側に閉じられた。

 
「イクッ! イクイクイクイクウウゥー! イッちゃう!! お願い! お願い! イカせてえぇー! 俊! イカせてえぇ… お願いよ……」

 薫は肉棒を銜えて前後する工藤に悲痛な声を放った。


「あうっ! あああああーん!!! 痛い… ぁんっ! 痛い… ぅんっ! 痛い…」

、薫は体内に溜まっていた愛欲から生まれた我が子を吐き出すように工藤の口の中に撃ち放った。

 そして工藤もまた薫から放たれた苦味のあるドロドロした液体を口の中で舌を使って転がしながら喉に流しこんだ。

 ゼリーのようにプルプルした水分を失った薫の精液は咽るような濃厚な苦味を工藤の口の中に広げた。

 ゴクッゴクッと飲み辛そうにしながらも工藤は嫌がることなく薫の精液を喉に少しずつ流し込んだ。

 水分を失った薫の精液は薫の肉棒の中の管に圧力を掛け薫に射精の痛みを伴わせた。

 肉棒の付け根はその圧力でゴリゴリと管を強張らせた。

 薫はドクドクと精液が体内から押し出される度にオーガズムと痛みを交互に繰り返した。

 陰毛に覆われた肉棒の付け根に硬直した管が浮き上がっていた。

 工藤は肉棒から口の中に送り込まれるドロドロした固体のような精液に舌を絡ませ、それを潤滑油のように肉棒の裏側に滑らせた。


「あひっ! あひっ! あひっ! あひっ! あひっーー!」

 射精直後の肉棒は超敏感になりその気絶するような強い刺激は薫を失神直前へと追い詰めた。

 押し上げられ硬直した両足に突然の電気が走り薫の意思に関係なく両足はバタついた。

 工藤の舌は最大限に身悶えする薫を容赦なく追い詰めた。

 

 そして薫は失神した……



「おいっ! 薫! 起きろ! ペチペチペチ! いつまで寝てんだ! 次ぎ行くぞ! カポッ! チュパチュッポチュッパ…」

 工藤は失神して終焉した薫の頬を軽く叩いて目を覚まさせると、精液を出し切ってグッタリしたペニスを再び自らの口に銜えた。


「ちゅぱちゅぱちゅぼちゅぼ… ぁんっ! ぅあっ! ぁぁぁあんっ!」

 突然の工藤のフェラチオにペニスから強い官能が薫の脳裏を直撃し、薫に恥かしい声を奏でさせた。


 グッタリしていた薫は途端に全身を硬直させヨガリ声を連発させた。


「いいか! 薫! 僕の言うことをよく聞け! 僕はこれからお前の上に跨って騎乗位になる… そしてお前の肉棒を僕の中に取り込むから! お前は僕に入れられていると頭の中で念じるんだ… 僕はお前の中に入っていると念じる… そして僕はお前の上で動く… いいな!」

 工藤はエレクトした薫の肉棒を前にして虚ろな眼差しの薫に言い聞かせると薫に跨った。


「ズブリユウゥー! ヌプリッ! ヌプヌプヌプ! はうぅ!! ぅあっ! ァンッ! ぁんっ! ァァアアアアン! あああああんっ!」

 工藤は薫に跨ると愛液の滴る自らの割目の穴に薫の肉棒を挿入すると、狂おしいほどのヨガリ声を上げて腰をゆっくりと下げ始めた。

 工藤の柔らかい生肉の中に肉棒が入った瞬間、薫のヨガリ声は工藤から発したヨガリ声に重なった。

 

「薫! いいか! 自分が入れられていることを想像してえぇ! ぁんっ! 僕は薫に入れてることを想像するからあ!! ぁぁあんっ! いい! 解かったあぁ!」

 工藤は薫の肉棒を自らの体内に取り込むと下で喘ぎ声を上げる薫に言い放ち腰を上下させた。


 薫は工藤に肉棒を入れられているという想像に徹し、工藤は薫に肉棒を入れているという想像に徹し腰を上下させた。

 二人の身悶えとヨガリ声は狭い個室の中で重なりあい、工藤の身体の内側から溢れて流れ落ちる愛沖は下で肉棒を起てる薫にまで達した。

 薫と工藤の二人は延々と男と女を潜在意識の中で入れ替えてセックスを続けた。

 そして工藤はオーガズムに達し薫も少し遅れてエクスタシーに達した。

 工藤は男として薫は女としてソレゾレの終焉を迎えた。

 俊介に抱かれる薫は溜め込んでいた物を全て吐き出したように安堵の表情を浮かべてニッコリと微笑んだ。

 


【六話】



「最近、毎日来てるけど子供はどうしてんだ… また隣家に預けて来たのか。」

 席に座る薫を前にグラスを磨く工藤俊介。


「たまには早く帰れよ… それともまた兵藤と火遊びの練習でもすんのか?」

 カウンターで紅茶を飲む薫の顔をチラチラ見る工藤は落ち着いていた。


「私… 最近さ、菜々美(かのじょ)が帰って来なくてもいいかもって思い始めてるんだ… このまま女として生きて行ける気がしてる……」

 工藤に目を合わせずにティーカップを眺めながら吐き出すように言葉を放った薫。


「来年になったら性転換して本物になるんだ… それまでは兵藤さんとは繋がっていたいのよ。」

 ティーカップを目の前の工藤の顔に重ねて囁いた薫。
 

「本気なのか? 性転換するってことは性感帯を失うってことなんだぞ… 僕だって膣を塞がないのは性感帯を失うってことに抵抗があるからなんだ… 失ったら二度と手にいれられなくなるんだ…」

 薫の正面に来て説得するように話す工藤。


「正直言って解からないんだ~ 私… 自分でもどうしたいのか…」

 工藤の顔に重ねたティーカップをサッとよけて微笑する薫。


「性転換したら普通の女なんだ… この店には入れなくなる… ここは女人禁制だ…」

 目を合わせようとしない薫の前から横に移動してグラスを磨き始めた工藤。


「ねえ、見て見て♪ ホラ♪ お腹引っ込んだでしょ♪ お酒やめたらねー体重が五キロも落ちたんだよ~♪ これで少しは俊も私のこと抱きやすくなったでしょ♪ あはっ♪」

 突然、席を離れてカウンターの中にいる工藤に、ミニワンピース姿の自分を身体の向きを変えて見せた薫。


 微笑ながらも何処と無く寂しげな薫を目で追う工藤。


「ねぇ、今夜… 試しに私のこと抱いてみる? きゃは♪ 胸だってあと二ヶ月の辛抱… 本当はもういいらしいんだけど、念には念を入れてって感じかな♪」

 腰を後に引いて屈むように胸元を見せた薫は自分を見る工藤に視線を重ねた。


「やめとくよ… 兵藤(アイツ)と遊んでるお前見た後でお前のこと抱く気にはならねえよ♪ それよりスカートの丈、短くねえか? またパンスト破られるぞ♪ 少しは貞操観念持てよ! 女なんだからよ!」

 薫の誘いを呆気なく辞退した工藤は禁煙している薫に見せ付けるようにタバコに火を点けた。


 工藤は薫の膝上15センチ程のワンピースの裾を見詰めながらタバコを吸い始めた。

 薫は誘いに乗らない工藤に口元を固く閉じて、ムッとするとその足でトイレに入った。

 トイレの中でミニワンピースの裾を巻くりあげ膝までライトブラウンのパンストを降ろすとスキャンティーの中に生理用のナプキンを装着した。

 薫は兵藤に太ももや下半身を触られる度に愛液を溢れさせ恥かしい思いをしていたから、事前にナプキンでパンティーを濡らさない策を講じた。

 ただ、この頃になると兵藤も薫を完全に自分の女(モノ)という意識が強くイタズラも大胆になっていて、スキャンティーの中に手を入れることも珍しくなくなっていた。

 薫にすれば今まで貰った金品も200万円を越えていたから無碍に抵抗も出来なかったろうし、他人に身体を触られる快感に浸っていたこともあって、兵藤の行動は会うたびにエスカレートしていった。

 そんな中で兵藤もまた、薫を早く自分の物にしたくて会うたびにホテルへ誘うようになっていたが、薫は乳房が完全になってからと拒絶し続けながら小遣いを受け取っていた。

 
「何だか随分ギコチない歩き方だな、ナプキンか~♪ 薫~♪ ホラこれを使え♪ 濡れやすいお前のために僕が作っておいたよ♪ ホラよ!」

 カウンターの中の工藤から放り投げられた袋の中を見た薫は急に顔を真っ赤にして恥じらいを見せた。

 パンティーライナーを薫のペニスの先っぽに被せられるようにキャップ状にしたものだった。


「もおぅ! 俊介のエッチィ!!」

 薫は顔から火がでるほど恥かしかったのか、それを手に再びトイレに駆け込むと、工藤は恥らう薫を見てニヤニヤと口元を緩ませた。

 俊介の手作りの濡れ防止ライナーは測ったように薫のペニスの先っぽにピッタリとフィットしたが、俊介の自分のへの思いを知っている薫はお金のためとはいえ兵藤と遊ぶ自分が悪い事をしているように思えていた。

 
 そして徐々に店に客足が集まり出すと、カウンターの前に居た薫の肩を後から抱いた兵藤がカウンターの中に居る工藤に顔を見せた。


「今夜はVIP席を使うよ♪ 薫と二人… ワシが呼ぶまで誰も来なくていいからな♪ 飲み物はいつものを用意と、薫にはノンアルコールのシャンペンでも持って来てくれ♪ わっはははは♪」

 兵藤は工藤ではない別のスタッフに大きな声で注文すると声を高らかに笑った。

 薫は不安げな表情をカウンターの中にいる俊介に見せた。



 薫はそのまま兵藤と歩き始めると俊介は薫を目で追いかけた。

 そんな薫を抱き寄せてボックス席へ向かった兵藤はVIP席のある暗がりへと入って行った。


「いらっしゃいませ… 今夜はVIP席の貸切を頂きましてありがとうございます♪」

 バーの店長以下、数名のスタッフが来て御酒セットをテーブルに置くと深々と頭を下げた。

 その中には俊介の姿は無かった。


「あとはワシらでやるから♪ 呼ぶまで誰も来んでいいからな♪ わっはははは♪」

 兵藤は薫を横に座らせると大きな声で再び笑った。

 御機嫌な兵藤だった。

 
「さてさてさて~♪ 今夜は二人っきり♪ 誰も来んようにVIP席もワシラの貸切だ~♪ と、その前にこれは薫へのプレゼントだ♪」

 兵藤は席に付くと酒の用意をする薫に横から一枚の封筒を手渡した。

 エッ? 薫がそんな顔をすると、兵藤は中をあけて見ろとばかりに封筒をニヤニヤして指差した。

 薫はそんな兵藤に若干の恐怖を覚えながら封筒を開いて中身を出した。

 封筒の中身を見た薫の表情が強張った。


「お前の夢は性転換だったな♪ ワシが調べさせたところ最高の治療を受けるならそれくらい掛かるそうだ♪ それを受け取って男をワシ一人に絞りなさい♪ 悪いことは言わん… あのカウンターの中の若造がお前に何を吹き込んでいるか大体の見当はついておる… 仮にワシに捨てられたとしてもだ、お前の夢が叶った後ならお前にしても何も問題はなかろう♪ 違うか薫…」

 兵藤は全てを見切っていたように薫に700万円の小切手を差し出した。

 薫は兵藤の言葉と目の前の700万円の小切手に全身を小刻みに震わせた。


「ささ、酒を注いでおくれ♪ 今夜はお前がワシの彼女になった祝いの夜だからな~♪ まあ、胸が完全になるまではワシも辛抱するが、だが! それが限界じゃからな♪ いいな薫!」

 兵藤は声に強弱つけて大きな声に張りを持たせた。


「さぁ、ここへおいで♪ ささ、ここだよここ♪」

 兵藤は薫を立たせると自分の膝の上に座るように薫を即した。

 薫の見た兵藤の股間はズボンの下で硬くなっているのが解かった。


 そんな薫は蛇に睨まれた蛙のように兵藤の言葉に従って兵藤の膝の上に座ると兵藤に後から抱かれた。

 ミニワンピースの薄い生地の下、尻の当たりに兵藤の硬い肉棒の形を薫は感じて身体を強張らせた。


「これを… この肉棒をお前の中に入れる日が待ち遠しいわい♪ ここまで待ったんだ♪ もう少しくらいワシも待てるからな~♪ わっははは♪」

 兵藤はガッシリした身体で逃がす物かとばかりに薫を後から抱いて自分にピッタリと近づけた。

 
「ふぅぅうー いい匂いじゃ~♪ こんなに可愛くて美しいのに骨太というギャップが堪らん♪ ペロリ♪ チュッパ♪ ニュル♪ ゾッゾゾゾゾゾオー!」

 兵藤は薫を抱き寄せると薫の右耳下で小さく囁き、突然、薫の右耳の中を舐めると舌先を入れて来た。

 薫は背筋が凍りつくような嫌らしさを兵藤に感じた。


「私! 私、まだお返事してません! 兵藤さん! まだ… まだ、私!」

 薫は急に兵藤に恐怖を覚え、背筋を伸ばして全身と声を震わせた。


「おっ!? おおぉー♪ そおーじゃったあぁー♪ ワシとしたことが! すまん! と、いつものワシなら謝るところじゃが、今夜は違うぞ~♪ 薫はもうワシの物じゃ~♪ お前のことは興信所を使って全て調べさせたし、お前に小さな子供が居ることも承知しておる! ワシの厄介になれ~ そうすれば経済的にも支援してやれるし住むところも用意してやる♪ お前が希望すればOLとして普通に会社勤めもさせてやろう♪ こんな夢のような話しは他にはないじゃろ~♪ OLのようにスーツスカートで会社勤めして見たいと思わんかぁ~♪ 夢のような生活が待っているぞお~♪」

 兵藤は薫の夢も希望することもまるで心の中を見透かしたように何でも知っていた。

 そして薫の尻の下にある兵藤の肉棒は薫の尻にピクピクと小刻の震動を伝えた。

 薫は尻に当たる兵藤の肉棒の大きさを感じ取っていた。



「どうじゃ、薫… ワシの物になれ♪ ん? ぁんっ! ぅあっん… ペロリ… レロレロレロ… チュパッ…」

 兵藤は薫の耳元に囁きながら、薫り両足を少し開かせると右手を薫の右太ももに滑らせた。

 咄嗟に薫は恥じらいの声を発した。

 兵藤の手は恥らう薫の太ももの間にくすぐるように撫でながら入って来ると、右耳の中に再び舌を入れ中を舐めまわした。

 薫は太ももを閉じようとしたものの、後ろから薫を抱く兵藤の力に負け薫は兵藤の膝の上でパックリと両足を開いてしまった。

 パンティーストッキング越しに感じる甘美な官能は薫をトロケさせ、全身の力が抜けるように身体を兵藤に凭れさせた。

 
「ここが気持ちいいじゃろう~♪ スリスリスリスリ… ぁひいっ! ビクンッ! ぅあっん!」

 兵藤の手の平がパンティーストッキング越しにスキャンティーの中のペニスを摩擦すると、薫は全身をビク付かせ恥かしい声を奏でた。


「堪らん! 早くお前のモノを味わって見たいわい… お前ほどの女のモノならさぞ良い味だろう♪ スリスリスリスリ…」

 兵藤は声を震わせながら薫のペニスを擦り続けた。


「ぁんっ! そ! それはぁ! ビクンッ! ぅんっ! ぁんっ! ビクビクビクンッ! だめえぇ! ぁああんっ!」

 兵藤の手は薫のペニスをスキャンティー越しに五本の指で掴んで上下にゆっくりと扱いて来た。

 驚いた薫は恥じらいながら後の兵藤に首を回し鳴き声を上げた。

 後にいる兵藤は吐息を荒くして恥らう薫の右肩に舌を滑らせた。

 ペニスをスキャンティー越しに扱かれ肩を舐められた薫は鳴き声を奏でながら肌を滑る兵藤の舌に軽い身悶えをした。

 
「お… お願い… ビクンッ! です… 兵藤さん… ここでは… ビクンッ! ぁんっ! ここではそんなこと… ぁんっ! し、しないで… お願い… 」
  
 薫は後ろにいる兵頭に声を途切れさせながら必死に哀願した。


「ペロペロペロ… 薫、声を出すんじゃない… みんなに聞こえるぞぉ~♪ スリスリスリスリ…」

 兵藤は笑みを堪えるように声を押し殺して薫の首の付け根を舐め回しスキャンティーを手の平で擦り続けた。


 過去にないほどの兵藤の理不尽に逃げ出そうと思えば逃げ出せたかも知れないが、薫の心と身体はこの時点で完全に分離していた。

 心は兵藤の辱めから悲痛な叫びを唇に表す様に震わせながらも、身体は兵藤からの愛欲に熔けたナイロンのように張り付いていた。

 工藤俊介に作ってもらったパンティーライナーのペニスキャップは薫から溢れた愛液でいっぱいになっていた。

 
「そろそろ中身を見せて貰うとするか… ビリッ! ビリッ! ピチピチピチピチ… チリチリチリ… ビリッ!」

 兵藤の両手がスキャンティーを覆うライトブラウンのパンティーストッキングをゆっくりと破り始めると、薫は破られるストッキングの糸が太ももに食い込む感触に兵藤の膝の上で腰をガクガクさせ興奮した。

 兵藤は感極まってきた薫を察知したかのように口元をニヤニヤさせ両手で敢てゆっくりとパンティーストッキングを破り続けた。

 そして破ったパンティーストッキングの端っこを握り締めると、左に右に引っ張って薫の太ももにワザと糸を食い込ませた。

 
「はぁはぁはぁ… 紐タイプか… 好都合だわい♪ スッ! スッ! スゥーッ! パサッ!」

 薫は破らせれたパンティーストッキングの中、スキャンティーの紐を解かれたことを知らずに感応に浸っていた。


「ピンク色じゃないか! 使い込んどらん! 男の業が薄かったと見えるな薫…」

 紐を解かれ兵藤の目の前に露にされた薫のペニスは、ライナーのキャップが外れ使い込まれていない綺麗なピンク色が鮮やかさを放っていた。

 兵藤は薫のピンク色のペニスを見ると、喉をゴクリと鳴らし右手の親指と人差指で抓んで軽く上下に扱いた。

 その瞬間、薫は首を傾げ口元から唾液を滴らせると同時にペニスの先から透明な愛液を溢れさせた。

 兵藤はその透明な愛液を親指と中指で擦り取ると、指の腹と腹でヌルヌル感を楽しんで自らの口に指を入れ味わっていた。

 そして兵藤は愛液が止め処なく溢れる薫のペニスを親指と中指で丁寧に挟むと、薫の愛液を絡めるようにしてペニスの亀頭部分を優しく擦った。

 空ろな目をして首を傾げる薫は口元からダラダラと唾液を垂らし全身をガクンッガクンッと大きく揺らした。

 兵藤はグッタリする薫のペニスを指で擦る度に、薫の愛液の絡んだ指の匂いを嗅ぎ口に入れては味わい再びペニスに指を添えて擦った。

 右手でペニスを擦り左手の手の平で玉袋を優しく支えた兵藤もまた空ろな目をしていた。

 薫は言葉にならない厚みのある深い官能に全身を包まれ宇宙を彷徨っていた。

 そんな薫を後から抱き続ける兵藤は勃起することのない薫のペニスを右手で掴んで上下に扱き始めた。


「この子のモノを飲んでみたい…」

 兵藤は薫のペニスを扱くスピードを増すと、薫から溢れた愛液はペニスに万遍なく潤滑油のように行き渡った。


「この子は本物なのかも知れない… 本物ならエレクトせずに終るはず……」

 兵藤は薫のフニャフニャしたペニスをやりづらそうに忙しく動かした。

 薫のフニャフニャしたペニスは自らの愛液にニチャニチャと嫌らしい音をたてつづけた。


 そして数分後、薫は両足の付け根に力が入り、両足の爪先をギュッと閉じ、両手で兵藤のスボンを鷲掴みすると、発作を起こしたように全身を痙攣させ口から垂れる唾液の量を更に増やした。

 ニュルッ! ニュルニュルニュル!

