一等星

南の空に
スピカがひとつ

首を持ち上げたまま
一向に動かない彼女を
優しく照らしていました

同じころ北の町では
一人の青年が
腕に出来た傷口を
労わるように包帯を

白のガーゼに浸みこむ赤が
綺麗に思えた夜でした

そんな二人が出会ったのは
二〇一一年の七月
ちょうど光年が終わる月でした
彼は彼女に真珠の指輪を渡して

いつまでも僕の一等星でいてください

遠く夜空のスピカは
そんな二人を微笑ましく見つめ
アンドロメダ銀河はそんな一等星を
愛らしく眺めていました

この町にはもうすぐ
稲穂揺れる秋がやって来ます
静かに時は過ぎていきます

スピカは、この町にもいずれ
やって来る晩春を思いながら
違う町へと旅立ちました

一等星

一等星

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-03-09

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