一等星
南の空に
スピカがひとつ
首を持ち上げたまま
一向に動かない彼女を
優しく照らしていました
同じころ北の町では
一人の青年が
腕に出来た傷口を
労わるように包帯を
白のガーゼに浸みこむ赤が
綺麗に思えた夜でした
そんな二人が出会ったのは
二〇一一年の七月
ちょうど光年が終わる月でした
彼は彼女に真珠の指輪を渡して
いつまでも僕の一等星でいてください
遠く夜空のスピカは
そんな二人を微笑ましく見つめ
アンドロメダ銀河はそんな一等星を
愛らしく眺めていました
この町にはもうすぐ
稲穂揺れる秋がやって来ます
静かに時は過ぎていきます
スピカは、この町にもいずれ
やって来る晩春を思いながら
違う町へと旅立ちました
一等星