 薫のペニスの先からゼリー状のヌルヌルした黄色がかった精液がチューブ歯磨きを絞ったように噴出して兵藤の手を飾ったかと思うと、今度は水で薄めたミルクのような精液が湧き水のように溢れ出て来た。

 兵藤は慌てて自らの手を飾ったゼリー状の精液を口に運ぶとムシャブリ付き、その間を繋ぐように左手で薫のペニスから湧き出る精液を受け止めた。

 右手と左手をまるでカニのように口に運んだ兵藤の口元は薫の精液に塗れ、兵藤はそれを舌で綺麗に舐め取った。

 
「この子は本物だったんだ… 女装しただけの変態ならこうはいかん… しかしマズイぞ!! この子に本気になりそうだ…… ワシともあろう者が……」

 兵藤はグッタリする薫を抱き直すと、薫の口元を自分のハンカチで綺麗にふき取って、膝の上から左側に座らせると、スキャンティーの紐を結び直し破れたパンティーストッキングの端っこ同士を結びつけ乱れたスカートを直してやった。

 席に座ったままグッタリして動かない薫を優しく席に横にして眠らせると、兵藤は薫が注いでくれたブランデーを一口、頬の中で転がしながら眠る薫の太ももを見詰めた。

 そしてタバコに火を点けようとしたものの、禁煙している薫に気遣ってそれを止めると、薫の胸元に小切手と札束を押し込んで席を離れた。


「君、VIP席は閉店まで借り切っていたからそのままにしてくれ。 席でカオちゃんが寝ているんでね、起さんにな♪」

 兵藤はカウンターで清算すると疲れきった表情で店を出て行った。


 工藤は兵藤の様子に異変を感じて慌てて薫の元へと足を急がせた。

 VIP席の辺りには薫が放ったであろう濃厚な精液の匂いが立ちこめ工藤は慌てて換気のスイッチを入れて薫に近付いた。


「くそっ! アイツ!!」
 
 薫のミニワンピースの裾を捲り上げた工藤は破られたパンティーストッキングを見て両手に拳を握った。

 薫のスキャンティーは薫が自ら結んだのとは違う結び目になっていたのを工藤は見逃さなかった。


「まさかアイツ! 薫のモノを……」

 工藤は薫のスキャンティーを紐解いて中を確認すると、愛液と精液でピンク色の亀頭がテカテカとテカっていたのを見て、直に味見されていないことを確信してホッと胸を撫で下ろした。

 薫のスキャンティーを下に戻した工藤はグッタリする薫を背負うと、店の端から裏方に回り薫がレンタルしている個室へと運んだ。


「はぁはぁはぁ… 全くコイツときたら危ないことばかりしやがる! 少しは俺の身にもなれってんだ!」

 工藤は薫をソファーに寝かせると蝶ネクタイを緩めて床にドッシリと直座りした。


 すると寝ているはずの薫が……


「ありがと… 俊…」

 ソファーに横になったままの薫はポツリと呟くように小さな声を放った。


「何だあー!? 起きてたのかよおー!?」
 
 工藤は薫を見て両腕を左右の床に押し付けて身体を支えた。


「今、起きたの… エヘヘヘへ♪」

 薫は身体をそのままに疲れきったように声を細めた。


「早くシャワー浴びて来いよ… アイツの匂いに鼻が咽るぜ!」

 工藤は怪訝そうに言い放った。


「うん…」
 
 薫はフラフラと立ち上がると、箪笥から下着を取り出してシャワーへと心もとない歩みを始めた。


「あ! 危ねえぇー!! 大丈夫かあ! 薫!!」

 フラついた薫を見た工藤は慌てて近寄ると薫を抱き締めた。


「薫……」

 立っているのもやっとの薫を支える工藤は黙ったまま、薫に自らの唇を重ねると薫の中に舌先を入れた。

 薫もまた工藤の舌先を拒むことなく自然に迎え入れた。

 数分間、工藤と薫は互いの舌を絡めあった。


「薫……」

 工藤は薫をその場に仰向けにすると、スカートの中に手を入れ薫の太ももに手を滑らせた。


「だめぇ… 汚れてるのぉ… シャワーするまで待ってぇ… 俊! お願い…」

 薫は目を潤ませて自分を求める工藤に哀願した。


 工藤はそんな薫から破れたパンティーストッキングとスキャンティーを剥ぎ取ると、愛液と精液で汚れた薫のペニスにムシャブリついた。

 薫は床の上の両手を震わせて工藤からの愛欲にゲンコツを握り身を悶えさせた。

 工藤の両手が薫の両足を膝起てさせると、工藤の愛欲に耐え切れずに薫は両足の太ももをプルプルと揺らせた。

 工藤の両手はその揺れる太ももを抱くように手を掛け何度も滑らせた。

 薫のヨガリ声が個室の中に響き工藤の口が恥かしい音を薫に聞かせた。

 腰をガクガクさせ全身をビク付かせる、薫は瞼を閉じて工藤からの愛欲に官能という闇の扉の中に身を投じた。

 ペニスから滑り移動した工藤の舌は薫の内モモを執拗に滑り回り、蜘蛛と化した工藤の両手は薫の身体の隅々をうごめきながら徘徊した。

 首をそして身体を仰け反らせ薫の口から甘美な熱い吐息が幾度も漏れては消えた。

 薫の身体を、横に斜めにうつ伏せにする工藤は、薫の肌の甘い香りに野花に夢中になる蝶のように羽を休めることなく動き回った。

 工藤という蝶は薫という花から蜜を奪い続けた。

 そして工藤は裸になると薫の顔の上に自らの恥かしい部分を晒した。

 薫は両手で工藤の腰を抱き寄せると、顔を近づけ舌先を工藤の割目の中に押し付け滑らせた。

「あひっ! あひっ! あひっ! あひっ! あひっー!」

 割目の中に走った激しい快感に工藤の甲高い声が部屋に響き渡った。

「ピッチャピッチャピチャ! ニュッチャ… ニェッチャ… ニュッチャ…」

 薫が舌を押し付ける度に工藤の割目から生暖かい汁が飛び散り異音を放ち、自らを支える工藤の両足は感電したように震えた。
 

 工藤の尻は薫の顔の上で小刻みに震えながら小さく前後した。


 そして工藤は身悶えしながら個室に恥かしい声を響かせ、薫もまた工藤の舌先に身悶えして鳴き声を奏でた。

 二人が奏でる喘ぎ声は個室の中の花瓶にさしてあるコスモスの花びらでさえも床に散らせた。

 その後徐々に薫の顔は工藤から滴った生暖かい透明な愛液に塗れて行った。

 その様相はどちらが男で女なのかわからい状態だった。

 激しいシックスナインは続けられた。

 
「はぁはぁはぁはぁ… 俊介… 私… 私… 俊介に…… ぅぐう! ぁんっ! ぁひぃ!」

 二人の互いの敏感な部分を舐めあう行為はエスカレートしていった。


 そして薫は自らの肉棒にムシャブリつく工藤の腰から一旦両手を離すと、二人の身体を横倒しにし工藤がムシャブリついた自らの肉棒を腰を使って引き抜くと、今度は工藤を下にして工藤の両足を抱きかかえた。

 両足を抱きかかえられ工藤の割目は大きく左右に広げられると、薫の舌先は押し広げられた工藤の割目に押し付けられ無作為にうごめき回った。


「あひっ! あひっ! あひっ! あひっ! あひっー!」

 工藤は薫の肩に掛けられた両足をバタ付かせて身体を左右にクネらせ薫の舌の動きに甲高いヨガリ声を上げ続けた。


 薫は休むことなく工藤の割目に舌を動かし続けた。


「薫! ダメエェ! ヤメ! ヤメルのよぉ! 僕! 男で居られなくなる! 薫! ヤメ! ヤメテエェー! お願いぃ!」

 工藤は割目を舐める薫に辞めるように声を詰まらせたが、薫は必死に工藤の割目を舐め続けた。


 そして、工藤がグッタリした頃、薫は工藤の割目からその舌を引き離し工藤の両足を両手で持ち上げた。


「ヌプッ! ヌプッ! ズブリウウウゥゥーー!!!」

 薫は聳えて鉄のように硬くなった肉棒を工藤の割目の奥へと勢い良く挿入した。


「あん… あひぃ! はぁ…あっ… はひぃ! あああああぅ!」

 工藤は首を一瞬持ち上げたが直ぐに床に下ろし両目を大きく見開くと腰を仰け反らせて声を上げた。


「ぱんっぱんっぱんっぱんっ! ぱんっぱんっぱんっぱんっ! ぬっちゃくっちゃ! ぬっちゃくっちゃ!」

 薫は正常位で工藤の中に肉棒を収めると容赦なく腰を前後させた。


「ヌッチャクッチャ! ヌッチャックッチャ! ヌッチャックッチャ! ヌッチャックッチャ!」

 薫が腰を振る度に工藤の割目から凄まじい生肉に押し付けられる生肉の音が辺りを包んだ。


 工藤は首を、身体を、仰け反らせ右に左に身悶えし両手に拳を握って唇を噛んで激しい官能に溶け込んだ。

 男と女がぎゃくになって愛し合い、知らぬ間に今度は元に戻って攻めと受身を担った。

 薫の両手は工藤の柔らかい尻肉に這わせられ滑り回り、薫の肉棒に攻められた泡立った工藤の内肉(あな)は、工藤と薫の二人の脳裏に得も言われぬ感度(しげき)をもたらした。

 工藤は声を上ずらせ全身を電気が走ったように痙攣させ、薫は何かに憑り憑かれたように工藤の内肉(あな)を攻め立てた。

 肉と肉とかぶつかる音と震動ははコスモスをさしている花瓶をひび割れさせた。

 薫の肉が工藤にぶつかる度にケタタマシイ量の愛液が工藤の割目から辺りに飛び散った。

 そして終焉を迎える頃には工藤は一度のセックスで数十回ものエクスタシーに達し白目を向いて気絶し、薫は有り得ないほど大量の精液を工藤の中に撃ち放った。

 その薫が工藤から離れようと縮みかけたペニスを引き抜いた瞬間、工藤の愛液と混ざり合って泡だった精液がドロドロと出て来て工藤の股間と床を生臭く染めた。


 薫は意識をもうろうとさせシャワーへと向った。

 

 


【七話】

 



 
「ママー! うわあぁ~ん! うちにはママが居ないって! お爺ちゃんとお婆ちゃんが… うちにはママもパパもいるよね! そうだよね! ママー!!」

 遊びに行ってた子供が隣家から一人で戻って来て突然、台所に立つ薫に泣きながら抱きついて来た。

 デニムのショートパンツにノースリーブ姿の薫は一瞬焦った表情をしたものの、直ぐに子供に視線を合わせるべく膝を床に付けて心配そうに我が子を見つめた。


「ママならここに居るでしょ♪ 泣かないのぉ♪ ホラ、ちゃんとオッパイもあるでしょ♪ ママはねえパパのこと大好きだって言って、パパの中に入った来たの… だからパパとママは合体ロボ見たいにに合体しちゃったのよぉ♪ だからもう泣かないのよぉ♪」

 薫は我が子の前に跪いて偶々ブラジャーを外していた乳房に子供を抱き寄せてあやした。


 服一枚距てた薫の乳房に子供は頬を寄せて甘えると安心したのか子供はそのまま眠った。

 薫はそんな我が子を優しく抱き寄せると子供部屋へ連れて行き布団に寝かせた。

 添い寝して子供の寝顔を見ている薫は本当の母親のように優しい顔をしていた。

 ところが台所で我が子を慰める薫の姿を見ていた一つの人間の目がカーテンの隙間にあったことを薫は知らなかった。

 そんな薫が子供部屋から居間へと移ると心臓が爆発するほどの驚愕が薫を襲った。

 居間のソファーに座る白髪交じりの隣家の御爺ちゃんがソコに居た。


「そうかぁ~~ それであの子は家にはママもパパも居るって言ってたのかぁ~ しかし、アンタも自分の苦労人だねぇ… 自分の身体を弄って女装してでも子供のためにとは… 最近でもそこまで子供を思う親は少なくなったと言うのに…… 立派だよ、薫さん!」

 白髪交じりの隣家の主はテーブルを挟んでソファーに座る薫を見詰めた。


 薫が子供を必死にアヤスのをカーテンの隙間から覗いていたのは隣家の主だった。

 隣家の主は薫の子供を仕事の間だけ預かってくれている親切な人だった。

 そんな人に薫は自らの豊胸と女装の理由を子供のためにと嘘を語り聞かせた。

 
「いや、このことは誰にも話さないよ! 安心しなさい♪ ワシらもあの子のお陰で随分と若返った気がしているからね♪ ワシと薫さんの約束、家内にも黙っておくからね♪」

 隣家の主はそういい残すと薫の家を後にした。

 ただ、隣家の主に見られてしまったことは薫にとって大きな痛手だった。

 その痛手は翌日から早速のようにやってきた。


 パソコンを習うのだと御婆ちゃんに嘘を付いて、女装子(おんな)として子供の面倒を見る薫を見るためか、隣家の主は家に来るようになった。

 当然、薫はその疎ましさから丁重に断ったものの、隣家の主は懐いている子供を盾にとり家に上がりこんできた。

 居間のソファーに子供と遊びながら座り、スカートを履いて掃除機をかける薫の後姿を目で追うのが度々、茶箪笥のガラスに映っているのを薫は見ていた。

 床に散らばったオモチャを片付けよう前屈すれば、隣家の主の視線は薫のスカートの中へと移動した。


「この人、私のスカートの中を覗いてる……」

 薫はソファーで寝入る子供のためにグッと堪えて掃除をし終えると台所の前に立った。

 するとソファーに居たはずの隣家の主が薫の横に移動してきた。


「ワシはねぇ、こう見えても大きい器は持っているつもり… 男が女になり女が男になる時代… アンタを見ていると無理して女になっているようには思えん、と言うより妙に色っぽい… 男のアンタより女のアンタの方がワシはいいと思う♪ これからも度々邪魔するが邪険にせんで欲しいのお… 隣り同志仲良く暮らしたもんじゃ~ 困ったことがあったら何でもワシに相談しなさい♪ 定年したとは言えまだまだ役所勤めをしていた頃のコネは健在じゃて♪ アンタが本物の女になりたければいくらでも力になってあげられる… 本物の女になりたいんじゃろ♪ 隠さんでもいい♪ ワシには解かるんじゃ… アンタは男に生まれるべき人では無かったんじゃ♪ こんなに美しい男は世の中には無用… 何でも相談しないさい…」

 隣家の主は左側からデニムの膝丈スカートに白い半袖ティシャツの薫の右肩に腕を伸ばすと、少しだけ引き寄せて薫のウナジの匂いを嗅ぎ左耳に囁いた。

 薫は隣家の主が自分に身体を要求していると感じた。


「すうぅーはあぁー! いい匂いじゃ♪ アンタの匂いを嗅いでいると老いた身体がみなぎるようじゃわい♪ スウゥー! キャッ!」

 薫の左耳の辺りからウナジの匂いを嗅いだ隣家の主は突然伸ばした手で薫の左太ももを撫でた。

 突然の主の行動に薫は思わず小さな悲鳴を上げた。


「キャァーか♪ 可愛いねおぅ♪ ワシがもう少し若くて下の竿を硬く出来るなら、この場でアンタの操を奪うことも出来るんじゃが、あいにくワシはもう起たん… 精々、アンタの肌を味わうくらいが関の山じゃじゃて♪」

 隣家の主は驚いて硬直する薫の様子をチラチラと覗いながら、スカートを巻くりあげるとその中に嫌らしい手を滑らせてきた。

 パンティーストッキング越しに滑る手は左の太ももを外側から尻の方へ移動し、更に前側へ移ると嫌らしく滑り回った。


「やめて… やめて下さい… こんなことする人じゃなかったはずです… お、お願いです、やめてぇ… 許してぇ…」

 薫は強張る身体で声を震わせ隣家の主からの辱めを拒絶した。

 

「今日はブラジャーをしているんだね♪ はぁはぁはぁ… ワシが来た時は外しておくといい♪ その方が味見しやすいからのぉ♪ はぁはぁはぁ…」

 隣家の主は辱めに身体を硬直させ声を震わせる薫の後から抱きつくと、両手を胸に這わせ回すように滑らせた。


「ぅぐ! い… いやああぁぁ!」
 
 両手で胸を滑る隣家の主の手に身の毛をよだらせた薫は後の居る隣家の主を突き飛ばした逃げた。


「おお! おっととと! こりゃ元気のいいお嬢さんじゃ♪ こう言う気の強い女子(おなご)に言うことを聞かせるのが、男としての最大の楽しみ♪ じゃがワシももう年での。無理矢理手篭めにする力は残っておらんからの♪ 少々卑劣で嫌いなんじゃが、言葉で言うことを聞かせることにするか…… 薫さんや、ワシを拒絶すればお前さんの得にはならん… 大人になってもらわんと子供も悲しい思いをすることになるんじゃよ♪ どうじゃな少しは効いたかの♪」

 逃げた薫は床に知りもち付いた隣家の主を正面で見入ると、隣家の主は小さな声で呟くように言い放った。

 薫はその卑劣な言葉に口元を固く閉じて悔しそうな表情を浮かべた。

 
「悪いことは言わん… こんな年寄りにでも今のアンタでは勝てないよ…… ワシの竿は役には起たんから安心して身体をワシに預けなさい… 可愛がってやるからのぉ♪ ふぉーっふぉふぉふぉふぉ♪」

 薫は隣家の主の言葉を聞くと、その場に崩れペッタンコ座りしてガックリと肩を落とした。

 
「そうそう♪ それでいい♪ 女は男に味見されるために生まれて来るんじゃ♪ アンタも例外じゃない…… ふぉーっふぉふぉふぉ♪」

 隣家の主はペッタンコ座りした薫の後ろに座ると、後から抱き付いて薫の胸に手を這わし回すように揉んだ。

 生まれて初めて乳房を揉んまれた瞬間、薫はその理不尽さと悔しさに大粒の涙を床に零した。

 隣家の主は涙を零す薫をチラチラ見ては口元をニヤニヤさせた。

 
「恥辱に涙を零す女か~ 堪らんのおぅ♪ スゥー! ヤ! イヤッ! 何するの! イヤ! ヤァー! イヤァー! ヤメテェ!」

 隣家の主はペッタンコ座りする薫の胸を後から揉みまわすと突然、薫を床に仰向けに倒し半袖ティシャツを薫の首まで捲り上げた。

 突然のことに薫は怯え声を絞って自分に重なろうとする隣家の主に抵抗した。


「声が大きい! シィ! 子供が目を覚ましたらなんていい訳するんじゃ! それに! 今のアンタは抵抗することも許されてはおらんのじゃぞ!」

 隣家の主は泣きそうな顔して抵抗する薫を再び脅迫すると、薫はグッタリと身体から力を抜いて首を床の上で傾けた。


「むふふふふ♪ それでいい♪ 子供の将来を守る母親の美しい姿じゃ♪ 女は時として我が子のために身を投げ出すこともある♪ 実に美しい♪」

 隣家の主は全身から力を抜いた薫のティシャツを首まで巻くりあげ直すと、両肩からスリップとブラジャーの肩紐を引き降ろした。

 薫は他人の目の前に乳房をさらされたショックから大粒の涙を再び頬に伝え耐えた。

 隣家の主は薫の流した涙を頬の上でペロリと舐めるとプルプル揺れる薫の乳房に両手を這わせ、押し付けるように回した。

 薫は悔しさと恥かしさと怒りが頂点に達し咽び泣きして身体を震わせた。


「こんな男に、味見させるために半年も苦労したんじゃない! こんな下衆のために女になったんじゃない! 畜生ー!」

 薫は自らの乳房を揉み回されることに官能することなく怒りを奮い立たせた。


 そしてその時だった! 薫の乳房に顔を埋めようとした隣家の主が歓喜して独り言を呟いた。


「菜々美もいいオッパイしてたがコイツも中々のものじゃわい♪」

 隣家の主はそう呟くと両手で薫の乳房を揉んだまま、真ん中に顔を生めてペロリと乳房の端っこ舐めた。


「くわぁっん!」
 
 薫は舐められた瞬間、首と上半身を仰け反らせ喉の奥に喘ぎ声を閉じ込めた。

 隣家の主は薫の悶えを見ると嬉しそうにニヤニヤして再び両手で乳房を揉見回すと、薫の乳房をしぼるに掴んで勃起した乳首に貪りついた。


「ぅあっ! あひっ! あひっー! あひぃーー!」

 薫の裏返したようヨガリ声が放たれ隣家の主を身体の上に乗せたまま、薫は全身をクネクネと身悶えさせた。

 乳首に貪りつく隣家の主の舌と唇に、薫は上半身を仰け反らせたままジリジリと身体を震わせ続けた。

 豊胸された乳房はムニュムニュと柔らかさをも薫自身にも伝え、プルプルと震える震動は微かに貪られる乳首の根元に伝えられた。

 そして隣家の主の手が薫のスカートを巻くりあげパンティーストッキング越しに嫌らしく下半身を滑り回ると、薫は仰け反ったまま両手で床を掻き毟った。

 パンティーストッキング越しに肌に伝わる心地よさは薫をスッポリと包み込んで、くすぐったさが息苦しさを与えた。

 
「ふぉっふぉふぉふぉ♪ 感度抜群じゃのぉ♪ じゃがまだまだじゃ♪ 女はストッキングを破られることに究極の恥辱を感じながらも至高の快感を得るもんじゃ♪ それえぇ! ビリッ! ビリ! ビリビリビリイィー!」

 隣家の主は薫の狂おしいほどの官能する姿を見て、両手をスカートの中に入れた瞬間、暴れ馬のように薫の下半身を覆うパンティーストッキングを稲妻のように鋭く破り始めた。

 薫は恥かしさに頬を紅く染め嫌だとばかりに両足をバタつかせ身体を右に左にクネらせた。

 額に汗を浮かべる隣家の主は、破られたパンティーストッングが太ももに絡み付いてボロボロになっている様を異様な眼差しで見詰めていた。


「女は身につけている衣類(モノ)を破られて肌を晒すと同時に秘められたエロチシズムをも晒してしまうのじゃ♪ これこそが、女装したいだけの変質者と本物との決定的な違いじゃ♪ ふぉーっふぉふぉふぉ♪」

