コッケじいさん

コッケじいさん

物言わずとも、なんにでも心はあるもの

卵で大事だよな・・・

ある村にコッケさんというおじいさんが住んでいました。村人たちはコッケさんのことをコッケじいさんと呼んでいました。
 コッケじいさんは卵が大好物でした。できることなら毎日卵を食べたいと思っているほどでした。しかし村では卵はとても貴重なものでなかなか手に入らなかったのです。「毎日卵が食べられればなぁ~」とやっと手に入った卵を見つめながらコッケじいさんはつぶやいていました。

 そこでコッケじいさんは思いつきました。村でニワトリを飼っている人にニワトリを一匹分けて貰おう。さっそくコッケじいさんは村でニワトリを飼っているバグさんという人の家に行きました。村ではバグさんはバグじいさんと呼ばれておりました。バグじいさんは村で一番多くニワトリを飼っていました。なので、村で卵を買うとなるとほとんどの人はバグさんのところで卵を買っていたのです。コッケじいさんはバグじいさんに「ニワトリを一匹譲って貰えないだろうか」と言いました。バグじいさんは「一番卵を産めないニワトリなら譲ってやってもいい」と言ったのです。コッケじいさんは仕方なくそれで納得して、バグじいさんのニワトリ小屋に案内して貰ったのです。そこは実に大きなニワトリ小屋でニワトリの足にはそれぞれ番号札が付いていたのです。バグじいさんは「この21番のニワトリを譲ってやろう、あと二十匹もいるからとくに問題もないからな」と言いコッケじいさんにそのニワトリを譲ったのです。コッケじいさんはそのニワトリを受け取り家に持ち帰りました。

 コッケじいさんはニワトリ小屋を持っていなかったので、ニワトリ小屋を作るまでの間は家でニワトリを飼うことにしたのです。ニワトリの世話を始めて一週間が経ちました。しかし、ニワトリはその間卵を生むことは一度もありませんでした。コッケじいさんはニワトリがあまりにも卵を産まないので落ち込んでいましたが、あるときニワトリの悲しそうな目を見てふと思ったのです。優しさが足りないのではないかと、もっと優しく育てようと。そこでコッケじいさんはニワトリにコッケと自分と同じ名前を付けたのです。名前を付けると以前よりも愛着を感じてコッケを優しく育てていくことができました。それから毎日コッケじいさんはコッケにただごはんを与えるだけではなく体を撫でてあげたり話しかけてあげたりしました。

そうするとコッケは徐々にコッケじいさんに懐く様になり一週間後にはコッケは初めての卵を産んだのです。コッケじいさんはコッケが卵を産んだことに大喜びして飛び跳ねました。その卵をコッケじいさんは白いお米に乗せて大事に頂きました。その味は今まで食べたどの卵よりもおいしくどこか心が温かくなるような味がしたのです。

しばらくすると、コッケのニワトリ小屋も完成してコッケじいさんはコッケをニワトリ小屋に入れてあげました。ニワトリ小屋で飼い始めた後もコッケじいさんは変わらずコッケを優しく育て続けました。コッケもそれに応えて毎日のように卵を産みました。
 ある日のことです。村に大きな嵐がやってきました。どの家もその嵐のせいで家の屋根がはがれたり、作物が傷んだりしてさまざまな被害を受けました。ニワトリを飼っていたバグじいさんとコッケじいさんは嵐がやむと慌ててニワトリ小屋に駆けつけましたがニワトリ小屋は屋根が飛んでなくなって、壁には大きな穴が開いており、中に居たニワトリはすべて居なくなっていたのです。バグじいさんとコッケじいさんは残念そうに仕方なく家へと戻りました。

 それから三日後のことです。いつかきっとコッケは帰ってくるとコッケじいさんは信じてニワトリ小屋の修理を始めたのです。壁の穴をふさぎ、屋根を新しく張りなおして住むニワトリの居ないニワトリ小屋をコッケと過ごした日々を思い出しながら懐かしみながら丁寧に修理していきました。そうしてニワトリ小屋を修理していると「コケッコッコッコ」と聞き覚えのある泣き声がコッケじいさんの後ろから聞こえたのです。寂しすぎてついにコッケの鳴き声まで聞こえ出したのかと思い笑っていると再び「コケッコッコッコ」と後ろから鳴き声が聞こえました。まさかと思い振り返るとそこにはコッケの姿がありました。コッケじいさんは嬉しく思い、戻ってきたコッケに「おぉ、戻ってきてくれたのかありがとう」と言いながらコッケを抱きかかえました。

 それからは修理したニワトリ小屋でコッケをいつもどおり優しく育てていきました。「今日もコッケのおかげでおいしい卵が頂ける」と以前よりももっとコッケに対する感謝をしながら。

 一方、優しくニワトリを育てずに、ニワトリへの感謝もしなかったバグじいさんのニワトリはいつまで経っても帰ってくることはありませんでした。

コッケじいさん

コッケじいさん

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-03-09

Public Domain
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