彼女の遊び

 仕事中に私物のスマートフォンにメールが入った。仕事が終わるまで放っておいても良いのだけど、仕事関係の人なのに私物の方にメールを送ってこられる方が珠に居られるので一応確認する。受信BOXを見るとやっぱり加奈子からだった。あいつも仕事中のはずなのに何やってるんだと思う。メッセージは確認せずに仕事に戻った。

 仕事帰りの電車の中で加奈子からのメールを思い出して確認する。プチプチと返信を打ち込んで送信すると、すぐさま電話が掛って来た。
「今電車の中だから」と言うと
「あ、そう」とも言わずに通話を切りやがった。

 部屋に帰って、もそもそ夕食を食べていると、加奈子から電話が入る。
「もうとっくに電車じゃないでしょう」と最初から喧嘩腰だ。うんうん悪かったと言うと
「いつもメールの返信が遅い」と不満を述べたてる。仕事中だから仕方ない、と何遍言ったか分からない台詞を繰り返す。
「仕事じゃない時も遅い」と攻撃の手は止まない。防戦一方である。こういう時は謝っておくしか手立てがない。埋め合わせにどこそこに連れて行くなんて話をしたら、私が何かを要求してるみたいじゃないの、と火に油を注ぐので絶対言ってはいけない。とにかく平謝り。その内、仕事が忙しいのは分かるけど、と徐々に歩み寄って来てくれる。

 そんな風に話をしている間にふと思い付いて
「ふくれたり謝らせたりして俺で遊んでるんでしょう」と言うと
「私はちゃんと話し合って解決したいだけ!」と振り出しに戻ってしまった。
彼女の遊びは終わらない。

彼女の遊び

彼女の遊び

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2015-03-07

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