 隣家の主はグッタリした薫の片足を抱きかかえると、破れらたパンティーストッキングが絡みつい太ももに頬をスリスリして満足げな表情を浮かべた。

 薫もまた隣家の主の行動に瞼を閉じてウットリするかのような表情を主に見せた。

 隣家の主はウットリした表情を見せる薫の片足を膝を曲げて持ち上げると、破れたパンティーストッキングの上から薫の太ももにムシャブリついた。

 薫はストッキングの上から来る鈍い肌への感触に瞼をクヒクと震わせ、直接肌を滑る唾液塗れの舌の感触に苦しそうな唸り声を上げた。

 隣家の主の吐息は次第に苦しそうなほど荒くなって、ポタリポタリと額からの汗を床に滴らせた。

 四つん這いにした薫の尻を、破れたパンティーストッキングの上から白いパンティーに指を食い来ませて、顔を真ん中に埋めて尻の割目の匂いを嗅ぐ隣家の主はパンティーの上に大きく開いた口で貪りついた。

 両手の平を床に付いて身体を支える薫は、パンティー越しに中に入り込む隣家の主の熱い吐息に肛門の表面を閉じたり開いたりした。

 そして隣家の主は我慢出来んとばかりに、薫から破れたパンティーストッキングと白いパンティーを一気に剥ぎ取ると、尻を左右に開きその僅かな割目に顔を埋め舌を肛門に押し付け舐め回した。

 片手で口を押さえて肛門からの凄まじい快感に必死に喘ぎ声を止め、隣家の主の舌の動きに全身を痙攣させた。

 押し広げられる薫の尻はプルプルと震え、少しでも奥を舐めたいとばかりに隣家の主の両との親指は香るの肛門を左右ら開き続けた。

 肛門を舐められ官能に浸った薫のペニスから止め処なく流れ落ちる透明な愛液は、床の上に到達するとそのトロミをゆっくりと広げた。

 
「ぅぐぐぐぐ!!」

 薫は片手で塞いだ口から喘ぎ声が漏れそうになるのを必死に押さえていた。

 隣家の主はそんな薫に容赦なく男の業をブツけるように薫の尻全体を舐め回し、薫の腰に回した両手を蜘蛛にかえ薫の肌を徘徊させた。

 片手では口から漏れそうになる自らの喘ぎ声を止められないと思った薫は、今度は両手で自分の口を強く覆った。

 隣家の主は薫の尻の味を堪能すると、再び仰向けにして薫に両膝を立たせた。

 途中まで剥ぎ取って放置した破れたパンティーストッキングと白いパンティーを全て薫から剥ぎ取り、立てさせた両膝の真ん中にある愛液を溢れ続けるか折るのペニスにムシャブリついた。

 薫は七転八倒するようにモガキ苦しみ、その刺激の強さと大きさを全身で隣家の主に伝えた。

 ペニスにムシャブリツク隣家の主の喉下から薫が溢れさせた愛液を飲む音が漂った。

 薫は三時間の愛撫の中で一時間以上もペニスにムシャブリつかれた後、縮んだペニスでウエットオーガズムに達し隣家の主の口の中に濃厚なゼリー状の精液を射ち放って終焉した。

 そんな隣家の主は射精して終焉した薫の敏感過ぎるほどに敏感になったペニスにムトャブリ付いて薫の苦しむさまを目で楽しんだ。

 そして薫が二度目の射精を主の口の中にした瞬間、隣家の主は仰向けの薫の乳房に口に含んだ精液をダラダラと零してニヤリと笑った。


「しかし菜々美の割目は臭かったなぁ……」

 隣家の主はボソっと呟くと一瞬ニヤっとして無表情になるとそのまま薫の家を出て行った。

 床に一人残された薫は全身の愛撫に意識もうろうとなってズタボロ状態のまま暫く動けず身体の回復を待った。

 

 隣家の主は意識もうろうとした薫を放置して出て行った。



【八話】



 薫は形ではどうであれ他人から求められる喜び、他人から愛欲される喜びを感じていた。

 辱められることに官能する我が身を振り返りながらも、女装クラブで自分を待つ兵藤や工藤、そして隣家の主からの愛撫が肌に残って消え無いまま日常生活を送り続けていた。

 スカートを捲り上げられる瞬間の恥かしさに困惑しながらも、相手の嫌らしく太ももを滑る手の心地よさに酔いしれ、鳴き声を聞かれたくないと思いつつも発してしまう鳴き声に感情を高ぶらせる。

 持ち上げられた尻肉に食い込む相手の指先に荒々しさを感じながら首筋を滑る舌先に両足の爪先が伸びる。

 最初はドキドキして身に着けていた下着にも慣れ当り前のように着衣する自分を鏡の中に追いかける。

 欲しくて付けた胸の乳房は包むブラジャーのカツプの中にその重みを残す。

 種類など何も解からなかった下半身を包むパンティーストッキングも、毎日の着用でその用途を認識した。

 短髪だったヘアーも気付けば耳を覆い隠すショートヘアーになってウナジを隠す。

 会社に身を置いていても周囲は薫の女化に気付く者もなく、OL達の足を見ていた薫の視線の先には清潔感漂う若手営業マンが窺えた。

 あんな男に抱かれて見たいと、願えば願うほど普段の会話もギコチなく、自ら口を噤んで仕事に没頭する。

 ズボンの下でパンティーストッキングに包まれたパンティーは容赦なく薫の性器を蒸らし続け、トイレに駆け込んだ時にのみの開放感に安堵の表情を浮かべる。

 そしてパソコンに向かいデスクワークに励む薫の指がピタリと止まる。

 下半身を包むパンティーストッキングが何気なく動いた拍子にスボンの内側に擦れた。

 ビクンッ! ドキドキドキドキ…

 

 
「薫さん、内の主人がパソコンを教えて頂いているとか… ありがとうございます~♪」

 白髪頭に和服姿の隣家の御婆ちゃんは、子供を預けに来た薫に丁重に礼を言うと、ニッコリと微笑んで子供を手招きした。

 背広姿の薫は子供の頭を撫でるとお辞儀をして玄関を出た。

 隣家の窓のカーテン越しに薫を味見した主が立っていた。

 薫は気付かぬフリして会社へと足を急がせた。

 隣家の主の奥さんは何も知らずに感謝の意を示したが、薫は後ろめたい気持ちになっていた。

 自宅から出てバス停に向かっていると携帯電話が鳴った。

 
「ああ、ワシじゃ。 今夜は翌日まで家内があの子の面倒を見てくれるそうじゃ。 ワシはアンタのところにパソコンを習いにいくでな♪ 宜しく。」

 薫を一度味見した隣家の主は、既に薫を自分のモノのような口調で電話を切った。

 薫の都合も聞かぬ一方的な言い回しだったが、薫は反論することも出来なかった。

 
 今夜、隣家の主が再び訪れる… そう思う薫は一日中憂鬱な気分で会社での勤務を終え帰宅した。


「薫さんや、あの子は家内が面倒を見てくれるでな♪ ワシはここでアンタと二人きりで朝を迎えることにするわい♪ 明日は土曜日、今夜はタップリとパソコンを教えてもらうとしようじゃないか~♪」

 薫が帰宅すると隣家の主は、待っていたとばかりに薫の家に出向いてきた。

 ソファーに座ってソワソワして背広を脱ぐ薫に後から声をかけた老人。


「着替えきますから… カーテンとか閉めておいて下さい。 あと玄関の鍵もお願いします…」

 薫は老人の理不尽さに呆れ、カバンを置くとそのまま衣裳部屋へと駆け込んだ。

 老人は薫が着替えている間、浮かれるように窓にカーテンを掛け玄関に鍵をかけるとニヤついて薫をソファーで待った。

 白無地の前開き半袖のワンピースに身を包んだ薫は帰宅途中で買物して来た物を冷蔵庫へと仕舞い始めた。

 口元をニヤニヤさせ薫に近付く老人が薫の一言に足を止めた。


「ちょっと待って下さい! 私だってすることあるんですから!」

 スリードア冷蔵庫の野菜室に買物袋の中身を入れなおす薫は不機嫌に老人を突き放した。


 老人は突然の薫の言葉に驚いてニヤニヤ顔を止め、後退りしながらソファーへと戻って行った。


「そんなとこに座ってないでお風呂にお湯をはるなり掃除するなりした下さいな! 夕飯の支度もあるんですから! もう!」

 老人は薫の豹変に圧倒されたように、薫に言われた通りリビングに掃除機をかけ始め、薫は見向きもせずに風呂に湯を溜めに移動した。


 薫は風呂に湯を入れながら洗濯機を回し、台所に立って夕食の用意に入った。


「三田さん! 今夜、お肉にしますけどいいですかぁー!」

 額に汗して着物姿で掃除機をセッセとかける老人は薫の声に振り向くと、うんうんと首を振って再び掃除機をかけ始めた。


「ああぁー! そんなに丁寧じゃなくていいですから! 毎日してるんでパッパとやってください!」

 掃除機をかける三田の傍に来て口調を強めた薫はスリッパの音を立てて風呂を見に移動した。

 掃除機をかける手を休めた三田は、薫の後姿を物欲しそうな顔して見詰め膝上10センチほどの薫のワンピースの裾に視線を移した。

 
「三田さーん! 掃除終ったら次ぎは寝室! 私の寝室のベッドを直しておいて下さーい。」

 掃除を終えた三田がソファーで一休みしようと座りかけた瞬間、薫は風呂場の方からベッド直しを頼んだ。

 三田は息つく暇も無く大きな溜息をすると、腰を数回ポンポンと両手で叩いて寝室へと足を急がせた。


「何でワシがこんなことせにゃならんのだ! 全く! ブツブツブツブツ…」

 三田はブツブツと独り言をいいながらもセッセとベッドを直し終え今度こそソファーで一休みするぞと寝室を後にした。


「三田さん! そんなとこに居ないで台所に来てホットプレート出して下さい! お肉にするって言ったでしょう~!」

 薫は忙しく動きまわってテーブルに食器と肉と野菜を運んだ。

 三田は薫の流れに合わせるように配置のピッチを上げた。


「よしっ♪ 完了~♪ 三田さんありがとーう♪」
 
 薫がダイニングテーブルの前に立っている三田に笑顔を見せると、三田もホッとした表情を薫に見せた。


「疲れちゃうんですよ… 一日中、胸をサラシで巻いてるでしょ~ だから家に帰ったら少しの間、ダラーンとしてから家事に入るんけど、なんかイライラしちゃってゴメンなさいね♪」

 椅子を手前に引いて座りながら微笑む薫に視線を釘付けにされた三田は唖然の表情を見せた。


「さてと~ お風呂になさいます? それともお食事になさいます?」

 グッタリ椅子に腰掛ける三田は元気な薫を見て一瞬、苦笑した。


「ワシは先に薫さんを食べたいんじゃがのおぅ~♪」

 オドオドしながら俯き加減で申し訳なさそうに口を開いた三田は下から目だけを薫に向けた。


「もおぅそればっかり♪ うふふふふ~♪ 解かりますよ♪ 三田さんの顔見てたらね~♪ でも私ね、今日は病院に来たんです。 そしたら胸は完全に落ち着いたって、それと私の禁煙と禁酒も今日、解禁されたんですよ♪ だから今日はタバコとお酒を飲みたい気分なんです♪ 私を… 私を食べるのはその後でいいですよね~♪ 朝まで時間はタップリあるんですから♪」

 薫はタバコと酒の解禁を嬉しそうに三田に伝えると、三田は薫の流れに飲まれるように作り笑顔して頷いた。


 薫と隣家の主である三田の二人だけの宴会が始まった。


 久々に飲むビールに薫は意気揚々と満面の笑みを見せ、三田もまたその嬉しさに引き込まれるように祝杯をあげつづけた。

 普段、カロリー制限されている三田もまた、薫の顔をみながら割り箸の動きを機敏にさせた。

 飲んで食べたてタバコを吸って薫は御満悦だった。

 ダイニングの換気扇は蒸気と肉の焼ける匂いとタバコの煙を勢い良く外に排出しつづけた。

 宴を始めて一時間が過ぎた頃、突然薫が切り出した。


「三田さん、菜々美も味見したんですか~ どうでした~♪ エヘッ♪」

 薫から発した言葉に三田は一瞬楽しげな顔を強張らせてゴクリと喉を鳴らした。


「三田さん♪ 私ねぇ~ 三田さんには正直に言いますけど~ 菜々美には帰ってきてもらわなくてもいいと思ってるんですよ~ だってぇ、家の中に女は二人もいらないでしょう~? それにぃ~ 私、来年になったら性転換して本物になっちゃうんですかに~♪ あっひゃひゃひゃ~♪」

 薫は語尾を伸ばした酔い口調で顔色を変えた三田にニコニコして身体を揺らせた。


「こないだ、三田さんが私を味見し終えた時の言葉… 頭の中に残ってるんです~~ いいんです♪ 三田さんが菜々美を何処かへやったのならそれはそれで~ 多分、三田さんは私にしたように菜々美にことも味見したんでしょう~~♪ 菜々美の割目も臭かったってぇ~~♪ キャハハハ~♪」

 薫は酔ったフリして三田に酔い口調で語りそして眠そうな目で口を動かした。

 ケラケラして笑う薫に三田は一瞬強張らせたが直ぐに顔を元に戻した。

 薫は三田の変化を見逃さなかった。

 三田は薫に自らの変化を悟られたと思った。


「そっかぁ… ヒックッ! そうか~ ワシはそんなことを口にしたのか~ ヒックッ! そうじゃ、ワシは確かに菜々美ちゃんを味見したよ… したがこの身体じゃからのおぅ~ 男としての機能が終っておるからのぉ~ 味わっただけじゃ… それは薫がワシを見たとおりじゃ… 薫には悪いことをした思っておるがのおぅ… 一度だけじゃ… 後にも先にも一度きりの約束で菜々美ちゃんの身体を味見させてもらったんじゃ… 引越してもう居ないが、裏の吉永さんの奥さんと菜々美ちゃんが抱き合っているのを見てしまったんじゃ…… 薫が会社へ出かけ暫くすると毎日のように吉永さんの奥さんが尋ねて来ては数時間、入り浸っていたのは薫も知らんじゃろ… 菜々美ちゃんと吉永の奥さんとはレズだったようじゃのおぅ… 夏の暑い日の午前十時ごろじゃったか、ワシがこの家の周りの雑草取りをしてやろうと来た時、家の中から女性二人の妖しい声が聞こえ、ワシはなんじゃろうと悪いとは思いながら中を…… 菜々美ちゃんと吉永さんの奥さんが股をすり合わせて裸でヨガって居たんじゃ… その時、偶然にも菜々美ちゃんとワシの目が合ってしまってのおぅ… すると、その日のうちに婆さんが買物に出かけると菜々美ちゃんが家に来て、ワシに自分を抱けと言う… ワシは口止めだなぁと思って断ったんじゃ… じゃが、老いたとはいえワシも男… 熟した女性がスカートを捲くり上げ中を見せたら、ワシは頭に血が上って菜々美ちゃんの身体に貪りついて味見していたんじゃ… そして菜々美ちゃんはエクスタシーに達した。 それきり一度も菜々美ちゃんとは何もなかったが、裏の吉永の奥さんは度々、菜々美ちゃんを味見しに来ていたようじゃな…」

 三田は薫からの問いに、隠す様子もなく淡々と話し続けた。

 薫は菜々美と裏の奥さんの仲を知らされると息を押し殺して三田の口元に見入った。


「本当に菜々美とは男女の関係は……」

 薫は念を押すように三田にゆっくりした口調で聞き返した。

 三田は深く頷くと、両手をテーブルの上に乗せて薫に頭を下げた。

 
「じゃから菜々美ちゃんが失踪した原因がワシにあるんじゃないかと……」

 三田は顔を上げると申し訳なさそうな様相を薫に見せた。


「いや… むしろ原因があるとしたら吉永の奥さんじゃないだろうか…… 私はそう思うの…… 三田さんが菜々美を味見したのは仕方ないよ… むしろ味見されたことで彼女は一定の安堵感を得たはずだよ、三田さんに罪はないよ…」

 両手の肘をテーブルに置いて顔の前で両手を丸く重ねる薫は大きな溜息を付いた。


「薫… いや、薫ちゃん、今夜は帰るよ、なんか申し訳ない……」

 三田は自らした告白にガックリと肩を落として席を立とうとした。

 そんな三田を引きとめた薫はもっと飲もう! と、三田に酒を注ぐと自らも勢い良く酒を飲んだ。


「三田さんは私みたいな女装子(おんな)にも興味があったの?」

 ウイスキーをロックで一口飲んだ薫は首を傾げて微笑しながら、漬物をポリペリ食べる三田に聞いた。

 見たは薫の可愛らしく妖しげな表情にドキッとした。


「薫ちゃんが初めてだよ… 食べたのはね♪ 勿論、男… いや、体液を飲んだのも薫ちゃんのが始めてじゃよ♪ 元々、興味はあったからね~ 実は前々から薫ちゃんが女装すれば似合うのになぁと思ってはいたんじゃ♪ だから薫ちゃんの女装(すがた)を見た時は死ぬかと思うほど、ドギトキしたよ♪ ふぉーっふぉふぉふぉ♪ いやぁー照れ臭いのおぅ♪」

 三田はいつもの隣家の優しい顔をしていた。

 薫はホッとした。

 
「三田さん、お風呂どうする? 一緒に入ろうかぁー♪ キャハハ♪」

 酔いの回った薫はフラフラして立ち上がるとニッコリ笑顔を見せた顔に掛かった髪を横へずらした。

 
 三田はダイニングの席を立つと、軽い千鳥足で居間へ来てソファーにトップリと座った。

 そんな三田に近寄った薫はそんなトコで寝ちゃだめよ! と、三田の手を引いて寝室へと移動した。

 三田はベッドに腰を下ろすと、すかさず薫をベッドに押し倒した。

 薫は抵抗せずに瞼を閉じると全身から力を抜いて三田に身体を預けた。

 三田は薫のオデコに軽いキスをすると、薫のワンピースの前ボタンを落ち着いて一つずつ丁寧に外して行った。

 レースの黒いスリップが表れると三田はその内側でプルプル揺れる薫の乳房に喉をゴクリと鳴らした。

 丁寧に優しくワンピースを脱がされた薫は首を傾け、閉じた瞼の外側で自らを味わうべく三田の姿を追った。

 スリップの肩紐が一つ、また一つと外されると、寝室の空気が薫の乳房に低い温度を伝えた。


「薫ちゃん… 綺麗だよ…」

 三田は心の底から薫が可愛いと思っていた。

 三田の左手が薫の右乳房に這わせられると同時に右手は薫の右太ももに優しく滑った。

 薫は回される右乳房とストッキング越しに撫でられる左の太ももに大きく深い吐息を立てた。

 乳房を丁寧に回す三田の手が時折、薫の乳首に当たれば薫はビクンッと全身をビクつかせ、その反応に三田は女が官能に浸っていく手ごたえを感じていた。

 左手で乳房をそして右手で太ももを触手する三田の唇から人に出たザラ付いた舌は香るの左耳の中に押し付けられた。

 身体をビクつかせる薫は次第に乳首を勃起させパンティーの内側をヌルヌルした粘液で塗れさせた。

 三田の手は女を官能させる蜘蛛に動きを変え、くすぐる様にパンティーストッキングに包まれたか薫の下半身を自由に徘徊した。

 薫はその蜘蛛の動きにパンティーに包まれた尻を、そして三田に揉み回されていない方の乳房をプリンプリンと揺らした。

 チュパッ… チュウゥ! チュパッ! 三田の口が薫の乳首に吸い付くと、薫は大きくビクンッと全身をビクつかせて首を後に仰け反らせた。

 三田の口の中で勃起した乳首はコリコリという感覚を根元に伝え、根元から薫の脳へと伝達させた。

 そして三田の手が薫の乳房をムニュゥーっと掴んで勃起した乳首に再び吸いついた瞬間、薫は濃厚な快感に全身をクネクネさせ大きな仰け反りを三田に見せた。

 薫の頭の中は真白になっていた。

 右から左、そして左から右の乳房へと三田の唇は忙しく動き回り、三田は薫の上昇する体温を両手で確認していた。

 三田に外されたスリップの肩紐とレースの胸元は女の喜びに浸る薫の身体の揺れに踊るように動いていた。

 薫の下半身を覆っていた黒いスリップのレースの裾が捲り上げられ、部屋の明かりに反射するライトブラウンのパンティーストッキングは薫の太ももを艶かしく三田に伝え、三田はその艶かしい太ももに頬を摺り寄せ時折唇を付けて薫の肌の香りを確認していた。

 太ももに抱き付いて頬をスリスリする三田の左手は薫の右の尻を何度も滑り、腰から乳房と蜘蛛は往復を繰り返した。

 滑らかなストッキングの肌触りを確認するように三田は手と顔で薫の肌を確かめていた。

 身体をうつ伏せにさせ、左足を伸ばし右足を折り曲げさせた三田は目の前にある白いパンティーに包まれた薫の尻の割目の間に何度も左手の中指を滑らせ、右の手の平を尻側から薫のペニスの側へと挿しいれた。

 首を仰け反らせる薫は、尻の割目からの心地よさとパンティー1枚を距ててペニスを触る三田の手の平に肩をジリジリと震わせた。

 薫の下半身を執拗にゆっくりしたスピードで愛欲する三田は、パンティーストッキング越しの触手が女を蕩けさせることを熟知していた。

 肌に直接触れるよりもナイロン一枚距てたほうが何倍も官能することを知っていた。

 
「ワシは風呂に入った後よりも、はぁはぁはぁ… 本物の味と匂いを楽しみたいんじゃ… はぁはぁはぁ…」

 三田は小声で呟くと薫の白いパンティーに唇を寄せ尻の谷間の匂いを嗅ぎながら、口呼吸でパンティーの中の暖められた空気を楽しんだ。


「破いてぇ… お願い… 破いてえぇ!」

 官能に浸る薫は口元からヨダレを垂れ流しながら、無意識にパンティーストッキングを破られたいと三田に哀願した。

 薫の切なげな震える声を聞いた三田は両手を薫の尻の真下の太ももへと這わせた。

 プリプリと弾力のある尻下の太ももは、内モモに至るまでパンティーストッキングに包まれることでその弾力を一層高めていた。

 早く破って欲しいと犬の伏せ上体になった薫は両膝を立て尻を突き出した。

 すると三田は尻を突き出した薫を敢てうつ伏せに戻し、両足を開かせ自らの膝でストッパーに見立てた。

 そして突然、寝室に痛々しい肌の音が響いた。


「バシイィーンッ! イヒイィー! バッシイイィーン! イヒイィー! バッシイィーンッ! 痛ーいぃ! バッシイィーンッ! 痛あぁーいぃ!」

 突然、三田はパンティーストッキングに包まれた薫のプリプリした尻下の太もも、そして内モモを手の平で打ちつけた。

 突然の激しい痛みに薫は両手を前に首を上下させ痛みへの声を上げた。

 三田は片手から両手でプリプリした尻下の太ももと内モモを容赦なく打ち付けた。

 薫はその痛みから開かせられた両足を閉じようとしたが、三田の両膝がそれを阻止していた。

 平手打ちされる度に薫は痛みを絶叫に変え泣きそうな声を震わせたが、三田は薫に構わずに両手で打ちつけ続けた。

 そして薫がその痛みに耐えかねて上半身を起き上がらせた瞬間、三田の両手は蜘蛛と化して打ち付けられた赤味を帯びた肌の上を無作為に徘徊した。

 薫はその蜘蛛の動きに起き上がらせた上半身をそのままにし、官能に蕩けた女の鳴き声を奏でた。

 二匹の蜘蛛は打たれて敏感になったプリプリした太ももを、そして内モモを無作為に歩き回った。

 上半身を立てたまま口元からヨダレを垂らした薫は、ジリジリとした痛みの中から湧いてくる快感に呼吸すらも忘れてしまうほど官能していた。

 そして三田の操る蜘蛛がスーッと姿を消すと、上半身を起こしたままの薫を三田は丁寧にうつ伏せにさせると、薫に両膝を付かせ尻を突き出させた。

 両足を広げられ三田の両膝がストッパーを果たすと、今度は薫の内モモにのみ平手打ちは集中した。

 キリキリと身を切るような鋭い痛みが打たれる内モモから薫の脳に伝達された。

 優しく丁寧に舐められ触手されるだけだった女の内モモは、激しい痛みに晒される極限状態だった。

 痛みに涙を滲ませる薫はベッドに右頬を押し付け、両肘を曲げた手を震わせてシーツを握り締めた。

 パンティーストッキングに包まれた内モモが赤味を帯びた時、突然二匹の蜘蛛が姿を現し、薫の敏感になった内モモを徘徊した。

 薫の唸り声にも似た鳴き声が三田の耳に届いた瞬間、三田はニヤリと口元を緩め、操る二匹の蜘蛛の動きを急がせた。

 突き出した尻をジリジリと震わせパンテイーの内側をグッショリと濡らした薫の胸に手を挿しいれ、ベッドに押し付けられた乳首を三田の指がギュッ! と、強めに抓むと薫は声を裏返させ首を仰け反らせ両手で上半身を持ち上げた。

 四つん這いになった薫は自らの尻の上に跨り、裸になって乗っかるように背後を覆った三田に両乳首を強く抓まれヨダレを垂らして絶叫した。

 最大に勃起した乳首をコリコリと抓んで弄る三田の指に薫は自らの上半身を支える腕を激しく痙攣させた。

 三田は薫の乳首を弄りながら、黒いスリップから露出しているか薫の背中に舌を滑らせ唇を付けて味わった。

 二つの乳首と背中に感じる得もいわれぬ快感は薫に上半身を支える力の全てを奪った。

 薫の頬が再びベッドに密着した瞬間、薫は自らが下に伸ばした両手でパンティーストッキングと白いパンティーを勢い良く膝まで下ろした。

 その光景を目の当たりにした三田は力が漲ったように見る見る間に顔を豹変させた。

 薫の尻にゴツゴツと当たる肉の塊はヌルヌルした液体を潤滑油にしてツルツルと薫の肛門の上に押し付けられた。

 三田はその自らの回復に両目を見開き、驚愕し全身を震撼させた。

 久々に復活した肉棒は聳え立ち内側からオビタダシイ量の体液を滴らせていた。

 パンッ! パンッ! と、三田の両手が薫の両尻の肉肌を叩いて抱えられた瞬間、薫は肛門にゴツゴツと当たる三田の肉棒に押し付けるように尻を上下させ動かした。

 ぬおおおおおおおー!!!

 ズブリュゥゥゥー!

 ヌプヌプヌプヌプ!

 ベッドに頬を押し付ける薫の両目が大きく見開かれ、両手がシーツを鷲掴みした。

 三田の硬い肉棒は薫の肛門の中へヌプヌプと音を立て挿入されると、薫は口を開け腹の力を抜いて口を開いて呼吸を整えた。

 パンパンパンッと自らの尻肌を三田の肉肌が何度も打ち付ける中、薫は激しい違和感と壮絶な便意に首をクルクルと左右に回した。

 叫びたくても声も出ず、息することすらやっとの薫はその苦しさから逃れられずに苦しみの中に沈められた。

 ガッシリと自分の尻肉を抑えていた、三田の両手が薫に爪を立てた。

 食い込んだ三田の両手はギリギリと薫の尻肉に突き刺さった。


「薫! 腹の力を拭くんじゃ! 肛門に力を入れるでない! そうそうじゃ! それでいい!」

 我が身の下で苦しむ薫に挿入し前後する三田が激を飛ばした。

 薫が三田の指示通りにすると三田は徐々に薫に立てた爪を元に戻し優しく尻を撫でまわした。

 プリプリと揺れる薫の尻肌をまるで孫の頬を撫でるように手を滑らせる三田は腰を振りながら微かに穏やかな笑みを浮かべていた。

 
 肉棒を受け入れている側の薫はと言えば、直接的な快感といえば肛門の入り口に滑る肉棒の感触だけだったが、女として男を受け入れているという女にしか解からない喜びに浸っていた。

 そけはゲイとも同性愛者とも違う物だった。

 そして時間が経つにつれ三田の動きが徐々に早くなり薫の尻を抱く手にも力が込められた。

 三田がオーガズムに達する目前であることを薫は確信した。

 
「お願い… 中に… 中に出さないでえぇ… ぅぐう! お願い……」

 体内に重圧を感じながらも薫は自らの中を前後する三田に哀願した。

 三田は薫の哀願に答えるように、腰を振りながら鈍い返事をして薫を安心させた。

 
 数分後


 白いドロドロした熱い精液が仰向けの薫の乳房の真ん中に当たって、その弾みでピチャピチャと薫の顔に飛んだ。

 薫は重たいものを肩から降ろしたように安堵の表情を見せ、自らの肉棒を握り締め膝立ちする三田を見詰めた。

 そんな三田の肉棒からは白い精液がポタポタと薫の腹に流れ落ち、久々の勃起で疲れたのか肩で荒い吐息をして精液のかかった薫を三田は見ていた。

 薫の処女はこうして隣家の主である三田に捧げられた。


 薫は他人(おとこ)の精液を顔に受け顔を真っ赤にして恥じらいを見せた。




【九話】


 三田は実に十年ぶりにペニスが勃起したと風呂から出た薫に興奮して鼻息を荒くし、薫はと言えば処女を捧げた初夜を終えた女のように、淑やかに三田の話に聞き入っていた。

 白いパンティーの上に白いスリップを着流しただけの薫は、ソファーで楽しげに語る三田を前に床に斜め座りして頷いていた。

 男の自信を取り戻したのか、三田は年甲斐も無く両足をドンと開いて缶ビールを喉に流し込み、物静かに自分を見入る薫の頭に手を置いてナデナデした。


「薫! お前のお陰じゃ♪ それと、処女だったんじゃろ… すまんことをした… だが、嬉しいぞ♪ お前の始めての男がワシじゃったってのは♪」

 三田は床に斜め座りする薫を抱え起たせると、隣りに座らせて薫の右肩に腕を回して引き寄せた。

 薫は三田の胸に左側から頬ほ寄せた。

 三田のコンドームはあるのかとの問いに薫は無言のまま軽く頷き、クリームのような物は無いかとの問いに小さく頷いた。

 そんな薫の手を引いて三田は寝室へと薫を連れ立った。

 寝室のベッドの引出しからコンドームとジェルとタオルを取り出した薫がベッドの上に斜め座りすると、三田は無言のまま部屋の灯りを小玉にして薫を優しく仰向けに倒した。

 三田の唇が薫の首に触れると薫は両目を閉じて三田の愛撫に身体を小刻みに震わせたが、三田は薫の乳房へは行かず、そのまま暫くして下半身へと唇を移動させた。

 スリップの裾を捲り上げられ剥ぎ取られたパンティーの下、愛液を溢れさせ始めた薫のペニスを黙って口に銜えた三田は薫の淑やかさを打ち消した。

 ペニスを貪られた薫はベッドの上に両腕を投げ出し首を左右に振って狂おしい声を奏で続けた。

 三田の舌に絡まれ突き放される薫のペニスは少しずつ大きくなって、薫の脳裏を恥かしさでいっぱいにした。

 そして自らが銜えている薫のペニスが口の中で大きくなるのを感じた三田は、嬉しそうに鼻で笑うと貪り吸う口に強弱をつけて薫の身悶えを楽しんだ。

 乳房をプルプルと左右に震わせペニスを肉棒化させた薫の切なげな表情に三田もまた、ペニスを肉棒化させ薫がエクスタシーに達するのを待った。

 更に薫の肉棒を銜えた三田は口を窄ませ舌を肉棒に絡めながら首を前後に動かし始めた。

 両手を投げ出し乳首をピンと勃起させる薫はベッドの上で両足でブリッジするかのように全身を硬直させた。

 三田は額に汗を浮き立たせ首を振り続けた。

 静まり返った寝室の中に薫の肉棒を貪る三田の口の音だけが漂った。

 そして薫の下半身ブリッジが一際大きくなった瞬間、薫は喉の奥に鈍い呻き声のようなものを溜めた時、肉棒を銜える三田の口中にオビタダシイ量の水分を失った精液が撃ち放たれた。

 精液を出した瞬間、それを受け止める三田はゴクゴクと喉を鳴らして薫の恥かしい精液を喉に流し込んでいった。

 ベッドのシーツを鷲掴みする薫の手が俄かに緊張感を緩めると、三田は精液を出しきって敏感になった薫のペニスを再びムシャブリはじめた。

 絶叫して身悶えと仰け反りを繰り返す薫は全身を痙攣させ、無意識に三田から逃げようとベッドをギシギシと大きく揺らせた。

 本物(おんな)とは違う薫の身体の構造は、精液を出し切ったことでペニスの感度を数十倍に押し上げた。

 三田は薫のモガキを嬉しそうに見詰めながら両手でガッシリと押さえ銜える薫のペニスに舌を絡め続けた。

 
「もおぅ! もぉ! もぅやめてえぇぇー! お、お願いよおぅー! もぅ許してえぇぇ!」

 薫の泣き叫びにも似た声が部屋の隅々に放たれた。

 頭から足の爪先までも激痛にも似た快感が薫を追い詰めた時、薫はペニスを銜えられたまま三田の前で失神した。

 そして薫が失神から覚めた時、薫は正常位で後転姿勢にさせられ、体内に硬いゴツゴツした肉棒が入っていることに気づいた。

 三田の額から薫の乳房にポタポタと大粒の汗が滴り落ちていた。

 両肩で薫の両足を担ぎ自らの肉棒を薫に挿入している三田は、吐息を荒くし時折首を仰け反らせて顔をしかめた。

「はぁはぁはぁはぁ…」

 三田の息遣いがオーガズムにたっする直前であることを薫にわからせた。


「タップリ出してぇ! いっぱい薫の中に出してえぇ! ぁぅぐうっ!!」

 薫は自分の目の前で腰を振る三田に目を潤ませると、肛門に力を入れ三田の肉棒をギュッと締め付けた。

「あぅ! 薫! うぐぅ!! はうっ! イクッ!」
 
 三田は苦しそうな表情と同時に締め付けられた肉棒への負担から荒い吐息を濁らせた。

 薫の肛門の締め付けに三田は我慢出来んとばかりにグイッと肉棒を薫の奥へと押し付けさせた。

 三田は肉棒を薫の奥へ挿入したまま身体を硬直させ動かなくなった。

 肛門の入り口に感じる三田の肉棒はドクドクと激しい脈拍を香るに伝えていた。

 そして体内に溜め込んでいた何かを吐き出した後のように三田の表情は次第に和らいで行った。

 
「いっぱい… いっぱい出させてもらったよ… 薫!」

 表情を和らげた三田は薫にニッコリと微笑むと肉棒を薫から引き抜こうとした。


「いやぁ! 抜かないでぇ! このまま… このまま… お願い…」

 薫は肉棒を抜こうとした三田に哀願して唇を震わせた。


「薫は可愛いのおぅ♪ お前は性転換するべきじゃ…」

 三田はニコニコして自分を見詰める薫のオデコに小さなキスをした。


 薫はこの夜、三田に抱かれるようにベッドの中で朝を迎えたが、薫と三田の男女の関係は週二回のペースで続けられた。

 薫は三田のテクニックでドンドン開花していきアナルセックスでイケる身体になっていったが、気掛かりなのは、貰っていて返していない兵藤からの700万の小切手のことだった。

 元々、貰うつもりの無い大金だったが、隣家の主である三田とのことで女装クラブから足が遠のいていたことが原因だった。

 携帯を見れば兵藤からの会いたいというメッセージが山のように入っていて、それを越す勢いで工藤俊介からと竹崎からのメールが入っていた。

 薫は残業で遅くなると三田に連絡しつつ、その足で女装クラブへと足を急がせた。

 ただ薫の心の中に兵藤や工藤に対する引け目もあった。

 二人の知らないところで女として処女を損失したという事実が薫の後ろ髪を引いた。

 クラブに入った薫は普段なら絶対に身につけないであろう、照明に反射してキラキラ光る黒いドレスをレンタルした。

 薫はクラブの退会を決意していた。

 ガーター紐付きの黒いスリーインワンで身を固めた薫の両足を、黒いレースのガーターストッキングが包み、ガーター紐の上から黒いレースのショーツが包み込んだ。

 ガーター紐の上からレースのショーツを履くことで兵藤が自分の下半身を求めた時、脱がせやすいだろうと薫は配慮した。

 兵藤には気持たせして申し訳ないことをしたという薫の謝罪の意味が込められていた。

 普段は絶対にすることのない濃い目の化粧をし全体を整えた薫は、兵藤に返すべく小切手を胸元の隙間に仕舞った。

 事務室へと移動する薫のストッキングに包まれた足が妖しく照明を照り返した。

 バーのある店内とは裏腹に事務室はひっそりと静まり返り中で数人の女装子(おんな)達がデスクワークをしていた。

 今夜で退会を希望します、という薫の言葉に事務室に居た女装子(おんな)達が一斉に薫の下に駆け寄った。

 えぇぇー! うっそぉー! 恋人が出来たの? いい人と出会えた? 残念! 薫ちゃーーん!

 いろんな声が飛び交う中で薫は首を軽く縦に振った。

 薫は親しげに話しかける友人達に快く見送って欲しいと考えた。

 そして、退会処理を済ませた薫がバーへと向かうと、カウンターから薫を柔らかい眼差しで見詰める工藤と、ボックス席で両側に女装子(おんな)を抱える兵藤の熱い視線が薫に刺さった。

 兵藤は薫を見るなり両側の女装子(おんな)達を払うように押し退け、カウンターに近付いた薫を見て工藤はポツリと呟いた。


「女になったようだね… 見ればわかるよ♪」

 薫に小声で呟いた工藤に、薫は小さく頷いて微笑した。


「薫!! 今までなんで来んかったんあー! 心配したぞおー! ホラ! 早くコッチに来て酌をせい! ホラ! こっちに来い!!」

 兵藤は力任せに薫の腕を掴み引っ張った。


「キャッ!」

 薫は強い力で引っ張られて床に倒れそうになった。


「兵藤さん!! ここはプロの女性が集う店じゃない!! 無理矢理は困りますよ!!」

 工藤が見かねてカウンターから出ると兵藤の前に立ちはだかった。


「大丈夫かい! 薫さん!」

 工藤は薫に声をかけると庇うように薫を自らの後に隠した。


「兵藤さん! いくらアンタがこの店のオーナーでもやって良いことと悪いことがある!! 少しは自重してもらえないか!」

 工藤は目を大きく見開いて、兵藤を威嚇した。


 すると兵藤は工藤の肩に手をかけ怒鳴るように目を吊り上げた。


「お前こそ! いくらワシの子でもここでは、お前は使用人でワシはここのオーナーじゃ! 生意気な口を聞くでないわ!!」

 兵藤は突然杖を振り上げると工藤目掛けて振り下ろした。


「危なあーい!!」

 咄嗟に工藤を庇うように立ちはだかった薫に杖が当たりかけた時、バーのマスターがその杖を掴んだ。


「オーナー!! ここでは私が責任者です! 御無体なことをすればオーナーでも警察に通報しなければなりません! 如何しますか!!」

 マスターは強い口調で兵藤に立ち向かった。

 店内は静まりかえった。

 
「これ… お返しします! 私、こんなのいりません!」

 薫は対立するマスターと兵藤、そして兵藤を睨み付ける工藤の居る中で、胸から取り出した700万円の小切手を兵藤へ差し伸べた。


 すると小切手を受け取った兵藤は…


「こんなハシタ金なんぞ、お前にくれてやるわ!! くっそお! いいか、お前ら二人は今日限り首じゃあ! とっとと失せろ! この恩知らずがあぁ!!」

 兵藤を睨み付ける店内の数十人の人間達に不愉快とばかりに兵藤はシカメ顔を見せてその場を離れた。


「さあさあさあー! 今夜は居ると息苦しい大統領様のお帰りだあー♪ 楽しく参りましょうー♪」

 兵藤の理不尽な行為に辺りは静まり返ったが、バーの他のスタッフ達は音楽の音量を上げ女装子(おんな)達に威勢よく声を掛けた。


 店内は一瞬にして活気を取り戻し、アチコチから談笑する声が飛び交った。


「すいません!! 私なんかのために!!」

 薫は泣きそうな顔してマスターと工藤を前に頭を深々と下げて詫びた。


「いやいいんだよ♪ 兵藤さんはアア見えて実業家だからね、流行ってる店を壊したりはしないさ♪ それに僕はただの従業員じゃないしね、一応この店の役員だから安心して♪ むしろコイツと兵藤さんの親子関係が薫ちゃんにバレちゃって困ってるのはコイツの方じゃないかな♪ あっはははは♪」

 マスターは工藤を見て赤面して自分のように照れながら店の置くへと立ち去った。


 マスターが立ち去った後、工藤を見詰める薫は突然大笑いをしてドレスの裾を両手で持ち上げた。


「こんちくしょうおぉー♪ バシッ! キャッハハハハハ♪」

 薫は突然、棒立ちする工藤の尻にサンダルを履いた足で回し蹴りして頬を紅く染め照れながら大笑いした。


「ゴメン… 黙ってて… 隠すつもりじゃなかったけど… 言いそびれて……」

 工藤は俯いたまま薫にボソボソと詫びた。


「私を親子で取り合いしてたって訳かぁ~♪ 全く変な人達~♪ よし! アキラちゃんクラブトレミー♪ ボトルキープね♪ お酒もタバコもOKになったんだー♪ よおーし! 今夜は私が俊介を貸しきるわー♪ いいでしょー アキラちゃん♪」

 薫は全身で大笑いするとカウンターの中にいるスタッフにオーダーを出して席に腰掛けると、工藤を隣りに引っ張って座らせた。


 工藤は申し訳ないとばかりに俯いたまま席に付いた。


「やい! 工藤! てめえぇ男だろう♪ 男なら男らしくしろおぉー♪ 女の腐ったのみてぇにクヨクヨすんなー♪ バッシーーン!」

 薫はカウンターの中に居てニコニコするアキラと隣りにいる工藤を見往復して、工藤の背中を平手打ちすると笑い飛ばした。


 暫くして薫は小切手を再び取り出すと、兵藤に返して欲しいと工藤の前に出した。


「貰っておいていいよ、ヤツにはハシタ金だろうし返したらまたトラブルの火種になりかねないからさ…」

 工藤は薫の前に小切手を押し付けるとブランデーを一口喉に流し込んだ。


「性転換すんのか? やっぱり…」

 置かれたブランデーグラスを両手で押さえてジッと見入る工藤はボソっと呟いた。

 一瞬だけチラっと薫を見た工藤。


「わかんない… 性感失うの、やっぱり怖いかも… 濡れもしない快感も無いただの穴だもんね… 周囲に明るく振舞って内心惨めに生きるって辛いだろうね… 本物の女性を羨みながら男でもない女でもない身体で惨めな人生送るんだもんね……」

 工藤と同様に置かれたグラスを両手で押さえ、揺れるブランデーに見入る薫。

 工藤の吐息を微かに感じる薫。


「俊介も今ならまだ戻れるよ… 私、俊介とならレズでもいいよ… 」
  
 垂れた前髪を横に戻しながら丸めた背筋を元に戻す薫。

 薫の言葉に一瞬ドキッとした顔する工藤。

 
 すると工藤は…


「俺だって薫とならホモでもいいよ… ふっ♪ ふっ♪ 俺たち何言ってんだろな… ふっ♪」

 薫に逆のことを言って突然、噴出しそうになる工藤。


 工藤は薫の目に視線を重ねると席を少しだけずらして薫の右肩に腕を伸ばすとそのまま引き寄せた。

 薫は工藤の襟元に頭を寄り添った。


「二人ともいい感じだね♪ このまま結婚しちゃえばいいんじゃないのかい♪」

 寄り添う二人を見てカウンターの中のアキラは嬉しそうに囁くと、気を利かせたのかカウンターの奥へと姿を消した。

「でも… 困るなぁ… 薫が性転換したら、アレがなくなっちまう… ふっ♪ 胸は薫のがあるからいいとしても… 薫のアレがなくなるのは困るかもだな… ふふっ♪」

 工藤は照れるようにボソボソと香るに耳打ちした。

「そうねぇ… アレはやっぱ残した方がいいかもねぇ~うふふ♪ だから俊介もアソコ塞いだらダメだからねぇ~ 入れるとこないのは困るもん♪ キャハ♪」

 頬を紅くして照れる薫は左手を工藤の右手に絡めた。

「私ねぇ、兵藤さんに自分の女になれって言われた時、凄く変な想像したんだよ~ 子供がねぇ、風邪引いて寝てる直ぐとなりで兵藤さんが強引に私の身体を求めて来て… 泣きながら抱かれちゃうんだ♪ その想像が妙にリアルで、気が付いたら涙ぐんでたの…… でも、今はそれが単なる想像だってハッキリ解かった… 変でしょ私、アハッ♪」

 工藤の右手に絡めた左手の小指を微かに曲げ伸ばししながら不安げな表情を一層した薫。

 真剣な眼差しをしながらも薫らしいやと、口を緩めて噴出しそうになった工藤は薫に頬ほ抓られた。

 


 薫はこの日、帰宅せずに工藤の部屋へ我が身を伴わせた。




【十話】



「薫…」

 灯りのついていない部屋に入った瞬間、工藤は薫を後ろから抱いた。


「ぁん!」

 背広姿の薫は虫の羽音ほどの声を出して恥らった。

 店に出入しているタクシーを使ったことで薫は女の姿のまま工藤の部屋に来ていたが、黒いスーツタイトスカートに白いブラウス姿の薫は、暗い部屋に入る月灯りにブラウスの白さを反射させていた。

 そして黒いガータースッキングに包まれた薫の両足は見えず、白いソックスに包まれた工藤の足だけが際立っていた。

 抱かれてスカートの裾が微かに揺れた。


「我慢出来ない… 早く薫を食べたいんだ。」

 薫を後から抱く工藤の両手が薫の乳房をブラウスの上から揉みまわし、クルリと薫を自分に向けると薫より背の高い工藤は香るのアゴをクイッと上に向け口付けをした。

 口の中に工藤の舌を感じた薫は目を閉じてそれを受け入れ、爪先脱両足を震えさせた。

 ピチャピチャという艶かしい音が静寂の中に溶け込んだ。

 そして薫は工藤に抱きかかえられながら、爪先立つ身体を少しずつ斜めにし、そのままベッドへとその身を横たえた。

 熱い口付けをしながら薫のブラウスのボタンを両手で外す工藤は、顔の向きを変え吐息を震わせた。

 ベッドの上でブラウスを肌蹴られた薫は、裾をスカートから捲くり上げられた。

 そして工藤は口付けをしたまま薫の後に手を回すと、タイトスカートのファスナーをゆっくりと下ろすと、静かに脱がせたスカートを置いた。

 月明かりに照らされた黒いスリーインワンの肩紐を外したその手は、迷うことなく二つ並んだ薫の小さな膨らみへと添えられた。

 両手を下から乳房を支えるように這わせると二つの手を外側に向けて優しく回した。

 工藤の両手が添えられた瞬間、薫は深い吐息を放ち首を後に軽く仰け反らせた。

 乳房を回す工藤の手の動きに、唇を軽くひらいて吐息を立てた薫は両手をベッドのシーツに絡ませた。

 薫のストッキングを吊るガーター紐の上辺りに跨った工藤は、呼吸を香るに合わせるように両手を伸ばして乳房の中心にある乳首を両方の中指で軽く何と背も弾いた。

 乳首を弾かれたか薫は全身をその数だけビク付かせ、時折、工藤の指が乳首を抓むと薫は、くうぅ~! と、ゆっくりした速さで全身を深く仰け反らせた。

 そして工藤の手と指の動きは薫の乳首を勃起させコリコリと心地良いサウンドを薫に伝えた。

 深く息を吸いゆっくりと吐き出す工藤と薫の呼吸は重なり合う頃、工藤はゆっくり状態を前倒しして薫の乳首に唇を寄せた。

 薫の動きをとめぬよう気を配り、薫の両外側に手を添えて我が身を支える工藤は、ゆっくりと乳首に舌を絡めると唇で吸いはじめた。

 黒いストッキングに包まれた薫の両足の爪先がピンとゆっくりと伸びきった。

 工藤の開かれた口からは女性特有の先の尖った長い舌を出て、薫の乳首の根元の周りを幾度もネットリと回り、そして薫が深い心地よさに実を沈めた瞬間、一気にその舌は薫の勃起した乳首に絡みつく。

 そしてその瞬間、深い心地よさに沈んでいた薫の身体が一気に、その底なし沼から電撃を浴びた魚のように水面から飛び出した。

 深い心地よさと激しい電撃を繰り返す中で薫はその体温を次第に内側から上昇させていった。

 左腕を薫の身体の直ぐ傍に置いて自身を支えながら、伸ばした右手でストッキングに包まれた薫の右太ももに手を這わせる。

 ストッキング一枚隔てて感じる深い官能に薫の両頬は熱を帯びていく。

 薫の口紅の塗られた唇が小さく閉じたり開いたりを繰り返す。

 そしてガーター紐を覆うようにフィットしたレースのショーツを工藤が剥ぎ取ろうとした時、ペニスから溢れた薫の愛液はショーツに透明な糸を何本も引いた。

 工藤は薫が十分に官能していることを確認すると、仰向けのの薫をゆっくりとうつ伏せにして両腕の肘を背中で折り曲げて重ねた。

「薫にしてみたいことがある…」

 暗闇の中で薫の耳に届けられた工藤の意味深な囁きに薫は小さく頷いた。

 二人の妖しい吐息だけが聞こえる静寂の中で、背中に肘を曲げられそして重ねられた腕に工藤はスルスルと包帯のような布を巻きつけ縛り上げた。

 肘を曲げられ後に縛られた薫を抱き起こして仰向けにした工藤は、暗闇の中で薫のオデコに小さなキスをするとベッドから離れ近くの椅子に腰掛ける音がした。

「俊… どうしたの…」

 後手に縛られた薫は不安げにベッドを離れた工藤に囁いた。


 その時だった…


 静寂な暗闇の中に突然足音が聞こえたかと思うと、ベッドに横たわる薫の体にその足音と震動が伝わった。

 ドアの開く音が聞こえ、突然部屋の灯りが灯された時、薫はその眩しさに顔をしかめて目を閉じた。

 眩む目を少しずつ開くと工藤とは違う大きな吐息が薫を見ていた。

 
「でかしたぞ♪ 馬鹿娘にしては上出来じゃて♪ ふぇーっふぇふぇふぇ♪ 可愛いオッパイじゃわい♪」

 縛られた薫の様子を覗っていたのはトランクス一枚履いた工藤俊介の実父である兵藤だった。

 そしてその斜め後で椅子に体育座りして両手で耳を塞ぐ工藤がいた。

 工藤は目を閉じてジッと動かずにその姿勢を保ち、兵藤は舐めるように薫の身体を見回していた。

 そして兵藤の存在に全身をジリジリと震わせ唖然とする薫がそこに居た。


「この娘はのおぅ、ワシが二号に生ませた娘じゃが、本妻には子がなく仕方なくコレを高校卒業と同時に男に目覚めさせたのじゃ。 もっとも、コレには元々、男に憧れる血が入っておるようでな好都合じゃったわい♪ ワシの事業を継承させられるのは男しかおらんでのおう♪ セーラー服の似合わん娘じゃったが、今ではワシの良い部下じゃて♪ そうは言いながらもワシの目をつけた女装子(おまえ)を横から奪おうとした罪は罪じゃて… コレの母親にも良く言い聞かせたんじゃが、さっきはコレもお前を好いとるからか、男気が出たんじゃろうのぉ~♪ 可愛いヤツじゃ♪」

 兵藤は両手で耳を塞いで体育座りする工藤をチラチラ身ながら語った。

「高校生の頃に男らに寄って集ってレイプされて以来、女が嫌で仕方の無かったコレは一気に男化への道を自分で模索しはじめた… そこへコレに対するワシの男化への進言が功を奏してコレは胸を切り落としたんじゃ… そうは言っても生身の身体、時には独りで自分を慰めとったんじゃろうのおぅ~ どうしても子宮切除と膣の縫合を決断出来んかったようじゃ♪ 悩んでいた所へ女装子(おまえ)が現れた… コレの心は男になりきっていたが、身体は男を欲しがとったんじゃな~ 男故に女が欲しい… じゃがマトモな女を抱こうにも肉棒(モノ)が無い… コレはお前に出合ったことで男として女を抱ける都合のいい人間になってしまったようじゃ…… 女なのに肉棒(モノ)のある薫と、男なのに濡れる穴を持つコレにとって、薫は必要不可欠な相手と位置づけられたようじゃが、ワシの薫(モノ)に手をつけてはお仕舞いじゃて♪ コレには既に話しておるのじゃが、コレを高校二年生の頃にレイプさせたのはワシなんじゃ♪ ふぉーっふぉふぉふぉ♪ 我が娘ながら大勢の男達にレイプされる様はワシのペニスを肉棒にさせるほど魅力的じゃったわい♪ さすがに自分の血肉を分けた実の娘は犯す訳にはいかんからのおぅ♪ ふぉーふぉふぉふぉふぉ♪ 実に純真で恥じらいと屈辱に涙を流すコレは魅力的じゃったわい♪ ワシも思わずカメラで見ていて一本自分で抜いてしもたわい♪ 乱れるセーラー服と純白のパンティー♪ 男を知らぬ女子高生の青い果実(はだ)は堪らんものよのおぅ♪ ふぇーっふぇふぇふぇ♪ 泣き叫んで助けを求めるコレの顔が今でも忘れられん♪ 実の娘でなければワシが処女をもろうておったわい♪」

 薫に語り聞かせる兵藤はチラチラ工藤を見て語り、工藤は兵藤の話し声が聞こえたのか突然、激しく全身を震わせ身体を丸めて何かに怯えた。

「まぁ、何も知らずにコレと恋愛ゴッコの果てにワシに味見されるんじゃ、せめて真実くらいは知らせてやらんと薫も哀れじゃて♪ 俊介という名前はコレの母親と恋仲になっておった男の名でのおぅ♪ 工藤は母親の名で、コレの名前は工藤菜々美… 逃げたお前さんの女房と同じ名前なんじゃ♪ ふぉーっふぉふぉふぉ♪ のおう! 菜々美! 聞こえとるじゃろおぅ♪ それともう一つ! お前さんが雇っている探偵事務所! アレはとんだ曲者でのお、調べてるフリしてるんじゃが、実は何もしとらんで銭だけを相手に要求する下衆モノじゃて… 大勢の人間が食い物にされとるから、薫の場合も同じだと思ったほうがええじゃろうのおぅ♪ 折を見てワシの信頼出来る興信所に調べさせてやるから案ずることは無い… 直ぐに見つかるじゃろうて♪」

 ニコニコして話しに唖然とする薫を見てはブルブルと全身を震わせる工藤を見る兵藤。

「これからワシがお前を味見する様をコレにも見せるが、もしお前が望むのなら味見されてる最中にコレを見るがいい… それがコレの真実の姿じゃて♪ ふぉっふぉふぉ♪」

 突然、薫に小声で耳打ちした兵藤はニンマリと薫の顔を見入った。

「さてさて、何処から味わおうかのぉ♪ ガーター姿の薫は実に魅力的じゃて♪ ゴクリッ!」

 兵藤は後手に縛られ恐怖に震える薫の乳房を凝視して喉を鳴らした。


 そして…


「いやああああぁぁぁー!!」
 
 縛られている薫の乳房に両手を回した兵藤は貪り食うように薫の乳房に吸い付いた。


「やめてえええぇぇぇー!!!」
   
 首を左右に振って逃げようと身体を揺する薫を重ねた身体で押さえ込む兵藤。


 操を兵藤に奪われる薫は傍にいる工藤に助けを叫んだ!
 

 その薫の視線に飛び込んだのは、虚ろな眼差しで口元をニヤニヤさせボクサーショーツの上から自らの割目に指を上下させる工藤の姿だった。

 工藤は薫が兵藤に辱められているのをオカズに体育座りして割目を指で擦り、身体をフラフラと揺らせていた。


「俊介! 俊介ええぇー!! 助けてええぇぇー!! お願い助けてえぇぇー!!!」

 薫は声を限りに工藤に助けを求めたが、薫が叫べは叫ぶほど工藤は割目を擦る手を早めて身悶えを繰り返していた。


「堪らん!! はふはふはふはふ! はぁはぁはぁはぁ! 犯され辱められる女装子(おんな)ほど純粋な生き物はおらんて! はぁはぁはぁ!」

 兵藤は片手で掴んだ薫の乳房に顔を埋めるように舌で舐め回し、唇を乳首に吸いつかせ男の業をブツけていた。

 黒いガーターストッキングに包まれた薫の左足には忙しく這わせられた兵藤の右手が動き回り、左足を兵藤の手から引き離そうとバタつかせて、首を左右に振り身体を仰け反らせ抵抗する薫は大粒の涙を流し続けた。

 それを見ていた工藤は突然立ち上がると、履いていたボクサーショーツを脱ぎ捨て再び椅子の上に体育座りすると、今度は割目の穴に自らの中指を入れクチュクチュと前後させ始めた。

 激しく首を左右に振った薫が一瞬、その光景を目にした時、唇を噛み締めて悔しそうに顔をしかめて逆を向いた。


「はぁはぁはぁ! 叫べ叫べー!! トコトン泣き叫んでもらわんとソソらんわあ!! はふはふはふ!」

 乳房を吸われ舐められながら太ももを嫌らしく触られる薫は無力な女の悲しい運命(さだめ)に唇を噛み締めた。


「女は男に食われるくらいが丁度いい鳴き声を上げるもんじゃ! そりゃ! ガブリッ!! ギヤアアァァァー!!!」

 突然、兵藤は仰向けの薫の左足に体重を掛けると右足を持ち上げ、黒いストッキングの上から内モモにガブリと噛み付いた。

 兵藤は薫の内モモを西瓜でも頬張るように歯を立てムシャブリつくと薫は縛られたまま絶叫した。

 兵藤の目付きは尋常な目ではなく、生肉を喰らう鬼のような形相で一箇所、また一箇所と黒いストッキングに包まれた薫の柔らかい内モモに噛み付いて、味わうように口から濁音を出した。

 噛み付かれた側の薫は両目を大きく見開き、開いた口は大きく上半身を振って部屋の天井が抜け落ちんばかり声を上げ続けた。

 兵藤に噛み付かれた後に残る黒いストッキングの唾液はキラリと蛍光灯の灯りに反射し、その内側に鬱血した歯型が立体的に見えていた。

 薫が絶叫すれば兵藤は嬉しそうに口を離しニヤァーっと薄ら笑みを見せて、再び別の部分にガブリと噛み付いてストッキングに滲み込んだ薫の太ももの味を楽しんだ。

「痛ああああーい!! ぎゃあぁぁー!!! 痛い! 痛い! 痛ああああああい! いぎゃぁぁぁー!!」

 後手に縛られたままの薫は兵藤に抑えられて動かせない右足に逃げられず泣き叫んで兵藤の歯に耐えるしかなかった。

 内モモから外モモへ噛む場所を移し、一通り噛んでシャブって味わうと今度は、噛み終えた左足をベッドにおいて体重を掛け持ち上げた右足の内モモにガブリと噛み付いた。

 その様を観て体育座りのまま自らの穴に指を入れ出し入れする工藤は、薫を犯す実父の前で何処からか出した擬似ペニスをズブリュウーと右手で中へと挿入した。

 クッチャクッチャヌッチャヌッチャと工藤の音が薫の目と耳に届くと、兵藤はチラリと工藤(むすめ)を見てニヤリと笑んで再び薫の内モモに噛み付いた。

 壮絶な痛みが薫を狂乱させた。

 柔らかい内モモに噛み付くならまだしも、兵藤は噛み付きながらチュパチュパチューチューとストッキング越しに薫の肉をシャブった。

 ストッキングに包まれた薫の肌は紅みを帯び、兵藤の歯と唇と舌に変色していった。

 兵藤は夢中で薫の肌を味わった。

 やがて足に飽きたのか、兵藤は薫をうつ伏せにすると今度はベッドと薫の間に丸めた掛け布団を押し込んだ。

 薫の下半身は掛け布団の上に乗っかって尻を突き出し膝立ちさせられた。

 ガブリっ!!

 ギャァァー!

 兵藤の口は突き出された薫の尻肉を黒いガーターストッキングに覆われた白いパンティーの上から容赦なく噛まれた。

 薫の絶叫する声がベッドに吸い込まれた。

 パンティーに滲み込んだ匂いを嗅ぐように、そして滲み込んだ味を確かめるように兵藤の鼻は大きな吸息を立て口はチュパチュパとパンティーをシャブぶった。

 兵藤の歯が薫の尻に食い込む。

 逃げ悶える薫を押さえつける兵藤の両手の指が薫の尻に食い込んだ。

 ガブリっ!

 大きな口を開けて噛み付く度に薫は大粒の涙を窪して絶叫した。

 
「女の履くストッキングには女本来の匂いと味が滲み込んでおる… それを味わいつつ、匂いを楽しみパンティーに直に滲み込んだ濃厚な匂いと味を楽しむ! これこそ男に生まれた喜びじゃて! 女の泣き叫ぶ声もまた男の獣としての血を滾らせる! はぁはぁはぁはぁ…」

 兵藤は目を血走らせ壮絶な痛みに狂乱する薫を前に息を荒くした。

「うわあああぁぁぁ~ん! うわああああああー! やぁーだーああ! もう嫌だよおおおおー!!」

 余りの痛みに薫は声を大に子供のように泣き喚いた。


 すると兵藤は背中を見せる薫を前にニヤリと笑みを見せベッドの端っこから何かを取り出した。

 尻を突き出させる薫の左足首にロープを巻きつけると、グイッっと左に寄せてベッドの下の金具に縛りつけ、今度は右足首に同じようにロープを巻きつけると両足を開かせるように引っ張りベッドの下の金具に縛り付けた。

 両腕を背中に縛られる薫は両足をも開いた状態でロープで自由を奪われた。

 子供のように大きな声で泣き喚く薫に恐怖が過ぎった。

 そして突然、その恐怖の正体に薫は気づいた。

 バシンッ! バシバシバシィーン!!

 ギャアァァー!

 痛あああああーーい!!

 痛あああああーーい!!

 黒いガーターストッキングに包まれた尻下に伸びる太ももを兵藤の握る竹の物差しが勢い良く打ち付けた。

 バシイイィィーン!!

 ギヤアアアアァァァー!!

 バシイイィィーン!!

 ギヤアアアアァァァー!!

 黒いストッキングに包まれた薫の太ももは竹の物差しに打たれフルフルと痛々しく揺れた。

 竹の物差しを握る兵藤は狂気な笑みをし嬉しそうに薫の絶叫する声に武者震いを繰り返した。

 兵藤は薫の内モモ、外モモ、尻をめった打ちにし、その度にプルプルと揺れる肉質を楽しんでいた。

 打たれる薫は想像を絶する激痛に声を失いベッドに顔を自ら押し付けギリギリと歯軋りをさせた。


「ふぉーっふぉふぉふぉふぉ♪ こりゃ堪らん♪ 余りの痛みに声も失ったか♪ 堪らんのおぅ女装子(おんな)の悲痛な叫びはいつ聴いてもゾクゾクするわい♪ そろそろいいじゃろう! グイッ! ビリッ! ビリビリビリィー!! ビリ! ビリッ! ビリッ!」

 兵藤はジリジリ震える薫の両太ももに手の平を這わせるとスリスリと何度も感触を楽しんでから、突然薫の両足を覆う黒いガーターストッキングを破り始めた。

 ストッキングを破られる衝撃が腫れ上がった太ももに伝わり、その焼けるような痛みはベッドに顔を押し付け歯軋りする薫を苦しめた。

 破られる度に、パチンパチンとストッキングを止めるガーターが引っ張られ薫の肌を軽く打ちつけ、その軽い震動でさえも今の薫には激痛でしかなかった。

 そしてガーター紐を抑えるようにフィットしていた黒いレースの紐ショーツを後から兵藤が引き降ろした瞬間、兵藤はその重さに顔をひきつらせた。

 顔を引き攣らせながらショーツの紐を解いて両手に持った兵藤はそのズッシリした重さに仰天した。


「こっ! これは! そ、そんな馬鹿な! 本物なら兎も角、女装子(コイツ)がこんなに!!」

 兵藤の両手に持たれた薫のレースの紐ショーツは、オビタダシイ量の愛液が浸透していてズッシリと重く、幾度も塗り重ねせれたようになっていた。

 そしてその黒い紐ショーツの内側にはキラキラと蛍光灯に反射する透明な愛液が光っていた。

 兵藤は信じられないという表情をすると、震える唇を開いてザラ付く舌をショーツの内側に滑らせた。

 塩気を含んだヌルヌルした液体が兵藤の舌に絡みついた。

 チュゥチュゥとショーツの内側を口に入れてシャブった。

 幾重にも塗り重なった薫の愛液は兵藤の想像を絶する濃厚で深い味わいだった。

 
「危険な女装子(おんな)よのう薫は…… ワシをここまで奮い起たせおって……」

 兵藤は無言で下着を脱ぐと馬のような肉棒を晒した。


「ワシをここまで本気にさせた女は過去に一人もおらん… 出来ることなら判起程度で終らせてやりたかったが、こうなってはワシにはどうにも出来ん… 可哀想じゃがもう一度泣き叫んでもらうしかないな、薫……」

 兵藤は顔を引き攣らせながら、外人用のコンドームを装着するとその馬のような肉棒にジェルを塗り始めた。

 虚ろな目で馬のような実父の肉棒に見入った工藤俊介(ナナミ)は恐怖に顔を引き攣らせ視線を反らした。

 兵藤は両手で薫の尻と足の位置を手直しすると、その馬のような肉棒の先を薫の肛門にジュルジュルニチャニチャと滑らせた。


 そして…


「腹から力を抜くんじゃ! 薫!! グイッ!」

 兵藤はグッタリする薫に一際大きな声で指示すると、馬のような肉棒を押し付けた。

「いぎぃー!」 

 太マラが薫の肛門に押し付けられると薫は喉の奥から唸り声を発し、ベッドから顔を上げ両目と口を大きく開いて首を後に仰け反らせた。

「腹から力を抜け!! 地獄を味わいたいかあー!! 薫ー!!」

 兵藤は薫の肛門にグイッ! グイッと太マラを押し付け中に少しずつ肉塊を挿入し始めた。

「あぐぅー! ギリギリギリギリ… いぎぃ!」

 兵藤の太マラが薫の肛門に少し入ると薫は歯軋りして肛門から伝わる壮絶な電流に

「ズズ、ズズズズズー! ズジュー! スポンッ!」

 兵藤の太マラが何度か押し付けた拍子に薫の肛門にスッポリ入った。

「イッーーーッテエエエエエエェェェェーーーーー!!!! イデエエエェェェェェーーー!!!!! 抜けえええぇぇぇー!! 抜いてくれえええぇぇーー!!」

 後手に縛られたまま上半身を仰け反らせ首をガクガク大きく震えさせた薫は右に左に大きく揺れた。

 薫の声は男の喋り口調で女装子(おんな)とは到底思えないほどだった。

 その薫の狂乱しているところを目の当たりにした工藤俊介(ナナミ)は、虚ろな目を大きく見開いて穴に擬似ペニスを入れたまま両手で顔を隠すように頭を覆ってしまった。

 狂乱して絶叫する薫を仰天した顔で後から見入る兵藤は大声で狂ったように笑うと腰を薫の方へと推し進めた。

「ふぉーーっふぉふぉふぉふぉふぉ!! ヌプッ!! ヌプヌプヌプヌプ! あーっひゃひゃひゃひゃひゃ!!」

 薫は自分の中に入って来る馬のような肉棒に口からヨダレをポタポタ流して頭を振って狂乱した。

「馬鹿なヤツ!! 騒げば騒ぐほど地獄じゃろうに♪ そりゃ♪ ヌプヌプヌプヌプ~♪」

 狂乱する薫を前に兵藤は薫の腰をしっかりと掴んで更に肉棒を推し進めた。

「ぁう! はぁはぁはぁはぁはぁ… はぁはぁはぁはぁはぁ…」
 
 薫は肛門が引き裂かれんばかりの地獄のような痛みと、壮絶な違和感に兵藤の指示通り腹から力を拭いて仰け反った上半身をゆっくり下に降ろした。

「あああぁうぅ!! ぅああ!」

 息遣いの落ち着いた薫の背中に覆い被さった兵藤は、両手を左右から薫の胸に差し込むと両手で乳房を揉みながら、腰をゆっくりと前後させた。

「アガアガアガアアア!」

 ズタズタに破られた黒いストッキングを履き両手を後手に縛られたままの薫は、兵藤が腰振る度に声にならない苦痛の唸り声を発した。

 兵藤の馬のような肉棒は見る見る間に薫の中に入っていった。

 そして、兵藤が腰を一回振れば、ウガアッ! 更に少し抜けば、ウガアッと、口からヨダレを垂らして受かり声を上げた。


「ふっふっふふ♪ 可愛いヤツよ♪ ワシのモノを飲み込んでしまいおったわい♪ パッチィーンっ!!」

 薫の身体を覆う黒いスリーインワンの両肩紐を鷲掴みした兵藤はグイッと後ろに引っ張ると同時に放した。


 薫は兵藤に怒鳴られた通り全身から全ての力を抜いて、兵藤に突かれるがままになった。

 まるで人形のように兵藤にグニュグニュと乳房を揉まれながら尻を打ちつけられた。

 下手に動けば地獄の痛みに逆戻りする薫は、タダタダ兵藤がオーガズムに近付くのを待つしか無かった。

 そして目だけを動かして工藤を見れば、工藤は擬似ペニスの持ち手までをも、自らの愛液でヌルヌルデロデロにして苦しむ薫をニヤニヤして自慰に励んでいた。

 それは薫の見てきた工藤俊介ではなく、ただのイカレた変態女だった。

 そして兵藤がオーガズムに達したのはそれからずっと後のことだった。

 そんな薫の身体から兵藤が出た時、長い間、太いモノが入っていた薫の肛門はポッカリと口を開けたように閉ることを忘れ、中からドロドロとした苦みと酸味の悪臭を放つ糞が次から次ぎにベッドを茶色く染めていった。

 兵藤は後手に縛られながらベッドの上で中腰になって排便する薫を見て、口元を緩め薄ら笑みを浮かべていた。

 工藤は自分のベッドが糞で塗れていく様を裸のまま口をポカンと開けて見入っていた。

 
「いい味じゃったわい♪ 薫! お前は誰にも渡さん! ワシのモノじゃからのおう♪ コヤツを見てみろ! 男になりたいとか戯けたことを言う割りに、オモチャを穴に入れて遊んでおる! これの何処が男じゃ♪ ふぉーっふぉふぉふぉ♪ まあ、コイツがこんなんではワシの跡取りにはなれんでのおう♪」

 兵藤はベッドの上で踏ん張って糞を垂れる薫の後手に縛ったロープを解くと大笑いして立ち去ろうとした。


 その瞬間


「てめえぇぇー!! グチャ! ムニュゥ! バシッ! ベチョッ! うわああー!! ベチャ!」

 薫は帰ろうとした兵藤に自らが脱糞した糞をムンズと掴むと顔を目掛けて投げ付けた。

 兵藤は薫の投げた糞が顔に数回命中しヨロけて裸で立ち尽くす工藤にもたれかかった。


「ひぃ! ひいぃぃ!! ベチョッ! グチャッ! ネチョッ!」

 工藤は凭れた実父の顔を避けようとして薫の投げた糞が顔に命中、そのはずみで兵藤もろとも床に転がった。

 薫は泣きながら自分の糞を二人目掛けてベッドから投げ付け続けた。

 そして、薫は糞を握るとベッドから飛び降り二人の顔に摺りこむうに塗りつけた。


「グウェェ! グウェェ!!」

 二人は香るの糞から逃げようと、互いで互いを盾にして結局糞塗れになった。


「何がワシのモノだあぁぁ!! この馬鹿野朗ー!! テメエェは許さねえぇ!! こうしてやるうぅー!! テメエェはこうだあぁー!! グチョグチョグ! ニュ! グニュ! テメエェは、カンジタにでもなっちまえぇーー!!」

 薫は転がって糞塗れになった兵藤と工藤を後手に上げると、兵藤に馬乗りになって顔に糞を塗りつけ、工藤の膣に糞に塗れた指を数本入れてグチョグチョ前後した。


「あわわわわ! やめろ! やめろおぉー! グェッ! やめるんじゃ! おえぇ! グエェッ!」

 兵藤の顔は糞塗れになり、工藤の膣は糞を詰められた。

 そして薫は兵藤の顔の上に跨ると勢い良く脱糞した。


「ここで仲良く助けを待つんだなー!! そのうち糞でカブレて顔もマンコもガタガタになるだろうよ!! この変態親子がああ!!」

 薫は再び脱糞した糞を手に工藤の割目に塗りつけてやると工藤は半狂乱になって喚き散らした。

「これから風呂に入って出てきたらお前ら親子のために救急車を呼んでやる! 何故こんな目に遭ったか消防署の人に話して聞かせるんだなあ!! 俺も警察に呼ばれたら何もかも全部バラしてやるよおー!! いいかあ!! ジジイ! 覚悟しやがれえぇ!」

 そして薫は二人の両足も縛り繋げると、風呂へ入って屈辱の形跡を消すとそのまま、持参した背広に着替えて帰宅した。

 
 薫は翌日会社へ出社すると退職届けを出した。




【十一話】



「通常はクリトリスを作る時にはですね、亀頭の裏側の一部を切り取ってクリトリスの代用をするのですが、最近は少数なんですがね、亀頭をそのままの形でクリトリスとして残す方がいらっしゃるようです。 結局のところ性転換で全ての性感を実質的には失いますからね。 形だけクリトリスと言っても痛い冷たい程度ではねぇ~♪ 性転換して性感を全て失うなら、敢て残すという人が増えているのは事実なんですよ。 完全に女性器の形をしていても結局は匂いも味も男性のままですからね~♪ まして、性転換した方と交際したり性交渉を持たれる方は実際には同性愛者に近い理性の持ち主です。 でから私は医師としてではなく、人間個人としては亀頭を全て残したままの性転換をお勧めしますねえ♪ 最悪、どうしても不具合ということになれば亀頭を切除することも簡単ですからねぇ♪ 要は女性器のクリトリスの部分に男性の亀頭が皮に覆われて付いている、その下には尿道と膣が形成されているという具合です。 あと、最近は記述が進歩しましてね♪ 男性からの性転換でも濡れる膣を形成出来るんですよ。 まあ、原理は単純でしてね♪ 精液を蓄える睾丸を体内に埋め込むことで、カウパー支線液を膣に滲ませることが可能なんですよ。 勿論、精子は作れませんが、濡れるという女性特有の潤滑油の役目は果たせる訳です。 但し費用も相当嵩みましてね五百万から七百万は掛かるようですね♪ 勿論、国内では無理ですが… それともう一つ! 膣の中の皮膚としてペニスの性感の部分を伸ばして移植する方法です。 これなら膣にペニスを挿入された場合、若しくは指を入れられた場合、完全に今までの性感を維持できるというものです。 ペニスの性感の部分を薄く伸ばして膣の内側に貼り付けることで完璧な性感を得ることが出来るんですが、費用は千二百万くらいと聞いています。 膣で相手を感じながら体内の睾丸に蓄えたカウパー支線液で濡れることが出来る画期的な方法です♪ それなら今まで同様にエクスタシーに簡単に達しますよ♪ 下手な性転換して一生、死ぬまで性感の無い身体で過ごすなら、やはり最新の技術をお勧めしますねぇ♪ 今までの性転換では、精々、感じた気がする! 或いは単に雰囲気に浸るしか無いですからね~♪ 哀れなものですよ過去の患者さん達は… よく、インターネットなんかであるでしょう、気持ちいいとか感じるとか… あれは真っ赤な偽りなんです… 要は性転換して性感を失った人が、自分の惨めさを隠したい一心で誰かを仲間にしてやれ! そんな感覚なんでしょうねぇ… いわゆる誰かを陥れたいんでしょうねぇ~ でも、私が勧めるこの方法なら、そんな心配は一切いりませんよ♪」

 薫は会社を退職し、豊胸したクリニックを訪れていた。

 亀頭を全部残して性感をそのままに、女性(ほんもの)のように濡れる身体、或いはペニスの皮膚を移植して完璧な性感を得られる身体の話しを聞いた薫は、胸の奥をドキドキさせながら電車に揺られた。


「千二百万かぁ… 性感を失わずに濡れられるなんて… あと二百万か…」

 薫は小切手を現金に替え預金している七百万と、店で稼いだ三百万の他に三田に残りの二百万を相談してみようと思っていた。

 薫の女になりたいという思いは真実味を帯びてきていた。


『何を馬鹿なことを言ってるんだ! 少し頭を冷やせ! 今日から数日、休暇を出すからその間に本当に退職するかどうか決めろ! いいな!』

 薫は退職願いを出した日、上司に受理されなかったことを思い出していた。

 揺れる電車の中で性転換のことと、会社のことがグチャグチャに重なっていた。


『私は専門医ではないですが、薫さんのお顔なら女性と同じように整形できると思いますよ♪ 元々、男性顔というよりは女性顔ですからね♪』

 クリニックの医師の言葉が電車の窓に映る自分の顔に重なった。


「顔をこのままで保てば性転換したあとでもサラリーマンを続けられる… 普通に生活していける… 仮に菜々美が戻ったとしてもアイツに何を言わせるものでもないだろ… 全ては黙って失踪したアイツが悪いんだから…」

 薫は性転換する方向で考えをまとめ始めていた。

 そんな薫は翌日から吹っ切れたように会社へ行くと、退職を撤回してパリパリ働いた。

 そして三田も性転換の費用として二百万円を快く出してくれた。

 性転換を決めた薫は女装クラブに出向き、店に来なくなったという兵藤と工藤を案ずることなく毎晩のように金を稼いだ。

 薫は数日後、クリニックに出向き性転換の希望を伝え、外国の病院への紹介を取り付けてもらい同行してくれる支援団体の人とも会うことに漕ぎ付けた。

 会社を休む理由として、妻の菜々美らしい人の死体が外国で見つかったから見て欲しいと言って来たという嘘を申告した。

 子供を三田に預け日本を出て数日、薫は慣れぬ生活の違いと連日の検査で体重も数キロ落ちていた。

 そして一週間の検査と手続きが終わり、薫はようやく手術の日を迎えた。

 本来なら三ヶ月程度の検査を必要としたが事前に日本で検査していたことと時間がないと言う薫の要望が通った形となった。

 頑張ってと言う同行者の女性の言葉を最後に日本語は耳から遠ざかった。

 薫には一抹の不安もなかった。

 これで女になれるとの思いは薫を勇気付けた。

 辺りを見れば外国語が飛び交い、安い性転換とは違い高額な手術とあって大勢の医師と看護師たちが手術室を埋め尽くしていた。

 手術の開始から終るまで薫は眠ったままの状態だった。

 そして気付けば同行者からの成功という喜びの言葉が目の前にあった。

 完全に形成されるまで一年は掛かっていた大昔と違い、今では6週間ほどで形が整うとはいいながらも、今は見せられる状態ではないと説明された薫は、本来なら二週間で退院できたが、世界初の手術ということもあってベッドの中で三週間以上を過ごした。

 会社からと取っている休みは一ヵ月半、度々来る上司からの菜々美の生死についてには、菜々美では無かったとメールで答え、別の死体が出たのでと休暇の延長を申し出た。

 今回の手術では部分的な性感部位ではない、膣の中全体に薄く貼り伸ばされたペニスの材料を定着させるべく安全策をとったといえるようだ。

 一部切除して付けたクリトリス、尿道の安定と同時に膣内の安定も次々に確認され、体内に埋め込まれた睾丸とそこから分泌されるカウパー支線液は、少しの刺激で膣の内部をヌルヌルした液体が覆った。

 昔の性転換手術では考えられなかった最新の技術によって薫は刺激によって分泌する愛液手に入れた。


 それから数ヶ月…


 薫は背広にネクタイ姿で会社勤めを果たしながら子育てを両立している。

 隣家に住む三田は完全に女になった薫を労わり支えながらも、完治まで様子を見たいという薫に同意して見守っていた。

 服を一枚脱げば中身は完全な女性でありながら男の様相で会社勤めする薫も夜になれば一人の女だった。

 性転換してから乳房は本物同様にウットリする官能が備わり、元々強い快感を得ていた乳首は当時の十倍以上の快感を得られるようになっていた。

 一人ベッドにいれば女としての寂しさからか乳房に手が伸びることもシバシバ、自ら溢れさせた愛液を指に絡めクリトリスを刺激しては身悶えしながら膣の入口に指を滑らせる。

 三田に味見させてあげたいと思いながらもセックスに不安を抱える日々。

 毎朝、出勤のために履き替える白いパンティーも仕事を終えて戻れば薄っすらと縦になったシミを見て頬を紅く染める。

 
「ママァー!」

 前側を大きく開けるワンピースを着衣しているのを見た子供は4歳にして未だ薫に乳を強請った。

 スリップとブラの肩紐を外し乳房を晒して我が子に与える薫は母親そのもだった。

 乳離れの遅い子の乳首を噛む力は強く、時折悲痛な表情を見せる薫は不敏な我が子を思う父親だったようだ。

 官能とは程遠い乳離れしていない四歳児から受ける攻撃は、乳首を腫らして夜も眠れぬほどだった。

 女性ホルモンの投与で精神的にも肉体的にも不安定な日々を過ごしながらも薫は男として会社勤めを続けていた。

 そんな薫に数ヵ月後、転機が訪れた。

 薫はそろそろいい頃だと、三田に自分を味見させるべく心と身体の準備をしていた時のこと、三田の家内が突然の病に倒れ病死した。

 長年連れ添った奥さんを亡くした三田は生気を失ったようにボンヤリと喪主の席に座っていた。

 三田の二人の息子は訪れる人達に三田に並んで頭を下げていたが、薫に対して三田からの正式な紹介は何もなかった。

 薫は弔問を済ませると自宅へと戻るり子供を寝かし付け、衣裳部屋の洋服箪笥から取り出した妻の菜々美のワンピースの喪服に着替えた。

 台所のテーブルに出したコップ酒を煽り、三田の奥さんが病院で薫に耳打ちした言葉を考えていた。


『薫さん主人を… 主人を許してあげて下さい… 主人は嘘… 台所の床下… 許して…』

 黒いストッキングに包まれた足を組みなおして、奥さんが亡くなる直前、薫に途切れ途切れに話したことを考えていた。


「許すって… 嘘って何? 台所の下?」

 薫はコップに付いた自分の口紅をジッと見詰めていた。


 薫は奥さんの死の直前の言葉の意味を考えているうちに強い睡魔に襲われ、そのまま寝室へ行くと喪服のままベッドに倒れこんで眠ってしまった。

 そして深夜の二時過ぎ、薫は恐ろしい夢を見て目を覚ました。

「うわあああぁー!!」

 喪服の下が汗ビッショリになっていることに気づいた薫は、小さな灯りをつけるとベッドに腰掛けて喪服を脱いだ。

 ブラジャーも黒いスリップも下半身を覆っていた黒いパンティーストッキングも汗で濡れていた。

 恐ろしい夢だった。

 薫は思い出すのを嫌がるように何も考えないようにしてスリップとブラジャーを脱ぐと、慌てるようにパンティーストッキングを我が身から剥ぎ取った。

 小さな灯りの下で乳房を揺らせてパンティーを脱ぐと、着替えようのパンティーに履き替えノーブラのままで別の白いスリップで身を包んだ。

 汗で重くなった下着とストッキングを籠に入れるとベッドの上でタバコに火をつけた。

 三田の家の台所の下の土の中から腐って顔の肉が熔けている妻の菜々美が這い上がろうとしているのを、三田が棒で押し付けている夢だった。

 
『薫さん主人を… 主人を許してあげて下さい… 主人は嘘… 台所の床下… 許して…』

 何度も思い出す奥さんの最後の言葉に、薫は両手で耳を塞いで背中を丸めた。

 薫は震えていた。


「まさか… そんな… でももしかしたら三田さんが菜々美を…… そんなはずない!! 三田さんは私に性転換の費用まで援助してくれたのよ!!」

 両手で耳を塞いだまま動かなかった薫は、突然、考えを払拭すように立ち上がるとベッドシーツを替えた。


 
『引越してもう居ないが、裏の吉永さんの奥さんと菜々美ちゃんが抱き合っているのを見てしまったんじゃ…… 薫が会社へ出かけ暫くすると毎日のように吉永さんの奥さんが尋ねて来ては数時間、入り浸っていたのは薫も知らんじゃろ… 菜々美ちゃんと吉永の奥さんとはレズだったようじゃのおぅ… 夏の暑い日の午前十時ごろじゃったか、ワシがこの家の周りの雑草取りをしてやろうと来た時、家の中から女性二人の妖しい声が聞こえ、ワシはなんじゃろうと悪いとは思いながら中を…… 菜々美ちゃんと吉永さんの奥さんが股をすり合わせて裸でヨガって居たんじゃ… その時、偶然にも菜々美ちゃんとワシの目が合ってしまってのおぅ… すると、その日のうちに婆さんが買物に出かけると菜々美ちゃんが家に来て、ワシに自分を抱けと言う… ワシは口止めだなぁと思って断ったんじゃ… じゃが、老いたとはいえワシも男… 熟した女性がスカートを捲くり上げ中を見せたら、ワシは頭に血が上って菜々美ちゃんの身体に貪りついて味見していたんじゃ… そして菜々美ちゃんはエクスタシーに達した。 それきり一度も菜々美ちゃんとは何もなかったが、裏の吉永の奥さんは度々、菜々美ちゃんを味見しに来ていたようじゃな…』

 シーツを直し終えた薫は三田の言ってたことを思い出しベッドに再び腰を掛けた。

 薫は葛藤していた。

 三田から聞いた菜々美の話しと三田夫妻の善意。

 
 薫は三田の奥さんの通夜と葬儀と火葬まで隣家として立ち会った後、会いたくは無かったが兵藤と連絡を取り兵藤の屋敷に会いに行っていた。

 家政婦を何人も雇っている兵藤の屋敷は、門から駐車場まで距離をおいて、更に玄関まで徒歩で数分のところにある巨大な屋敷だった。

 石垣の塀で覆われた瓦屋根の武家屋敷風の建造物は付近の戸建ての家々を数百件も飲干すほどの広さだった。

 家政婦に迎えられて歩く廊下は長く清潔感のある家政婦は無言のまま、スーツスカートの薫の前を歩いた。

 そしてようやく着いた大きな観音開きのドアは開かれ、薫は中に通された。

 巨大なソファーに座る兵藤は、目の前のソファーに座る性転換と女性ホルモンの使用ですっかり女らしくなった薫に前のめりになり、目を血走らせたが自分を抑えるように薫の顔を見詰めた。


「隣家の家の床下を調べて欲しいの… 貴方なら出来るでしょう……」

 薫は黒いタイトスカートに覆われライトブラウンに包まれた足を膝組し、白いブラウスの襟元を直しながら黒いジャケットの裾を少し引いた。

 兵藤の目を見詰める薫は冷静だった。


 その薫に兵藤は一瞬、いつものお安い御用と言わんばかり笑みを浮かべたが、直ぐにその表情を引っ込めて口を開いた。


「ワシの願いも聞いてもらう。 それでいいなら力を貸そう……」

 兵藤は薫の足組している膝の辺りを見ていることを薫に気付かれると小さな咳払いをして誤魔化した。


「前のような縛りプレイでないなら…」

 ロングのカツラの垂れた前髪を軽く直した薫は落ち着いた口調で言い返した。


「決まったな♪」

 兵藤はニンマリ、いつもの嫌らしい顔つきになって、薫に飛び掛らんばかりに前のめりになった。


「此間はワシもガッツイておったらのおう♪ じゃが今度は違う! 完全に女になったお前を味わえるんじゃからのおぅ♪ と言うか、アレから暫くしてのおぅ、ワシは糖尿病というのに掛かってしまって今では全く起たんのじゃ、まぁ女遊びも出来ん身体になったとは言っても、お前の肌の匂いと味は賞味してみたいもんじゃて♪ まあ、せっかく女になったんじゃから本来ならワシの肉棒で攻めたいところじゃが、こればっかりはのおぅ♪」

 兵藤は薫に照れ臭そうに笑い飛ばしたものの、テーブルの上に置かれた内科の薬袋から取り出した薬を水で一気に喉に流し込んだ。


「何言ってるのお! ちゃんと勃起させてくれないとお! 私の身体はねえ!!」
 
 鼻息を荒くする薫は自分が受けた特別の手術の話を兵藤に前屈みになって説明した。

 
 兵藤は薫の力説に呆然とした。

 そんな薫に兵藤は突然、困った顔して見せ薫はそれを見て驚きの表情を見せた。


「おいおい、無理を言うでない♪ 無理なモノは無理じゃ♪ ワシは前立腺肥大とかで半立ちもせんのじゃ♪」

 兵藤は前屈みになった薫の驚いた顔を見て無念さを滲ませた。


「私は… 私は決心してここに来たんです! アナタに本物(おんな)としての処女を奪われる覚悟で!」
 
 薫はうろたえる兵藤を見て肩を落とした。


「じゃあ♪ こうしよう、一度と言わず二度! いや三度、ワシに味見させてくれんか♪ ワシをバター犬だと思うてくれてもいいぞ♪」

 兵藤は突然、不機嫌になった薫を見てオロオロし始めた。


「そんなぁ………」

 薫は全身の力が抜けたようにソファーにグッタリと背を凭れさせた。


 すると薫は突然、ソファーの上に両足を乗せて体育座りして見せた。

 何かを期待したかのように微笑する薫は両足を少し広げると、スカートの中を兵藤に見せた。

 それを見た兵藤は喉をゴクリと鳴らしてソファーから飛び降りると、薫のスカートの中を覗きながら両手をソファーに付けた。

 そんな兵藤を見た薫は一瞬、ニコっとして兵藤の反応を待った。

 兵藤は久し振りに嗅ぐ薫の匂いに顔をスカートの中に入れて、パンティーストッキング越しに鼻で深呼吸した。

 兵藤の両手は薫の尻を押える様にスカートの上に這わせられた。

 この薫の匂い作戦は数分間続けられた。

 だが、兵藤は鼻息を荒くするだけで着物の下のモモヒキを膨らませることはなかった。

 そして兵藤は突然薫から離れると床に両膝を付いて自分の顔の前で両手を合わせた。


「すまん!! 薫! この通りじゃ! ワシのは役には起たん! 味見だけで勘弁してくれえ! この通りじゃ!」

 兵藤は顔を真っ赤にして不機嫌な薫に平謝りを繰り返した。


 薫は成功報酬として調べてくれたあかつきには三度の味見を約束して屋敷を離れた。

 事前に兵藤が糖尿病に掛かっている情報を仕入れていた薫は、兵藤に引け目を感じさせながらの有利な立場での交渉が終ったことを喜んだ。



 そして兵藤は薫のスカートの中の恥かしい匂いを嗅いで、モンモンと眠れぬ夜を過ごすことになったようだ。

 

 


【十二話】



「糞ジジイめ! 人が折角味見させてやろうと腹を括ったのに! 役立たずになっちまいやがって!」

 兵藤の屋敷から女装クラブへと戻った薫はジャケットを脱ぐとソファー放り投げ、ドンと腰掛けた。

 
 薫は女装クラブを退会したはずだったが、兵藤の影響で店から招待客の扱いで特別に個室を与えられていた。

 工藤俊介(ナナミ)は店には来ることなく、兵藤でさえ殆ど店には来なくなっていて、店には薫の性転換を知る者は一人も居なかった。

 薫にとってこの店は身体のケアに必要な現金を稼げる貴重な職場であり、退会を決意した当時とは些か事情が異なっていた。

 そんな薫は再びジャケットを着るとバーのある方へと移動した。

 工藤がいつも居た場所にはアキラが居て、隣りには新しい男の子が入っていた。


「あぁ、紹介するよ♪ オーナーの兵藤さんの招待客の薫さん♪」

 薫が席についてアキラに視線を合わせるとアキラは隣りに居た男の子の肩をクイッと引いた。


「初めまして♪ 少し前に入った純です、宜しくお願いします♪」

 薫に頭を少し下げた純は薫に視線を重ねた。


「こちらこそ宜しくね♪」

 アキラが入れてくれたブランデーの入ったグラスに唇を軽く押し当てた薫はニッコリと魅力的な笑顔を見せた。

 どう見ても十代後半か二十代前半の純に対して薫は興味をもてず、来店する客をチラチラ見ては声の掛かるのを待っていた。

 薄暗い店内の中、バーのカウンターを照らす裸電球が薫の肩を照らしている。

 アチコチのボックス席から聞こえる賑やか女装子(おんな)達と客の笑い声。

 グラスを磨く純の視線はチラチラと薫に向けられる。

 客の指名を取って回るアキラ。

 バーの入り口を通り過ぎて売店コーナーに向かう数人の初心者風の男達の弾む声。


「薫さんは指名ボードには名前を記入しないんですか? お客さんたち、薫さんのことみんな見てますけど♪」

 グラスを磨く純が薫に話しかけた。


「あ、うん… もう少しだけ独りで飲みたいから…… えっ?」

 ブラデーグラスを両手で暖める薫は静かな口調で純の問いに答えた。

 すると何処からか聞いたことのある笑い声が薫の耳を掠めた。

 声の主を探すようにゆっくりと視線を向けた先に居たのは、薫の勤務する会社の宇崎だった。

 宇崎は几帳面で堅物でしられる男で、女子社員のスカートの丈が数センチ短いと言っては人事部に苦情を申し立てる変わった男であった。

 薫とは直接面識も話したことも無かったものの、宇崎の豪快な笑い声は時折廊下を歩いていても聞こえるほど大きく、有名人だったこともあって薫も記憶していたようだ。

 その堅物の宇崎がボックス席でショートパンツの女装子(おんな)を膝に乗せ、抱っこして談笑している様は薫にとって異様なでしかなかった。

 同じ部署の人間ならサッサと店を逃げるはずの薫もこの時ばかりは落ち着いていた。

 三人を指名して席に陣取る宇崎を遠くに見て薫は、会社とは別の人格を醸し出す宇崎にホッとした表情を浮かべた。

 会社では男として背広で過ごし、仕事を終えれば女として一夜を過ごす薫にとって宇崎は、同じ種類の人間だと思ったようだ。


「あぁ、木崎さんですか♪ 丁度僕がここに来る少し前からここへ訪れるようになったようですよ♪ 何でも最初は普通の店と勘違いしたとか言ってましたが、多分嘘… 相当、遊んでますよ♪ 彼は♪」

 宇崎をチラチラ見る薫に純が穏やかな表情で話し出した。

 どうやら宇崎はここでは木崎と名乗っているらしかった。


「ねえ、薫さんて性別は本当に男性ですか? なんか色っぽくて、妖しい女の匂いが漂ってますけど♪」

 軽く微笑む純は薫をジッと見詰めた。


「そういうアナタは本当に性別は男なの? 以外にオナベさんだったりしてー♪ キャハ♪」

 ブランデーを軽く喉に流した薫は純に視線を合わせた。


「僕は正真正銘の男ですよ♪ 何なら証拠を見せましょうか~♪」

 薫の問いに純は受け答えすると、咄嗟に自分の言葉に照れたのか頬を紅くして俯いてしまった。


「おいおい、純! ここはレディーを詮索する店じゃないぞぉ♪ ここに集う人達は全員、レディーなんだから♪」

 指名取りから戻ったアキラは純の肩をポンと軽く叩くと薫の真ん前に陣取った。


「薫さん♪ お客さんたちが薫ちゃんはってシビレきらせてますよ♪ そろそろお願いしますよ♪ ねっ♪

 アキラはカウンターに前屈みになると、薫に小声で頼み込んだ。


「もぅー♪ のんびりお酒楽しみたいのに~♪ アキラちゃんたらぁ~♪」

 カウンターに前屈みになったアキラに顔を付き合わせた薫は、仕方ないな~とばかりに口をヘの字にして席を立つと、ホワイトボードに薫と一文字入れた。

 
 薫が指名欄に名前を記入した途端、アチコチから一斉にアキラを呼ぶ声が飛んだ。


 そして五分ほどすると薫の下へアキラが記帳表を持って現れると、薫は小さく頷いて記帳表を指差して席を立った。

 薫が客席に降り立つとボックス席から、ウォーっという男達の声援が飛び交った。

 そんな薫の後姿を見ていたアキラは純の顔を見た。


「相変わらず凄い人気だよ、薫さんは♪ 薫さんに入った指名金額のトータル見てみろよ~ 三百五十万だぜ~! 今の客なんか一時間、八十五万入れやがった♪ 薫さんの取り分は六十万… 凄い!」

 席について笑顔で話す薫を遠くに見てウキラは満面の笑みで純に語り聞かせた。


 そして数分経った頃、突然の薫の悲鳴に店内は騒然となった。


 カウンターから慌てて出たアキラと純は何事だとばかりに駆けつけると、薫のスカートの中に手を入れた客が薫のペニスを握ったことが解かった。

 薫の入るところに驚いて詰め寄る男たちと、女装子(おんな)たち。

 初めての客にペニスを掴まれ驚いて真っ青になる薫の前で、他の客達は一斉に、薫のペニスを掴んだ客を取り囲んだ。

 地方から出て来たようなこの客は周囲の形相を見て声を上ずらせた。

 周囲の客や女装子(おんな)達が睨む中で、アキラは客に清算を求めた。

 薫は客が集う中で後退りをし、そのままトイレに駆け込んだ。

 店では清算を求める客とアキラが口論し、トイレの中では薫がパンティーに忍ばせた擬似ペニスを直していた。

 そして薫がトイレから出ると店の中はトラブルなど無かったかのように賑やかなムードになっていて、さっきの客の姿は何処にもなかった。

 怯えた表情の薫はカウンターに戻ると小さく震える手でブランデーグラスを持つと、一気に残りを喉に流しこんだ。

 アキラはそんな薫に平謝りしカウンターから出ると指名欄から薫の名前を慌てて消した。

 その瞬間、ボックス席からはドヨメキが巻きおこった。


「くそ! あの田舎ジジイのお陰でとんだトバッチリだ!」

 指名に参加してた客達は次々に悔しがる声を発した。

 そんな薫人気を目の当たりにした純は驚きを隠せなかった。

 
 すると、薫は突然、席を立ったかと思うとボックス席に降り立ち自分を指名してくれた客達の前に行くと無言で床に跪いた。


「今夜はゴメンなさい… また今度指名お願いします……」

 薫はボックス席を一つずつ回ると謝って回り、それを見た客達とカウンターの中のアキラと純は呆然とした。


 すると店内から突然、大きな拍手とが沸き起こって薫を応援する声が飛び交った。

 店内を謝罪した薫は口元を抑えて店を出ると個室へと立ち去った。

 個室に戻った薫は内心、擬似ペニスがバレたのではとハラハラドキドキの心境だった。

 そんな薫が冷蔵庫からジュースを取り乾いた喉を潤しいてると、部屋のドアがノックされアキラの声が聞こえた。

 個室に入って来たアキラはバツの悪そうな顔して薫の前に来ると頭を深く下げて詫びた。

 薫はそんなアキラに気にしないでと一声掛けるとブラウスのボタンを数箇所開けて胸元の熱気を外に逃がした。

 アキラはズボンのポケットからさっきのエロジジの清算した金を出すと薫に差し伸べた。

 
「これ、さっきの薫さんの分です… あと、これは薫さんへってお客さんたちからの御見舞いだそうです… 受け取って下さい…」

 ジュースで口の中を再び湿らせた薫は、ニッコリ微笑むとソファーの横に立つアキラに頭を下げた。


「私の方こそゴメンなさいね… あんなこと普段は珍しくもないのに突然、悲鳴なんか上げて…」
 
 薫は再びアキラを見るとニッコリした顔を見せた。


「じゃーこれはアキラ君と純くんへの迷惑料♪ 受け取って♪」

 薫はアキラから受け取った六十万と御見舞いの二十万のうち、二十万をアキラに差し伸べた。

 アキラは受け取れないと一旦は断ったものの薫の何が何でも貰えという姿勢にニッコリして受け取り、薫の機嫌も俄かに直ってアキラとの御喋りに進展した。

 
「やっぱり昼間の仕事の所為でしょ♪ 僕は薫さんならCカップ… 最低でもBカップは欲しいとこですね♪ 薫さんほどの美人なら♪」

 アキラはブラジャーを覆う黒いフリップの胸元を見て照れながら声を弾ませた。


「当たり~♪♪ そうねぇ~ 私も本当はCカップ、最低でもBは欲しいとこだけど、サラシで隠してワイシャツってなるとAが関の山ってとこかな~♪ サラリーマン辞めても兵藤の囲いモノになるしか生きていく術もないし… てか、アキラ君って本当に男よね? 工藤みたいな人もいるからねぇ~ キャハハハハ♪」

 薫は隣りに座って足組みするアキラを前に声を弾ませた。


「勘弁して下さいよ~ 僕も純、同様にちゃんと生えてますよ♪ それこそ見ますか♪ あっははははは♪」

 アキラのジョークに笑う薫を見てすっかり調子を戻したアキラは楽しそうに笑った。

 そんなアキラが突然、真剣な顔をして薫の方に身体を向けて口を開いた。


「薫さん! お願いがあります!! 実は僕も豊胸に関心があるんです!! 馬鹿な願いだとは承知してますけど、もし許されるなら胸を! 乳房を見せて欲しいんです!!」

 アキラの逼迫した表情と口調に、言葉を失った薫はアキラの方を見ることなく無言で黒いスリップの肩紐を外すと、乳房を覆うブラジャーを外した。

 プリリリーンと柔らかさを弾ませた薫の胸にアキラの視線が突き刺さった。

 アキラはその白い肌に膨らむ乳房を見て喉をゴクリと鳴らした。


「薫さん…」

 アキラは薫のピンク色した女性(ほんもの)と変わらない大きさの乳首と乳輪に、ウットリするように視線を奪われた。


「綺麗だぁ…」

 アキラの第一声に薫は恥かしさから頬を紅く染めた。


 両手を膝に乗せウットリする表情を見せたアキラは、薫の身体の揺れにプリンプリンと揺れる白い乳房に目を釘付けにした。

 そして口元を小さく震わせたアキラは恥かしさに俯く薫に声を震わせた。


「僕も! 僕もそんな綺麗な胸が欲しいんです! 僕は女装子(おんな)じゃないけど薫さんみたいな乳房に憧れてるんです!!」

 薫は声を少し大きくしたアキラを前に恥かしそうにブラを元に戻すと黒いスリップでブラを覆い隠した。


「頑張って!! アキラちゃんも大丈夫♪ キレイな乳房を持てるわよ♪」

 薫は薫を見詰め続けるアキラに片手で拳を見せて応援してニッコリと優しい笑みを浮かべた。


 そしてアキラが個室を出ていった瞬間、薫は自分のしたことにさっきの百倍もの恥じらいが巻き起こり、思わず両手で頬を覆いソファーの上で背を丸めてしまった。

 こんな明るい部屋の中で異性(オトコ)に乳房を見せた自分が死ぬほど恥かしいことをしたのだと気づいたようだった。

 生れながらにして何故、女が異性に(オトコ)に肌を隠すのか、男に犯され味見された女が何故、死を決意するのか薫は湧き起こる羞恥心の中でヒシヒシと解かってきたようだった。

 いくら身体を変えて女になっても、異性に対して羞恥心の無い者は女ではなく、どんなにあがいても物真似する男でしかないのだと解かった気がした。

 薫は頼まれたとは言え、乳房をアキラに見せたことを深く後悔した。

 

 この数日後、アキラが店に突然の休暇を申しでたことで、薫はアキラが豊胸手術を決意したのだと悟った。

 薫は自分の無責任な応援の所為ではないかと心を痛めていた。

 同時に兵藤から近日中に答えを出すというメールが届いた。

 隣家の三田は自分の子供達の一緒に住もうという提案を頑なに拒絶し一人で住むことになり、今まで同様に薫の子の面倒を見てくれることになった。

 薫は四歳になった我が子を保育園に入れることを考えていたが、行く末を案じた三田に押されるように考えを変えた。

 そんな薫は兵藤に明日の夜、三田を朝まで留守にさせるからとメールし、三田を久し振りに我が家へと誘った。

 そして翌日、子供は朝から晩まで一緒にいてくれる三田を歓迎するかのように大はしゃぎし喜んだ。

 そんな子供に引け目を感じながらも、薫は女になった自分を三田に見せ付けるように閉め切った自宅のカーテンの内側で、ミニスカートを履いて夕飯の支度をしていた。

 ノーブラで身につけたノースリーブは歩く度に乳房をプルプルと揺らし、生地に擦れた乳首からビンビンという激しい刺激がと乳首を勃起させ薫を悩ませた。

 そしてペニスの無くなった前側はペタッとデニムのスカートを自然に見せ、ソファーに座る三田の傍を歩くと、薫のスカートの中の匂いが三田の男心をくすぐった。

 チラチラと薫の身体を見る三田の視線に、薫は寝室のベッドの棚にコンドームとジェルを置いた。

 食卓を三人で囲む風景は年の離れた夫婦を思わせた。

 風呂上りの後、パンティーの上に一枚だけ羽織った白いスリップ姿で薫は寝かしつけた子供の顔を見ると、そのまま寝室へと向かった。

 そんな薫を横目に色気を感じながらも三田は、薫が寝室へ入ったにも関らず一向にソファーから立ち上がろうとはしなかった。

 そして薫が寝室へ入って一時間ほどした頃、ようやく三田はソファーから立ち上がって薫の待つ寝室へと向かった。

 薫は三田の足音に胸の奥をドキドキさせてベッドの布団の中で目を閉じた。

 寝室のドアが開いて入って来た三田はベッドの中に身を沈める薫にポツリと囁いた。


「薫ちゃん、今夜は一緒には眠れないよ… ワシはあの子の傍で寝るから…」

 三田は呟くとクルリと身体の向きを変えて寝室を出ようとした。


 そんな三田に驚いた薫は突然、ガバッと布団をはぐって起き上がった。


「えぇ! どうしてぇー!」

 薫はドアから出ようとしていた三田の後姿を凝視した。


 すると三田は再び薫を見た口を開いた。


「ゴメンよ、薫ちゃん… 家内が逝ってからワシのモノはさっぱり言うことを聞かんようになってもうたんじゃ…… 年なんじゃなぁ……」

 三田は薫の思いもよらない言葉を放つと寂しそうに寝室を出た行った。


「もおう!! バシッ!!」

 残された薫は掛け布団を両手で叩くと、肩をガックリ落として大きな溜息をついた。


 今日こそは処女を奪われようと腹を括っていた薫は無念の極めに浸った。


 悔しそうな顔する薫は兵藤と三田の老いをヒシヒシと感じた。




【十三話】

 


