夜の産物


薄暗い荒野、乾いた土のうえにしゃがみこむ。
夜の産物を何度も埋めて、しかし何度も掘り返す。
それは手のひらに収まるくらいの大きさで、硬い表面には凹凸と亀裂が生じている。
じっと観察していると、夜の産物は目の前いっぱいに大きくなって
私はがぶりと飲み込まれて、いっしょになって土に落ちる。

朝になって気がつくと、心臓のあたりにはしこりができている。
しこりは夜に生まれでる。

夜の産物は何度も試しても切り離せない。

いつかは、陽光のそそぐ芝生のうえで向き合って、
柔らかい餡のおまんじゅうをつまむみたいに、指の腹でそっと挟んで、
えい、と一口で飲み込みたいと思っている。

夜の産物

夜の産物

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-03-09

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted