ランドリー、ランデヴー

くるくると回り続ける乾燥機に
対峙して、独りぼっち
東京の夜は永い

カラカラカラ、と引き戸の開く音で
この鬱蒼としたコインランドリーに
二人目の利用者が来たことを知る
わたしは顔も上げず、
少しだけ体勢を整えた

2、3分の沈黙の後で
げ、という声が聞こえた
続くすいません、の一言に
ようやく顔を向ければ
切れ長の大きな目と
ふわっと耳にかけられたパーマが
印象的な男の人が

「洗剤、余ってたりしますか」
「、へ」
「いや、忘れちゃって」
「ああ、あ、ありますあります」
「ちょっとだけもらってもいいですか」
「あ、もう全部いいですよ」
「え、まじっすか」
「うん、はい」
「わー助かった」

ありがとうございます、
と言ってわたしの手から
使い切りサイズの洗剤を
受け取った彼の
わたしより一回りはある
おおきな手に一瞬触れた

実はコインランドリーって初めてで~、
と言葉を続ける彼の後ろ姿を見ながら
ボサボサだった髪の毛を
無意識で整えるわたしがいた

少しずつ弛み出すコインランドリーの空気に
久しぶりの気持ちを覚えて
いつもは我慢するアイスクリームを
今日は買って帰ろう、なんて
そんなことを思った

ランドリー、ランデヴー

ランドリー、ランデヴー

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-03-09

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