「薫ちゃん… やられたよ……」

 翌朝、薫の自宅を出て行ったはずの三田はガックリと肩を落として、自宅が空き巣に入られたことを薫に話しにやってきた。

 薫は驚いて、警察には知らせたのかと声を掛けると、三田は無言で首を横に振った。

「大して撮られるものはないから……」

 三田は薫にそう伝えると薫の家から再びフラフラして出て行った。

 薫は心配している素振りをしながら、三田の後を追うように三田の家の中に入り、警察へ通報しようと台所にいた三田に声をかけた。

 その瞬間、三田は大声で振り返り様に薫を怒鳴り睨み付けた。

「ここに来るんじゃなああい!! ここから出て行けええぇ!!」 

 三田は薫に恐ろしいほどの形相を見せると薫に拳を握った腕を上げた。

 その瞬間、薫はチラリと台所の床下にある野菜室のフタが開いているのを見た。

「何を見ているんだああー!! さあ!! 早くここから出て行けええぇぇ!!」 

 再びゲンコツを振り上げた三田が薫に近付いて威嚇したことで、薫は危険を察知して後退りをして台所から離れた。

 薫の初めて見た、三田の恐ろしいほどの形相だった。

 
 三田に追われるように帰宅した薫は、朝食を済ませ身支度を整えると子供の手を引いて、たまに使っている保育所を訪れた。


「いい子にしているんだぞ♪」

 子供の頭を撫でた薫はそのまま会社へ向かった。


 すると、バスの中で携帯がメールを着信し薫は込み合う中で携帯を凝視した。


「三田の家の床下から女性の物と思われる無数の下着の入ったカバンが見つかった。 警察に任せた方がいい。 こちらから警察に手段を講じて知らせることにする。」

 兵藤のメールは薫の全ての思考能力をゼロにするほど強力な物だった。

 気付けば薫は降りる駅を十箇所以上も乗り越していた。

 会社の同僚に遅刻の電話をした薫は纏まらない考えの中で身体だけが会社へ移動した。

 菜々美が埋まっているかも知れないという落胆の中で薫は失敗続きの長い勤務についた。

 いつもなら仕事に身を入れればアッというまに終わる仕事も就業時間を越えても終ることはなかった。

 そしてようやく一区切りついた薫が時計を見ると保育所の終了する時間が迫っていた。

 薫はタクシーを拾うと待ちかねているであろう、我が子を迎えに心を焦らせた。

 保育所に携帯から事前に連絡することで超過一時間で保育所に到着した薫は、タクシーをそのまま待たせ我が子を抱っこすると帰宅の途に付いた。

 そして自宅を目前に薫が目にしたのは、赤い回転灯の複数のパトカーだった。

 隣家の三田家の前に何人もの捜査員がいて黄色いテープが張られていた。

 そして人混みの中にいた近所の人に話しを聞くと、三田の家の台所の下に死体が埋まっていると通報が入ったといい、調べに入った捜査員が人毛らしきものを発見したという情報が広まっていた。

 薫は眠っている我が子から三田家の様子を隠すように自宅へ入った。


「今夜は女になるのは止めよう…」

 捜査員が何かを聞きに来るかも知れないと思った薫は下着をそのままに、男姿で夕食の支度と風呂の準備をした。

 スウェット上下を身に纏った薫がようやく準備を終えた頃、子供が目を覚ましてカーテンの隙間から隣家を覗いているのを見つけた。

 薫は慌てて子供を窓から引き離すと、子供を抱っこしてダイニングテーブルの前に座らせた。

 窓の外を気にする子の注意を反らそうと久々に行った保育所の出来事を聞いてあげる薫は、父親の顔をしていた。

 結局、この日は捜査員は尋ねてくることはなく夜の十時過ぎに薫はベッドの中に入った。

 翌朝、ゴミ出しのために外に出た薫の前に数人の主婦達が井戸端会議をしていた。

 聞けば三田の家の台所の床下からは女性の毛髪の他に、無数の下着とストッキングやらスカートやら大きなバックに詰められていたといい、この日も捜査員が床下を掘りにくるらしてと語っていた。

 隣家に三田の姿はなく警察に連行されたのだと言う。

 薫はいよいよ妻である菜々美の失踪の謎が解き明かされる時が来たと自分に言い聞かせた。

 そしてこの日の朝も同じように子供と手を繋いで保育所を尋ねた薫は、会社へと足を進めた。

 バスに揺られる薫は間違いであって欲しいと心の中で念じていた。

 そんな薫が会社に到着した。

 いつも込み合う部署近くのトイレ、順番が回って来たが個室は空いているかとヤキモキしながら中に入る。

 ラッキーとばかりに空いてる個室へ入って便座を除菌シートで拭いてからズボンを降ろす。

 スルスルとパンストに滑るように落ちたズボンを片手で押さえ、パンティーを膝まで降ろして便座に座る。

 いつもながら気持ち悪い男子トイレ。

 女性なのに男子トイレを使わざるえない悔しさに口元を硬化させる。

 勢いよくすれば跳ね返るからとチョロチョロ出しで腹圧を加減する。

 個室の外から大勢の男子社員の話し声。

 トイレットペーパーを右手に巻きつけ、デリケートな部分を優しく拭き取る。

 まだまだ慣れない用足し後の拭き取り。

 ウッカリすればデリケートなだけに身体をビク付かせることになる。

 ワイワイガヤガヤ騒々しい個室の外。

 そんな最中に聞き覚えのある声が個室に飛び込んで来た。


「そういえば薫のヤツ最近、妙に身体のラインつーか、ケツの辺りが丸くなった気がすんだが、アイツ太ったか?」

 同じ部署で同期の大野の声。


「おいおい、お前そんなとこ見てんのかぁ♪ お前もしかしてコレか♪ ゲラゲラゲラ♪」

 同じ部署で同期の杉田の声。


「いや、なんかケツの辺りがプリンって感じで、顔なんかも前と違って丸っこい感じするし♪」

 からかう杉田にマジ声の大野。

 個室で微笑する薫。


「俺らの年代は気苦労が多いからな、アイツも何だかんだでストレス抱えてんだろ♪ どっちにしても来月の健康診断でアイツ自身、太ったことを知るんじゃないのか~♪」

 杉田の口から重大事項を聞いた薫は顔を青ざめさせた。


「健康診断… 忘れてたー!!」

 薫は来月の健康診断を忘れていたことに気づいた。

 始業時間の迫る中、トイレの中が急に静まり返ったことで薫は慌ててパンティーを、そしてパンストを装着した。

 定期健康診断は社員全員が同じ日に受けるもので、薫も同じ部署の連中と入り混じって受けるのが慣例になっていた。


「このままじゃバレちまう!! あと十日しか無いじゃないか!! くそ!!」
 
 青ざめた薫は部署へ移動する廊下で何か策はないかと頭を熱くした。

 そんな薫が部署の自分のデスクに向かうと、大野と杉田を中心に十日に迫った健康診断の話しで盛り上がっていた。

 誰が太ったの誰が痩せたのと女子を見ては声を細め薄ら笑いを繰り返していた。

 そんな中で後輩の吉岡が、健康診断の日に出張が入っていて、別の病院での検査を余儀なくされていると語っていた。

 薫は仕事の準備を進めながら、別の病院と言う言葉を頭に残し、慌ててパソコンで社則を開くと健康診断の例外事項を検索した。

 社則には健康優先をうたいながらも業務優先を匂わせる項目がいくつもあった。


「そう言えば聞きましたか? 今朝、また例の服装奉行が、女子社員に化粧が濃いんじゃないかって要らんこといって、女共からひんしゅく買ったらしいですよ♪」

 健康診断対策を頭の隅に置いてデスクワークしている薫の耳に、隣りに居る二年後輩の高橋が話しかけた。


「服装奉行って?」

 仕事の手を止めて横を振り向く薫。


「えっ? 知らないんですかぁ♪ やだなぁ~ 宇崎さんですよ~♪」

 高橋はネクタイを直すフリして辺りを覗うと、薫に顔を向け声を絞って掠れさせた。
 

「宇崎さんって、あの宇崎さん?」

 薫は書類のページを捲りながら高橋の顔を見ずに聞き返した。


「えぇ♪ よせばいいのにナンバーツーのお局ですよ~♪ セクハラだの何だのって女共に囲まれたらしいですよ♪ 全くあの人も女に対してもう少し、理解があればいいんですがねぇ~ あっ! ヤバ! 課長がこっちに来た!」

 高橋は面白そうに宇崎の話をすると自分の方へ向かって来る課長に怯えた。

 
 薫は女装クラブで遊んでる宇崎と会社での宇崎のギャップに心の中で微笑した。


 



【十四話】


 

 
「下着泥棒??」

 隣家の事件が発覚して二日目の朝、三田の家の前で始まった井戸端会議をカーテンの隙間から見た薫は、慌ててその場へと足を運んだ。

 三田は近所の家々の敷地や住居の中に忍び込んでは洗濯物や洗濯前の下着やストッキング、衣類などを盗んでは自らの欲求を満たしていたという。

 結局、薫の妻である菜々美の失踪とは何も関係が無かったというところで終ったかのように見えた。

 ところが、数日経った土曜日の午前八時半、自宅の前に一台の車が止まり、中からスーツ姿の男が二人出て来て薫の家の玄関チャイムを鳴らした。


「お休みのところ申し訳ありませんが…」 

 突然の刑事の訪問だった。

 薫は顔色を変えた。


 薫の自宅を訪れた刑事は、テーブルを挟んだソファーに座った。


「実は奥さんのことなんですが…」 

 両膝に手を置く刑事の小林と松崎は一瞬、切り出した声を引っ込めるように口を噤んだ。

 二人の刑事に視線を往復させる薫。


「御宅に無断で侵入した三田が、洗濯物を盗む際に奥さんに見つかり、そのままその場で奥さんをレイプしたと自白しまして…… その他にもこの界隈で数件のレイプ事件を起こしていたことが判明したんです。 奥さんの捜索願いが出ているのも我々は承知しています。 ただ今回の三田の事件に奥さんが巻き込まれた可能性もあるために、現在、三田を追求しています。 最悪の場合も考えられますので何か心当たりでもあればと……」

 刑事の小林が切り出し、途中から松崎が話を進めた。


 薫は三田の亡くなった奥さんの最後の言葉を二人の刑事に話して聞かせると、二人の刑事は顔を互いに見渡して何かを確信するかのような表情を薫に見せた。

 二人の刑事が帰った足、薫の脳裏に否が応にも浮かび上がる、妻、菜々美の屈辱的なシーンを薫は何度も振り払うように頭を両手で掻き毟った。

 
『もし、奥さんの失踪に三田が何らかの関与をしているとすれば、最悪の結果になると考えられます……』

 帰り際に刑事達が言い残した言葉を思い出し、唇を震わせる薫は刑事達が座っていたソファーを何度も拳で叩きつけた。


 家の窓から見える三田の家には数人の捜査員と鑑識が来ていたが、刑事達の言葉が重く心に圧し掛かり女になることも忘れ、男姿のままテレビの前で絵を描いて遊ぶ子供を見ていた。

 菜々美はもうこの世にはいないかも知れない…

 薫は何も解からずに無心に絵を書いて遊ぶ我が子が哀れでならなかった。


「もう少しで私まで三田に……」

 トイレの便座に座り膝の上に小さく溜まる水色のパンティーを見詰める薫は、処女を奪わせよう三田を誘った夜のことを思い出していた。

 自分の妻である菜々美を力ずくで犯した男に、性転換して女になった亭主(じぶん)が身体を味見させようとしたことに、薫は深い嫌悪感を感じた。


「女は男に味見されるために生まれて来る…」

 男たちの身勝手な言葉が耳の中に蘇り上半身を揺すって両耳を押さえた。

 揺れる乳房が薫に自分が女であることを自覚させた。

 用足しを終えウォシュレットをデリケートな部分に当てる薫は敏感な部分に刺激を感じた。


「こんな汚い部分を男は舐めたがる……」

 ペーパーで敏感になった部分を拭き取る薫は深い深呼吸(ためいき)をした。

 立ち上がって上に引き揚げたパンティーの内側のシミに視線を反らした。

 本物(おんな)になったものだけが解かりえる事実だった。


「こんなモノのために命を落とすなんて馬鹿げてる! 三田のヤツ! 許せない!」
 
 トイレから出た薫は窓から三田の家を見る子供に慌てた。

 薫は後ろから子供を抱き上げると小さなホッペに頬を摺り寄せた。


「パパァー! ママは? ママが居ないよぉー!」

 薫はハッとした表情を浮かべると子供を床に置いて窓ガラスに映る男姿の自分に見入った。

「今日はパパの番だからね♪ パパと一緒に居よう♪」

 床に置いた我が子の前に膝を付いて視線を合わせる薫はニッコリ笑むと子供の頭を撫でた。

 グズリかけた子供はテレビの前にヨタヨタ移動するとチョコンと床に座って再び絵描きを始めた。

 一安心した薫が台所の片付けを始めようと立ち上がると固定電話が鳴った。



 電話に出た薫は顔色を変えた。

 菜々美の母親は警察からの連絡を受け怯えた口調で子供を預かりたいと言って来た。

 薫は断ったが事件の真相が明らかになるまでの間だけでもと菜々美の母親は繰り返した。

 その日のうちに薫を訪ねた菜々美の実母は、挨拶もソコソコに薫の子を連れ菜々美の実家へと帰って行った。

 
 静まり返った家の中、一人ポツンと時計を見ると時間は夜の九時、三田の家は見張りのパトカーが一台いるだけで静まりかえっていた。

 居間のソファーに座ってスウェットの上下を脱いだ薫は、キャミとパンティーだけの姿で台所の冷蔵庫から缶ビールを二本取り出すと、そのままソファーに腰掛てビールを喉に流し込んだ。

 テーブルの上に伸ばした両足のフクラハギにヒンヤリ感が伝わる。

 缶ビールを置いて携帯を見れば竹崎からのOKのメールが入っていたことで、薫は肩の荷を一つ降ろした気になっていた。

 そして兵藤からのメールにはいつでもOKの内容が入っていたが、相変わらずの勃起不全を伝えていて薫を失望させた。

 薫は風呂に入り身体とデリケートな部分のケアをし終えると、パンティーの上にロングの厚めのネグリジェを着込みと寝室へ移動した。

 部屋の灯りを落としてベッドに身を沈めた薫。

 暗闇の中で瞼の裏側に菜々美のレイプシーンが浮かび上がる。

 寝返りをうっても湧き上がる見たくないシーンの数々。

 抵抗して殴られて衣類を剥ぎ取られ泣き叫ぶ妻の顔。

 押さえつけられ乳房を貪るられる妻の顔。

 パンティーストッキングを引き裂かれモガク妻の顔。

 両手で必死に押さえながらもパンティーを剥ぎ取られる妻の顔。

 三田の肉棒が濡れてもいない妻に挿入される痛々しいシーン。

 両手を押さえつけられ腰を振られ続け恥辱に泣き叫び妻の顔。

 掻き消しても掻き消しても湧き上がる辛いシーン。

 そして想いを遂げた三田ニヤニヤして妻の陰部を覗き込む顔。


『女なんて味見されるために生まれてくるんだ…』

 三田と兵藤の声が入り混じって菜々美のレイプシーンに重なって聞こえると、薫は突然ベッドから起き上がって明かりを灯した。

 ベッドの傍の小テーブルの上に置いてあるウイスキーをストレートで煽りながら、ネグリジェのボタンを外して掻いた汗をタオルで拭き取る。

 プルプルと揺れる自分の乳房を見て、その乳房に無理矢理貪り付く三田を想像した。

 三田にレイプされた菜々美に自分を重ねた薫は、背筋が凍りつく思いがした。

 望んで味見されるならともかく望まぬ愛撫ほど残酷なものはないと薫は思った。

 自分の乳房、両足を見て好きでもない男に、自分の恥かしい部分を見られ匂いを嗅がれ、そして舐められることが女にとってどれほど苦痛なことか、薫は我が身を震わせてその恐怖におののいた。

 薫は突然、ネグリジェをそのままに布団を頭から被るとその恐怖にガクガクと身体を震わせた。

 そして薫を苦しめたのは苦しみながら死んで行く菜々美の顔だった。

 首を絞められたのか、腹を刺されたのか何も知らない薫の脳裏に、様々な殺され方をする菜々美の姿が映っていた。

 薫はこの夜、何度も菜々美のことで大汗を掻いては目を覚まし、深夜の2時過ぎベッドから出るとネグリジェを脱いで再び熱いシャワーに肌を晒した。

 乳房をそのままに白いパンティーのみの姿で寝室に戻った薫は、何気なく見た場所に置いてあった、三田に使わせるために置いたコンドームとジェルに視線をあてた。

 菜々美を犯して殺したかも知れない相手に、身体(じぶん)を味見させようとした自分に腹立つ思いがした薫は、戸棚から女装クラブで買った擬似ペニスを取り出すと、それを手に持ってベッドの横の椅子に腰掛、頬にペニスの先っぽを当てた。

 グニグニする感触が本物のように薫の頬に伝わった。

 椅子に座ったまま両足を開いて、白いパンティーの上から懐かしそうに擬似ペニスを当てた。


「丁度この辺りか…… ふふ…… 何してんだろ私……」

 酔い口調で自分の行動に照れる薫は一人笑いながら、擬似ペニスの先っぽを自分の顔に向けた。


「彼氏でも居れば、こんな感じか…… ふふ……  えっ! 何してんだ私…… こんなモノ口に入れて……」

 口を開いて擬似ペニスを口の中に入れた薫は自分のしていることに驚いた。

 自分の行動にショックを受けた薫は慌てて擬似ペニスをベッドに放り投げた。

 そして椅子の上で体育座りして両膝の上に額を乗せ両手で抱え込んだ。

 
「溜まってるのかも……」

 薫は性転換前の医師の話を思いだした。

 両膝を抱いた腕の右だけを外し、外側から伸ばした右手の中指をパンティーの上からなぞった。

 怖くて弄れなかった性転換して初めての性行為だった。

 白いパンティーの上、デリケートな部分の割目を下から上へそして上から下へと中指で軽く擦った。

 女装子時代とはまるで次元の違う性感が薫の理性を麻痺させた。

 バンティーの上を恐る恐る擦る右中指は少しずつ滑る速度を上げた。

 デリケートな部分の割目の縁は、玉袋の真ん中に指を滑らせた感覚によく似ていたが、感度はその数十倍に達した。

 薫は喉の奥に恥かしい声を篭らせていた。

 そんな薫の膝から左手が外された。

 丸めていた背筋を伸ばすと二つある乳房はプルプルと揺れた。

 左側のピンク色した乳首が左手の親指と中指の中に隠れた。

 パンティーの上からデリケートな部分を擦りながら左手で乳首を弄る薫は声を腹に溜めて震えた。

 身近にあって遠い存在だった恥じらいの部分は確実にその答えを薫に教えた。

 パンティーを剥いで直接触れて見たいと思いながらも用足しとは明らかに違う感覚に怯えた。

 生まれて初めての女としての自慰に薫は不安と期待を同時にパンティーの上に指を動かした。

 そして乳房はといえば女装子時代に輪をかけ重圧で濃厚な心地よさが身体の芯から熱を発していて、勃起した乳首を一弾きする度に脳天が爆発しそうなほどだった。

 直接触れて見たいという小さな願いは薫の両手にパンティーを剥ぎ取らせた。

 手鏡に映した恥かしい部分を右手の中指で広げると、既に透明な液体が入口(ちつ)を守る小陰部に絡み付いていた。

 尿道の周りの体温が上昇し全体のピンク色を更にその回りだけを鮮やかにしていた。


「スー ツッツッツッツッー ビクンッ!」

 中指の腹に小陰部の液体を絡めようとホンの少し触れただけで脊椎を一瞬のうちに電撃が脳裏に達した。

 
「こんなに!? これが女の身体…… なんか怖い! ビクンッ!」

 一旦離した中指で尿道に軽く触れると再び気絶しそうなほど強い電撃が薫の頭をフラつかせた。

 その中指がクリトリスへと滑らされると、クリトリスまでの距離が果てしないほど長く感じた。

 そして中指がクリトリスに到達した瞬間、本来なら訓練が必要とされていたにも関らず、薫は身体を震撼させエクスタシーに達し失神した。


 数分後椅子の上で体育座りのまま気を取り戻した薫は、自分の座る椅子の上にオビタダシイ量の愛液が零れているのを見て衝撃を感じた。

 官能は人に依って異なるとは言いながらも最先端の技術で生まれ変わった薫は、本来持ち合わせていた感じる身体と融合したのかも知れない。


 薫は数回触れただけで、それも失神するほどのエクスタシーに恐怖さえ覚えた。 

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更新日
登録日
2012-02-25

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